龍まほパラレルカイドル 乱入モブ編

龍まほパラレルカイドル 乱入モブ編

59にして122


122のSSの続きもの、前作読んでないとたぶん意味不明のパラレルワールド設定


カイドウ…いつもは龍の姿をしている。ドルトンさんの家に入るときは人間の姿に変身する。

なお魔法パワーは万能なので、59才からショタまでありとあらゆる姿になれる。体格も調整できる。

身長差・年齢差・形態すべてお好きな姿でご想像いただけます


ドルトンさん…魔法使いという、人間から生まれ出でて、能力・生命力ともに人間を超越する種族。不老長寿は標準装備。学術的には人間より魔法生物に分類したほうが正確。魂の性質が似た生き物に変身できる魔法があり、ドルトンさんはもちろんバイソン。

つまり龍人×バイソン獣人がいくらでも妄想ができるぜやったぜ



流れ

裏庭で龍を養ってるタイプの猟師さんになったドルトンさん。酒が飲めるからといって(実のところお人好しで肝の太い人間を気に入って)ちょっとゴロゴロしていく予定の龍さん。ちょっと=まだふつうの人間だと思っているドルトンさんが死ぬくらいの時期。まで居座る気まんまんの龍さん。

数日後、山中の集落を回るついでに上がってくる薬売りや合同で猟をしようと誘いに来る猟師。目撃される龍さん(飲酒)。上戸ガチャ敗北で変わる山の形。止まらぬ悲鳴とコメディ〜〜この辺に挟まる魔法使いCO〜〜流れる噂と聞きつける神聖ドラム王国兵士たち…



 

東の国では龍を聖なる生き物として崇め、その体の一部は医薬品として比類ない働きをするという。その伝聞を裏付けるように東の国には長命の国主が多い。最近山から流れてきた噂によると、ドラムロックの山頂に件の龍族が現れたとか。崇められているとはいえ所詮野生動物の一種、王国きっての精鋭たちを揃えれば捕獲することも可能だろう…。そういう現国王の浅はかな判断と知識不足によって、精鋭部隊に対し地獄への片道切符が発券された翌日の話だ。

 


その日、いつものようにドルトン宅の裏庭で体を伸ばし、ドルトンから貰ったそこそこの酒を大事に舐めながら春の山に耳を傾けていたカイドウの退屈な平穏を脅かすためやってきたのは、自分たちの運命を知らない50人ほどの兵士だった。

士官らしき身なりのいい男を先頭に、狭く険しい山道を歩き慣れない様子で登ってきた兵士たちはドルトンの住まいの前で足を止めた。あたりを見回すまでもなく彼らの目的の龍はそこにいた。青龍カイドウは慎ましい家屋の裏から首をもたげ、いかにも横着をした横目で興味なさげに訪問者らを見下ろしていた。

 

「いたぞ、あれだ。自分の首にかけられた額も知らないで、酒瓶なんか咥えている。呑気なことだ。…失礼、ここの家主はご在宅か!」

「私だが」

「ウオォッ!?き、急に後ろから声をかけるな心臓に悪い!というよりいつの間にそんなところに…」

 

長槍と盾を携え、甲冑を着込んだ重装備の兵士たちは、その発言と合わせて明らかに不穏な目的を持つ来客たちだった。山歩きにはまるで適さない装備での行軍は彼らに目に見えて疲労を強いたようで、傾斜のある山道に窮屈そうに身を寄せ合いながらある者は手にした槍をだらしなく肩にもたれさせ、ある者は盾を地に突き立てて、魔法生物を討伐するつもりで来た部隊だとは思えない気の抜けた姿を晒していた。ドルトンが彼らの背後を取るのは拍子抜けするほど簡単だった。

指揮官の胸元に大きく縫い付けられた国章はドルトンの予想を裏切らぬ、神聖ドラム王国のものだった。

 

「驚かせてしまったか、失礼した。私はドルトンというしがない猟師だ。きみたちは神聖ドラム王国の兵だな?こんななにもない山奥に何の用だろうか」

「なっなにもない!?あるだろう目の前に!!すんごい龍がいるだろうが!!」

「ああ、彼はうちに滞在中の客人だ。…きみたち、彼に用があるのかね?」

 

丁重さを心がけて話しながらドルトンはゆっくりとした足取りで自宅の前に移動し、兵士たちと相対した。慌てふためいてコミカルな反応をする指揮官の男はどこか昔の同僚たちを思い出させる。知らずに強く握り込んでいた拳を解いた。

 

「ああ、そうだ!我らは輝かしき神聖ドラム王国の精鋭部隊!東の国より伝え聞く”漢方”なる万能薬の素、龍を捕獲しにやってきたのだ!貴殿には協力を要請する!」

「そうか、ならば断らせてもらおう」

「そうだろう、話が早いな。では早速…って、えぇ~!?ちょっと、コレ、王勅だぞ!?国王命令!!逆らったら極刑か強制労働だ!!ただでとは言わん、協力するなら謝礼金も出る!」

「すまないが答えは変わらない。彼は大切な友人だ。日が暮れないうちにお引き取り願いたい」

「そうか、それならしょうがないから今回は帰るとするか~…ってなるわけあるかぁ!!不遜にも我らが王の国土で生活しておいて、王の命令に背くとは。愚かな選択を地獄で悔いることになるぞ?貴様の生死に関わらず…な」

 

オーバーリアクションな指揮官が右往左往して説得を試み、諦めて拒絶を受け入れ、冷徹な執行人に変わる様子をドルトンは微動だにせず見据えている。空気が徐々に硬質さを増し、空間の温度までもが下がっていく錯覚を、相対した両者ともが感じていた。

一方で話題の中心の龍がどうしていたかというと、退屈な時間をせっかくうまく楽しもうとしていたのに突如どこぞから湧いて出た無粋で喧しい虫けらどもに台無しにされ、目に映るもの全てを苛だちに任せ踏みつぶしたい気分になってきていた。

 

「さっきからぎゃあぎゃあと…。うるせえ客もいたもんだな。下がってろドルトン、おれに用があるってんならおれが相手してやるのが筋だろうよ」

「いや。下がっていてくれカイドウ、家主は私だ。礼儀のなっていない客を追い返すのも家主の仕事だ」

「ふん…余裕ぶっているが、こちらは我が国の精鋭50人の部隊を率いている。考え直す最後の機会だ。龍の捕縛に協力しろ、でなくばここで死んだ方がマシという目に遭わせる」

「再度言おう、断る。私を排除したくば剣を抜くがいい」

「愚か者め。総員、構え。反逆者を排除しろ」

 

交渉は決裂、次は刃で己が意見を押し通す番だ。

1対50、常人の想像ではお話にならない戦力差の開きがあった。質素な住まいとその奥から顔を出す青龍を背にしたドルトンと、傾斜した山道を背にした兵士たちとが睨みあった。

日常から戦場に切り替わった緊迫感が家畜小屋を騒がす前に、カイドウはドルトンだけを拾い上げて、他の全てを手当たり次第に踏み潰そうと思っていた。


「“風を”」


武器を持たない、獣人の姿にも変身しない、気迫だけで兵士たちの足を縫い付けていたドルトンが口を開いた。それだけで戦場は一変した。

突然山から吹き下ろすように、人間など軽々と吹き飛ばしてしまうほどの風が吹き、兵士たちの半分以上を予想通りに吹き飛ばしていった。

吹き下ろす”ように”と言ったのは実際には、山から吹いた風でなかったからだ。家の裏手、山側から首を伸ばして見下ろしていたカイドウの鬣が風に揺られることはなかった。その風はドルトンの周囲から兵士たちに向かって発生したもので、つまりドルトンが魔法で引き起こした現象だった。

害虫を根絶やしに駆除する気でいたカイドウは目の前の光景に毒気を抜かれていた。この、お人よしの変わり者ときたら。魔法を使ってやることが、風で人間を転ばせるだけとは。そんな使い方、暇を持て余した若い連中が、人間をからかうときにやる児戯ではないか。

戦場で自然現象を操るとくれば、雷や炎で敵を大混乱に叩き落すものだ。たった一撃分の痛みと衝撃で、指揮系統を乱された雑兵どもはすぐさま烏合の衆と化す。剣の届かぬ高みから見下ろし、超常の力を意のままに操る存在に恐慌するのだ。独力で戦場を如何様にも動かせる能力の幅が、対複数戦における魔法の最大の長所なのだ。

魔法で命を奪わなかったからといって、では殺しに不慣れなのかと問われればドルトンの様子はそうも見えなかった。自らが生み出した悲鳴・怒号に動じた様子はなく、だというのにカイドウには馴染みのない、弱者への憂いとでもいうべきたぐいのものを抱えているようだった。


口数の多い指揮官が武器を地に突き立ててやっと吹き飛ばされないで耐えている様子をドルトンは嘆くような目で見た。

 

「一度の魔法で半数まで減るとはな…。お前たちの命をとる気はない。今退くなら追撃はしない」

「魔法使い、だと…!?!?バカなっなぜこんな辺鄙な場所に…いや、そうか。ドルトンという名だったか、あの魔法剣士…!!」

 

泡を食った指揮官の言葉が突如興味深い内容に変わり、ドルトンにしか関心を払っていなかったカイドウはそこで初めて兵士に注意を向けた。

 

「旧ドラム王国時代に軍で隊長を任ぜられ、降伏の瞬間まで戦い抜いた軍人…。旧王国の王族が処刑されたのち、新体制である神聖ドラム王国が樹立するまで新王家と民草との間に立っただのと、旧王国派の木っ端兵士どもが話していた魔法剣士ッ!!300年以上も昔、全盛期だった旧ドラム王国に名を馳せたとかいう、そいつがドルトンという魔法使いだったはずだ…!!!夢想家の負け犬どもの昔話じゃなかったってのか!?!?」

「昔話さ。私はしがない猟師のドルトンであり、兵士ドルトンが仕えたドラム王国はもはや存在しないのだから」

「ク…クソッ、お前たち撤退だ!!負傷者を回収しろ、早くするんだ死にたいのか!!」

 

風に吹き飛ばされ山道に転がっていた兵士たちは雨に降られたアリのように慌ただしく蠢き、重装備を抱えたまま坂道を転がり落ちたことで負傷した体を引きずって、必死の形相の司令塔アリに尻を蹴られながら坂道を下りて行った。


一度も振り返らずに引き上げていく兵士らを見下ろしドルトンは深く息をついた。意図して遠ざけていた記憶ーー時間のみが癒すだろう心の古傷と久しぶりに真っ向から組み合って、すぐにはいつもの顔に戻れなかった。あっという間に小さくなっていく一団から視線を切り、国を一望できる景色に目を向ける。山の裾野に広がる街と、国の中央に位置する王都、その向こうまで広がる”神聖ドラム王国”の領土をゆっくりと見渡した。

かつてドラムロックに城を築いた亡国と王のことなど、今や思い出すものは誰一人としていない。それでいい。人の営みとはそういうものだ。

目を伏せて大きく深呼吸し、ドルトンは思い切りよく顔を上げた。振り向いた先の大柄な友人はつまらなそうな顔で憮然としている。まったく、彼に対応を任せていたらいまごろ兵士の何人が生き残っていれらたか。やはり自分が前に出て正解だった。


「ふん、あんな連中を生かして返すとはな。甘っちょろいことだ」

「彼らの死を知ったら現国王がどんな対応に出るかわからない。きみを諦めるか、魔法使いを募って第二陣を結成するか…。矛先が私に向くのならどうともできる、万が一、下の集落の村人たちを盾にされてはたまらないからな。しかし再び軍が派兵されるとしてもそれなりの時間を要するはずだ。それまでにここを引き払ってしまおうと思う」

「故郷を出ていくのか」

 

生まれ育ち、心から愛する故郷がある人間が自らその場所を捨てるという。そこに暮らす家族を守るためだとか、思い入れのある土地を踏みにじられたくないとかいった理由でなく、何ら血の繋がりのない、自らに降りかかる火の粉も払えないような弱者たちを守るために捨てるつもりらしい。愛する故郷を持たず、弱きを解さないカイドウには前提からして理解できない感性だ。

カイドウは指先で弄んでいた酒瓶を地面に降ろし、徐に人間態をとった。先までよりずっと近づいた目線を合わせてドルトンが朗らかに笑った。

 

「ああ。もともと、軍を辞してからしばらくは旅をしていたんだ。軍に入るまではこの山が、入隊してからはこの国が私の世界だった…。そういえば、先の旅では東の国々に足を伸ばす機会に恵まれなかったのだ。なあカイドウ、どこかいい名所を知らないか?きみが美しいと思った場所を訪れてみたい。人里離れていて、静かな場所ならそれ以上は望めないな」

「むう…ほう…。じゃあよ、おれとお前で東の国の秘境巡りに出るってのはどうだ?お前には世話になったし、あの雑魚どもが来たのはおれを噂する奴がいたからだろう。その侘びと言うにゃあおれに都合がいい話だが」

「願ってもみないことだ。しかし…きみに都合がいいというのは?」

「おい、わかってることをわざわざ言わせるのか?気に入ったやつにたいした口説き文句を言われて、応えねえのは男じゃねェぜ」

「フ、フフフ…!いや、すまない、聞いてみたくてね。しかし…。ダメだ、実際言葉にされると落ち着かないものだな。どうも、若造のように浮き足立ってしまっていかん」

「ウォロロロロ!!おれから見りゃ誰だって尻の青いガキだぜ!けどよ、おれだってお前と同じだ、見ろよこの髭を!浮わついちまってしょうがねえ!」

「ふむ…フフ…すまない、違いがよくわからないが…ハハハ!こんなに浮かれるのは久しぶり、いや、初めてきみとあった日以来かな?フッ、ハッハッハッ!」


初めて恋を知った少年のようにのぼせ上った二人は、半人の姿になって浮かれ切った笑い声を上げながら連れ立って歩き、大きな背を丸めてドルトンの家のドアをくぐっていった。


翌日、王国を見下ろす国いちばんの雪山から、巨大な龍が雲を突き抜け天へ昇って行く姿が王国中の民に目撃された。

山で鳥撃ちをしていた猟師だけが龍の背に人を見たと叫んだが、山頂にあった猟師小屋がきれいに更地にされていたのを見つけると、以降二度とそれを口にすることはなかったという。



神聖ドラム王国青龍伝説

 

 

 

 

 

 

 

書ききれなかった設定たち

※特にドラム王国の主要人物にお労しい要素強め、悲しい出来事いっぱい。閲覧注意かもしれません。書いた奴は書きながら悲しくなって凹んだ。

かわいそうなドルトンさん、ひとえにてめえのメンタルタフネスが信頼されすぎているせいだが…



カイドウ

雷が轟き落ち、裁きのように大地を割り裂く、嵐の夜に生まれ出でた最古の龍の一体。自然現象が人格を得たタイプの存在。生まれて数千年は穏やかさという概念と無縁で、目に映るもの全てに喧嘩を売るまさに天災だった。おかげでメキメキ強くなったが、気軽に地形を変えすぎたし、因縁のある同種が多すぎだし、別種の魔法生物なんて不倶戴天の敵だらけ。今は落ち着いている(数百年周期で酒を求め人里を襲う持病持ち)

自然現象の一部として生まれ、いずれ世界の流れに不要な存在となったら消えていく定めにある。どれだけ強くなっても変えられない運命を悟って以降、死に方も死に時もままならない不自由な自分が嫌になってしまった。それまで喧嘩戦争殺し合いざんまいだった日々の熱を失い、手当たり次第に酒を呑んでふて寝を決め込み誰かに暗殺されるのを待ったりする日々を送っている

カイドル出会編では“人里離れた雪山の中で300年くらい寝てたら石になって死んだりするんじゃね?”という酔っぱらいの思い付きでドラムロックに不時着した。次の春とかいう超絶短いスパンで起こされて不機嫌だったが、カイドウほどの龍に「死なないで~」と縋ってくる生き物は生まれて初めて見る光景で、不覚にも頭がバグっていた。死を望まれたことは鱗の数よりあるが、「生きてた~よかった~」と誰かに泣かれたのは初めて。未知の感覚が胸を煩わせて鬱陶しい。けど不思議と悪い気はしていない。もしかして:ハリケーン

 

 


ドルトンさん

400歳はいったかな?くらいのちょっと涙もろいお年頃

ワポルが死ぬまで仕え続けた

旧ドラム王国はワポルが仕掛けた侵略戦争に負け、ある大国の属国になった。全く違う血筋の王家による神聖ドラム王国が樹立してから二百五十年以上過ぎている

三百年ほど前のワポル時代から、衰退していくドラム王国を支えるため働き詰めだった。旧王国の滅亡を機にDr.くれはに「心療内科は専門外だ」と言われて国から叩き出された。“そのツラのまま国に帰ってきたら殺す”と脅してくる怖い鬼ババ医者がいたのでしばらく世界を旅していた期間がある

やっと帰ってきた旅の思い出話はDr.くれはの墓石だけが聞いていた

昔いろいろあったのでカイドウの自殺行脚の気持ちは少しだけ理解できる

 



世界会議

開催されたことはない


ドラム王国いちのヤブ医者

息子はいなかった


Dr.くれは

ふつうの人間らしいが200年は生きたらしい

 

青鼻のトナカイさん

とあるトナカイの群れで長老として慕われている名もなき老トナカイ。今もドラムロックのどこかで生活している。

彼の群れでは幼いトナカイたちが青い木の実で鼻を染め、魔法使いごっこをする遊びが流行っているらしい。

長老の魔法は仲間を守ることに特化しているため、もっと派手な魔法を見せろといつも子供たちにせがまれているとか。




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