黒歴史SSまとめ③

黒歴史SSまとめ③

シャボンディ諸島~


───旗揚げから数年

ローは順調に航路を進んでいき2億の賞金首になった

更には最悪の世代とも呼ばれるようになり名を挙げ続けた

その分"トラファルガー・レスト"を知るものからのエンカウントが次々と起きて今やローの手元にあるビブルカードは数え切れないほどに増えていた

未だに世界政府は気づいていないが今のローには四皇の白ひげ、赤髪のシャンクスがバックについている

それ即ち、ローに何かあった場合は四皇の2人が敵に回るということ

それを世界政府が知る時はいつなのだろう

だが確実に言えることは、"そのとき"はもうすぐそこまで来ていることだ


「……"火拳のエース"が海軍に捕まった……か」

ローはニュースクーから受け取った新聞を読み湿ったため息を流した

確か火拳のエースは世話になっている白ひげの隊長格だ

何度か接触したこともあるし、ローは何気にエースのことを気に入っていた

だがエースのことだから大丈夫とたかを括ったローは次の目的地であるシャボンディ諸島のことを頭に詰め込む

それから数日

「キャプテン!着きました!!」

「……ああ」

遂にやってきたシャボンディ諸島

この時のローは知る由もない

ここが、ローと"ある海賊"の運命が交じり合うなんて


ついにシャボンディに着いたハートの海賊団

事前に仕入れた情報によるとここには"あの"超新星たちが揃うらしい

どうせだからとローは自分と同じく最悪の世代と呼ばれ恐れられてる海賊たちを一目拝もうと早速上陸しようとした

だが

「あ、キャプテン!!まだ降りちゃダメです!」

「……なんでだ」

ペンギンに呼び止められシャボンディ上陸を断念された

「なんでって、あんたどうせそのままブラブラ考えもなく歩き遊ぶつもりでしょう?あんたは一船の船長なんですから自重してくださいよ」

「……」

バツが悪そうにローはむくれたがペンギンの言うことは正論なので大人しく船に戻った

ペンギンはそんな年下の船長をやれやれとでも言うように見つめていたが、まぁいいかと船を停泊させる場所を探すことにした

「ペンギン〜!どこ停泊させる?」

「そうだな……ベポ!どっか良さそうなところあるか!?」

「うーん……あっ!ペンギンあそこ良さそう!」

そのままハートの海賊団はポーラータンク号を8番グローブに停泊させた

停泊させたのをいいことに早速脱走しようとしたキャプテンをペンギン、シャチ、ベポが確保した

ローは嫌そうに、それはもう嫌そうにしていたが両脇にペンギンとシャチ

後ろにミンクであるベポがいることから大人しくしていた

これで何もやらかさないだろうと思っていた3人だったが、まさかキャプテンが天竜人の奴隷をクルーに引き込むとはこの時は思いもしていなかった

「おい、ドレーク屋。お前……何人殺した?」

そのセリフを聞いて後ろにいるクルーたちはやれやれと言わんばかりに頭や肩を落とした

先程から興味の赴くままにあっちこっちに行こうとするキャプテンを抑えるのがやっとだったのに……

怪僧と殺戮武人が乱闘騒ぎを起こしたせいでキャプテンが水を得た魚のように見に行き大変だったのだそのせいで変なテンションの上がり方をして声がガラガラになってしまった

今おそらくめんどくさいテンションの上がり方をしてるキャプテンに絡まれる赤旗を可哀想なものを見るような目でつい見てしまう

海賊だからいいかもしれないが何せキャプテンは世界で最も自由だった男に可愛がられ育った存在だ

そんな世界で最も自由だった男に育てられた男はそれはもう破天荒に育ってしまった

好奇心旺盛なことによりキャプテンは無傷で生還していたがクルーたちは全員満身創痍……なんてことはよくある事だ

しかも本人の放浪癖が原因で船を開けることも日常茶飯事

これから新世界に向かうということでいつもよりもより一層キャプテンへの監視を強めたことで今のところ何も問題は起きていない

"今は"だが

そのせいかキャプテンは今日不機嫌めだ

少し命の危険は感じるが問題を起こされて海軍大将を呼び出されるよりかは圧倒的にマシだ

キャプテンには悪いがこのまま大人しくしていてほしいものだ

それからローは一通りシャボンディ観光(監視付き)を終え、今からドフラミンゴが経営する人間屋に向かう

もしもの時のためにクルーは最小限の人数しか連れていかなかった

人間屋に着いたローは周りの目を気にせずにズカズカと椅子に座り込んだ

いきなり億超の賞金首で最悪の世代と呼ばれるローがやってきたことに辺りの人間たちはザワザワと騒ぎ出す

その様子にペンギンたちは心底不愉快そうに顔を顰めた

一方ローはイラつきはしつつもロジャーから"海賊は堅気には手を出さない"という教えを受けていたため手を出すつもりは毛頭もない

ちなみに海軍は堅気だが手を出していいの?と言う幼きローの疑問にロジャーは"海軍はいくら叩いても湧いて出てくるから大丈夫"との教えているからかローは海軍は容赦なく叩き潰すようになった

少々目線が鬱陶しいもののローは平静を装う

そして後ろのドアが開き、そこから同じ最悪の世代と謳われるユースタス・キャプテン・キッド、殺戮武人キラーがやってきた

ローはなんか目線で舐められた気がしたからかキッドに向け堂々と中指を立てた

キッドは笑っていたがローのクルーは内心冷や汗ダラダラだった

ローはこう見えてかなり短気で喧嘩っ早い

今この状況で暴れられたらどうしようもない

「キャプテン分かってます?"ここは"ドフラミンゴの管轄なんですから」

「……分かってる」

ペンギンは少し不安になりローを窘める

ローはムッとしたがペンギンの言うことは最ものため渋々中指をキッドから下ろし前を見定める

ペンギンはローの喧嘩っ早やさにげんなりしつつ心の中で"うちのキャプテンかっけぇ!"と思っていた

「さぁ皆様!!お待たせ致しました!」

遂に廻り始めた運命の歯車

1つ目の歯車は攫われた友を救いに空を飛び

2つ目の歯車は胸に凶暴性を潜め始まったショーを見ている

3つ目の歯車は不穏分子が支配している操り人形が繰り広げる哀れなショーを冷めた目で見つめていた

カチリ、カチリと正しく廻っているように見える回路

だがそこに"11個の歯車"が少しづつ、少しづつ他の歯車を巻き込んで自分のペースに進めていく

そして、今ここに決して合わないであろう歯車が揃い……世界を混乱に巻き込んでいく

このシャボンディでの一幕はこれから始まる新時代の序章に過ぎない


ローとキッドはそれぞれ非常につまらなそうに始まったショーを眺めていた

ローは腸が煮え返る思いをしていた

ローは自由をこの上なく愛している

自由を愛しているからこそ、自分の自由も、相手の自由も奪いたくはないのだ

その思考はルフィに少し似ていた

自由を邪魔するものには抗うが支配はしない

こんなローだからこそ、ハートのクルーはローについて行くと決めた

それまで普通に進行していた競りは一気に盛り上がる

その理由は

「人魚の……ケイミー!!!!」

パッ!!と照明がケイミーに集中する

麗しい若い人魚の登場に会場の熱気は高まる

人魚の価値がどれだけ高いのかローは分からないほど無知では無い

ただ、陸に上がり人間の醜い欲に晒されるうら若い人魚に哀れみの念を向けた

誰があの人魚を買うのかをせめて見守ろうとローは決めた

だがケイミーの買い手はこの世で最も最低最悪の相手だった

「5億ベリーで買うえ〜〜〜〜!!!!」

ローは目を見開く

天竜人がいることはとっくに知っていたがまさか人魚を買うとは思いもしていなかった

つい歯をかみ締めてしまう

ローは天竜人が世界政府と同じぐらい大嫌いだ

支配を嫌うローにとって支配の権化とも言える天竜人など反吐が出るほど気に入らない

「……キャプテン何をするつもりですか」

付き合いの長いペンギンはローのしようとしていることを瞬時に察していた

気持ちはわかるがここはドフラミンゴの経営する人間屋であることに加え天竜人までいるのだ

ここで暴れられたら溜まったものでは無い

そんなことぐらいローだって分かっている

「……悪い。ペンギン、シャチ、ベポ」

「それでもおれはもう……限界だ」

そう言ってステージを見るローの瞳はギラギラと輝いて今にも飛び出しそうな気迫だった

そんなローの様子にペンギン、シャチ、ベポはため息を吐いたあと「仕方ないなぁ」と肩を竦めた

「ま、おれもそろそろムカついて来てたんでちょうどいいっすね!」

「シャチ……お前はただ暴れたいだけだろ……」

「ありゃ、バレちまった?」

「……?キャプテン。なんか変な音がするよ」

「音……?」

そして見聞色の覇気で何かがここに勢いよく近づいていることに気がつく

「うわぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

ドガーン!!!!!

「なんだっ!?」

人間屋の天井をぶち破り何かが降ってきた

その正体は

「なんだお前!!!もっと上手く着地しろよォ!!」

「出来るかぁ!!!トビウオだぞ!!!あんたが突っ込めって言ったんだろ!!」

空から降ってきたのは世間を騒がし続けている海賊"モンキー・D・ルフィ"

予想だにしていなかった者の乱入にローはニヤリと楽しそうに嗤った

「……ハハッ!!」

───ああ!!やっぱりお前はそういう奴だよなぁ!!麦わら屋!!

(((キャプテン楽しそうだなぁ……)))

そしてあまりのつまらない茶番に耐えきれなくなったキッドたちもルフィの登場に悪どく笑いここに留まることを決めた


遂に交わる3つの新時代の象徴

この歯車が集まることにより始まる時代は救いか、滅亡か……

それを知るのは、たった1人の"創作者"しか知らない


「ケイミー!!」

ルフィはケイミーを助けるために階段を駆け下りていく

でも階段を駆け下りていくルフィを誰かが止める

(……?あいつ……)

ローは医者であるからこそ、ルフィを止めている人物が"人とはどこか違う"ことを一目で見抜いていた

そしてその人物は服から複数の手を出した

その瞬間

「嫌ァァァァァァァ!!!」

その正体は魚人族だった

誰かが悲鳴を上げ、それを皮切りにハチを罵る者が増えていく

「魚人族……!?なんでここに……」

ペンギンは純粋な疑問を呟いた

「……キャプテン?」

ベポはローの様子がおかしいことに気がついた

「ハァ……ハァ……」

ローは浅く息を吐き出し手が震えていた

未だにハチに向けられている罵倒が……見覚えがありすぎるのだ

かつてホワイトモンスターと言われ、忌み嫌われていた自分と

"きゃあああ!!!ホワイトモンスター!!"

"早く死んじまえ!!"

忘れていた恐怖が今、ローに重くのしかかっていた

遂には物まで投げつけられる始末

───嗚呼……頼む……もう、やめてくれ……っ!

ローは耐えられなくなり耳を塞いで目をギュッと閉じた

そしてペンギン、シャチ、ベポはローがかつてホワイトモンスターと罵られ迫害されていた過去について思い出した

「キャプテン……!!落ち着いて……!」

「キャプテン!」

「ベポ!キャプテン抱きしめてやれ!」

シャチの言葉にベポはローをキツく、強く抱きしめる

そこまでされても尚、ローの頭の中に消えない罵声が響き渡る

「違う……!おれは、化け物なんかじゃ……!!」

「そうだよ……っ!キャプテンは化け物なんかじゃないよ!」

「そうですキャプテン!!正気を保って!」

「おれたちが付いてますから……!」

それでもローの息遣いは荒いまま

あまりに酷い精神状態故、ペンギンたちは今すぐここから離れようとする

でもこの騒ぎの中抜け出すことなど不可能だ

ローの能力があれば直ぐにぬけだせるものの当の本人がこの精神状態では意味が無い

少しづつペンギンに焦りが募っていく

「……なんだぁ?」

そんな様子のおかしいハートの海賊団に気づいたキッドとキラーは怪訝そうにローたちを見ていた

バァン!!!

「ヒュッ!」

銃の発砲音にローは過剰に反応してしまった

普段のローなら銃を撃つ音にここまで過剰に反応することは無い

けれど反応してしまったわけはローの精神状態が極めて悪いことによるものだ

さらに最悪なのが、ローが音に反応してハチの方に目を向けてしまったことだ

ハチは血を流し地に倒れ伏している

「ぁ……ああ……」

その光景が、11年前の"あの島での出来事"にそっくりだった

「ヒュー……ヒュー……」

ローの呼吸音はか細くなり過呼吸になっていく

「キャプテン!!見ちゃダメです!!」

「キャプテン……!息を、息を吸って!!」

「キャプテン……!」

ドン!ドン!ドン!

ローは焦点の合わない瞳で音の発信源を見る

ステージに上げられている人魚が水槽を思い切り叩きつけていた

何かを叫んでいるようだが、声は届かない

泣き叫んでるのに、聞こえない……

「い、やだ……ヒュー……もう、やだ……っ!」

似ている……似すぎている

まるであの日を劇団にして見せられているような気分だ

───たのむ……もうやめてくれよ……っ!

タコの魚人がルフィに何かを話している

だが今のローには内容なんて理解できない

今ローの心を占めているのは一生消えることの無いトラウマだ

「ぅっ……ひぐっ……」

「キャプテン……」

収まらない激情が涙となって溢れていく

ペンギンたちはキャプテンが苦しんでいるのに何も出来ないことに悔しさから歯をかみ締めてしまう

ゆっくり、ゆっくりとルフィは天竜人に向かっていく

その瞳は怒りに満ちギラギラと煌めいていた

「麦わら……?あいつ、何する気で……」

「本気か!?」

その気迫からチャルロスは少しよたつきながら銃を撃つ

だがそれをほんの少しの動きだけで避けたルフィは「うああああああああ!!!!」

思い切り天竜人"神"を殴り飛ばした



───闇が晴れていく

ローはルフィを唖然と見詰めた

あの日、自分は無力で死にゆくあの人に何もすることが出来なかった

馬鹿馬鹿しいと自分でも分かっている

それでも、神の天敵"Dの一族"が神"天竜人"を殴り飛ばす様は……

ローにとって救いの光のように見えてしまった


しばらくの間ローはただルフィを見つめていた

ルフィの行動はかつて自分が出来なかったことを代わりに成し遂げてくれたようなものだ

それに加えルフィは"Dの一族"だ

かつてコラさんが言っていたことをローは思い出す

『Dは必ずまた嵐を呼ぶ』

───コラさん……ほんとうに、Dの一族が嵐を呼んだよ

「逃げろ外へぇ!!」

ローはハッと周りも見渡した

人間屋にいた人間が全員外へ逃げようとしていた

そこでようやくローは正気に戻る

「キャプテン……大丈夫?」

「ああ……悪いなお前ら……少し、取り乱した」

ローは軽く頭を振り改めて乱闘する麦わらの一味をじっと眺めた

麦わらの一味は傍から見てもかなり強くて苦戦しているようには見えなかった

緑頭の剣士が斬撃を飛ばし敵をなぎ倒したのと同時にケイミーの水槽を切った

「なんだあいつ……すげぇ」

シャチは純粋に感嘆の声を漏らした

「麦わらの……ルフィ……」

「……!」

ローは何かを感じとりパッと上を見上げる

なんだなんだとペンギンたちが空を見上げた瞬間天井を突き破りトビウオが数匹やってきた

トビウオの背から女が1人骸骨が1人飛び降りてきた

「が、骸骨が喋ったァ!?」

「なんだあの一味!?」

「しかも強いぞ……!?」

3人とも麦わらの一味の特殊すぎる集まりに脳がパンク寸前だった

「……あ?」

ローは見聞色の覇気により天井に誰かいることを察したが叫び声が聞こえ咄嗟にそこを目を向けると長い鼻をした人間が落ちてきた

そしてそのまま天竜人を下敷きにし、ローは耐えきれずに少し笑ってしまった

「急がないと軍艦と大将が来ちゃう!!」

その言葉にローはもう手遅れだな……と思っていた

見聞色の覇気によりもうここが海兵に取り囲まれていることは分かっている

とっとと脱出すれば良かったけれどローはトラウマを刺激され脱出するタイミングを完全に逃してしまっていた

別に能力を使えば簡単に脱出できるがローはなんだかこの一味のことを放っておけなくて忠告してやることにした

「海軍ならもう来てるぞ……麦わら屋」

「なんだお前!……なんだそのクマ」

「奴らならオークションが始まる前からずっとこの会場を取り囲んでいる。この諸島に本部の駐屯所があるからな」

外で騒ぎが起きているのを見聞色の覇気で把握しつつ話を続ける

「誰を捕まえたかったのかは知らねぇがまさか天竜人がぶっ飛ばされる事態になるとは思わなかったろうな」

「ふっはは!面白いもん見せてもらったよ麦わら屋一味」

「あなた、トラファルガー・ローね。ルフィ、海賊よ。彼」

ローの人相にビビっているのかウソップとブルックは少し冷や汗をかいて遠巻きに見ていた

「それに、あそこの彼は"ユースタス・"キャプテン"・キッド」

だが少し目を離した隙にもう1人の天竜人はケイミーに銃を向けていた

止めようとした支配人が撃たれ、遂にケイミーが撃たれようとしたその瞬間

ぶわぁん!!

女の天竜人が唐突に気絶した

気がついたら壁を破られており更にそこから巨大な巨人が現れた

止まらない緊迫感の中で白髪の老人は会場を眺める

どうやらこの老人は金を手に入れるために態と捕まっていたようだ

ローは冷や汗をかきつつも何処かあの老人に既視感を覚えていた

見聞色の覇気からあの老人が只者ではないと察している

それでもなぜ既視感を覚えているのかは分からずにただ困惑していた

「……つまり、なるほど。事情はわかった」

「全く酷い目にあったな。ハチ。お前たちが助けてくれたのか……さて」

老人が一睨みした瞬間、その場にいた海賊たち以外全員いっせいに気絶した

「……!!まさかっ!」

ローはその覇気にようやく、老人の正体を察した

───なんで、この人がここに……!

「その麦わら帽子は精悍な男に良く似合う。会いたかったぞ。モンキー・D・ルフィ!」

「それに……」

レイリーは麦わらの一味以外の海賊の顔を把握しようとローの方に顔を向けた瞬間、信じられないものを見るように目を見開いた

手が震え、瞳孔も揺れていた

あまりに様子のおかしいレイリーの姿に疑問を覚えた一味はレイリーが向ける視線を辿った

そこにはレイリーと同じように目を見開き口をわなわなと震わせているローの姿が目に入った

「……ロー?」

レイリーはかつて手配書で見たローと瞬時にわかった

ローの手配書が発行されてからはレイリーはずっとローのことを気にかけていた

白ひげからローの話を聞いた時は、嬉しさのあまりつい涙が溢れてしまったほどだ

それ程までに想っていた子と、こんなところで会うなんて思いもしていなかった

「どうして……ここに……」

レイリーのそんな様子にロビンやキッド、キラーの冥王レイリーを知る人物からローはレイリーと知り合いなのかと怪しむように眉を上げた

わなわなと口を震わせていたローが遂に、口を開いた

「冥王レイリー……?まさかっ!」

唐突に落とされた爆弾はレイリー含め、この場にいる全員に直撃することとなる



遂に幕が上がった舞台

これから世界は波乱に飲まれ、旧時代は終わりを迎える

これから始まるは新しい時代を担う者たちの新時代だ

時代のうねりは確実に少しずつ……少しずつ……

種を蒔いて花が咲くのを今か今かと待っている


ローの口から落とされた爆弾は無事、レイリーに直撃した

もちろんレイリーの他にも爆弾は直撃していた

「……?」

ローはロジャーの航海日誌に書かれている出来事は全て黒歴史ではないと認識しており何故みなが固まっているのかを理解出来ずに頭に「?」を浮かべていた

その後ろでペンギンたちは「あちゃ〜」と言わんばかりに額を抑えていた

「ちょっっっっと待ってくれ!!ロジャーおじ様だって!?一体どういうことだロー!!」

「?????ロジャーおじ様はロジャーおじ様だろ」

「そういうことじゃない……っ!!!」

レイリーは遂に頭を抱えてしまった

そしてペンギンはローのあまりの天然さにレイリーのように頭を抱えてしまった

「キャプテン〜……今ここでキャプテンが海賊王の知り合いってバレたらマズイと思うんですけど……」

コソッとシャチはローに耳打ちをし、今バレてら大変なことになると遠回しに伝えた

「……あっ」

しまったと言わんばかりにローは口を押え気まずそうに辺りを見渡した

「これ言っちゃ不味かったな……よし」

「今の、無しだ!!!」

「「「「「はぁ〜!?!?!?」」」」」

一同は口が地面にめり込むんじゃないかと思うぐらいに大口を開けた

麦わらの一味はこのやり取りになぜの既視感を覚え思い返してみるとそういえばガープが同じようなことを言っていた

(((キャプテン〜!!!!!)))

ペンギンたちはそれはもう焦った

ローは割と天然バカであるけどロジャーの影響からか分からないがたまに言ってることがめちゃくちゃになることがある

ロー曰くロジャーおじ様の方が酷かったとの事だ

「ロジャー……おじ様はとにかく!!それどこで知ったんだ!」

「ロジャーおじ様の航海日誌」

「ロジャーァァァァァァ!!!!!!」

(((キャプテンのバカァァァァァァ!!!)))

ペンギンたちは尋常じゃないほどの冷や汗をかき心の中で己のキャプテンを罵倒した

「キャプテンのバカ!!馬鹿正直に話します普通!?」

「あぁ!?誰がバカだ!!!」

「あんた以外に誰がいんですか!!!」

「ペンギンもキャプテンも落ち着けって!!」

「喧嘩はダメだよ〜!」

カオスである

レイリーは膝から崩れ落ちロジャーへ呪詛を吐いておりハートのクルーは何やら喧嘩している

状況についていけずに立ち尽くすキッド海賊団と麦わらの一味

お互いの海賊団は見つめ合い謎のシンパシーを感じた

そして、2つの海賊団の考えは一致した

(((((これ、どうやって収集つけるんだ……?????)))))

至極真っ当な意見である

ぶっちゃけるとキッド海賊団と麦わらの一味はローの無自覚爆弾に巻き込まれただけの被害者だ

だがローに航海日誌を託したロジャーが悪いので文句は地獄にいるロジャーに言って欲しい

「……と、とにかく、お前が無事で良かった……ロー」

「……」

何とか黒歴史暴露のダメージを乗り越えレイリーは真っ直ぐローの瞳を見つめる

その暖かな瞳にいたたまれなくなったローはサッと目を逸らした

レイリーは見守れなかった愛し子の成長に目を細め微笑んだ

「あ、ああ〜とりあえず、2人はどう言う関係で……」

ウソップが怖々と声をかける

「ああ。済まないね。そうだな、私は……ローの叔父のような存在だと思ってくれて構わない」

「おっ!?」

「はぁ!?」

全員信じられないような目でローとレイリーを見た

突然もう1人叔父のような存在が生えたがローは"まぁロジャーおじ様が叔父ならその右腕のレイリーが叔父でもいいか……"なんて軽く考えていた

よく考えなくても海賊王とその右腕の保護下に置かれるということがどれだけのことか正確に理解出来ていないのは些か……というか本当にマズイ

感覚が全てロジャーによって培われたローの感覚はそれはもうバグっていた

ローにとっての普通は他の人からしたら「いや、そうはならんやろ」ってなるレベルだ

切実に彼に普通とは何かを教えてやって欲しい

「って!そんなことはどうでもいいんだよ爺さん!早くケイミー助けねぇと!」

「いやそんなことじゃねぇだろ!!!!」

だがここにも1人。ローと同じく感覚が人と違う人物がいた

「ん?ああ。悪いな。今彼女を助けよう」

そう言ってレイリーは軽くローの頭を一撫でしステージに戻った

ローは唐突に撫でられたことに「?」を浮かべていたがロジャーがよく頭を撫でていたし白ひげもシャンクスもよく頭を撫でてきたことにより海賊王のクルーはそういうものなのかと思った

勘違いである

「今から首輪を外すよ。いいかね娘さん」

「おいおい爺さん!無茶すんな!爆発しちまうよ!」

奴隷の首輪が爆発するところを間近で見たものたちはレイリーがすることに危機感を覚えていた

「いいのかルフィ!?」

だが他のみんなはジッとレイリーの行いを黙って見ていた

そんな中ローはレイリーなら大丈夫だろうと思っていた

実際昔ローが人攫いに捕まり同じような首輪を付けられたときにロジャーが人攫い集団を壊滅させたあと首輪を外してくれたことがあった

ロジャーと同じレベルの実力者なら出来るだろうと確信していた

ピッピッピッピッ

爆弾が甲高い音を鳴らし始めた

麦わらの一味は慌てていたが、観覧しているキッド、ローは笑って眺めていた

「ケイミ〜〜〜!!!!!」

だが麦わらの一味の心配は他所にレイリーは見事ケイミーの爆弾を外して見せた

やっぱりな……とローは頬杖をつきステージを改めて見直した

昔ロジャーが教えてくれた"流桜"という覇気の一種を使ったのだろう

自分も少しだけだが流桜を扱うことは出来る

とは言ってもロジャーとレイリーのように完璧に使いこなせるのは思っていない

(おれも、まだまだだな……)

ローはそっと目を伏せフッと笑った

レイリーは階段をゆっくりと登ってくる

「悪いなロー。まさかお前がいるとは思っていなくて覇気をぶつけてしまった」

「かまわねぇよ。おれもおれのクルーもなんともねぇ」

「それは良かった」

「おいおれはいいのか」

「ん?ああ。君も悪かったね」

ローと比べそれなり乱雑に扱われたことにキッドは青筋を浮かべたものの直ぐに落ち着きを取り戻し

「まさか。こんな大物にここで出会うとは。冥王シルバーズ・レイリー……間違いねぇ。こんなところに伝説の男が」

「この島じゃコーティング屋のレイさんで通っている。下手にその名を呼んでくれるな。もはや老兵……平穏に暮らしたいのだよ」

ハチの元に辿り着きその場に膝を着く

「死にはせんなハチ。昔からあれほどこの島を歩いてはいかんと言っておるのに」

「にゅ〜……すまねぇ……」

「ありがとう君たち。私の友人を救ってくれて」

「でぇ、おっさん。おれに会いたかったってなんだ?」

「うん。話はあとにしよう。まずはここを抜けなければな」

話を終えたレイリーは立ち上がり外から海兵の警告が聞こえてくる

「おれたちは巻き込まれるどころか完全に共犯者扱いだな」

「麦わらのルフィの噂通りのイカレ具合を見れたんだ。文句はねぇが今と大将とぶつかるのはごめんだ」

文句を言っているように見えるが実際はかなり楽しげだ

なんだかんだローもキッドも変わり者であることに違いない

「ああ。私はさっきのような力をもう使わんので君ら頼むぞ。それとローは無理をするなよ」

「おれは子供か」

自分だけ心配されたことにローはムスッとしたがここを囲んでる程度の海兵なら直ぐに片付く

レイリーがローに対し若干過保護なのは今までの出来事を振り返ると仕方の無いような気がするので多少は許してやって欲しい

「年寄りの世話になるつもりはねぇよ。長引くだけ兵が増える。先に行かせてもらうぞ。物のついでだお前ら助けてやるよ。表の掃除はしといてやるから安心しな」

「「あ"ぁ!?」」

((ああキャプテン……))

ペンギンたちは自身のキャプテンの沸点の低さに絶望した


表にいる海兵たちは争いながら出てきた3人の船長を目の当たりにすることになる

「お前ら引っ込んでていいぞ!」

「おい聞いてんのか!?お前ら2人に引っ込んでろって言ったんだ!」

「もう一度おれに命令したらお前から消すぞユースタス屋」



ついに揃ってしまった3つの歯車

これから始まるのは混乱かはたまた……

確実に言えることは、ここが運命の分岐点だったことだろう

そして3つの内2つの歯車はこの後直ぐに巡り会い、共に世界ひっくり返す駒となる

それが示すのは秩序か、混沌か……

世界の異分子はこの時から着実にその蕾を開花させようとしている

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