黒歴史SSまとめ⑦
頂上戦争③「エース!わりぃ待たせた!!!」
「ルフィ!!お前、無茶しやがって……!!」
「ししし!!エースを助けるためだから!!!」
そうやって白い歯を見せつけて昔と変わらない笑みを浮かべるルフィにエースは涙がこぼれそうになる
「待ってろエース!今鍵を……?あれ?」
「どうしたルフィ!」
ポケットに手を突っ込み何かを取り出そうとしたものの目当ての物が中々見つからなく、ルフィは冷や汗をかきながらポケットを漁る
エースはまさかと顔をひくりと引き攣らせた
「ルフィ……お前……」
「ちょっと待ってくれ!!絶対ここに……!あった!!」
ようやく目当ての鍵を見つけたルフィはエースの手錠を解放しようと鍵穴に近づけていく
「何……!?」
センゴクはまさかルフィが鍵を持っているとは思わず鍵を奪おうと手を伸ばす
だがそれより先にルフィの持つ鍵が手錠に届く……はずだった
「おぉっとさせないよ〜?」
「うわ!?」
何かを察知した黄猿により、鍵はレーザーで破壊されてしまった
「な!?鍵が……!」
「や、やべぇ!!どうしたら……!」
「悪いけど、下に降りてもらおうか」
「青雉!?」
いつの間にかやって来た青雉によってルフィは処刑台の下へ叩き落とされる
幸い、ルフィの体はゴムゴムの実によって打撃が効かない
そのため落ちたところで大したダメージではない
「エースの弟!!!」
「おい大丈夫か!?」
「いっつつ……」
イゾウとビスタが急いでルフィに駆け寄ってくる
頭を抑えながらもルフィはなんとか立て直す
「おい!1人で無理するな!」
「うるせぇ!おれは諦めねぇぞ!!」
力強い眼差しでそう言い切られ、イゾウとビスタは押し黙ってしまった
ローはルフィのそんな姿にどこか懐かしいものを見たような気がした
「もう手は選んでられん!!!火拳の処刑を開始する!!」
「嘘だろっ!?」
「センゴクの野郎……!」
最近名を挙げたばかりのルーキーにここまで戦場を掻き乱され、エースを解放されかけたセンゴクは焦りエースの処刑を強引に結構することにした
「やべぇ!!エース!!……っ!」
「麦わら屋!!!」
すぐさまエースの元へ行こうとするルフィだが叩き落とされた際、覇気を込められて殴られたせいで軽い脳震盪を起こしてしまっていた
ゆらりと立ちくらみを起こしたルフィをローは少し心配そうに見ていた
「……」
エースは黙って首を処刑人たちに晒し出した
「エース!!!諦めるな!!すぐに行くから!!」
「そこを退け海兵!!!!」
(これはもう、能力を使うしかねぇか……っ!)
海賊たちはエースを助けようと足掻き続ける
それでも海兵たちに足止めをされ続けていた
白ひげはエースに多少の被害が及んでしまうが、能力を使って処刑台を崩そうとする
今まさに、エースに刃が迫ろうとしたその瞬間
「やめろォぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
ルフィが吼えた
ぶわんと広がる覇王の憤り
耐性のないものたちは海兵も海賊も関係なく気を失っていく
新たな覇王の誕生は世界を変える"夜明け"となるか
新たな覇王の誕生に気を持たせたることが出来たもの達は一様に驚愕していた
今までただのルーキーだと気にも止めていなかったルフィがまさか覇王色の適性があるなんて夢にも思いもしなかった
「おいおい……!こりゃあ」
「まずいねぇ〜」
「覇王色がなんじゃ!」
青雉は覇王の覚醒に冷や汗をかき、黄猿はルフィを明確に"打ち倒すべき敵"と改めて認識した
赤犬は闘志をさらに燃え上がらせる
「あの小僧……覇王色を」
「やはり、持って生まれたか……!」
ガープは部下に手助けをされながら体を起こしながらルフィを見つめた
白ひげは思いもよらない覚醒に興奮が抑えられず口角があがった
「イゾウ!ビスタ!ロー!」
「マルコ!」
マルコは急いでローたちの元に飛んでくる
そして体がよろめいているルフィに再生の炎を与えた
「うお!?体が軽くなった!」
「まぁな……それよりお前、さっきの……」
「ん?さっきのってなんだ?」
「いや……」(まさか自覚がないのか?いや、この感じそもそも覇気を知らないのか……)
マルコはルフィが覇気の存在を知らないことを察したが、今は説明する余裕がないためエース救出に脳を回した
「そうだ!お前飛べるんだろ!?頼む!おれをエースのとこに運んでくれ!」
「な!?待て麦わら屋!火拳屋の手錠の鍵は壊されたんだ!どうやって助けるつもりだ!?」
「そんなもん何とかなる!!!」
「なる訳あるかァ!!!!!」
ローはめちゃくちゃな言い分をするルフィに目を吊り上がらせて怒鳴った
それでも怯えず、真っ直ぐローの目を見つめる
「ここで止まったらどうすんだ!!!こんなことしてる間にもエースが殺されるかもしれねぇだろ!?」
「っ!!」
ローは息を飲んだ
ルフィの瞳があまりにも真っ直ぐで純粋だったから
ローは少し瞳を泳がせたあと、諦めたように溜息をついた
「……はぁ。しょうがねぇ……不死鳥屋。麦わら屋を運んでやれ」
「……いいのかよい、ロー」
なんだか疲労で体が重い気がすると、ローはイゾウの腕に体を預けた
あまりに疲れ切っている様子のロー、そして覇王色の素質はあれどまだ未熟なルフィを使う決断にマルコは悩んでいた
「いいんだ、これで。頼む」
「……はぁ。わかったよい」
今度はローが真っ直ぐマルコの目を見つめた
マルコは全て諦めたように溜息をついて手を上げた
マルコはやはり、どこかこの2人は似ていると思った
「おい、エースの弟。おれが処刑台まで運んでやる
。本当に、お前に任せていいんだろうな?」
「ああ!任せろ!」
ドンッ!とルフィは堂々と宣言した
少しの不安はあれど、マルコはルフィに全てをかけることにした
「じゃあ行くよい!!しっかり捕まってろ!」
「おう!」
マルコはルフィを連れ処刑台まで飛び立った
「させるかよっ!」
「困るよ〜お二人さん」
すかさず青雉と黄猿が止めにかかる
「うおっ!?」
「あれま」
だがバン!と飛んできた覇気を纏う弾丸と剣
当たれば致命傷になる攻撃に流石の青雉と黄猿も避けざるおえなかった
「邪魔は、させねぇ!!」
「黙ってそこで見ていろ!!!」
ついに戦争も終盤にかかる
勝つのはどちらか
「頼んだよい!!エースの弟!!」
「おう!」
マルコはルフィを処刑台に投げ入れた
ルフィは空中で回って勢いを殺したあと、片手をついて着地した
「エース!!」
「ルフィお前……!」
「うぎぎぎ……!ダメだッ!固くて抜けてねぇ……っ!!」
ルフィは鍵がないため鎖が繋がってる鉄の部分を根元から引きちぎりエースを処刑台から下ろす算段だった
だけども鎖の部分も海楼石で作られており、取り外すには板ごとやらなければならない
だが度重なる負傷、体力の消耗により板を外すことは困難を極めた
「私がいることを……!忘れたのか!!」
「!?逃げろ!!ルフィ!!」
「うわぁ!?」
センゴクはこれ以上暴れられたらマズいと能力を発動し巨大化した
ルフィは背後から突如巨大な影に覆われ振り向くと光り輝く神々しくも荒々しい"仏"を目にした
「火拳ごと潰してくれるわ!!!!」
「うぐっ!?……ゴムゴムのォ!風船!!!」
ルフィは空気を大量に吸い込み体を膨らまさせる
幸いセンゴクは覇気を使わないただの打撃にシフトしておりエースとルフィにダメージはなかった
それでも尋常じゃない程の圧力に処刑台は耐えきれずエースとルフィごと崩れ落ちた
「火拳屋!!麦わら屋!!」
「マルコ!!」
「分かってるよい!!」
マルコは2人を助け出そうと羽ばたいた
だがそんなことを海軍が許すはずもない
「撃て──────ッ!!!」
「!!」
覇気を纏った銃弾がマルコに放たれ、マルコは処刑台に近づくことは愚かその場から動くことが出来なくなる
「ちっ……!エースッ!」
「んがっ!……なっ!なんだガネこの状況は!!!!」
「あれ!?なんでお前がここに!?」
今この場にいないはずの人間"Mr.3"
ルフィはまさかMr.3がこの場にいるとは思わず目を飛び出させて驚いた
「そんなもの……!決まってるだガネ!!」
そう言ってMr.3は能力を発動させ、エースの手錠の鍵を作り出した
ルフィは目を見開き空中で固まった
「なんで……」
「私が今この場にいる理由が、今は亡き"盟友"のためだと言ったら……貴様は笑うか!?」
「!!笑わねぇ!!!」
ルフィはMr.3の言う"盟友"が誰なのか知っている
だって自分も彼と同じ気持ちだから
投げ渡された鍵をルフィは握りしめた
「今だ!!!撃て!!!」
3人に向け容赦なく銃弾の雨が降り注ぐ
ガチャン!と何かが落ちる音がしたのと同時に巨大な巨大な火柱が立った
「全くお前は……おれの言うことをちっとも聞きやしねぇ」
「待たせたな!!ルフィ!!」
「エース!!!!」
エースはようやく開放された
その事実に海兵は絶望し、海賊たちは歓喜した
ドン!っとMr.3が大きい音を立てて落下したのと対照的にエースとルフィはトンッと着地に成功していた
「ひ、怯むなァ!!撃てェ!!!」
「悪ぃな。そこどいてもらうぜ!!火拳!!!」
「ゴムゴムのォ!JETガトリング!!!!」
敵を薙ぎ倒していく悪魔の兄弟
そんな悪魔"D"たちに海兵たちは怯えを見せ始めていた
「いたた……全く、酷い目にあったガネ……」
「おいお前」
臀をさすり疲弊していたMr.3に近づく男が1人
「ん?なんだガ……ふふふふふふ!不死鳥のマルコ〜〜〜〜〜!?!?!?」
目を飛び出させMr.3は痛む体が嘘のように高速で臀をつきながら後ずさりした
「お前!!!今エースの手錠を作ってたな!?」
「え!?いや、それはガネ!!」
「一緒に来てもらうよい!!!!」
マルコは遠慮もせずに人獣化し鉤爪でMr.3の胴体を鷲掴みにした
「誰か助けてガネ──────ッ!!!!」
Mr.3を連れ全速力でローの元へ来たマルコの凄まじい形相にローとイゾウは若干引いていた
「お前鍵作れるんだろ!?早くローの手錠の鍵を作ってくれ!!」
「えぇ!?でも私……」
「いいから早く!!!!!」
「は、はいだガネ!!!」
Mr.3はマルコの圧力に負け大人しくローの手錠の鍵を作り出し、ガチャリと音を立てローの手錠は外れた
ようやく自由になった体に手首を軽く回しながらローは立ち上がった
「……助かった不死鳥屋と……それと、えーと」
「み、Mr.3だガネ……」
大物と恐らく自分よりも強いであろうルーキーに囲まれたMr.3は見てて可哀想になるぐらいビクビクと震えておりローは少し申し訳ない気分になる
「Mr.3。改めて例を言う。それと……その、悪かったな」
Mr.3は素直に謝罪をしてくるローに"あれ、この子もしかしていい子……?"と思ったが容赦なくマルコの頭を鬼哭の鞘でぶん殴るのを見て考えを改めた
「おい不死鳥屋!!必死に助けてくれたのは良いけどやり方があんだろ!!!」
「わ、悪かったよい……」
マルコは流石にやり方が強引すぎたのは自分でも分かっていたので大人しく怒られていた
ローは腰に手を当てプンプンと怒っていたが頭に置かれた大きな手に目を軽く見開いた
「まぁ、そう言ってやるなトラ小僧。マルコなりにお前を助けようと頑張ってただけだ」
「白ひげ屋……」
白ひげはローの頭を軽く撫で、1歩大きく踏み出した
「ここからが踏ん張りどころだ!!!野郎ども!!!生きて新世界に帰るぞォ───ッ!!!!!」
「オヤジ!!」
「グララララ!!やっと来たかバカ息子!!!」
「オヤジ……!おれ、おれ!」
泣きそうになるエースに白ひげは何も言わずソっとエースの頭を撫でた
「分かってる。だから、何も言うな」
「オヤジィ……!」
「エース!!!」
「うおっ!?」
エースが開放されたのを見計らって白ひげ海賊団たちにエースは揉みくちゃにされた
頭を撫でられたり、軽く小突かれたりされ、その姿は正しく"家族"
そんな仲睦まじい光景にローはふわりと顔を綻ばさせた
「……さてと、ここからどう逃げようか」
白ひげはサッと周りを見渡し、辺り一体包囲されていることを確認し、逃げ道はローが作り出した1本のみ
そんなことは海兵たちも理解しており、そこを重点的に塞がれており、別に白ひげの能力を使えば直ぐに剥がすことは可能だ
だが歳のせいか体力があまり残っておらず能力のコントロールが出来ずに息子たちを危険な目に遭わすかもしれない
そう考えたら中々行動に移せずにいた
「……白ひげ屋。おれの能力なら」
「やめとけ。今の今まで海楼石を付けられてたんだ。無理すんな」
そう言って白ひげはローの首根っこを掴みまるで猫のようにだらーんと持ち上げた
ローはしばらく放心状態になり目をぱちくりさせ固まった
「……なっ!?おい降ろせ!!!」
「あー暴れんなトラ小僧。イゾウ!」
「うわぁ!?」
「ロ─────ッ!?!?!?!?」
暴れ始めたローを少し鬱陶しく思ったのか白ひげは雑にイゾウにローを投げ渡した
唐突すぎて取り繕う暇もなくローは悲鳴を上げ、それと共鳴するようにイゾウも絶叫しながらローを受け止めた
「び、ビックリした……」
「おー怖かったな。よしよし……」
「って!!おれは幼児じゃね〜〜〜〜!!!!」
ローはキレた
「おれのことなんだと思ってんだ!!!」
「わ、悪い……」
「そうグチグチ言ってないでとっととズラかるぞトラ小僧」
「アンタのせいだよな!?」
あまりにもな白ひげの発言にローはツッコミぜらるえなかった
こんなに雑に扱われたのは11年前のコラさん以来である
青筋を浮かべながらも額に手を当て何とか落ち着く
「……はぁ。逃げるにしてもどうやって逃げるつもりなんだ」
「……」
「白ひげ屋ァ!?!?」
白ひげはローから目を離した
その反応から考え無しということを察しローは絶叫した
よくよく見てみれば他の白ひげ海賊団もエースを解放したことに大喜びしており脱出のことを一切考えていない様子だった
「……っ!!!」
「ロ───ッ!!!!!」
ローは頭を抱え汗をダラダラと流した
そう
誰も脱出方法を思いついていないのである!
イゾウは遂に頭を抱え始めたローの背を撫でたり慰めたりと忙しない
他の白ひげ海賊団のメンバーもどうしたものかと頭を悩ませたが、その瞬間
ゴゴゴゴと何かが凄まじいスピードで近づいてきた
みんながなんだなんだとそちらに目を向けると
なんとそこには
「みんなぁ"〜!!!船持っできだ!!」
「「「「「ギャァァァァ!!!!!」」」」」」
そこには超巨大な船を紐で結び地面を抉りながら近づいてくるオーズだった
海兵はあまりの恐怖に目を飛び出させ悲鳴を上げ、海賊団のみんなはあまりのインパクトに固まって動かなかった
「「「「「??????」」」」」
「……なにあれ」
「オーズだな」
「オーズが抱えてるあれ何?」
「船だな。クソデカい」
「なにこの……なに?」
「こっちが知りたい」
海賊たちは目が死んだ
オーズがドスンドスンと走る度に地面が揺れ海兵が倒れていく
それと超巨大な船により数多の海兵たちが轢かれた
白ひげ海賊団はまさかこんなことになるとは思いもせず遠い目をした
「……グ、グララララ!!丁度いい!テメェら!オーズの船に乗れ!」
白ひげは少し顔が引き摺っているものの流石四皇
すぐに立て直し白ひげ海賊団に船に乗るよう命令した
白ひげ海賊団のメンバーはその言葉にハッと我に帰りオーズの持ってきた船に次々と乗り込んだ
「待たんかァ!!!!!」
「っ!?マグマ小僧……!」
「オヤジ!!!」
ようやっと白ひげとエース、ルフィが船に乗り込もうとしようとしたその時
怒りに身を落とした赤犬が途方もない量の溶岩を浴びせてきた
咄嗟に能力を使い弾き飛ばしたもののその威力は凄まじかった
「逃がすと思っとるんか!!!」
「……エース。先に逃げろ」
「は!?オヤジは!」
「おれは、後から乗り込む。だから信じて待っていろ」
───船長命令だ。バカ息子
エースはそう言ってこちらに背を向ける己の"父親"に唇をかみ締め涙を浮かべた
「エース、お前はおれが父親で……幸せだったか?」
「……!!そんなの、そんなの当たり前だろ!?おれの父親は白ひげ!!アンタだけだ!!!」
白ひげはエースのその回答に一瞬目を見開いたが、直ぐに緩く微笑んだ
ローはそんな"親子"のやり取りに眩しいものを見たように目を細めた
(父様、ロジャーおじ様、コラさん……)
ローはそっと目を伏せ、隣にいたイゾウに背を撫でられた
ローは何も言わず黙ってその手を受け入れた
「マグマ小僧!そんなにやり足りねぇなら!!このおれが相手をしてやる!!!」
「行け!!息子たちよ!!!必ずおれはお前たちの元へ帰る!!!だから行け!!!振り向かずに!!!」
薙刀を構え振り向きもせずにそう宣言した白ひげに、息子たちは涙を堪え前を向く
海兵たちは背水の陣であろうとも凛々しく構える覇王の姿に一種の畏怖を抱いた
ルフィはその偉大で大きな海の皇帝に何か思うところがあるのかジッとその背を眺めていた
「……っ!!行け!!オーズ!!!」
「まがせろ!!!」
「海賊たちを逃がすなァ!!!!追えェェェェェ!!!」
マルコの声を合図にオーズは走る
海兵たちはこの機会を逃す訳には行かないと半ば狂気的にオーズの後を追う
そうしてあっという間に海兵に囲まれた城壁から抜け、安心していた
だが、白ひげ海賊団たちは1つ頭から抜けていたことがある
そうそれは
「このまま逃げ切れると」
「思ってるのかい〜?」
青雉と黄猿を止めていないことを
「うわァ!?」
バゴンとオーズが支えていたはずの船が大きく揺れ船は大きな音を立てて落ちた
幸いオーズが先程空けた巨大な穴に落ちたため船は損傷していない
「っ!!オーズ!無事か!?」
「な、なんどが……」
強い衝撃に体をよろめかせながら何とか立ち上がったマルコは他のクルーたちの手助けをしながら立ち上がらせ、オーズの無事を確認した
なんとか全員無事だったもののマルコは「厄介なことになった……」と上空でこちらを見下ろす黄猿と青雉を睨みつける
「ここでアンタらを逃がしたらわっしらが怒られるんでね〜」
「あ〜。つまりなんだ。全員ここで捕まってもらう」
「くっ!」
まだ体勢を戻し終えていない海賊たちに容赦なく黄猿と青雉は攻撃を仕掛けようとする
誰もがダメだと思ったその瞬間
「火拳!!!!」
「room!シャンブルズ!!」
青雉に向かい高温度の炎が放たれ、こちらにビームを放とうとした黄猿は瞬く間に消えた
「あ〜らら、足止めくらっちゃう感じ?」
「ここから先は!!行かせねぇ!!」
「死の外科医トラファルガー・ロー、丁度いい機会だし捕まえようかね〜」
「ふん!出来るもんならやってみろ!!!」
青雉にエース、黄猿にローが相対しお互いに睨み合う
まさかの展開に白ひげ海賊団は目を見開いて二人を引きとめようとする
「戻れエース!ロー!!いくらなんでも無茶すぎる!!!」
「そうだよい!!ここはおれたちが食い止める!!お前たちは船に乗って逃げ……!!」
「「嫌だ!!!!」」
2人は大きな声を出しイゾウやマルコの制止の声を拒絶した
イゾウたちは目を見開いてこちらに背を向ける2人を唖然と見つめた
「もう守られるだけなのは嫌なんだ!!守られて誰かが死ぬぐらいなら、おれも戦いたい!!」
「この戦争は元はと言えばおれが原因だ!ケジメは付けねぇといけねぇ!!!」
「「だから、ここはおれたちに任せろ!!!」」
そう言って2つの"D"は肩を並べ目の前にいる敵を睨みつけた
「……っ!任せたよいっ!!」
「おい!いいのかよマルコ!!!」
マルコはもう2人がその場から動かないことを察し、逃げることにした
イゾウは2人を置いて逃げることに納得がいかずにマルコに噛み付く
マルコはイゾウの気持ちもよく分かる。それでもなんとか2人の意思を優先してやりたかった
「そんなこと分かってる!!!」
「!!」
「だが2人を見てみろ!!もう何やったて動かねぇ!!何より……」
「おれらが2人を信じないで何を信じろってんだ!!!」
イゾウもビスタもハルタもナミュールもマルコのその言葉にハッとしたように目を見開いた。それぞれ唇を噛み締めたり、握り拳を握ったり何とかして激情を逃がそうとした
「それに、ここで逃げなかったら2人の思いが無駄になる……おれは、そんなのは絶対に嫌だよい……」
そう言って俯いたマルコの肩にイゾウはポンと手を置いた
「……分かったよマルコ。ここは2人に任せて逃げろう」
「イゾウ……」
「お前に辛い選択肢ばかりさせて悪い。ここからはおれたちもお前の分まで背負う」
「ビスタ……」
「マルコ。逃げよう。大丈夫2人ならきっと帰ってくる」
「ハルタ……」
もう。覚悟は出来た。全員全てを背負う覚悟を。1人に背負わせない。みんなで背負うと
マルコはそんな覚悟をみんなから感じ取り前をしっかりと向いた
「行くぞオーズ!!!立て!!!オヤジと、エースとローを信じておれたちは逃げる!!!」
「わがった!!!」
そう言ってオーズは体の何倍もある巨大な船を背負って海へ目指す
何度も何度も鉛玉を撃ち込まれようとも、決して足を止めることなく。そんな白ひげ海賊団の姿にルフィは動かない体で眺めていた
「……すげぇな」
もし、自分がマルコの立場だったらどうするのか
きっと自分も飛び出して迷惑をかけるだろう
あそこで逃げる選択を出来たマルコに尊敬の念を抱いた
「……エース」
───おれもいつか、立派な船長になれるかな……
マルコたちはエースとローを信じ逃走
マルコたちの後を大勢の海兵が追うもののオーズの巨体には鉛玉なんて関係ない
何度も撃たれようとも足を止めることをしないオーズに海兵たちは次第に恐れを抱くようになった
「なんだよ……!この化け物!!!」
「……良かったのか?火拳屋。不死鳥屋たちと一緒に逃げなくて」
「それを言うならローもだろ。……たくっ。こんなとこまで助けに来やがって」
「なんだ?来ない方が良かったか?」
ローはそう言いエースに対して挑発的に笑った
エースはフッと笑いボッ!と火を己の拳に纏わせた
「いいや!助かった!」
「精々足を引っ張るなよ火拳屋!!!」
ローは鬼哭の鞘を放り投げ黄猿と青雉に向けた
それに黄猿と青雉は氷と光の速さで答えた
「アイス塊フェザントベック!!!」
「鏡火炎!!!」
青雉は鳥の形をした氷塊をエースとローに向け放った
だがエースも負けじとやり返しエースの炎は青雉の氷を溶かし尽くした
誇らしげな顔をするエースとあららと頭を搔く青雉
「八尺瓊曲玉」
「Room!タクト!!」
光のレーザーを無数にばら撒く黄猿に対しローは、Roomを展開し地面を操作して被弾を回避した
まさかこんな対応をするとは思いもせずおや〜?と目を見開いた黄猿にローはニヤリと笑い人差し指を動かした
「トラ小僧め……無茶をするなと言ったばかりなのに……」
「よそ見してるのは随分と余裕じゃのォ!!!!」
白ひげは見聞色の覇気によりエースとローが青雉と黄猿と戦闘をしていることに気が付き苦笑した
そんな白ひげの姿に苛立ちを覚えた赤犬は早速高火力の攻撃を白ひげに浴びせた
白ひげは能力と薙刀を利用し、赤犬の溶岩を振り払った
「お前ごときのマグマでこのおれを焼けると思うなよ?青二才が!!!」
激しい戦闘が繰り返されている中オーズは懸命にみんなを逃がそうと1歩ずつ進んでいく
オーズが抱える船にジンベエやイワンコフなどが次々と乗り込んできた
「ルフィくん!」
「麦わらボーイ!」
「イワちゃん!ジンベエ!」
倒れ伏し動かないルフィにジンベエとイワンコフは慌てて駆け寄る
ジンベエがソっとルフィの上体を浮かせてやり会話しやすくした
「大丈夫かルフィくん!……?エースさんとローくんは?」
「エースなら青雉たちの足止めしてくれてるぞ!」
「青雉たち三大将を足止めですって!?なんて無茶を!」
イワンコフは未だに戦闘を続けている2人を信じられないような目で見た
一方ジンベエは2人が強いことは重々承知しているがそれでも大将相手にどこまで行けるか分からずに心配そうにしていた
マルコはルフィにジンベエとイワンコフがいることに気がつき近づく
「ジンベエ」
「!マルコさん」
ジンベエはルフィをそのまま抱えあげてマルコに目を合わせる
「マルコさん……エースさんにローくんの2人に大将を任せても良かったんか?」
「……それが、2人の意思だ。おれたちは信じて待つだけだ」
「……!アンタさんがそう決めたなら何も言うまい」
ジンベエはマルコの真っ直ぐな瞳に微笑んで信じて待つことに決めた
「参ったな……おれは火拳とは相性悪いんだけどな……」
「だからローはおれをアンタにぶつけたんだよ!!!」
「火拳!」とエースは青雉が炎に弱いことを利用し攻めていく
凍らせようにもエースの体は炎そのものだ
凍らせようが直ぐにエースの体温で氷は溶ける
青雉とエースとの相性は正にエースの優勢
かと言って青雉が負けている訳では無い
的確にエースの隙をつき武装色を活かしながら確実にダメージを与えてくる
「……けどこのままじゃジリ貧だな、どうするか」
青雉はエースの攻撃を何とかいなしつつ戦況を変えるものがないかと目線を動かしていく
そこで青雉の目に付いたのは黄猿との戦闘に集中しており、こちらに対する集中が途切れているローの背中
少し青雉は卑怯だろうかと思いつつも、戦場で警戒を怠ったローが悪いと考え技を放とうとする
エースは青雉がローに腕を向けているのに気がついてサーッと青ざめる
即座に青雉の攻撃を止めローの元に駆け寄る
「もう遅いぞ火拳のエース!!両棘矛!!」
「ロー!!!!」
「っ!?しまった……!」
ようやくローは青雉がこちらに攻撃を仕掛けてきたことに気が付き黄猿から目線が逸れてしまった
逃げようとしてももう遅く、正面には黄猿のレーザー、背後からは青雉の氷塊
ローはもうダメだと、せめて衝撃に耐えようと目を瞑る
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!炎上網!!!」
だが何とかエースが間に合いローの頭を下げさせて炎上網を敷いた
ローは衝撃が来ないことに疑問に思って目を恐る恐る開けると、必死の形相をしたエースが守ってくれていた
「っ!火拳屋!!!」
「大丈夫かロー!……ちっ!悔しいけど1人で大将を倒すのは無理だ!ここは協力して2人で倒すぞ!」
「奇遇だな……!おれも、同じことを思ってた!」
炎上網が解ける
2人は肩を並べ立ち上がり深呼吸をして体勢を立て直す
「足引っ張るなよ!火拳屋!!!」
「誰に言ってんだ!!そっちこそ足引っ張るんじゃねぇぞ!!!」
「火銃!」
「そんな遅い攻撃、当たると思ってるの?」
エースは"ワザと"攻撃を遅くして火の弾丸を放った
青雉はその裏にある意図に気がつくことが出来なく素直に乗ってしまった。エースは思い通りにこちらに攻撃を仕掛けてきた青雉にニンマリと嗤う
「ありがとな。……素直に引っかかってくれて!」
ブォンと青白い半透明なサークルが青雉のすぐ真後ろまで展開され、トンと小さな破裂音がし、青雉はしてやられたと冷や汗をかき、こちらに鬼哭の切っ先を向けるローの姿を確認した
歪に弧を描くローの口角にゾワリと悪寒がする
「油断したな……!大将青雉!!!」
「しま……っ!」
「注射ショット!!!!」
だが青雉に差し出した刃が止まり、凄まじい力で抑えられ動かすことが出来ない
カタカタと音を鳴らし、鬼哭の刃を掴む相手を焦りながらもしっかりと睨みつけた
「まさか、刀の刃を直接掴んで止めるなんて焦ってるのか?手、離した方がいいんじゃないか?黄猿」
「全く、困るねぇ〜。今クザンがやられたらこっちが困る」
タラリと鬼哭に武装色の覇気を纏わせているせいで素手で鬼哭の刃を掴んでいる黄猿の手から血が垂れ落ちる。刀を直接掴んでも顔色を変えず、鬼哭を動かすことの出来ない尋常ではない力にローは言葉と裏腹に焦ってしまい何とか鬼哭を抜こうにもビクともしないことに唖然とした
少しづつ、少しづつローに焦りが溜まってゆく
「わりぃ。助かった黄猿」
「油断するんじゃないよクザン〜」
「だから悪かったって……さてと、随分と色々やってくれたなトラファルガー・ロー……」
「……っ!」
冷気を迸らさせ、こちらに近づいてくる青雉に寒気とは違う何かが身体中を走りぶるりと体を震わせる
「一旦、凍っとくか」
ローを凍らせようと手を近づける青雉に豪炎が飛んできた
「神火不知火!!!!」
火の矢が飛んできて2人を串刺しにしようとされ、これはマズいと思った青雉と黄猿はその場から飛び避けローから距離を取る
「大丈夫かロー」
「悪い。助かった火拳屋。……流石に、キツイな」
「ああ……でも、ここで止まる訳にはいかねェ!根性見せようぜロー!」
「やってやろうじゃねぇか!!!」
大将との力の差を感じようとも、決して諦めることのない2人に青雉と黄猿は厄介なものを相手にしたと内心思った
轟音が響く戦場に、動くことも無く佇む強者たち
正義を背負う背中と、誇りを背負う背中
風が吹き互いの"夢"が靡く
「グラララ……ドンパチド派手にやってやがるな」
「ふん。お前を始末したらすぐに止めちゃる」
赤犬はそう吐き捨て忌々しいと言わんばかりに顔を顰めた
白ひげはそんな赤犬よ様子から余裕が無いことを汲み取り、どうしたものかと頭を悩ませる
ゴポゴポと溶岩が湧き出てくると、まるで生き物のように白ひげの元へ這い寄っていく
「全く、情緒もクソもねぇな!!!マグマ小僧!」
「そこを退くんじゃ老いぼれがァ!!!!」
2つの強大な力はぶつかり合い島を揺らす
白ひげは"一人の親"として赤犬は"正義を守る一人の軍人"として決して譲ることの出来ない大切な物を守るために力を振るう
そこにはもう、海賊も海軍も関係ない
信念を抱くもの同士の一騎打ち
この戦い、どちらか勝った方が世界の勝者となる
「息子たちと約束したんだ。悪いがここは勝たせてもらうぞ!!」
「海賊はみな、正義の名のもとに鉄槌を下す!!!」
「オヤジ……」
「マルコ、オヤジを信じよう。きっとローとエースと一緒に帰ってくる」
「イゾウ……ああ。そうだな。おれたちは信じて待とう」
イゾウは心配そうに未だ戦闘の音が鳴り響く戦場を心配そうに眺めるマルコの肩にそっと手を置いてなぐさめる
マルコはイゾウの言葉に気を取り直した
(そうだよな……オヤジ)
だけどイゾウの胸騒ぎは収まることは無かった