黒に染まるZ-ERO
「ぐわあああっ!!」
夜の港湾地区に鈍い破壊音を響かせて、試作型鋼鉄乙女Z-EROが宙に舞う。
「キャハハハ!どうだァZ-ERO、これがウチらの最新機体、ヴォーディガンズ・ギルカスタムとIW・B.B.Cの力だっつーノ!」
Z-EROと相対するのは2体の違法改造鋼鉄乙女。1体はヴォーディガンズ・ギルカスタムと呼ばれた、身の丈程はあろうかという大刀を構えた個体。もう1体はそのギルカスタムを高らかに誇示する、違法改造素体がエズロースキン・カスタムされた個体だ。
「最新機体だと!?」
「お前らの戦闘データをフィードバックしてンのが企業だけだと思ってんのカ?ウチらもお前らのデータを解析して再現しようとしてんダよ!そしてこいつは対Z-ERO用に調整・ロールアウトした個体…今までみたイには勝てネーって事だよ!」
エズロースキンカスタムが言う通り、ヴォーディガンズ・ギルカスタムは今まで戦ってきたどの刺客よりも圧倒的に強い。現に、Z-EROはギルカスタムを前になす術なく防戦を強いられている。
「く……はぁっ!!」
「……」
ローラーダッシュで距離を取りながらジャンクパーツで組み上げられたヴァストヴァルカンを掃射するZ-ERO。だがギルカスタムはB.B.Cを盾代わりにZ-EROを上回る速度で接近し、
「ごはっ……!」
ぐしゃり、と。まるでアルミ缶を踏み潰すように、B.B,Cがヴァストヴァルカンを破壊する。ひしゃげた胸部装甲は剥がれ落ち、Z-EROと共に倉庫の壁に叩きつけられて散乱する。
「Z-EROっ……「おオっと」がはっ!?」
Z-EROの元へと駆け寄ろうとするマスターも、エズロースキンにより地面へとうつ伏せに引き倒される。
「やめろ、そいつに手を……ごおっ!!」
ダメージを負いながらもマスターの身を案じるZ-ERO。しかし、ギルカスタムが無慈悲にB.B.Cを鼠蹊部に振り下ろし、防護パーツを元のジャンクへと戻してしまう。
「さーテ……お前みたいなザコが、今までアタイ達によく歯向かってこれたね。その根性と、まぁ技術も誉めてやルよ」
「クソッ、Z-ERO、お前だけでも逃げ」
「うるッせーな!あーやっぱオ前、アタイ達に逆らった罰ヲ与えてやんナいとだな」
マスターの頭を地面に叩きつけてZ-EROに向けて叫ぶ声を遮り、エズロースキンが処刑の宣告を始める。
「罰、だと……?」
「お前、壊れた物を直すのガ得意なんダよな?だから……お前の一番大事な物、目の前で壊シてやるよ♪ギル、やりな」
合図を送られたギルカスタムは頷きを返すと、角からエネルギーを放射してZ-EROの身体を拘束する。上半身は両腕を身体の左右にピッタリとつけ、胸を下から持ち上げるようにエネルギーの鎖が巻きつく。下半身は逆に足を大きく広げた状態で固定され、閉じる事が出来ないように縛られる。
「くっ……この……!」
「……」
拘束から逃れようともがくZ-EROだが、戦いで消耗し出力の低下した彼女では身を捩る事しか出来ない。その様子を見下ろしながら、ギルカスタムはB.B.Cの形態を変化させる。
「……なん、だよ、アレ………」
刀身が変形・展開した後に出て来たのはIW・T.N.Pを彷彿とさせる武装。だが、今まで対峙して来たそれとは比べ物にならないサイズだ。
「よーく見とキな?オ前の愛しのZ-EROがアレでめちゃくちゃにさレる所をな♪」
「なっ……!?」
「やめろっ、来るなぁ!」
身を捩らせて必死に抵抗するZ-EROに歩み寄るギルカスタム。Z-EROの開かれた股間に巨大なT.N.Pがあてがわれ、
「お゛っっっ!!??」
ピストン駆動により勢いよく秘所をこじ開け、Z-EROの奥を貫いた。その衝撃は今までの戦闘で受けてきたどの攻撃よりも重く、Z-EROはたまらず身体をのけぞらせて声を上げる。
「あっハは!いいザマだぜ!」
「……抽送開始」
「お゛お!?ごっ!があぁ!」
だが、破壊はまだ始まったばかり。ギルカスタムはB.B.Cの持ち手を操作し、大型T.N.Pを駆動させて何度もZ-EROの中を行き来させる。
「Z-ERO!しっかりしろ!負けちゃダメだ!」
「そウだ、お前に一つB.B.Cの事を教エてやるよ。アレが特別なのはサイズだケじゃあない、接続した鋼鉄乙女にN.T.Rパルスを送りコめる優れ物なのさ」
「っ……」
N.T.Rパルス。それは、本来なら据え置き型の大型設備から送られる、違法ナノマシン「Sv.Zl」を活性化させメモリハッキングを円滑に進める為の信号。それが体内に除去しきれないSv.Zlを抱えるZ-EROに流し込まれればどうなるか。
「あ゛っ!が♡は♡うああ!」
(まずい!体内のSv.Zlが活性化♡ダメージ信号が、快感に書き換えられぇ♡)
その影響は程なく、Z-EROからの嬌声という形で表れる。表情の歪みも徐々に、苦悶から快楽へとその様相を変化させていく。
「しっかりするんだZ-ERO!負けちゃダメだ!」
「おお゛♡ほごぉ♡おほ♡ぉ♡」
(らめっ♡大きいの♡気持ちよくて♡抵抗できないっ♡)
「無駄ダよ。もうお前の声なんテZ-EROに届イてねーよ。そうだギル、折角だカらB.B.Cの具合を喋ラせな!」
「了解」
B.B.Cの持ち手にマシンアームを接続するギルカスタム。N.T.Rパルスの指向性を操作し、Sv.Zlを介してZ-EROの発声回路を無理矢理起動させる。
「み♡見ないでくれぇ♡デカいのずんずん♡奥にぶつけられるの♡気持ち良いぃ♡」
それは、実質的な敗北宣言。体内を蹂躙する大型T.N.Pに対してZ-EROは抵抗するどころか既に受け入れてしまっていた。
「……ぜ、Z-ERO………」
「はっハぁ、あのZ-EROがいとも簡単に堕チるとはねぇ。そうだZ-ERO、コイツのモノと比べてどッちが好みだ?」
「にっ♡人間とのっ♡性交は♡未経験だがっ♡絶対こっち♡こっちの方がいいに決まってるぅ♡」
「あっはハはは!おいオいマジかよ!?お前アイツ使ウ前から鞍替えされテやんの!」
「………………やめろ、もう、やめてくれ……………」
もし仮にこれが強制的に発言させられた物だったとしても、その浅ましい姿と言葉はマスターの心を折るには十分過ぎた。力無く項垂れそうになるが、エズロースキンが髪を掴んで持ち上げるため目を逸らす事すら許されない。
「それジャあギル、Sv.Zlをブチまけてヤんな!」
「ダメだっ♡それされたら♡私が消えちゃう♡気持ちいいので私♡上書きされちゃうのぉ♡」
「了解。放出準備開始、標的固定」
Z-EROの懇願も虚しく、T.N.Pの先端がしっかりと奥に押し付けられ。
「射出」
「イグゥ〜〜〜〜〜ッ♡♡♡♡♡」
「Z-EROぉーっ!!!」
大量のSv.Zlが、Z-EROを犯し尽くすべく放出された。それはZ-EROの腹部タンクを膨らませてなお体内を暴れ回り、その肌を薄黒く染め上げていく。
(あれぇ♡何か聞こえるけど♡何だっけ♡メモリ♡気持ちいいのでいっぱいで♡削除しちゃったぁ♡)
頭からショートした電流を迸らせ、Z-EROの回路侵食が雪崩の様な勢いで進む。マスターと共に築いた防衛プログラムすら、阻む事も出来ずに消去され蹂躙されていく。
「全弾放出。刀身過剰熱量確認、停止冷却措置」
「おひょお♡」
挿入したB.B.Cを抜き元の大剣へと戻すギルカスタム。身体をビクビクと震わせるZ-EROに、最早戦う意志も気力も無い事は誰の目にも明らかだ。
「さアて、仕上げだナ」
「がはっ!!」
マスターの脇腹を勢いよく蹴り飛ばし、エズロースキンはZ-EROに歩み寄るとゆっくり身体を抱き起こす。
「おオーい、Z-ERO?まさかトは思うが、本当に壊れてネーよな?」
「う♡あ……♡」
頬を軽くパシパシと叩かれ、Z-EROはゆっくりとした反応を返す。瞳はとろりと熱を帯び、愛しい者を見つめるかのようだ。
「よしヨし、Z-ERO、お前の使命ハ?アタイが誰か分カるかぁ?」
「わた、しの指名、は、あ♡組織、対し、て?ちが、該当メモリ、検出不可♡」
「マだ定着してねーか。寝ぼケてるお前も可愛イな……ちゅう♡」
「んむっ……♡」
怪しげな笑みを浮かべ、Z-EROに唇を重ねるエズロースキン。瞳が怪しく明滅し、Z-EROの回路に更なる信号を送り込む。
「ちゅぱ♡れろぉ♡れる♡むちゅぅ♡」
「れぁ♡は♡あむ♡ちゅうぅ♡」
エズロースキンが舌を入れ、Z-EROが夢中でしゃぶりつく。先程まで敵対していたとは思えない淫らな絡み合いが繰り広げられ、Z-EROは逃れる事の出来ない奥底まで侵されていく。
「ぷハ……♡おいZ-ERO、お前の使命をモう一度言ってみな?」
「……該当メモリ検出♡」
そして。
「はい♡私は組織の忠実な駒です♡この身の全てを捧げ、組織に尽くす事こそ何より優先すべき事項です♡」
「あ……………あ…………」
先程まで互いを思い合っていたパートナーの目の前で、Z-EROは組織の軍門へと下ってしまった。
「よーし、ようやク書き換えが完了したか……。ご褒美にこイつをくれてやるよ。それともアイツの方がイいか?」
エズロースキンは自身の装備したT.N.PをZ-EROに見せつけながら、地面に横たわるマスターを親指で示す。対して、Z-EROは指された先をチラリと一瞥すると、
「? 誰かは存じませんが、私が服従したB.B.Cに劣る人間のオスなど不要です♡どうかその立派なT.N.Pをたっぷりと味わわせて下さい♡」
気にかける事もなくエズロースキンへと向きなおり、卑しい猫撫で声で懇願する。
「問題ナしと。いイぜ、その口でたっぷりと楽しみな♪」
「ありがとうございます♡はむぅ♡」
出力と携行の問題からB.B.Cには劣る、しかし男性の平均よりは確実に上回るサイズのT.N.PをZ-EROは躊躇いなく口の奥まで咥え込む。少しでも長く口に含もうと頬を伸ばしてむしゃぶりつくその様は、もはや以前の凛とした戦士とは似ても似つかない。
「じゅるる♡ぐぽ♡ちゅぞ♡じゅぷ♡れう♡ぐちゅ♡れる♡ぐぷぅ♡」
「くハっ、随分がっツきやがるな♪そンなにコイツが気にいったカ?」
「ふぁい♡はぶ♡T.N.P♡ひゃいこぉ♡」
倒すべき相手に媚びを売り、インストールされた技術で奉仕する。その姿を見てエズロースキンは、自分の中の嗜虐的なプログラムが充足する感覚で快感に身を震わせる。
「いイ……サイッコーにいいぜZ-ERO!オら、この後アタイにどうサれたい!言ってみやガれ!」
「はふ♡お願いひましゅ♡れう♡私に♡Sv.Zlくだひゃい♡私の全部♡あなたので♡塗り潰してくらしゃいぃ♡」
「クはぁ……♪良い子にはゴ褒美あげないとナぁ♪おラっ!」
獣の様な笑みと共に、エズロースキンはZ-EROの頭を掴み喉までT.N.Pを押し込み、
「もごっ♡」
「お望ミ通り、ぜーんぶ染めテやんよ……っ!!」
「んぐぅ〜〜〜〜〜っ♡♡♡♡♡」
Z-EROの体内へ向け、Sv.Zlを放出する。その勢いは嚥下機能を凌駕し、鼻や口の隙間から逆流するほどだ。再び体内をSv.Zlに蹂躙される快感に襲われ、Z-EROは白目を剥いて身をうち震わせる。
「ぶは………あ……♡」
エズロースキンが手を離すと同時にZ-EROはゆっくりと後ろに倒れる。その際にT.N.Pから残存していたSv.Zlが放出され、浅黒く染まった顔を白く彩る。
「やっベ、やり過ぎた……おーイ、Z-ERO?」
「し、考か、いロ♡過じょ、負荷♡検知のた、メ、きょウせ、シャットダ、うン……♡」
頭部にバチバチとスパークを迸らせながら途切れ途切れにプリセット音声を吐き出すと、Z-EROはその機能を停止させてピクリとも動かなくなった。
「アっちゃー、アジトまでコイツ運ぶノ面倒くさ……ギルー?」
「不可能。刀身冷却処理未完了。戦闘影響出力低下。運搬不能」
「チッ、仕方ネー……アイツは置いてクか。出来レばアイツの技術力も回収しときたかったのニなー」
エズロースキンが視線を投げた先には、いつの間にか気を失ったマスターが地面に転がっている。
「不可解。敵勢力鎮圧済。現時点技術不要」
「そりゃアタイ達が資源の面ニおいて圧倒的優位だからダろ。なのにジャンクやスクラップ品だけでアタイ達に喰らい付イて来てるってなら、もしアイツが然るべキ援助を受けたら……」
「事実勝勢。仮定無意味。帰投時刻切迫。撤収提案」
「……ま、それモそうか。そレじゃZ-EROはアタイが……重ッ!?体格差ダけの問題じゃナく重い!?おいギル!先に行クんじゃねー!半分!せめテ半分持てコラ!」
喧しく騒ぎながら去る2体の声を聞く者は誰もなく。
破壊の爪痕が残る港湾地区に、傷だらけのマスターだけが取り残されるのだった。