黒ノースリーブ
20220306「デカくなったよな」
ベッドの上、覆いかぶさられ見下ろしてくる視線と感心しているようなバズの口調に、カッと体温が上がり自分の耳まで赤くなるのが分かる。
どこを見て感心しているんだとか、いつと比べてるんだとか色々言ってやりたいが、声を上げれば過剰に反応してしまいそうで口を噤む。
バズに押し切られた着せられた見覚えのある黒のノースリーブ。
その袖口を引っ張られて胸元の間で布地が寄せられる窮屈さと、肌に空気が触れてソコをどんな風に露出しているか分かって居た堪れない。
「おい、ちゃんと喋るかコッチ向けよ」
両腕で顔を隠しているんだ、見られたくないと分かりやすく行動で示しているんだから少しは考慮しろ。
大体声が笑ってる。
顔を隠してる理由なんか分かっていて話しかけるのは卑怯じゃないのかバズ。
大体こんな服どこで買ってきたんだバズ。
手袋まであるのになんでズボンは無いんだバズ。
着せられる最中に投げかけた質問はまぁ気にすんなの一言で流された。
大体ダメか?なんて今まであんな風に甘えるみたいな態度なんて一度もしたこと無いくせにこんな時ばかり。
頭を中をグルグルと不満が回る。
出来るだけ今の状況を意識したく無いのに、布地を纏めていたバズの片手が肌に触れる。
熱を持った手のひらを心音でも確かめるようにベタリとおいて、それから女性の乳房を揉むように皮膚全体を揉んでくる。
男の胸元だぞ、揉むようなものはついてないんだぞ。
「っバズ」
「あんだよ喋る気になったのか?まぁ無理に喋んなくていいぞ、お前は体の方が分かりやすい」
今度は両手で胸元を揉まれる。
「自分から俺の腰に乗って動くのも、美味そうに俺のチンコも咥えるのも得意なくせに、恥ずかしがるふりもうめぇな」
「ふりじゃなっやぁッ」
「あぁ乙女の真似でもしてたか?まぁこんだけ変わらずピンク色してんだ慣れてませんって気取ってもいいけどよ、その割には育ち過ぎだろ」
「ッ変わらずとか止めろいつと比べてるんだ思い出が汚れッ」
あまりの言い分に腕を解いて顔を上げるれば思っていた通りニヤニヤとコチラを見下ろすバズと目が合う。
そして、一緒に視界に入るのは、たわんだ黒い布地とズラされて露出した肌と直接は触られていないのにピンと立ち上がった自分の胸先。
「そりゃこの格好してた時に決まってんだろ、なんで同じもん着せたと思ってんだユーゴー」
「ッッバズっ一度やめようッ」
本当に止めよう、だってあの時はこんな関係じゃなかった、本当に純粋に友として。
自分達の関係が変わる前の思い出はいつだって、苦い感情と哀愁だけだった。
それがこんな、言葉にしずらく、そして我慢できない程恥ずかしくなってきて、バズの両腕を掴んで止めようとしたら、目の前で左胸をしゃぶられた。
黒の布地と伸ばされたバズの厚みのある舌がやけに目に焼きつく。
「あっんっんんん!!」
強く吸われる感覚に腰が跳ねる。
そのまま反対側もくにゅと押し潰されて撫でられて声が止められない。
着せられた時点で、このままするのは諦めて、そう諦めて受入れていていのにあの頃と変わらないバズの髪の色と纏わりつく黒の布地に感情がぐちゃぐちゃに揺すられる。
どうにか逃げようとシーツを蹴っても、いつものように甘噛みされ舐められる刺激に力が抜ける。
「ァッバズね・・っバズ恥ずかしいから脱がせッ吸うのッや」
「んっそうやってずっと俺の名前だけ呼んでろよ」
そう言ってくるバズの顔は、あの頃には想像もしたこもない笑顔で、それを可愛いと思ってしまって後悔も哀愁も思い出も奥歯を噛み締めた。