麦わらの一味のcocシナリオ
友達欲しいシナリオ名:きけつの船
プレイ人数:一人(ルフィ)
プレイ時間:三十分
推奨技能:目星・アイデア
.概要(ネタバレ)
サニー号のありうべからざる分岐の未来の姿であり、IFルフィの怨念そのものである「きけつのふね」の中を探索し、ダゴンのかけらである白き霧を抜けるために行動する。
父なるダゴンの霧の雲の中を抜け出すには生け贄を捧げなければならない。ふかきものと化しているIFルフィを見つけなければ誰か一人が命を落とすことになる。
※固有名詞は使わなくても良い
.真相
「きけつのふね」の未来のクルーは、ルフィの命を繋ぐために自ら命を絶ち、最後は父なるダゴンに身を捧げることでルフィの命を救おうとした。故にルフィは生きることも死ぬことも出来ぬモノとして仲間を食らった業を抱えて生きながらえている。
一人生き残っているルフィ(深きもの)を殺すことで生け贄を捧げ終え、ルフィたちは抜け出すことが出来る。
「きけつのふね」はダゴンの雲の中で現れる。このサニー号は飢餓状態で停滞し、一人づつ命を絶ち食料となった。
最後の一人となった誰かが「ダゴンの霧」に気が付きその身を捧げたがもう遅かった。
仲間の居ない船ではどこにも行けないのだから。
きけつのふねと化したこの船でルフィだったものは待っている。
──必ず訪れる自分自身を待っている。
.きけつのふね
ダゴンの霧の中の怪異の一つ
その船がたどる最も悍ましい結末を表した船
とらわれたあらゆる世界のバッドエンドを迎えた船の姿としてあらわれる。
沈む前に生け贄を捧げなければ、船の惨劇はこの船に帰結してしまう
今回の「ふね」は遭難し、飢餓状態で身を捨て、最後の一人がダゴンに身を捧げて船長を救わんとした地獄の船
.死より他に赦し持たぬ霧
「きけつのふね」を取り巻くダゴンの霧(古きものの残した悍ましき罠。死さえ生温い地獄の霧)
迷い込んでしまった魚は死に絶え、船は停滞する。
逃れるには誰かの命を差し出すほかにない
.導入
ミルクを流したような深い霧の掛かった凪の海にサニー号は停滞している。落ち着かないようななんだかぞっとするような重たい霧だ。
なぜか皆、よく空を見上げている。
現在食料は十分にあるが、このまま凪が数日続いてしまうとそろそろ底をつくかもしれない。
風来砲で出るにしても、周辺の様子は全く分からない。
「海図でもあればなァ」
とフランキーは肩を落とす。
それで出られるかも分からないのに博打は打てない。
ブルックの奏でる柔らかな音だけが白い霧の中に流れている。ジンベエが驚くことに魚もどうやら近くには居ないようだ。暫くはここで待つしか無いだろう。
しかし、流石にルフィは飽きが来ている様子だった。
そんな折にルフィたちの乗るサニー号の目の前に似たぼろぼろの海賊船が現れた。
ミルクの霧から浮かび上がったのは、一艘の朽ち果てた船であった。
浮かんでいることが不思議なほどに、潮風はデッキを風化させ、白かったであろう帆を千々に引きちぎって横木に哀れに引っかけるばかり。
メインマストは根元から折れている。
かつてフロリアン・トライアングルでブルックの暮らしていた船と似ているようで──何かが違う。
幽霊船というには死と生の気配のどちらもが薄かった。ウジ虫の一匹さえきっと居ない。
いうならば船の白骨死体だ。
目星で海賊船を観察できる
共通
・海賊旗は破れて見分けが付かない古い船だ
・船名は読めない
・マストは折れている
・船首は朽ちている
成功
・十年くらいは漂流していそうだ
・サニー号と同じ形で同じくらいの大きさだ
ルフィはもちろんその船に乗り込むことに決めた。
ルフィの他に誰を乗せますか?
NPC探索者を三人選んでください
.【NPC一覧】
・ゾロ:予想外の場所に動く
・ウソップ:目星の成功率が高くなる
・サンジ:キッチンに必ず向かう
・チョッパー;医務室に必ず向かう
・ロビン:書斎を見つけることができるだろう
・ナミ:海図を見つけることが出来うるだろう
・フランキー:船の構造を観察するだろう
・ブルック:彼の音楽はどこへでも届くだろう
・ジンベエ:転覆するまえに助けてくれるだろう
.■■■号へ乗り込む
船は今にも沈みそうだ
甲板は──ぐちゃぐちゃに腐っている
どうしてだろうか
「なんだこれ! ぐっちゃぐちゃじゃねェか! 気持ち悪ィ~」
とルフィも怪訝そうな顔をするだろう
※フランキーがいる場合、二時間で沈むと教えてくれる。
・フランキーの目星成功
全ての部屋のあたりも付けてくれ、どこでもいける
フランキーはこの船の構造がまるで自分の設計したもののようにわかる事に対してSAN値チェック
・他のキャラの目星の成功
一階の扉の奥はキッチンらしい
.探索場所一覧
八つのうち四つまで探索できます
三つ目を探す頃に船が沈み始めるので、三つ目の後であと一つと伝えてください。
一.キッチン→骨のカケラ。サンジ
二.医務室→毒薬。チョッパー
三.キッチン下の空間(アクアリウム)→割れたガラス。ジンベエ
四.倉庫の下の空間→棺。フランキー
五.図書室→白霧の記事。ロビン
六.食料庫→空っぽ(遭難)ゾロ
七.男部屋→白霧の記事の切れ端。ウソップ
八.女部屋→航海日誌。ナミ
九.船首→ブルック
【一室目は必ずキッチンです】
.キッチン
ダイニングとキッチンが一式になった最新式のキッチンだ
椅子は十個ある
まるで今さっきまで此処に誰かがいたかのように皿はダイニングテーブルに並べられている。
随分使われていないのか埃がつもり、潮風で木くずもぼろぼろになっている。
・目星→成功(サンジが居る場合は成功率アップ)
ふと目に付いたのは鍋だ。一つだけコンロに掛かったままの鍋を持ち上げる。
からからとうそ寒い音がした。
ひっくり返すと、真っ白い骨が転がり落ちる。つまみ上げるとぼろぼろと崩れた。骨の髄まで搾り取ったような、あまり見たことのないかたちの骨だ
アイデア→成功(チョッパーが居ると成功率アップ)
人の骨だ
骨の髄まで煮込み、ぼろぼろに砕けるまで必死に煮込んだのだろう
それは確かに人の骨だった
シンクの下にぼろぼろの骨が入った樽を見つける
おぞましい行為を目撃してしまったクルーは全員SAN値チェック0/1D6
一味はここで人肉食が行われたことを察する
なぜかはまだ分からない
・戻ることを選択→バッドエンド
・探索を続けることを選択→続く
【部屋を出るときイベント】
「こんなことのためにおれは」
とルフィの耳に血を吐くような悲痛な声と包丁がまな板を叩く音が聞こえる。
※サンジが居る場合
「……生きててほしいんだ」
懺悔をするような声と共に、自らの肉を断つ男の影が見える
以後は探索パートになります
他の部屋を探索できますが、三部屋を探索しおわった時点で船が沈み始めます
【探索パート】
.医務室
キッチンに併設された小さな医務室だ
シーツもない骨組みだけのベッド。医薬品棚も何もないからっぽな医務室だった
▼目星成功
・ベッドの下に隠されていたノートを見つける
※ノートの記述
「 処方した。
苦しむことはなく、眠るうちに終わっている。もちろん体には残らない
これしかもう誰かを生き延びさせることはできないから仕方ないんだ
くじに細工をして、おれがあたるようにしているから、最初はおれだ。ごめんな、おれはよわくて
おれはまだ食いでがあるから許して欲しい
どうしてこんなことになったのだろう
この霧の海を出る方法はあの船から持ってきた本で■■■が探している。だから初めはおれがいい。きっと■■■は悲しむだろうけど
でも、生きていて欲しいんだ」
【部屋を出るときイベント】
「どうしてだよ……!」
ルフィは部屋を出るときに嘆く人影と恨めしく囁く声が見えるだろう
※チョッパーが居た場合
「生きてくれ」
という小さな願いの声がした。
→毒の小包をチョッパーが手にします
.キッチン下の倉庫
キッチンの下には空間があった
腐って吐き気のする生臭い匂いが充満している。とても入れたもんじゃない
我慢してのぞき込むと、腐りきった木くずと埃の被さった奥にきらきらとした何かが見える
ガラスが一面に埋め尽くされていた。
なぜこんな大量のガラスが広間一面に?
▼目星成功
よく見れば積み重なったガラスの下から何かが吹き出している
白い霧のようなものはここから発生しているらしい
▼アイデア成功
まるでサニー号のアクアリウムのような空間だ。
サニー号と全く同じ構造であることに気が付いたクルーはSANチェック0/1d6
【部屋を出るときイベント】
「なぜ……なぜ」
とルフィを責めるような声がした。
※ジンベエが居た場合
「……ゆるせ」
残念そうな声がした。きっと首を切ったのだろうとジンベエは思うが何も告げずに部屋を出た。
→古い合口をジンベエが手にします
.倉庫の下の空間
区画の区切られたパドルのような形をした部屋だ
骨の詰まった棺が九つある
始めは丁寧に包まれているが、最後の一つは空っぽだった。
ルフィたちはぞわぞわとするのを押さえられないだろう。
ここは、あまりにも既視感がある
・アイデア成功
ここは間違いなく"サニー号"そのものだ
自らの船が朽ち果てているような錯覚に青ざめるだろう。唯一無二のこの船が、ここまで似ていることなどあり得ない
【部屋を出るときイベント】
「ちくしょう! なんでだよ……」
と吐き捨てる恨めしげな声がルフィの背中を叩く。
※フランキーがいた場合
「……ごめんな」
と悔いるような哀しい声がして、エネルギーが失われて駆動音が止まる音がする
→起動停止装置をフランキーが手にします
.図書室
必死に何かを探した様子の窺えるままで朽ち果てている。
散らばった本の中に何かヒントがあるかもしれない
▼目星成功
乱雑に本が散らばる机の中の中に、一枚だけ奇妙なものがあった
本を分け入っていくと、流麗な筆跡で本のページがみつかる。羽ペンがそのページを机に縫い止めている。
誰かに何かを伝えたいように
【記事の内容】
きけつのふね
古い船乗りの伝説
その船は死を赦したまふ悍ましき白い霧を伴って現れる。
その船は船乗りの乗っている船が朽ち果てた姿だ。
それは自分たちの未来の姿であるという。
きけつの船という名前は船乗りの乗っている船がいずれ必ず帰結する未来の姿であるからだ。
沈んだ船が現れれば船も沈み、燃えた船が現れれば燃えてしまう。
船に出会ったものは、正しく行動しなければこの結果に帰結してしまうのだとか。
またこの船に出会い、この船に帰結した船の乗組員は二度と「きけつの船」から魂が逃げられないのだという。
逃れる方法は──
以下の記事は破られている
▼アイデア成功
どこかに記事が残っている可能性があるぞ
【部屋を出るときイベント】
「……ああ、どうして。ひどいことするわ」
恨めしげな悲しい声がルフィの背中を追った
※ロビンが居る場合
「どうか、彼だけでも」
と覚悟をして毒を呷る姿が見えた。→毒の小瓶をロビンが手にします
.六.食料庫→空っぽ(遭難)
食料庫は空っぽだ
おそらく、食べ尽くしてしまったのだろう
血だらけなのは、ここで戦闘でもあったのだろうか?
【部屋を出るときイベント】
「逃がすかよ」
ルフィはぞっと総毛立つだろう。男の恨めしげな声が聞こえた。
※ゾロが居る場合
「ならおれを」
そう言って首をかっさばいた男のすっきりとした声が聞こえる。ゾロは何も告げずに部屋を出た。
→小刀をゾロが手にします
.七.男部屋→記事のカケラ
乱雑だ。
だが、やはりここも血だらけだった。遺書が机に置かれている。
「こんなことを他の誰にもみせられるもんかよ。ちょっと遅くなっちまったけど
そういうことをするのはおれが良い。
怖くて怖くて堪らねェけど
だっておれたちはあいつに賭けて海にでたんだ
だからこれは──嘘にする」
遺書の他に何かないだろうか?
▼目星成功
・何かの切れっ端
──誰か一人の命を捧げることで、誰か一人だけならば逃げられる。
【部屋を出るときイベント】
「島に……帰りたかったな」
と航海の滲んださみしい声がルフィの背中を叩く
※ウソップが居る場合
「お前の旅の無事を祈ってる」
と、揺らぎのない声と鼻をすする音で毒の種を飲んだ自分が見えた。
→ウソップは毒草の種を手に入れます
.八.女部屋→航海日誌と海図
航海日誌が積み上がっている
見ればまるで自分たちとよく似た状態だ。
・白い霧から抜け出せずについに食料が尽きてしまった
・白い霧に見張られているようでみんな神経がささくれ立っている
・食料が尽きる寸前に船を見つけた
・その船が沈む時に、本と■■を見つけた。■■■以外と相談して決める
・さようなら
・最後の手段になってしまった
・どうか生きて、アンタが海■■になって
▼目星成功
航海日誌に挟まれていた海図を見つけた
いまサニー号が居る場所ときっと変わらないだろう。
ナミがいれば風来砲で逃げ出せる場所が分かるだろうし、居なくても持ち帰ればすぐに分かることだ
【部屋を出るときイベント】
「馬鹿……」
あきれ果てたなじるような声がルフィを責めるだろう
※ナミが居る場合
「あーあ……、ごめんね」
悔しい残念そうな声と共に、手首を切る自分が見える
→ナミは小さなナイフを手に入れます
.GOODエンド条件
・海図がある
・「きけつのふね」の完全情報を得ている
・日誌もしくは棺を見ている
・「ここがサニー号である」ことを理解している
以上を探索した状態でアイデアを振ってください
.成功→GOODエンドルート確定
「──足りねェ」
と気がつく。
気が付いてしまった。
居なければならないものが足りない
そうだ──船長が、ルフィ自身がいない。
「"おれ"が居ねェ!」
そう告げた瞬間、霧がざわめく。
柔らかなバイオリンの音がどこからともなく聞こえて来る気がした
ずる、ずる、
何かが動いている。よくよく見れば、ガラスを這いずり回る骨のないぐにゃぐにゃとした何かがいる
骨を全て、抜き去ったゴムのかたまりのような肉の塊は、もはや知性も無く、ただ呼吸しているだけのおように見えた。
──おれだ
ルフィははっきりと理解した。
目が合った瞬間に、ルフィはその船首から"自分"を海にたたき落とした。
「生け贄はおれだ!」
そう宣言した瞬間、霧が揺れ、船は瓦解し始める。
「船に戻れ!」
とルフィは仲間が声を上げる。
サニー号に戻った瞬間に、フランキーは鮮やかに海図のただしい道へ風来砲を発射し、サニー号は空を飛ぶ
失敗条件
成功条件が不足している
.BADエンド1
「きけつのふね」から逃れるためには誰かの命を捧げる必要があります。
ルフィが止める間もなく、
【部屋を出るときイベント】で個別の声を聞いた最も幸運の高いNPCが自ら命を落とすでしょう。
「○○!」
息絶えた仲間を抱えてルフィは仲間の名前を呼びます。
その瞬間、視線がルフィに突き刺さります。
振り返れば船首に芋虫のような、床を這いずる人間だったものがルフィを見ていました。
人間のものではない、奇妙きてれつな形容しがたい哄笑が甲板に響き渡ります。
──失敗した
ルフィはそう悟ります。
その骨のないゴムのような塊は、ルフィをあざ笑います。
塊が促し、ルフィは空を見上げます。
大きな目が感情の色もなく、霧の中に浮かんでいるのをルフィは初めて気が付きます。ずっと見ていたのだ。蜘蛛の網に掛かる蝶がもがいているのを見下す人の目が、ずっと、ずっと、ずっと、きっと。
だって、だって──こんなにも仲間が
「──んまそぉ」
と、ルフィはごくりと喉を鳴らした。腕の中に抱えた仲間が大好きで、誰よりも何よりも大事で大事で、早く食べてしまわなければいけない。
そういえば、腹が減っていたのだった。ずーっと何も食べていなかった。食べるものは美味しいけれど、もうずっと何も食べてない。
満たさなければ。
満たさなければ。
生きなければ。
何を喰ってでも生きなければ。
腕を伸ばして、その大きな肉の塊にかぶりついた。
口いっぱいにあふれだすうま味とかみ応えのある肉の塊。愛おしい命の味がする。
そうだ、もっともっともっと食べたい。手を伸ばす。
だって、おれは飢えているのだから。どこにもメシがなくて。
飢えて、飢えて、飢えて──大事で大事で他に何もいらないはずの仲間の肉さえも差し出されては食い尽くして、骨をしゃぶりつくしてなお生きなきゃいけなかったのだから。
それでも生きられなかったおれがいるのだから。
ぐにゃりと体が変になっていくのを、ルフィは理解した。おれがあれになる。あれはいなくなる。
あいつは解放され、今自分が捕らわれ、船はいま既決していく。
もう二度と、仲間と共にこの霧を出ることは出来ないだろう
【既決していた船】
.BADエンド2
・最初の時点で帰還
沈んでいく船から慌ててサニー号に戻ってくる。
「あーあ、何にも分からなかったぜ」
「変な船だったなァ」
とウソップが嘆き、チョッパーが肩を落とす。ゾロは伸びをして青芝の甲板に腰を落とす。
「まァ、メシはまだあるさ」
「すぐに飢えはせんじゃろ」
サンジが計算しながら応え、甲板に集まったクルー達は次の作戦を考えているのをルフィは見つめた。
──おれの仲間だ
ナミとロビンは困ったわね、と顔を曇らせている。ブルックのバイオリンの音色。
大事な仲間達を眺め渡して、ルフィは空をみあげた。
大きな目が感情の色もなく、霧の中に浮かんでいるのをルフィは初めて気が付いた。ずっと見ていたのだ。蜘蛛の網に掛かる蝶がもがいているのを見下す人の目が、ずっと、ずっと、ずっと、きっとあの船は知っていた。
だって、だって──こんなにも仲間が
「──んまそぉ」
と、ルフィはごくりと喉を鳴らした。
「腹減ったのか?」
と仲間がルフィに尋ね、ルフィは頷いた。
そういえば、腹が減っていたのだった。ずーっと何も食べていなかった。食べるものは美味しいけれど、もうずっと何も食べてない。
ぐうぐうと鳴る腹を抱えた。
満たさなければ。
満たさなければ。
生きなければ。
何を喰ってでも生きなければ。
腕を伸ばして、その大きな肉の塊にかぶりついた。
口いっぱいにあふれだすうま味とかみ応えのある肉の塊。愛おしい命の味がする。
そうだ、もっともっともっと食べたい。
だって、おれは飢えているのだから。どこにもメシがなくて。
飢えて、飢えて、飢えて──大事で大事で他に何もいらないはずの仲間の肉さえも差し出されては食い尽くして、骨をしゃぶりつくしてなお生きなきゃいけなかったのだから。
それでも生きられなかったおれがいるのだから。
おまえだけ逃げるなんてそんなこと許されて良いはずがない。
おまえはおれのかわりにこの霧の中の生き地獄で死んでいけ
仲間がいなけりゃ、お前はどこにもいけやしねェだろう
【既決する船】
.GOODエンド序
──風来砲!
とフランキーがコーラ樽三つを使って霧の海域を飛び出す。
海図で方向は分かった。
何が起こったのかも全て分かった。
「ルフィ」を捧げてわずかに晴れた今しかチャンスは無い。
「サニー……!」
ルフィは空の上で振り返って、かつて太陽の船だったはずのそれをみてぞっと背筋を凍らせた。
「…………」
「どうした」
「いや……」
ゾロに問われ、ルフィは麦わら帽子を深く被りなおして首を振った。
しかしルフィはふと思い直して誰かに何かを依頼たほうが良いような気がする。
前向きになるような何かを
※クルーの誰かになにかを頼んでください。頼まなくても良いです
依頼した後、ルフィは髪を引かれるような感覚をもって、沈み逝く船を振り返った
成功→ベストエンド
笑って手を振る仲間たちと消えていく船。「きけつのふね」は結末を超えていく。
──ありがとう
サニー号はどこかへ去っていく。
「ありがとう」
ルフィも応えた。
あの船の己がどうして、あのまま生き延びたのか理解したからだ。
失敗→しない
ただひたすらに恨めしげに自分たちを憎悪の籠もったこの世とは思えない形相で睨み付ける麦わら帽子の、自分とよく似た──けれどそれが奇妙に腐り落ちて魚のような面立ちになった青年が腐った甲板に立ってルフィを睨み付けていた。足下にばらばらと散らばる骨。
──なんで、お前だけなんだ!
「ああ」
ルフィは静かな目で小さくなっていく甲板の上のその己を見つめた。
「ありがとう。おれの仲間はおれが守る」
甲板で男が、獣のような咆哮を上げる。最後の最後であふれた未練と、苦しみだ。失った仲間の名を叫んでいる。
だが、もうルフィにはその声は届かなかった。
【奇傑の乗る船】