黒歴史SS 2部-⑤
PH編……黒ひげから聞いた話
パンクハザードにて"シーザー"が人工悪魔の実"SMILE"を作成しており、それを"ジョーカーと"いう仲介人を会して四皇"百獣のカイドウ"と取引をしている
そしてそのジョーカーの正体はおれの因縁の相手でもある王下七武海"天夜叉のドンキホーテ・ドフラミンゴ"
……その情報がホントかどうかは分からない
信用する方が愚かだろう
それでも、おれは"あの人"の本懐を叶えたいんだ
そのためなら不確かな情報だろうが藁にもすがる思いで掴んでやる
そうして船に揺られながら数週間が立った
おれはそこで変わり果てたパンクハザードに足を踏み入れる
「!?誰だ!」
「……!おい待て!アイツ……王下七武海のトラファルガー・ローだ!!!」
「……ここの、シーザーとやらに用がある。会わせてくれ」
「……」と互いに顔を見合わせる見張りたち
二人とも銃を構えているが車椅子に身を預けていた
どこか漂う異様な雰囲気に意図せずローの顔が歪む
そんな様子からローに敵意がないと察した見張りは「話だけでも……」と通す気になったようだ
「シュロロロロ!まさか王下七武海様がこんな場所に来るとはなぁ!で、何の用だ?」
「……暫くおれを、ここに置いてくれ」
「はぁ!?お前仮にも七武海だろ?ここは立ち入り禁止の島だ。いくら七武海でもバレたらやべぇんじゃねぇのか?」
「そんなの黙ってたらいい話だろうが。それにおれは政府が嫌いだ。政府に従う理由がねぇ」
そう言って眼光を鋭くするロー
シーザーはその言葉にキョトンとするがその後爆笑した
そうしてしばらく笑い続け落ち着いた頃に返事を出す
「ああ、いいぜ。但し一つ条件がある」
「……?」
───テメェの心臓を、おれに寄越せ
「おぉと、心配するな。何も交換条件無しとは言わねぇ。代わりにおれの秘書の心臓をやる」
「……なるほどな」
秘書の心臓を渡すことによっておれが秘書の心臓を潰せば裏切りと見なされ、おれの心臓を潰す
それがシーザーの狙いか
自分は安全圏内にいるとは随分と汚ぇ野郎だ
……だがおれの目的のためには仕方がねぇ
「分かった。その交渉、受けてやる」
「シュロロロロロ!物分りのいい野郎だ。おいモネ!来い!」
「……はい、マスター」
やって来たのは緑色の長い髪を持つ女だった
……コイツこんな薄着だが寒くねぇのか?
「じゃあ、お願いね。ロー」
「ああ」
上司から心臓を差し出せと言われたのになんでこうも従順なんだ?
こちらとしても助かるがどうも怪しい
何か……裏がある気がする
いいや、気にしてる場合じゃないな。そうしておれはモネから心臓を取りだし懐にしまう
そのままおれは自分の心臓を抜き取りシーザーに渡した
「シュロロロロ。あともう一つお前に頼みたいことがあるんだ」
「なんだ」
「実はな……」
シーザー曰く"事故"で毒ガスを吸ってしまい下半身が動かなくなってしまった部下を治してほしいとのことだ
本当に事故か?なんか胡散臭いなコイツ
あとなんか生理的に無理だ
だがここに留まり続けるためならシーザーの信頼を得るのは必須なため不本意だがここは言うことを聞くしかねぇか……
「……ああ。いいぜ」
「シュロロロロロ!では、頼んだぜ」
「ただし治すためには動物の足が必要だ。それが無ければ治すことが出来ねぇ」
「いいだろう。手配してやる」
さてと、どうも面倒臭いことが起きる予感しかしねぇな……
それから数週間パンクハザードに滞在したロー
"とある部屋"以外は彷徨いててもいいとシーザーから許可されたローは図書室に行って医学書を読み込んだり、モネから呼び出されて一緒にご飯を食べたりして過ごしていた
ただ一つ気になったのは見聞色から伝わる異質な気配と幼い気配
恐らく……いや絶対この島には子供がいる。だが何故だ。ここは誰も立ち入れない死の島で子供なんて居ないはずだが
ここは本人に聞いた方が早いだろうとシーザーの元へ向かう
「おいシーザー」
「あ?なんだローか。どうした?動物はまだ届いてねぇぜ」
「そうじゃねぇ。この島になんでガキがいんだ」
「あ?……シュロロロロ!そういえば説明してなかったな」
そう言って愉快そうに嗤うシーザーになにやら嫌な予感がしローは眉をピクリとうごかした
「とある実験にな、ガキを使ってるんだ。近くの島から誘拐してな」
「……は?」
「実験は体を巨大化させることだ。だがなぁ、人体を巨大化なんて出来るわけがねぇ。一応図体はデカくなったが体の負担がデカくて持ってあと数年……。逃げられても困るからなぁ」
「アイツらはおれから逃げられない……。何故ならおれ特製の"覚醒剤入りのあまぁいあまぁい飴玉"のせいでなァ!!!!」
そうやって大笑いするシーザーの話を聞いてローは血が流れるほど強く手を握り締めた
ギリギリと歯が鳴り米神に青筋が浮かび上がる
SMILEの話を聞いていたからコイツは救いようの外道なのは知っていた
知ってたはずだった
だが実情はそれよりも酷く、ローの地雷をぶち抜いている
「ん?どうした?」
「っ!……いいや、なんでもねぇ。聞きてぇことは聞いたからおれはもう部屋に戻る」
「そうか。ゆっくりしろよ」
ガチャリとドアを閉めゆっくりと立ち去る
だがその顔は鬼でさえも逃げ出してしまうのではないかと思うほどの怒りに満ちた形相をしていた
ここまで腹が立ったのはいつぶりだろうか。そう思ってしまうほどローは激怒している
ここで子供たちの体を調べ逃がそうとしたら確実にシーザーの信頼を落とし心臓を潰されるだろう
だから辛いが子供たちを逃がすことは出来ない
ただせめて……
「薬による体の負担は減らしてやる」
そう言ってシーザーの実験室にこっそり忍び込んだローは薬の改良をやり始めた
今日もモネに呼び出され調理場の近くにあるカウンター席で飯を食べているロー
あれから少し薬に細工をし体への負担を極限まで減らした
しかしシーザーはあれでも天才科学者と言っても過言では無い男だ。認めたくはないが
バレないとは思うがもし細工がバレたらどうするか
「シュロロロ。悪いな、少し遅れた」
「お帰りなさいマスター。子供たちの様子はどうだった?」
「ん?ああ……。そうだロー」
ピクリと肩を揺らしたロー
平然を装うが内心は冷や汗が垂れている
(バレたか……!?)とせめて心臓は取り返そうといつでも能力を発動できるように構えた
だが言われた言葉は想像と違っており
「お前に言われてた動物たちがようやく届いた。約束通りおれの可愛い部下の足を動かせるようにしてもらうぞ」
「……はぁ。分かった」
バレたかと思い焦ったがどうやらそんなことはなかったらしくホッとする
正直一か八かの賭けだったが上手くいったようだ
このまま部下の足を治せば……治すと言うより移植をしたらシーザーの信頼は得られるだろう
けれど問題は秘書の方だ
なにやら秘書の方は不穏な空気を感じる
警戒に越したことはないとモネに警戒しながらシーザーについて行く
……前情報によると"茶ひげ"という人物は最悪の世代を憎んでいるとか言っていたがおれが言っても大丈夫なのか?とローは疑問に思った
だがシーザーがズカズカと進むせいで言いたくても言い出せない状態になり、とりあえず襲われたら返り討ちにすればいいかと若干物騒な考えに至る
気がつけば大きい扉の前についており、シーザーによって扉が開かれた
「シュロロロロ!おれの可愛い可愛い部下たちよ!今日は事前に話していた通りお前らの足を治してくれる奴を連れてきた!」
「マスター!おれらのために……!」
「流石我らの救世主!」
そう持ち上げれているシーザーを眺めローは目を細める
なにやら胡散臭いコイツは裏があるだろう。そしてその裏の顔に、この囚人たちが関係している
この島は何やら陰謀に塗れているような腐ったドブの匂いが漂っている
その正体がなにかはまだ分からぬが確実に言えることは"それが今後のローの未来に関わること"だ
(この島に来たのは、正解だったな。早く___を見つけねぇと)
「……ソイツが」
「おお、茶ひげ!そうだ。コイツがお前の足を治してくれるトラファルガー・ローだ」
「……」
話に聞いていた通りかなりの巨体な茶ひげに見下ろさられるローだが見聞色により茶ひげの複雑な心情を察していた
まぁローからしたら茶ひげを打ち倒した最悪の世代とは無関係だから風評被害甚だしいが
それでも医者として見捨てるのも忍びない
「別におれをどう思ってもいいがこれでも医者なんでな。お前らの足を治してやる」
「うおぉぉ!ありがてぇ、ありがてぇ!」
「本当に、治せるのか?」
「あ?出来なかったら言うわけねぇだろ」
そう言って様々な動物が捕らえられている檻にゴム手袋をつけながら近寄る
こちらの勝手な都合で命を弄ぶのは罪悪感がないと言ったら嘘になる
けれどやらなきゃいけない
(ごめんな。せめて痛くないようにするから)
心の中で動物たちに謝り、ローはルームを貼った
そのまま、まるで指揮者のように手を動かし動物たちの足と胴体を切り離していく
見たこともないような光景に目を惹き付けられるシーザーたち
そんな視線に気づいているのか居ないのか、ローは目を伏せたまま作業を続ける
そうして切り離し終わった足は隔離し本体はシーザーが処理すると言っていたのでシーザーに渡した
……これがSADの元になる、と知らないのは幸か不幸か
まぁ、知りたくなくてもいつか知ることになる
「……次はテメェらだ。大人しく足を寄越しやがれ」
「「「「「物騒!!!!」」」」」
ギャ─────────ッ!!!!と断末魔が響き渡るが無事に移植手術は成功し、囚人たちは形は違えど元通りに体を動かすことが可能になった
「ほ、本当に動けるように……!」
「うわぁぁぁ!!!また自由に動けるなんて夢にも思わなかった!!!ありがとう!ローさん!!!」
本当に動くことを確認した囚人たちはみな泣いて喜びローに感謝をし始めた
一方ローは治療したことにより囚人たちの体に溜まっていた"ガス"に違和感を覚え眉を顰める
そうして浮かび上がった一つの考察
"シーザーは何か嘘を言っている"
何となくではあるが何故だか分からないがこれが正解な気がしてならない
そうやって思考の海に沈むローの背に茶ひげが声をかけた
「トラファルガー」
「!……なんだ」
「ありがとう……っ!部下たちだけじゃなく、おれまで治してくれて!この恩は絶対に忘れねぇ!!!」
「……そうか」
その言葉を皮切りにローに感謝を告げる声が途絶えない
むず痒い気持ちになりながらも矢張り気がかりだ
そもそもシーザーは子供を誘拐して実験をするクソ野郎だ
そしてあの奇妙なガス
そこから導かれる可能性に悪寒が止まらない
……もし、シーザーが囚人たちを動けなくしたのだとしたら
「いいや、考えすぎか」
だがそれが本当だとしたら、ローは二度とシーザーを許せないだろう
囚人たちの移植手術を施して数週間経ったある日
コーヒーを嗜んでいたローにモネが声をかけた
「ねぇ、ロー」
「あ?なんだ」
「囚人たちに施したあの移植手術。私にもやってくれないかしら?」
「は?」
移植手術をするということは半ば人間であることを捨てると同義
囚人たちのようにやむを得ない事情があるならまだしも健康体そのものであるモネには何もメリットは無く、寧ろデメリットしかない
「……正気か?お前には健康な手足があるだろう。それを望んで捨てるなんて」
「ええ。分かっているわ。それでも私はそれを望む」
「……」
ローは医者として一つ返事で「はい」とは言えない
いくら怪しいと思っている秘書相手だろうと到底見過ごせるわけがなかった
そもそもローからしても受ける義理がないのだ
そうやって暫く見つめ合い折れたのは矢張りローだった
「……はぁ。分かったやってやる。けど後から文句を言うなよ」
「!ええ、勿論よ。ありがとうロー」
「ったく、好き好んで動物の移植手術してほしいなんてイカれてんのか」
「ふふふ。私は私なりの考えがあるのよ。ドクター」
「……はぁ」
再びローは溜息をついて頭に手を添える
モネの考えは一切理解出来ないが本人にその覚悟があるならと断れずに承諾してしまった
移植手術と言ってもどの動物をするのかと思ったが「そういえば」と移植手術用に連れてこられた動物の内一匹だけ使われていなかった綺麗な白銀の翼を持つ大きい鳥がいた事を思い出す
あれはシーザーから使わないでほしいと頼まれたものだがもしかするとあれは元々モネ用だったのか?
そう考えるとこれはシーザーの命令なのかと眉を顰めたがどうやらこれはモネの意思であることを感じとり固唾を飲み込んだ
「今すぐは無理だ。もう数時間待ってくれ」
「ええ。分かったわ」
そうやって背を向けるローは気づかない
モネが、妖しく笑っていることに
「……もう一度確認するぞ。本当に、いいんだな」
「ええ」
「……そうか」
ROOMとローは能力を発動させ出来るだけ丁寧にモネの体を解体していく
モネは目を閉じて大人しくしていた
両手両足がなくなりまるでダルマのようになったモネを見てローはなんとも言えない気持ちになる
別にローとて人をホムンクルスに改造する趣味などない
だがやるからには半端な真似はできない
横目で弱って動きも出来ない白鳥を見て罪悪感が湧かないと言ったら嘘になる
せめて、痛みがないようにするのが筋というものだ
(ごめんな、おれたちの勝手な都合に巻き込んじまって)
きっとこの白鳥はほっといたら死んでしまうだろう
「それじゃあオペを始める」
「ふふふ。流石ローね。完璧だわ。違和感もない」
「そりゃ良かった……。……」
「……あら、冷酷な死の外科医様が動物に対して罪悪感でもあるのかしら?」
「ちっ、ほっとけ。とにかくおれはもう部屋に戻る。どこかおかしかったらどんなことでも言え」
「ええ。ごめんなさいね、わがままを聞いてもらって」
「……」
何も言わずガチャンと扉を閉めるロー
無意識の内に拳を握りしめ荒々しく廊下を歩く
何故だかは分からない。けれどここに来てからローは何とも言えぬ気持ちを抱いていた
そもそもだの話子供を誘拐し実験に使い、動物たちを利用する真似は気持ちいいものでない
それを喜んでするシーザーとは根本的に合わなかった
「クソっ……!」
自室に戻ったローは頭を抱え扉に背を預けてズルズルと崩れ落ちる
「おれは、こんなことをするためにここにいるわけじゃねぇのに……っ!」
あれから数ヶ月が経ちパンクハザードに慣れ始めた時期、とある記事が目に入った
「これは……」
「あら、麦わらの一味が再結成?てっきりもう壊滅したのかと思ってたわ。そう言えばロー。あなた、頂上決戦で麦わらのルフィと関わったそうね。何か知ってるの?」
「……知らねぇ。そもそもおれたちは敵同士だ。それにおれは一々敵戦について考えてる暇もねぇしな」
そう言って乱雑に足を組み世界新聞を読む
モネは何を考えてるのか分からない顔でクスクスと笑っており何となく居心地が悪い
数ヶ月前に鳥の羽と脚を移植したモネはその後数週間で慣れ、今では自由に飛び回れるようになっている
日常生活にも支障はないようでモネの優秀さが垣間見えた
一方シーザーは矢張り実験が上手くいかないようでイライラしてる日が続いている
「おい、モネ」
「なにかしら?」
「シーザーの野郎にSMILEについて教えてやると言われたのにいつまで待っても声がかけられねぇ。どうなってやがる」
「あら、それは大変。今すぐマスターに確認してくるわ」
そう言ってシーザーの実験室に向かうモネの背中を眺め、ローはやっと息を抜いた
はぁ〜と背もたれに寄りかかり顎を天井に向け足は開き片足にダラんと手をかけもう片方の手は目に置く
この島に来てからずっと気を張り詰めているからか疲労が凄まじい
こっそりとシーザーの薬に細工をするのも簡単では無いのと移植手術をしてから妙に囚人たちから慕われてしまい移動をするにも囚人たちが必ず着いてくる
そのせいで一人になる時間が極端に少なくなりストレスが溜まる一方だ
それに加え"SMILE"についてシーザーから聞き出すことが出来ると思った矢先にすっぽかされ額に青筋を浮かべたのも最近である
更にはあの麦わらの一味が再び頭角を現してきたことも含め頭が痛くなってきた
なにやら嫌な予感がするとローは胃をキリキリと痛め始める
「……つかれた」
ポツリと呟かれた言葉はローの本音だ
けれど止まる訳にも行かないのも本音だ
あと少し、あと少し我慢すれば全て終わる
それがどんな結果であれ
「と、言っても子供たちをどうするか……」
問題は山詰めである
「お待たせロー。マスターがようやく落ち着いたわ。約束通りにちゃんとSMILEについて説明するらしいわ」
「そうか、悪いな」
「気にしないで。先に約束をすっぽかしたのはマスターの方だもの」
そう言って笑うモネを横目で見たあとローはシーザーの研究室へ向かう
モネは何故ローがSMILEについて知りたがるのか理解出来なかったが医者として成分が気になっただけかしら?と思った
それも一理あるが本当の目的は別にある
肝心のローはそれを話す気もないが
そうしてローはシーザーの研究室の扉の前に辿り着く
「よぉシーザー。来てやったぜ」
「せめてノックしてから入れ!」
ローはノックをせずに堂々と研究室へと入る
シーザーはあまりの図々しさに"こいつマジか……"
と思っていた
一つ訂正しておくが流石のローとて礼儀はある
なのにその礼儀を欠いたのはシンプルにシーザーが嫌いだからだ
シーザーが知ったら憤慨するだろうが幸いにもシーザーはそのことを知らぬままローと別れる
「随分待ったんだ。さっさとSMILEについて教えやがれ」
「本当に図々しいなお前……。まぁいい。シュロロロロロ!特別にSMILEについて教えてやる」
ズカリと荒々しくシーザーの対面に置かれた椅子に座り込み頬杖をつくロー
あまりの態度の悪さに怒るよりも呆れが先に来た
何度も言うがこんな対応をするのはシンプルにシーザーが嫌いだからだ
要するに自業自得である
「SMILEとはこれだな。パッと見るとただの林檎に見えるがこれを一口食うとたちまち動物の力を手に入れることが出来る代物だ!だが覚醒は出来ないがな」
「それとこれの欠点はもう一つ、このSMILEは動物の血統因子を詰め込んでるんだが……。殆どが欠損を抱えていたり病気を持ってたりしているせいで全員能力者になれるわけじゃない」
「……は?待て、今なんて言った?動物を使ってるって……」
シーザーの口から飛び出た聞き逃すことが出来ないおぞましい行為
ローは、数ヶ月前の移植手術で使った動物たちを思い出し"もしや……"と顔を青くした
「あ?そのままの意味だよ。SMILEの元になる化学部質"SAD"には動物の遺伝子や血統因子が大量に組み込まれてる。……そうだ、数ヶ月前は動物を渡してくれてありがとうなぁ。おかげでまた新たにSADを生産出来た」
ヒュッと喉を引き攣るように空気が吸い込まれる
ああ……最悪だ。想像もしたくなかった最悪の予想が当たってしまった
まさかとは思っていたが信じたくなかった、信じられなかった
つまり自分は知らないとはいえコイツの実験に協力してしまったということ
どうしてもっと早くに気が付かなかったんだ
知っていたら、こんなことには……
「……?おい、どうしたロー」
「!……いや、なんでもない」
「そうか……。それで話の続きなんだが、SMILEの能力者になることが出来るのはホンの数握り。殆どは笑うことしか出来ないただのカナヅチ……。おれの取引相手であるカイドウはソイツらを雑兵としてこき使ってるみてぇだがな」
黒ひげから話を聞いていたときから胸糞悪い話だと思っていたが、まさかここまでおぞましい話だとは思いもしなかった
それを平然と作るシーザーも、SMILEを戦力強化として使うカイドウも、知らないとはいえそれに加担してしまった己も、憎らしくて仕方がない
しかもその罪の一端を補っているのがにっくきドフラミンゴ
ならば、己が出来ることをちゃんと考えろ
「……そのSMILEとやら、一つくれねぇか」
「あ?別に構いやしねぇが……。どうしたんだいきなり」
「別に……。ただの気まぐれだ」