鮮やかな輝き
「ほっ、ほおぉ、んお”ぉ…!」
男性の興奮を高めるために淡い赤にライトアップされた薄暗い廊下。
妖しい雰囲気が漂うその空間に、扉の向こう側から獣の如き呻き声が漏れ出ていた。
「はう”っ、んあっ、んひぃぃぃ…!!」
「はっはっは、相変わらずここを突くと弱いなぁお前。」
四つ這いの姿勢で美しい翼を無骨な腕に鷲掴みにされる少女。
その名は桐藤ナギサ。トリニティ総合学園の長の一人”だった”少女だ。
彼女の瞳には理性の光は無く、口の端は緩み切り、だらしなく涎を垂れ流す。
二の腕に生々しく残る無数の注射痕が、彼女を理性無き獣にまで堕ちている理由を暗に告げていた。
筋骨隆々の男がその腰を打ち付ける度、ナギサの尻たぶはバチン、バチン、と音を立てる。
「そろそろ出すからしっかり締めろよ。ほら、追加の砂糖だ。」
「ん、お”おおぉぉぉぉぉぉ!?!?」
男はナギサのアナルに深々とボトルを挿し込む。
すると、その中に並々と入っていた砂糖水がナギサの直腸へトクトクと流れ込んでいった。
ただし、砂糖の濃度が非常に高く、水と呼称するには些か疑問の残る程の粘度を持っていた。
そんなものをねじ込まれたナギサは人語を話せるはずも無く、白目を向いて品性の欠片も無い野太い叫び声を上げる。
調教されきった身体は膣肉を痙攣させながらも、自らを貫く男根をぎゅうぎゅうと締め付けた。
そして───
「っ…!」
「ご、ほおっ、ほ、ほおおぉぉぉぉ…!!!」
膣内に注がれる熱を持った白濁液。
ナギサは最早何度目かわからないが、熱が自身の胎を焼いていくことを感じた。
そして四肢からは力が抜け、その場にうつ伏せに倒れ伏す。
しかし、その姿勢は尻を高く上げた状態に留まった。
「お”………ぁ……………」
「ふぅ……く、ははは!これまた、腹のせいで情けない恰好だな!」
そう、彼女の腹。それは大きく膨らんでいたのだ。
故につっかえて尻を持ち上げる形となってしまった。
その様子を男が嘲笑しながら見ていると、何やら様子がおかしいことに気づいた。
「うん…?これは…産卵か。人生初の貴重なシーンだ、撮っておいてやろう。」
気づきはしたが、男はその介助をするでもなくカメラを構える。
ミチミチと音を立て、広がっていくナギサの女性器。
恐らく砂糖をキメていることで胎内に卵を維持するための筋肉までもが弛緩し、体重で腹が押されて出てきたのだろう。
みるみる内にその全貌を現すべく、更に女性器を押し広げていく。
「んお”っ………」
「おお、出た出た。デケェな、流石にガキが入ってるだけある。」
そして、ぬぼん、という音を立ててベッドの上に転がり落ちた。
出したばかりのナギサの女性器はぽっかりと穴を開けたまま、中からほかほかとした湯気を立てる。
呼吸の度に穴がヒクヒクと痙攣するあまりに無様な姿を、カメラは撮り続けていた。
「よく産めました…っと!」
「ひぐっ………」
男の平手がナギサの尻に打ち付けられ、バチンッ、と音を立てて紅葉を作る。
その紅葉を満足気に眺めた後、男はベッド脇に落ちていた彼女の改造された制服を手に取る。
そして、未だにぬらぬらとナギサの体液と自身の白濁液に塗れた卵をゴシゴシと拭き取った。
「うっわ…きったねぇ…」
ボロ切れの方がマシとも思える、痴態を晒す為の服は布面積が圧倒的に足りない。
故にあっという間にぐちょぐちょに汚れ切り、男はそれをゴミ箱へ投げ捨てると卵を抱え上げた。
「…確かガキはひり出させた客の自由だったな。」
「とはいえ、俺ぁガキは要らねぇし…」
「わら…ひの…赤…ひゃん…」
「お、まだ意識あんのか。ケツ穴砂糖水に耐えたのはお前が初めてだわ。」
ナギサのその精神力に感心しながらも考え込む男。
彼は経済的に困窮しているわけではなく、寧ろかなり裕福な部類に入る。
だが男は女を嬲り、貶め、その加虐趣味を満たす事以外に興味が無いのだ。
故に、孵化すれば生まれてくるだろう命をどう扱ってやろうか、という思考に行きつく。
「かぇ、ひ……………───」
「………へへっ…!」
腕を伸ばしたまま限界を迎え、失神するナギサ。
何かを思いついたその表情は、悪意に満ちていた。
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「はぁ…あのおじ様、激し過ぎでござらんか…」
「全くですねぇ…このままだとアソコが痛くて眠れぬ閨の美少女です。」
客とのセックスを終え、体液でベトベトの身体のままに後片付けをする生徒達。
彼女らは元はワイルドハントの生徒だった。
何故こんな違法な娼館にいるかと問われれば、騙されたとしか言い様が無い。
砂漠の砂糖が流通し始めた頃、新たなる芸術のためのインスピレーションを求めて飛びついてしまったのが運の尽きだった。
出回り始めたばかりの砂糖の価格はその依存性故に非常に高価で、彼女らは砂糖の安定供給を条件に契約書にサインをしてしまったのだ。
悪い大人が用意した契約書には、何重にも彼女らを縛る呪いが如き内容が記載されている。
当然、砂糖に蕩けた頭でそんなことを理解し、判断することは不可能であった。
故に今日も、明日も、彼女らは外部からの助けが無い限り、大人の食い物にされ続ける。
「断頭台に立たされた姫が如き心持ち…ですが心配ありません、この砂糖入りの軟膏があれば…!」
「いやそれ、逆に沁みて痛いのでは…?まあ砂糖入りなら何でもよかろう。」
「ツムギ嬢も使われるか?」
片付けながら談笑をする彼女らから少し離れた場所にいた少女、ツムギはその声に振り向く。
彼女は同様にドロドロの身体のままただ一人、別の作業の準備をしていた。
「…いいえ。そも、その軟膏はどこで調達されたもので?」
「お客様の一人に頂きまして。まあ私たち、外出も金銭の使用も赦されておりませんから…」
「ではお捨てになった方がよろしいかと。時に、そういったもので孕まされた方もいると聞きますから。」
ツムギにバッサリと切り捨てられた生徒は、自身の手の中の軟膏に目を向け、訝しんだ後にゴミ箱へと叩き込む。
その様子を見届けたツムギは準備が出来たのか、震える指先で絵筆を手に取り目の前のものに向き合った。
彼女は大きなため息を吐く。
相も変わらず砂糖が不足すると震えっぱなしになる指では、弦を弾くのもままならないが故に。
「そう言えば何か言いつけられておられたが…何を為しているか伺っても?」
「ピサンカ、を作っております。」
「ピサンカ?これまた奇特な…あぁ、有翼系娼婦の無精卵ですか…」
ツムギの目の間に鎮座する、とても大きな卵。
彼女はその表面に次々と鮮やかな色を塗り、彩っていく。
「───『サルヴェイション』。…とても、ありがたいお話ですから。」
「姫にも魔王にもなれず、英雄譚では英雄を破滅させることすらある魔女に等しき存在、娼婦…」
「斯様に日の目を見ないトリックスターへと零落し果てた私に、与えられた数少ないスポットライト。」
「恣意的に用意された細く長い光なれど、それは確かに、私には光なのです。」
救われないのは自身の行いの結果とは言え、自分をその女体以外で表現できる機会。
それが救いなのだと語るツムギの表情は、昏いながらも確かに喜色があった。
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「はぁ…はぁ…はぁ…!」
ナギサはフラフラと、卑猥な彫像が並ぶ廊下を歩き続ける。
股からは未だに体液がだらだらと垂れ流され、壁に手を突いてやっとの状態だが関係無い。
目が覚めた時に男に言われた言葉が、彼女を突き動かしていた。
「私の…私の、赤ちゃん…!」
男にはこう言われた。『展示品の加工所に出しておいた』と。
ナギサの認識にある加工所は、この娼館に在籍、いや、収監された者達の絶望が集う場所だ。
砂糖にその心身を蝕まれて求めるがあまり、切り売りした自身を構成する物。
それらが訪れる客に見せ、愉しませる為に加工される場所。
下着や普段使いしていた化粧品等はもちろん、中には角や正義実現委員会の腕章なんてものまであった。
そんな場所に望まぬ子なれど、自分の子が運び込まれてしまったと聞いてはいても立ってもいられなかった。
未だに砂糖は抜けきらず、ナギサを蝕み続けている。
10m先の扉に手を掛けようとしたり、落とし穴かと思えば階段だったりと、散々な有様だ。
しかし、それらを何とか気力で退け、遂にナギサは加工所に辿り着いた。
そこで彼女が目にしたのは───
「ぁ…あ、あ、あああぁぁぁぁぁぁ…!?!?!?」
「あ、貴女はナギサ様…?如何なさい───っ!!!ま、さか…!?」
「私のぉぉぉ…!私の赤ちゃんがぁぁぁ…!!う”ああぁぁぁぁぁ!!!」
鮮やかに彩られ、美しい光沢を放つ我が子の亡骸だった。
ナギサは縋り付くようにそれを優しく抱き締め、大声を上げて泣き叫ぶ。
その脇では何も知らなかった下手人が、自らの髪を引き千切れる程に引き、頭を抱えて蹲っていた。