鼻歌の話
どこかで見掛けた「コラさんが海導を歌っていたから海導を知っているロー」ネタとハーピーIFローでこんな事もあったんじゃないかと思った結果のちょっとした話
あまり山も無ければオチも無いかもしれない
カチャカチャと爪が床を叩く音が鳴る。ドフラミンゴの愛鳥であるローが籠の中を歩き回っている音だ
「ドフィまだかな、早くかえってこないかな」
翼で籠の格子を突いたり、飛ぶ真似をしてみたりと1人で遊んでいれば、お待ちかねの主人が部屋に入ってくる
「ドフィ!」
部屋の扉が開くと同時に花が咲いたような満面の笑みを浮かべる
「おそい!おそい!」
「おいおい無茶言うなよ、ただ食事の準備をしに行っていただけじゃねェか」
ドフラミンゴが指を動かせば籠の格子がパラパラと糸へと変わる
籠の中からローが出てくれば左翼を掴み、自身の部屋へと連れて行く
すでに料理の並べられたテーブルには椅子は一脚しか用意されていない。しかしそんな事は2人はまるで当然といった様子だった
ドフラミンゴが椅子に腰かければ、ローはその横、床にペタンと座った
よく手入れのされている、ローの真っ白い髪を指で掬い、その後頭を撫でてやれば、ローは嬉しそうに目を細めて笑う
「ロー、ほら口開けろ」
「あー」
言われるままに口を開けば、そこへ葡萄を一粒、皮を剥いて入れる
モゴモゴと頬を膨らませながら葡萄を頬張る様子をドフラミンゴは楽し気に眺めた
口内にある葡萄を飲み込めば、次を求めてローが口を開く。それに少しの悪戯心がくすぐられてしまい、ドフラミンゴはローの舌を摘まんで引っ張ってみた
「んゃー!ろふぃやぇへー!」
「フッフッフ、悪い悪い」
手を放してやればローは不満そうに頬を膨らませた
「いじわる…」
「悪かった、お前があまりにも可愛らしくてつい悪戯しちまった」
「!ろぉ、かわいい?」
「あァ、そりゃあもうな」
「えへへ!」
嬉しそうに笑うローはもう直前にされた悪戯の事はすっかり忘れている様子だった
食事を再開すれば、ローはテーブルの上に置かれている食事には一切目もくれず、ドフラミンゴから手ずから与えられる物のみ食べた
食事を終えればローは部屋に、鳥籠に戻される。その事に何の疑問も抱かなければ不満に思う事もない。が、今日は温室で植物鑑賞をしながら日中を過ごす約束をしていた為、向かう先は中庭の温室
天井のガラス越しに差し込む日の光を浴びてはしゃぐローを、ドフラミンゴはベンチに座って眺めた。
時折花に頬ずりしたりしているローは余程機嫌が良いのか鼻歌を歌っている
その光景を微笑ましく見守っていたが、ふとローが歌っているその歌に全く聞き覚えが無い事に気が付いた
今のローはかつての記憶が無い。本当に、ドフラミンゴのお膝元でしか生きられないような雛鳥だ。と言う事は今のローが知っている物は全てドフラミンゴが知っている物だけの筈だ。それなのに知らない歌を歌っている
「ロー、ローちょっとこっちへ来い」
「ん?」
呼ばれてすぐにドフラミンゴの所へ行くと、座るように促されてドフラミンゴの膝の上に座った
「ロー、お前今何の歌を歌っていた?」
「おうた?えっとね…うーみはみーているー、せーかいのはーじまりもー♪」
改めて聞くがやはり全く聞き覚えが無い。ならばドフラミンゴが教えた物ではない
なら何故そんな歌をローが知っている
「その歌は何処で知った?」
「ゆめのなか!」
「……夢?」
「うん!ちょっとドフィににてるかな?でも羽が黒くて、赤いぼうし?かぶってる人がうたってたの!」
それを聞いてドフラミンゴは口を真一文字に結んだ。それを見てローは首を傾げる
「そうか…あァ……」
その夢はかつてのローの記憶だろう。
そして黒い羽のコートを羽織り、赤い帽子、恐らくコイフであろう物を被っている人物など1人しか思い付かない
「コラソン……本当に、何処まで行っても邪魔をする……」
「ドフィ?」
「……いや、何でもない。なァロー、楽しく歌っていたのに悪いが、もうその歌を歌うのは止めろ」
「なんで?」
「個人的な理由にゃなるが、その歌があまり好きじゃねェんだ。だからこれからは俺がリクエストした歌を歌ってくれるか?」
「いいよ!ドフィが好きなおうたうたうね!」
満面の笑みで答えるローに早速リクエストをすれば、ローは楽しそうに歌った
ドフラミンゴが望むのならばどんな歌でも歌うし、歌うなと言われれば歌わない
しかし何故かこの歌だけはローが1人でいる時は歌っている姿が何度か使用人に発見されたとか