鴉は山に

鴉は山に


「「くだらない解放ごっこはもう終わりにしよう」」

二人の猟犬に相対するは一匹の鴉

怒りが滲み出ていた猟犬に対して鴉は冷静に無言を貫いていた

遠くでは援護に来ようとする仲間を猟犬と共にやってきた企業の犬が押さえつけていた もはや逃げる事は叶わない

そのまま鴉は銃を構え敵を見た


〜ハウンズのアジト〜

「先生どこにいくつもり!?」

「"ツヅル 止めないで!私は私のやれる事をするだけだから!」

「先生が行くのは危険ですわ!!」

私の護衛をしていた二人を振り切り、MTの格納庫に向かう

住民の避難誘導の為にハウンズの大半が出動していた為か簡単に辿り着く事が出来た

あったのは整備の為か武装もされていないMT

「"あった これなら…"」

そんな私を待っていたのか誰かが私の前に立ち塞がった

「貴方ならここに来ると思っていました」

捕縛用のテーザー銃を持った622はゆっくりハッチの前に立ち言葉を続ける

「どうせ あの子らを助ける為と貴方は言うでしょうが諦めて大人しく部屋に戻ってください」

「"それは出来ないよ 私は先生だからね 子供が言葉の意味を間違っていたら教えてあげなくちゃ"」

622は苦虫を噛み潰したような顔をしながら私の言葉に答えた

「命を落とすかもしれないんですよ!!」

「"そうかもしれないけどそうじゃないかもしれないよ それに少しでも救える可能性があるなら私は行かなきゃいけない 見捨てちゃいけないんだ"」

すると622は呆れたような諦めたような顔をしてため息をついた

「わかりました…何を言っても無駄そうですね…ハァ…ただし私も乗って同行しますしやるならレイヴンが無力化されたところで です」

そうして私達はMTに乗り込み操縦桿を握り射出用のレーンに足を乗せる

「無理なら諦めてくださいよ!」

「"大丈夫だよ!きっとね!!」



鴉は二匹の猟犬に翻弄されていた 数の差ではない あの二匹は明らかに鴉より自由に飛んでいた それは本人達の技量の成せる技か二人が背負うものが故か

肩の武装はとうに使い果たし残りの弾丸も心許ない 仲間も援護にはこれそうにない状況 

「これで遊びは終わりだ」

「理由のない強さなんて無意味な物」

そう言うと二匹の鴉はブレードを振りかぶり切り掛かる

すんでのところで回避するが両足とパイルが付いた腕を切り落とされた

残った弾で抵抗するが二匹にとってはもはや脅威にすらなっていない

「手負いの獣が一番恐ろしい だから手加減なんてしない」

そう言うと一匹の猟犬が残った武器を蹴り飛ばし銃を構える すると

「"ちょっと待ったたァ!!"」

異常な速度で突っ込んできたMTが猟犬の横っ腹に激突する

損傷はお互い軽微だが猟犬の方は識別が味方だったのもあり不意打ちを受ける形になった為か衝撃でよろけた

「"私に彼女達と話をさせて欲しいんだ!"」

その声に猟犬だけでなくその飼い主すらも驚いていた

「先生!?」「何をしている 戻れ!!」「そこは危険です!」

阿鼻叫喚の状況で先生は続ける

「あの子達はブランチの自由意思に縛られているんだ!本当に自由になんてなれてはいないんだよ!」

そう叫ぶ先生をよそに猟犬は武器を構える

「これは憶測だけで語れる話じゃないんだ!」

「"だから話がしたい!"」

自分を貫き通す先生の気迫に押され猟犬の一匹は武器を下げる

「そうだった 先生はこんな人だった」

リ・ブランチのメンバーは捕縛され、最終的に矯正局に連行となった(余談だがスネイルは再教育センターに叩き込むつもりだった)

先生は企業勢や621だけではなく、ウォルターからもガチの説教を受ける事になった


後日リ・ブランチのメンバーを名乗る生徒が現れ逮捕された

先生はレイヴンを除くそれぞれと面会をしたが返ってきた返事は「この世界は私達が自由になるには狭すぎる」という言葉であった


〜矯正局〜

「(自由ってなんなんだろうな…好き勝手自由やった結果がこんな自由のない窮屈な部屋で一人…私が求めた自由ってこれだったの?)」

鴉は一人独房で考えていた シャーレの大人は「あの子達はブランチの自由意思に縛られている」と言った

私達は確かにブランチにそう育てられた それが当たり前でACで戦うことが自由だと思っていた

オペ子が私達は自由になると言い計画を話していたあのときもそうだ

ここに来た時からずっと

「そこに私で考えた意思はあったのだろうか?」

そんな考えが私を頭を巡り続ける

そしてある時、矯正局の爆破と共に私の独房にオペ子達がやって来た

「さぁレイヴン 私達の自由の為に戦いましょう」

そう語る彼女らの手を取る事が出来なかった 以前の私なら迷いなく取っていた手を

「どうしたレイヴン?」

「さっさと行くよ」

わからない 着いていっても同じようになるかもしれない 自由がわからない 私がわからない

そんな私の心境を見透かしたのかオペ子は「残念です レイヴン」と言い残し去って行った

……

その後ヴァルキューレとシャーレが現着

私は重要参考人として取り調べを受けた

聞かれてもどこに行ったのかも知らない 私はきっと見捨てられたから

ヴァルキューレの局長が退出しシャーレの大人がやってくる

「"何かやりたい事ある?"」

彼は私に優しく聞いた

「わからない でもここは私が自由を知るには見える場所が狭すぎる」

「"じゃあこれからは色んなところを見て考えなきゃね 必要なら案内するよ?"」

彼は優しく私を撫でて微笑んでいた


〜???〜

「まさかあの獣を生徒に引き戻すとは…やはり私は先生と先生の起こす奇跡を舐めていたようですね」

ゲマトリアのAMは自傷気味に笑う

「ケイト 私達の準備は出来ました 早くしてください」

「わかりました あなた方が望むキヴォトスの外へ連れて行きましょう…ただしもう帰れませんよ?」

そういう彼女を嘲笑うように3人は語った

「あそこじゃ自由に生きられない だから構わない」と

「それではさようなら みなさん 良い闘争を」

……

「クックックッよかったのですかAM あの3人を仲間に取り込まなくても」

「私には必要ありません 彼女達の望む永遠の闘争の世界に旅立ったのですからもう会う事もないでしょうし」

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