黒コビ学パロSS

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廊下に張り出された期末試験の結果に、生徒たちの間に激震が走った。なんと、常に学年一位を独占していたマーシャル・D・ティーチがついに陥落したのだ。

ティーチといえば、教師すら手のつけられない札付きの不良として恐れられているにも関わらず、頭脳明晰で成績優秀。どんな優等生もその頭脳には太刀打ちできはしなかった。

そんな彼を打ち負かしたのは、普段は学年2位〜10位の間をうろちょろしている真面目で地味な委員長。

今回の一件は、多くの生徒にとって信じられぬ事態であり、偉大なる快挙だったのだ。


喧騒も冷めやらぬ放課後、1人の男子生徒はあのティーチがピンクの髪の委員長を人気のない空き教室に引っ張り込む現場を目撃した。

かつて、委員長には不良から助けてもらった恩がある。見捨てたくはないが、一人で助けに行く勇気などあるはずもない。ひとまず様子を伺おうと、息を殺して教室の扉の隙間から中を覗き込む。そこには、目を疑うような光景が広がっていた。

窓から差し込む光を受け、一つに重なる二つの影。身を寄りそわせて、互いにきつく抱きしめ合い、口付けを交わす2人の男が、そこにはいた。

身を屈めて小さな身体を優しく抱きしめるティーチ。そして、太い首に腕を回して抱擁に応える委員長。無理強いなどではない。どう見ても、相思相愛の恋人同士だ。

長い長いキスの末に、ようやく離された唇と唇のあいだから、粘ついた唾液が糸を引く。唾液に濡れた桃色の唇をなぞりながら、ティーチは低く囁いた。

「このおれを負かすなんざ、よくやったじゃねェか、コビー。こりゃあ、たっぷりご褒美をくれてやらねェとな」

ただ盗み聞きしているだけで腰が砕けそうなほどの艶っぽさを含んだ、その声音。そんなとんでもない声を耳元に受けてもなお、委員長は微塵も動じることなくおかしそうにくすくす笑った。

「なんだよ」

「いや、だって……。前までは成績悪かった罰とか言って僕のこと好き勝手してたのに、今度はご褒美だなんて言い出すから。結局同じじゃないかって思って……、んっ」

堪えきれずにけらけら笑うその口元を、面白くなさそうに眉を顰めたティーチが再び塞ぐ。ねっとりと舌を絡ませ合いながら、不埒な手が委員長の小ぶりな尻をいやらしく揉みしだく。

「んんッ、……んぅ、ぁん!……こら!学校じゃだめっていつも言ってるじゃないですか!」

「もう放課後だし構わねェよ、なあ、いいだろ?」

「絶対だめ!誰かに見られでもしたらどうするんです!校内の風紀が乱れます!!」

「チッ、お固ェこった」

つまらなそうに舌打ちするティーチに、委員長は顔を赤らめて彼の着崩した制服の裾を控えめに引いた。

「……………そ、その代わりってわけじゃないですけど、あ、あの、今日、僕の家、誰もいないんです」

そして、大きな身体をぐいっと引き寄せ、彼の耳元に唇を寄せる。

「僕、あなたに勝つためにすごく頑張ったんです。……………だから、いっぱいご褒美くださいね?」

遠くからでもはっきりと聞こえた、吐息混じりの囁き。普段の真面目な委員長からはかけ離れた、熱っぽい情欲の滲み出た声色だった。

「……………やっぱりここで一発ヤってかねェか?」

「だからだめだって言ってるでしょう!ほら、帰りますよ!!」

顔から湯気を吹き出しそうなほど真っ赤になりつつも、委員長はティーチを引っ張ってずんずんと歩き出した。

慌てて身を縮こめるも、2人はこちらと反対方向の出入口から出て行った。ほっと胸をなで下ろしながら、自分よりも一回り以上も小さな青年に、無抵抗で引きずられていく大きな背中を覗き見る。

その時、こちらを振り向いた鋭い眼光が、全身を射抜いた。

思わずあげそうになった悲鳴を必死に押し殺して、べたりとその場に這いつくばる。


あの様子だと、奴は最初から気付いていたのだ。こちらの存在に。

強烈な殺気に当てられ、全身からどっと冷たい汗が噴き出してくる。乱れた呼吸を整えながらも、脳裏をよぎるのは地味で冴えないと思っていた委員長の、媚態めいた仕草、表情。そして、欲情に掠れた、まるで男に媚を売るような甘い囁き。

これは夢だ、何かの間違いだ。そう思いたくても、あの甘い声が、耳にこびりついて離れてくれそうになかった。


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