鰐さん小鳥と出会う

鰐さん小鳥と出会う



タイトルの通り、IFクロコダイルが真っ白ハーピーIFローに出会うだけのちょっとした話

タイトルがほんのり童話っぽいけど何も童話してない




 何人たりとも近付くな

 まるでそう謳うかのような空に浮かぶ島に建つ城に、かつて謀略にて国王に君臨した夜叉が住む

 今宵夜叉は城を飛び立ち、下界にて姿を現す


 表で大成する者は裏との、裏で大成する者は表との根強く根深いパイプがある

 新世界の海の、数限られた者のみが知る島にて開かれる夜会には、そのパイプを求めて数多くの名の知れた者がお忍びで訪れる

 そんな夜会に此度参加した者の中に、知略を巡らし、人心を掌握する事に長ける、かつて『王下七武海』の称号を与えられた男、サー・クロコダイルがいた


 アラバスタの簒奪から始まり、海兵にリワードと称した懸賞金をかけ、本来守られる側である市民に海兵を襲わせ金を払う『クロスギルド』の立案者たる彼を表でも裏でも知らない物はいない

 故に彼と関わりを持とうと擦り寄る輩は数知れず、ビュッフェを取る暇も無い状態に呆れ返り溜息を吐く

 誰と仕事をしても構わない、人脈は広ければ広い程良い

 しかし、この場に居る者の中にそれに足る者が居ない

 さして名声も無ければ資金も武力も持ち合わせていない。いや、持ち合わせていないからこそ自分と関わろうとするのだろう

 他力本願とはこの事だ


 と、内心で悪態をつき続けていた時、会場が一気にどよめく

 遠くからでも分かるくらいに背丈の高く、無駄に目立つピンクのフェザーコートを身に纏った、クロコダイルが心底嫌う男が会場に足を踏み入れた


「フッフッフ、今夜も随分と客入りの良いようで」


 その視線は、その言葉は真っ直ぐクロコダイルに向けられていた事にその場の全員が理解した。理解してクロコダイルはそれはそれは大きく溜め息を吐いた


「久しぶりの参加の割に態度が大きすぎやしねェか?フラミンゴ野郎」


 天夜叉

 闇のブローカー

 ジョーカー

 旧ドレスローザ国王

 他にも上げれば切りがないくらいに異名を持つ、クロコダイル同様に『王下七武海』の称号を与えられた男、ドンキホーテ・ドフラミンゴが姿を現せば、クロコダイルの時と同様に関りを持とうと企む輩はすぐに駆け寄って行った

 ドフラミンゴは赤い布で覆われた荷物を持つ使用人に、先に部屋へその荷物を置いてくるように伝え、向かったのを確認してからクロコダイルへ近付いて行く


「よォワニ野郎、最近は仕入れが増えてるみてェだな。そんなに俺との取引が楽しいか?」

「あァ、武器が随分と脆くてすぐに駄目になっちまうからな。んな不良品ばかりじゃ俺以外に取引先が居ねェだろうと思ってな」


 正しく一触即発といった雰囲気の二人に、周囲の者達は蜘蛛の子を散らす様に離れ様子を伺う

  ふっと小さく笑った声と共にドフラミンゴは両腕を広げた


「そう邪険にすんじゃねェよ。別にここへは喧嘩しに来た訳じゃあねェんだからよ」


 冗談めかしてそう言えば、クロコダイルの雰囲気が幾分か柔らかくなる


 この二人、非常に険悪である事に変わりはないが、互いが互いに最良の取引相手である

 ドフラミンゴは資金が潤沢であり、そこらの実業家よりも頭が回り実力もある。些細な事に目を向ける視野の広さも備わっており、その上裏で仕事をするのにまるで登竜門であるかの如く関わらなければ通れないような程に地位を得ている

 クロコダイルはクロスギルドで得たその悪名とは裏腹に、与える金によって貧困に喘ぐ者からは絶大な支持を得ている。それでいて仕事や取引に関しては事細かく、尚且つ相手に断らせない為に下手にどちらかが不利になる事が無いようにと平等な条件を提示してくる

 そう、言い換えるなら非常に都合のいい相手とも言える


 給仕係がワインを運んでくると、二人はそれを受け取った

 こくりと一口含めば葡萄の香りが鼻から抜けていく

 悪くはないが、普段鷹の目の買ってくるワインの方が良いな。等と1人で考えていれば、どうやら目の前の男も似たような、というよりクロコダイルよりも不満らしく、微妙と顔に書いてあった


「そういや、お前が使用人と一緒にくるのは珍しいな。それにあの荷物も」


 参加する際、普段は1人で、それも手ぶらで訪れるドフラミンゴが荷物持ちで使用人を付けた事が単純に気になりそう零せば、ドフラミンゴは少しだけ困ったように笑った


「あァ、ありゃ『鳥』だ」

「あ?」


 『鳥』と言われてクロコダイルには覚えがあった

 仕事の話をしている間、隙あらば自慢してくる『鳥』

 いかに愛らしく、いかにいじらしく、いかに愛おしいかを延々と語ってくるその度に、クロコダイルは話半分に聞き流していたが、あまりにも話してくる為存在だけは知っていた

 その『鳥』を、何故わざわざこんな所へと思えば、聞いてもいないが話してきた


「いやな、あいつが連れて行けって聞かなくてよ。仕方がねェから籠へ入れて連れて来たが、まァ珍しい鳥だから人目につかねェように部屋へ先に置いておいたんだ」

「ほぉ」


 一応相槌は打つが大半は聞き流した。その『鳥』の自慢話なら散々聞かされているから、これ以上聞く気は無い。というよりそんな事喋るか、いよいよ完全に頭がイカれたのかとひたすらに脳内で罵倒していた

 二人は暫くの間取引に関しての話をし、終わればその場で踵を返して離れる。すると今の内にと人が群がる

 ドフラミンゴは愉快そうに投げ掛けられる言葉1つ1つに返事をするが、クロコダイルは口を開かない

 商売の話なら普段は耳を傾けるくらいはするが、今はそれどころではない

 彼の興味は完全に、先程ドフラミンゴが話していた事だった


(希少な鳥。それも単に部屋に運ぶだけじゃなく、道中ですら誰にも見せねェ徹底ぶりだ)


 これは随分と良い事を聞いた、上手くいけばあいつのアキレス健になりうるかもしれない

 人の群れを掻き分け、クロコダイルは会場外へと姿を消した


 遠く離れた土地から夜会へ参加する者が殆どの会場には、宿泊が出来るように個人に部屋があてがわれている

 防犯の関係で誰がどの部屋なのかも明かされず、入り口で渡される専用の鍵以外での開錠、施錠は出来ない。扉も壁も頑丈で大砲ですら砕けない

 しかしそんな事は全身を砂へと変えられるクロコダイルにとっては些末な事。扉の隙間や窓の隙間から容易に入り込める

 1部屋1部屋確認して周り、その中で漸くドフラミンゴの宿泊する部屋を見付けた

 テーブルの上には赤い布、そのすぐ横に置かれているのはまるで陶器で出来ているのではと思う程に白く滑らかな鳥篭。そんな鳥篭の中にいた『鳥』は掌に乗せられるくらいの小さな『鳥』。否、手足は鳥で胴体や頭は人間の、所謂ハーピーと呼ばれる生き物だった

 楽し気に歌いながらパタパタと羽根を動かす後ろ姿を見ながらクロコダイルは能力を解除して人の姿に戻る

 足音か、それとも砂の音か、気付いた『鳥』は振り返れば、きょとんと目を丸くして首を傾げた


「だぁれ?」


 どこか舌足らずな言葉

 髪も翼も、肌も白く。アルビノかと最初は思ったが、白の中で黄金の様に輝く瞳を見てすぐに違う、そういう品種かと判断した

 ピンク系統のシャツやズボンは明らかにドフラミンゴの趣味なのであろう。フリルがふんだんにあしらわれている上等な物だった

 幼く、白く、無垢な様相

 成程、これがよく話に出てくる『鳥』か

 心底陶酔し、金も時間も惜しまない『鳥』か

 あいつ大分気色悪いな

 と内心で軽蔑する


「あなたはだぁれ?」


 問いに答えないクロコダイルに再度問い掛けてくれば、溜息を吐いて答える


「サー・クロコダイルだ」

「くろこ?」


 再び小首を傾げる『鳥』に、そもそも言葉が分かるかすら危ういと感じさせた

 貴方は誰と問う言葉も、誰かが言っていた物を単に真似ているだけやもしれないと思い至った時、『鳥』は明るく笑った


「わにやろー!」

「あ゛ぁ゛!?」


 前言撤回、間違いなく言葉を、相手を理解している

 クロコダイルの事をワニ野郎等と呼ぶ相手はドフラミンゴただ一人

 話しの最中に出したのだろうその呼び方を、それが誰を指しているのかを『鳥』は正しく理解していたのだろう

 実に腹立たしいがそれと同時に有益な情報を得た

 動物以上の知性は持ち合わせている

 あの傲岸不遜な狂った男の、絶望や悲嘆の表情が是非とも見てみたい

 だからこそ彼のアキレス健になりうる物と判断したこの『鳥』を逃がすか殺すかしてしまおうと企てていた

 しかし、この小さい体で、細い脚で餌を取ってこれるだろうか。幼い頭で生き残れるだろうか

 この白銀のように白い風体の雛鳥を殺すのは些かもったいないのではないか


 ならば売ってしまおうか


 それならば先の何も残らない二択よりも手元に金の残るこの選択の方が何倍も良い

 鳥篭の戸を開けると『鳥』は何もせず、ただジッとクロコダイルの顔を見た。あどけない瞳の『鳥』はそも疑う事すら知らぬ様子で、差し出した掌に乗ってきた

 柔らかな手触りの羽が掌をくすぐる。よくその羽根を触るとドフラミンゴが言っていたのが理解出来た

 触れるもの全てを枯らす右手の上で、『鳥』は腰掛けて楽し気に微笑みながら小首を傾げてクロコダイルを見詰める

 ドフラミンゴの話を聞いていた時に抱いた通りの印象だ


 嗚呼、何て救いようの無い程に愚かな事か


 今能力を使えばたちどころに『鳥』の水分は失われ、固く干乾びたミイラとなるというのに。いや、ただこの手を握り込むだけで手折り、圧し潰してしまえるというのに、当の本人は全身を、命を容易に預けてきている


「ねーねー」


 葡萄の一粒ですら含める事の出来ない程小さな口が開けば、甲高く、しかし男の物と分かる声が鳴る


「わにやろーはドフィのおともだち?」

「あ゛ァ゛!?誰が友達だふざけんじゃねェぞ!!」


 あれと友達等と二度と言うなと凄めば、怯むどころかキャアキャアと笑った

 本当に、この世のどこにも恐ろしい物等存在していないかの如く笑う『鳥』に毒気を抜かれた

 知性はあっても大した知能は無い

 こんなのを売ったところで見た目の分以上の金は取れない

 そう判断して『鳥』を籠に戻せば、『鳥』は扉の格子を器用に食んで自分で閉めた。余程躾けられているのだろう、鍵を掛けるまで鍵とクロコダイルを交互に見ながら閉めないのかと問うてきた

 指で簡単に開閉出来る鍵を閉めてやれば満足したらしく笑っている


「わにやろーはドフィとなかよしなの?」

「テメェ俺の話聞いてなかったのか?そもそもその呼び方を今すぐ止めろ不愉快だ」

「なんてよぶの?」

「サーと呼べ」

「さー!」


 鈴の音の様な透き通った声で呼ぶ『鳥』の姿があまりにも愚かで馬鹿馬鹿しく、クロコダイルは小さく笑った。その笑みに気付いて『鳥』は嬉しそうに鳴いた


「サーはドフィとなかよしじゃないの?だってドフィはたくさんサーのおはなしするよ?」

「そりゃあいつが勝手に話してるだけだろ。俺は断じてあいつを仲の良い奴だと言った覚えも思った覚えも無ェ」


 互いに都合の良い商売相手だ。そもそも最初から誰も信用していない

 話の内容を理解し切れないのか『鳥』は首を傾げる。この程度の話すら理解出来ないのかと溜息が零れた


「大体お前は何だ?フラミンゴ野郎が大層可愛がっているようだが、何がきっかけで拾われた?」

「んー?んー、よくわかんない」

「あ?」

「きづいたときにはおしろにいたよ?」


 物心つく前か、それとも何か隠されているのか、そこまでは残念ながら分かりそうにない

 だがそんな物は『鳥』にとっては些末な事。自分がどれだけ大切にされているのか、どれだけ愛されているのか、それだけで良い

 それがなければ今頃生きてすらいないのだから


「おれロォっていうの!ドフィがね、いつもロォってよんでなでてくれるの!」


 あぁそうか、そんな事聞いた覚えは無いんだがな

 しかし以前そんな名前の海賊がいなかっただろうか

 いやいたな。あの麦わらと同じ『最悪の世代』等と呼ばれる12人の中に似た名前の男がいた

 ハートの海賊団船長

 死の外科医

 トラファルガー・ロー

 昔に関りがあったとドフラミンゴ本人の口から聞いた事があった。あいつがそれなりに執着しているのもそこで知った


 ならば目の前のこの『鳥』はもしや?

 確かあのルーキーの能力なら手足を別の生き物に挿げ替える事も出来た筈だ

 だが、だとしても大きさを変えるのは流石に出来ないか

 という事はあの男は、かつて執着した男の名と似たような名前を、寵愛するこの雛鳥に付けたのか?

 やっぱあいつ相当気持ち悪いな


 最初に『鳥』を見た時同様に内心で軽蔑する

 このままここに居続けた所で何の価値も無いと判断したクロコダイルは右手を砂に変え、鳥篭の中へと入れて再び手だけを元に戻して『鳥』を握る


「おい雛鳥、お前俺がここへ来た事は誰にも言うな」

「わ、わぁ……いわない…」


 呆けていながらも答えた鳥を離して、再び砂になった手が身体へ戻れば、その右手はあるべき場所であるべき形を成す

 もう部屋を出るかとコートを翻し、踵を返した


「ねーねーいまのなに!?もっかいやって!!」

「…………はぁ」


 背後で『鳥』はそれはもうはしゃいでいた

 カチャカチャと鳥篭の格子を揺らし、中で何度も飛び跳ねて催促してくる

 首を動かし、チラと『鳥』を見てから何も言わずに砂となって部屋を後にした


 会場に戻ればドフラミンゴの姿は無く、クロコダイルは自分の良き取引相手となりそうな者を見定める為に話しかけてくる者達と言葉を交わした

 数刻、無益とも有益とも言えない時間を過ごせば突然会場に鳴り響く甲高い革靴の音

 全員の視線がそちらに向けば、そこにいたのは嫌に目立つ風体の男、ドフラミンゴであった

 真一文字に閉じられた口で明らかに不機嫌と分かる

 わざとらしく靴を鳴らして真っ直ぐにクロコダイルに向かっていけば、目の前で立ち止まって見降ろしてくる


「クロコダイル、テメェ俺の部屋へ入ったな?」

「あ?何言ってやがる。言いがかりは止めてもらおうか」

「言いがかりだ?証人がいんだよ」

「ほぉ?ならその証人とやらを俺の眼前に連れて来てもらおうか」

「それはしねェ。俺の愛鳥だ、誰の目にも触れさせねェ」


 あの雛鳥速攻で言いつけ破ってんじゃねェかと今度はクロコダイルも不機嫌になる

 だが、これに関しては自分にも落ち度がある。あの頭の弱そうな雛鳥相手に「誰にも言うな」の一言だけで済ませて退室してしまった。本来なら徹底的に恐怖を植え付けて逆らえないようにするべきだったのに、あの変に無邪気な様子に毒気を抜かれてしまった

 恐らく『鳥』は嘘を吐かない。というより吐けないであろう。なら『鳥』が証人ならば間違いないとドフラミンゴが判断したのだと容易に想像出来た

 ならば下手に繕うよりは正直に話した方が良いだろう


「……あァそうだ、テメェの言う通り部屋へ入った。随分と純真無垢な雛鳥にご執心な様で、まァ笑わせてもらったよ、クハハ」


 煽るような言葉にドフラミンゴは覇気を放つ

 王たる素質のある者が持つ覇王色の覇気。相当お冠だとクロコダイルは内心笑った

 耐性の無い物、力の無い物は気を失い、目を覚ましているのは覇気を放った本人とほんの数名

 この覇気相手に気を保てるってのは中々見どころがある、後で声を掛けてやるかと1人考えるクロコダイルにドフラミンゴは大きく舌打ちをし会場を去って行った

 さて目障りな野郎がいなくなって清々したと言わんばかりに笑い、起きている数名に早速声を掛けた



 あの夜会の数日後、突然クロコダイルのデスクの電伝虫が呼び出しの為に鳴く

 この番号を知っている者は限られているし、大抵は仕事の為の電話なのもあり3コール以内に受話器を取った


「誰だ」

「フッフッフ、俺だ」

「あ?」


 名乗らずともその声と笑い方で瞬時に誰か理解した

 苛立ちを露わに溜息を吐く


「何の用だ」

「いやな、俺もちと予想外だったんだが、俺の『鳥』がお前の事を気に入っちまったみてェでよ、次はいつ会いに来るんだって隙あらば聞いてくんだ」

「…………」


 本当に予想外で困惑しているのか、電話越しの声音が少し上ずっている

 予想外か、それはこちらの台詞なのだがと固まるクロコダイルを無視し、ドフラミンゴは勝手に話を続けていく


「どうせ近々取引の為のやり取りがあるだろう?折角だ、お前を俺の城に招待してやるよ」

「どの立場から物言ってやがんだ、招待させてくれの間違いだろう?」


 互いが互いに上から物を言われるのが嫌いな性分なのも相まって、ひたすら相手を煽る会話が暫く続いた

 いい加減話を本筋に戻すかと互いが理性的になれば、仕事関連の話なのもあり打合せの日取りは一分にも満たない時間で決まった

 話が終わればドフラミンゴがまだ何か話そうとしているのを無視してすかさず電話を切った。恐らく愛する『鳥』の自慢話であろう事は普段からの行いと日々の積み重ねで推測出来た

 椅子に深く腰掛け、背凭れに身体を預けて大きく息を吐く

 三日以内にドフラミンゴから居城のある島へのエターナルポースが届く。届いたらすぐに出発する。その為に荷物は今の内に準備しておこう

 それにしてもあのほんの短い時間で懐くというのは一体どういう事だ、もう少しパーソナルスペースを広く持て、第一に会って数分で脅しにかかるような奴にまた会いたいなんて気は確かか

 この場にいない『鳥』に向けてひたすらに不満を言い続ける

 仕方ない、次に会えばその時にぶつけてやろう

 

 愚かな雛鳥

 次に会う時はもう少し利口になっていると助かるんだが、そうすぐには成長しないだろう

 哀れな雛鳥

 自分自身で戸を閉め、鍵をかけられる事を望むように躾けられたその頭で、外へ出ようと考えられたら面白いのだが、それも恐らく無いのだろう

 ならばせめて道化のように俺を楽しませろ

 あの男の唯一にして最大の弱点でいろ

 そうすれば、いつか手折るのが楽しみになる


 かつて砂漠の王と呼ばれた男が、姿形を歪に変えられた男に気付くか否か

 答えはさて…




 




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