魚人島 その1 立ち込める暗雲

魚人島 その1 立ち込める暗雲

名無し

長い潜航の果てに、とうとうルフィ、ウタ、ナミは魚人島の入島門前に到達した。途中カリブー海賊団の襲撃を返り討ちにし、クラーケンとの邂逅、巨人の仲間(?)のような魚人と一戦、などのアクシデントはあったものの、ついにあと少しで魚人島に入るところまで来た。途中ハモ(?)の魚人らしき人物が気絶していたが魚人だし放置しても大丈夫だろう、というナミの判断でスルーし門を入ることにした。入国審査を通過し、本島に到達する。


港に入り、船を岩影に隠して降りる。そしてたくさんの魚人や人魚達が練り歩く街を見て、


「すっげ~~~!」

「明るい・・・本当に深海?」

「凄い・・・これが本当に海の底なの?」


ルフィ、ウタ、ナミはそれぞれ感想を言う。

「おいウタ!ナミ!あっち行こう!」

「あっ待ってルフィ!行くのはこっちだよ!」

「こら!勝手に行動しない!子供か!」

魚人達は珍しいのか、こちらをチラチラと見てくる。

「ホントに魚人だらけだな」

「魚人島だからね」

「あそこ『人魚の入り江』って言うらしいわよ」

道を通るに街の外観などを示した案内看板を見ながら入り江を指差しナミは言う。

「魚人島ってホントにどうやって光が差し込んでいるのかしら」

「不思議だよね、空まであるし」

「うわ!空中に海の通路が!」

「「まるで童話の世界みたい!!」」

初めて尽くしの景色に彼らは童心に返り驚く。

そんな感じになっていると。

「あんたら、ここに来るの初めてか?」

鱒の魚人が話しかけて来る。

「ええ、そうなの、私たち新世界に行くために来てて・・・」

ナミはそう返した

「そうか、つい数時間前にも人間たちがきて、人魚の入り江でちょっとした騒ぎになっててな。輸血がどうとか言ってたが・・・」

「へぇ、そうなの」

「でもまぁ、無事にここに着いて良かったなー」

「?。どういうこと?」

「最近、魚人街の連中・・・まあならず者って言っていい連中なんだが、そいつらがここにやってくる船を襲ってるって噂が・・・」

「そんなことが」

「怖い話だ」

「私たち運がよかったのね。ところで服とか買える場所とかある?」

「ああ、それなら・・・」

ナミ達はブティックに向かい服を買う。オーナーのヒトデの魚人がオススメを言ってきたがそれをやんわり拒否しつつ自分の欲しい服を買った。


店を出た直後、空から「じゃーもん♪じゃーもん♪」という謎の音頭が聞こえる。見ると馬鹿デカいクジラとそれにのった口ひげと胸毛を蓄えた巨大な人魚の男その隣にはこれまたデカいサメがいた。

周囲の魚人達は目を剥いて驚く。

「嘘だろ!?」

「なんであのお方が!?」

「何かあったのか!?」

口々に言う彼らを尻目にルフィは、

「誰だ?あのおっさん」

「ちょっ、ルフィ!?知らないの!?」

ウタはルフィを見る。

「ん?ウタお前知ってんのか?」

「あの人はね、この魚人島の・・・・リュウグウ国王!"海神"ネプチューンよ!!」

「へー王様なのか」

「軽っ!?」

ウタはルフィの世間知らずぶりに思わず驚く。

「如何にも、我はリュウグウ王国国王、ネプチューンじゃもん」

「本当に王様なんだ・・・」

ナミはウタとネプチューンを見ながら呟く。

「おいメガロ。この者で間違いないのか?」

その声を聞いたサメは頷くように頭を揺する。

「そうか。おい!そこの人間達!おぬしらを竜宮城に招待するんじゃもん!」

「りゅりゅ、竜宮城!?」

それを聞いた魚人達は驚きの声をあげた。


数十分後 竜宮城

彼らは巨大サメが彼の娘のペットであることやこの海底に光が差す理由などを聞きながら竜宮城の連絡廊を通り、城にたどり着いた。

「おー!!かっこいい!」

「「キレーなお城!!」」

ルフィとウタとナミが感嘆の声をあげる。

門が開き城内にたどり着く。

入ってすぐにネプチューンは右大臣と左大臣に怒られていた。ナミとウタはその光景に気をとられルフィがいなくなったことに気がつかなかった。

「あれ?ルフィは?」

数分経ってナミは気付いた。

「ルフィは5分とじっとしてられないよ」

「いやここ深海の王城なんだけど・・・」

ウタはやれやれと諦めたよういい、ナミは彼の自由さに呆れる。

すると、リュウグウ王国の騎士達がなぜかこちらに武器を向け始めたではないか。

「え?なに?ルフィが何かした?」

「すまんな、おぬしら。おとなしく捕まってくれんかの!!」

そういってネプチューンが兵を差し向けてきた。


その頃ルフィは硬殻塔に囚われていたしらほし姫と出会い、バンダーデッケンとかいう悪質ストーカーの性で硬殻塔に十年近く軟禁されていること、外の世界のことなどを話していた。途中で来た兵士によると、島で当たると有名な占い師がルフィによって魚人島が滅びるという予言をした為に彼と一緒に入国した仲間を捕らえようという話しになったらしい

「ルフィ様のお仲間様は大丈夫なのでしょうか?」

「あいつらは強ェしあの兵士達に捕まえんのは無理だ。ウタが本気だしゃ勝負にすらならねェよ」

「そんなにお強いのですね」

「あぁ!」

そういうとルフィは、

「そういやお前、十年もここにいるんだよな」

「え?は、はい」

「どっか行きたいとこねぇか?」

「え?それはありますが」

「ならここ出て散歩に行こう!なんかとんできたらおれが吹き飛ばしてやる!!」

「え、えぇ~~~!」

ししし、と笑うルフィにしらほしは驚いた。


城門付近

「何をしておる!たった四人じゃぞ!?」

そこでは何人かの兵士が倒れていた。主に気絶させたのはウタ・・・ではなくいつの間にか闘いに参戦していたゾロとブルックだった。

なんでも竜宮城に送る物資を乗せた船に勝手に入り昼寝していたらしい。ブルックもゾロについていき勝手に乗り込み竜宮城に迷いこんだらしい。

「なんであんた達がいるのよ!?」

「別にいいだろ!?助けてやったんだからよ!」

「頼んでないけど!?」

「皆、あんまり暴れないでよ!?適当なところで切り上げて逃げるわよ!!」

「ナミ、そんな事いっても!」

「結構な数ですよこれはヨホホホホ!!」

「て言うかこの骨何!?ウソップの仲間!?なんなのあいつタヌキにハチに今度は骨!?サーカスでもやるつもり!?」

ナミはブルックに向けて絶叫する。

「ヨホホホホ!ところで、麗しきお嬢様方・・・」

急に神妙な声色でブルックがウタとナミに語りかける。

「な、何・・・?」

「パンツ、見せてもらってもよろし「「見せるか!!!」」ヨボッッッ!?」

突然のセクハラ発言に暴力で答える彼女達。

「お前ら、真面目にやれ!」

ゾロが文句を言うが、

「「こいつのせいでしょ!?」」

と、ブルックを指差し、

「ヨホホホホ!テキビシー!!」

ブルックはテンション高めに笑っていた。

数分後

「で、なんで全員ぶちのめしてるのよ!!」

ウタがシャウトする。

「知るかァ!やっちまったもんはしょうがねぇだろうが!」

「だからって限度があるでしょ!?王様まで拘束するとかやってること海賊どころかテロリストよ!?」

「てかお前もノリノリで暴れてただろうが!ウタ!」

「しょうがないでしょ!?向こうが変な因縁で捕まえようとするんだから正当防衛よ!」

「ウタ!!!私言ったわよねぇ!?適当なところで切り上げるって!!!」

「ヒュェ!?ナミ!?なんでセンゴクさんと同じようなオーラ纏ってるの!?」

「というか、ルフィさん何処です?」

「本当にね!あのアホどこほっつき歩いてんのよ!!」

ネプチューン達を叩きのめし拘束したあとギャーギャーと責任の押し付けあいをするテロリスト達。もとい海賊+元海兵達。

そうこうしているとネプチューン王の息子達の一人フカボシ王子から連絡が入る。そこでゾロは今回の騒動の主犯はルフィであると言った上で「一応王達は拘束しているがこれ以上危害を加えられたくなければこちらの要求に応えて貰う」といけしゃあしゃあと言い、要求を言った。それに対してフカボシは要求に応える姿勢を見せた上で「そういえば、ジンベエから元海兵ルフィが魚人島現れたら伝えて欲しいことがあった。『ホーディと闘うな』『海の森で待つ』と」、と言ってきた。

電伝虫を切ったあと、ドォン、ドォンと硬いものに何かが激突するような音が響く。

「?何だ・・・」

「ネプチューン王!この方角は・・・!」

「まさか・・・デッケンか!?おい!海賊共!音のする方に誰か行ってくれんか!?」

「あぁ!?なに言ってやがる!」

「誰でも良い!!あそこには我が娘しらほしがおるんじゃもん!!あの子に何かあったら貴様等許さんからな!!」

「娘・・・ということは人魚姫でしょうか?ヨホホホホ!私がみてきましょう!」

「おい!そこの骨!」

右大臣が声を上げる。

「案内するから私も連れていけ!姫様の身に何かあったら死んでも死にきれん!」

「ヨホホホホ!わかりました!」

右大臣を担ぎ上げブルックは走る。

数分走り硬殻塔にたどり着いたとき、彼らは絶句した。

「なっ・・・!?」

「これは・・・!?」

硬殻塔にぶつかって来たもの・・・それは『人』だった。何人かは激突の衝撃で動けなくなっていた。

「う、うぅ・・・」

動ける人間達は何とか立ち上がりこちらに剣を向ける。思わずブルックも剣を向けた。

そのとき硬殻塔の扉が開いた。何事かと思いそちらに目を向けた瞬間。

「サメェェェ!!行っけェェェェ!!」

「シャァァァァァァ!!??」

丸々と太ったサメにのったルフィが出てきたのだ。

「「エエエエエエエ!!??」」

ブルックと右大臣は絶叫した。そして塔の中を見ると誰も居なくなっていた。

そのことを報告するためゾロのところに戻った二人だが、彼らは気が付かなかった。塔に投げつけられた人間の一人が魚人島本島とリュウグウ城をつなぐ連絡廊のレバーを起動していたことを。

ブルックと担がれた右大臣がゾロの元に戻ったとき、門が開き見るからにガラの悪そうな魚人達がゾロゾロと現れた。

「貴様・・・ホーディか!?」

左大臣が魚人達を引き連れていた人物に対して驚きの声を上げる

「なにあいつら・・・って、え?」

ウタとナミはホーディと呼ばれた人物に目を向け、彼の腕の刺青に目をやる。そこにはかつてナミ故郷で暴虐の限りを尽くした男、アーロンと同じ刺青があった。アーロンの暴虐を思いだし思わず刺青があった箇所を握るナミ。

「テメェらなにもんだ?」

ゾロが質問する。

「俺はホーディ・ジョーンズ。新魚人海賊団船長。アーロンの意志を継ぎ、お前達人間を海の底に引きずり下ろす。早速で悪いが、この城は明け渡して貰う」

「何を言っているんじゃもん!?」

「ネプチューン、貴様も老いたな。海神としての実力があった頃の貴様ならこのような無様なことにはならなかっただろう。だが、これは好機だ!貴様を処刑し、俺がこの国の王になる!!そして始まるのだ!!俺たち魚人が、世界の王になるための聖戦が!!」

「・・・貴様!この国を、民を、戦に巻き込むつもりか!?そのようなことさせるものか!!」

「そのザマでほざくな」

「ぐっ・・・!」

ネプチューンとホーディが言い合っていると隣にいた陰険そうな男が声を上げた。

「バホッ、バホホ!お前らの話はどうでもいい!それよりもしらほし!しらほし姫は何処だ!?お父様!」

「誰がお父様じゃ!?まさか貴様がデッケンか!あのような狂気の所業をする男に娘をやるつもりなどないんじゃもん!」

「しらほし姫ってあの塔にいたはずの方ですよね?なら居ませんよ?」

ブルックが会話に割って入る。

「なっ、何ィ!?さっきまではここに飛んでいたはずだが!?」

「いや間違いない。私も確認した」

右大臣も認めたくはないが事実を告げる。

「チッ!」

デッケンはナイフを投げる。するとナイフが別の方向に行くではないか。

「くっ!いないというのは本当か!しかし生きているのであれば問題ではない!俺の愛から逃れられると思うなよしらほしィ~~~!!!」

彼は珊瑚に触れ、投げるような動作をして珊瑚にのりそのまま外に向かった。

「良いんですか?船長」

ホーディの部下が聞くと。

「放っておけ。しらほしを始末してくれるなら問題じゃない」

そう言って彼はゾロ達に向き直り、

「で?この城を明け渡してくれるのか?」

「おい、人間達!鎖を解け!あのような連中に国を明け渡すなど正気の沙汰ではない!!」

「はぁ!?なに言って・・・」

「わが国は今年、世界会議(レヴェリー)に参加する」

「?」

「「「!!!」」」

なんのことかわからない、というゾロに対してウタ、ナミ、ブルックは事の重大さを理解する。

「ゾロさん、鎖を解くべき」

ブルックは冷静に進言した。

「どういうことだ?」

「彼らは王位簒奪が成功した暁には世界会議に参加するつもりでしょう」

「世界会議は世界政府加盟国の王達の会議」

ナミが話を繋ぐ。

「奴らの計画が成功したら奴らは他の国の国王を皆殺しにするつもりよ」

ウタも話を繋ぐ。

「!!。そういうことか!」

ここにきて、ようやくゾロも事の重大さを理解した。

「ジャハハハ!解ったか?俺の計画の崇高さが!」

「お前らがろくでもねぇこと考えてるってのは解ったよ!」

もし、国の王がいきなり消えたらどうなるか?それも五十の国の王達が。その混乱は計り知れない。国内の混乱で済めばそれは幸運だろう。しかしもし世界政府加盟国であるが会議に参加していない国からすればその混乱は付け入る隙になる。そうなれば戦争にもなるだろう。秩序の崩壊、それはテロリズムを誘発する。それこそ世界各国が戦う『世界大戦』レベルの未曾有の大惨劇にも発展しかねない。

それを理解して彼らはホーディと戦う意志を示した。

「ふん、人間ごときが、深海(ここ)で魚人(オレ)に敵うとでも?」

ホーディは外壁を掴む

「粗鮫(ソシャーク)」

「!!!」

外壁にヒビが入り海水が入り込む。

「マズッ!!」

ウタは一目散に階段を上り海水から逃げる。

「ヨホっ!これはヤバいですね」

ブルックは海水をモロに浴び、フラフラになる

「ああ、もう!能力者ってこれだから!」

ナミはブルックの服を引っ張り階段を上った。

「一刀流 厄港鳥!!」

「嵐脚・断(ダン)!!」

ゾロは飛ぶ斬撃を、ウタは嵐脚に覇気を乗せ威力を高めた技を繰り出す

それに対しホーディは近くにいた仲間を盾にした。

「アイツ!」

「最っ低!」

ゾロとウタが悪態をつく。

「ジャハハ、何だ?何か気に障ったか?」

「テメェ・・・!」

ゾロは明確に怒りを露にしホーディに切りかかる。ホーディも三叉槍で受ける。海水はホーディの腰辺りまで増えてきている、時間はない。

ホーディの仲間達がウタ達を捕らえようとするも、ウタの技とナミの武装の技術によって近づけない

「ナミ、さっきからそれなに!?」

「海軍のツテで空島に行ってた時期に色々学んで作って貰ったの!魔法の天候棒(ソーサリー・クリマタクト)って言うの!!」

「かっこいい!」

目を輝かせつつウタは敵を迎撃する。

気が付くともう城の半分ほどが海水に浸かっていた。

「不味い、ゾロ!」

そう思いナミはいつの間にか兵士からくすねていたシャボンを出す小さな珊瑚を使い呼吸を確保し海水に潜る。そこで驚愕の事態を目撃する。

海中において魚人は絶対の力を誇る。呼吸が必要な人間と違い魚人は海中でも呼吸が出来るからだ。故に海中における魚人の驚異は計り知れない。

なのに。

その魚人(ホーディ)が人間(ゾロ)に斬られ、負けていた。

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