これで分かる!!よい子のための魔界大全集(別名:どうでいいネタ帳)

これで分かる!!よい子のための魔界大全集(別名:どうでいいネタ帳)


◇魔界とは?

 遥かなる異次元の奥底に住まう渾沌のデーモン共。彼らは定命の存在の罪・穢れから産まれ堕ち、神々からも見放されたそれらはやがて恐るべき禍が物、即ちデーモンへと変じる。デーモンは生ける罪と悪の化身であり、それが憤怒や暴食などの古典的な罪であれ、あるいは拷問や殺人、反逆罪や裏切りといった犯罪行為への過剰な執着などのよる「特殊な」堕落であれ、デーモンはただひたすらに破壊を求め、害し、滅ぼし、貪り喰らうことだけを望む。

 形成されたデーモンの大まかな目的は 2つ存在しており、その1つは個人の力を蓄積すること、もう 1 つは定命の魂を堕落させて罪と悪で穢すことにある。このようにして、デーモンは魔界で増殖し、成長し続ける自分達の階級を強化するために、新しいデーモンを終わりなく供給することができる。この為、ある意味においてデーモンは、数ある魔物の種族の中で最も多産で破壊的であると言える。

◇地理

 魔界は連鎖する破壊と苦痛と不条理の重なる無限の領域であるが、多くの場合、魔界の最高神たる「禍悪祟七大神」によって境界が定められることによって、一連の積み重ねられた、または入れ子の層として機能している。最も愚かしく最も勇ましい無謀なる探求者は、以下の下層に到着するために、個々の階層を通過する必要がある。それぞれの主要な土地は禍悪祟七大神に仕える副官、または恐るべきデーモン・ロードの一柱によって統治され、階層そのものは七大神の何れかが完璧に支配している。

 何れにせよ魔界とは定命の者らが見る悪夢や病的な幻覚、その内に宿る底無しの悪意と狂気の全てが投影されたような世界であり、暗く幻想的な反宇宙または輝ける天界の影として姿を見せている。

 常命の者が住まう物質世界とは異なり、ここでは時間も空間も意味をなさず、無形にして有形の世界であり、ここは彼らの「故郷」であると同時に戦場でもある。魔界では常に、禍悪祟七大神やその下位に座すデーモン・ロードの諸侯が領域を巡って絶えず争い続けており、1つの神が力を増せば、それ以外の神と階層を制御できるエネルギー量が増える。……それは即ち、魔界における支配領域と自身の影響力が増えるということに他ならない。

 各階層では支配するデーモン神の特徴や性質を反映させた地形や風景が生成されている。しかし、その地形や風景は同じ光景を目にすることはなく、彼らの気紛れと理解しがたい意思の如く常に変化し続けている。

 魔界とは正に文字通りの「渾沌」を体現した世界であり、終わりなき戦いと変化が常に起こっているのだ。

 余談だが、ここに記された情報や神話の数々は様々な年代や諸世界の伝承と伝説を基として書かれたものであり、正確かつ絶対的な情報ではない。……何故ならば、常に変化が起こっているためだ。

あくまでも「参考程度」の認識で見る事をお勧めする。

ギエハニム

 第 1階層ギエハニム「アイボール神」によって統治されている。ここは神々からも見放され永遠に呪われた魂が集まり、裁かれ、永遠の罰を受けるために適切な層に送られる地である。ここは不気味な赤黒い夜空に覆われ、沈む事のない永遠の満月に照らされた虚無的な階層であり、不毛なる砂漠地帯、荒涼とした荒野と岩山、陰鬱な沼地、瓦礫の散乱した広大な荒れ地などによって構成され、デーモン・ロードを筆頭とした有力なデーモンの諸侯が住まう鋼鉄の城塞や塔などが建てられている。

 時折、ギエハニムの上空を突如として赤い光が覆い、巨大な火の玉がこの階層の上空を常に横切って、命中した場所で手当たり次第に爆発するが、血のように赤い空の下、火の玉の爆発は予測不可能である。「アイボールの涙」と称されるこの有害な自然現象は、かの「万物を見る者」の理不尽な嫉妬と激怒が具現化したものであると言われる。

ティチホズ

 第 2階層ティチホズ「ウルムシャア神」によって統治されており、飽くなき欲望とあらゆる刺激を満たす堕落した娯楽と、常軌を逸した快楽の数々で彩られた「偽りの楽園」である。一見するとこの階層は、有害かつ危険に満ちた魔界とは似ても似つかぬ程に穏やかで平和的な地であり、ティチホズを映し出す雄大かつ芸術的な自然の数々は最高級の絵画の様で、五感と本能の全てがこの地を至福と歓喜に満ちた天上の楽園であると錯覚させる。

 だが、牧歌的で極めて美しい楽園世界の裏側では、口にするのも憚られるような悪徳と背徳、常軌を逸した堕落と享楽による狂宴と冒涜の数々が絶えず繰り広げられており、一度でもこの世界で提供される「禁じられた果実」を口にすれば、未来永劫と元の世界と平穏な環境には戻れない。

バラシェハト

 バラシェハトは魔界の第3層であり、魔術の生みの親である「アブラクサス神」によって支配されている。嘘と陰謀といったあらゆる虚偽を「編み棒」とし、かのデーモン神の強大無比なる魔力そのものを「糸」として紡ぐことによって誕生したこの領域は、「現実」という名の精巧かつ実体のある幻影に支配された階層である。

 壮大なる「虚偽」そのもので満たされてたバラシェハトは、侵入者の思考や恐怖、妄想や不安感をも映し出し、実体化したこれらの精神的要素は映す対象の本質はおろか、その目的意識と熱意をも歪め、無限の狂気と絶望として跳ね返す。最も強い意思と魔力を持つ者でなければ、この地の探索はおろか、十重二十重に塗り固められた虚偽の帳の奥に隠された「真実」は見抜けない。

アディシェス

 魔界の第 4階層アディシェス「ゾハク神」によって支配されている。この地は最強格の火の精霊や最高齢のレッド・ドラゴンをも容易く焼き殺す魔界の業火によって絶えず燃え盛っており、活火山、火山灰の丘、突如として吹き出す炎、溶岩流の川と海、有毒な煙の噴出する底無し穴、「ゾハクの怒り」と称される凄まじい力による黙示録的な火の雨、灼けた砂に満ちた灼熱の荒野であり、絶えず荒廃している。

 異常なまでの熱を発するこの世界において地震災害は日常的であり、地面からいきなり溶岩が噴出したり、前兆なく地割れが起こるのは特に異常なことではない。アディシェスの空は暗く、星のない虚無であるが、常に噴出する幾多の火炎がゴツゴツした景観に気味の悪い照明を与えている。

テゼルモス

 魔界の第5階層テゼルモス「オーカス神」の領域であり、終わりなき闘争と殺戮が繰り広げられる永遠の戦場にして、夥しい数のアンデッドが蔓延る一種の冥界である。

 様々な環境の戦場が用意され、果て無き屍山血河で満たされたテゼルモスは、終わりなき暴力と怒りの応酬、殺害と衝突を礎石とした、憤怒と流血の象徴でもあり、あらゆる戦いと全ての征服、永遠の蹂躪と勝敗の数々がここにある。

 絶えず新鮮な血と屍に溢れたこの地が静寂に支配されることはない。そこでは鋼や真鍮で作られた無数の魔笛が甲高く響き、振るわれる鞭と戦旗の鋭い音が轟き、武器と武器の激突音が鳴り渡る中、生ける狂戦士と死しても尚、憤怒と闘争に駆り立てられるアンデッドの阿鼻叫喚の悲鳴、そして他ならぬオーカス神の咆哮が常に階層全体を圧しているからである。

ゼブル

 第6階層ゼブル「バールゼブブ神」の領域であり、腐敗と疫病、不浄なる生命力に満ちた地である。病的な色をした空と死病じみた灰色の雲に覆われた上空には、大小様々な浮遊大陸が浮かんでおり、ここから「腐り爛れた天の国の女王」と眷属達がその威光をひけらかしている。

 地上部分は腐敗と疫病、汚染と廃墟の広がる地獄である。この階層の自然は全てが外観が損なわれ、破壊され、剥ぎ取られており、病気に罹った樹木と枯死した木々、有毒かつ有害な植物や菌糸類が混ざり合わさった広大な樹海、露天掘鉱山、採石場、保守点検と整備の足りない危険な道と橋、酸と胆汁の河、有害汚染物質や毒で満たされた湖、鉱滓の山、荒廃した都市、汚染された運河、炉、鉱山になっており、悪臭を放つ蒸気や振動に満ちている。

ヴァチカル

 魔界の最下層とされるヴァチカルは、「バフォミトラ神」の支配する階層であり、永遠の闇夜に閉ざされた、最も複雑で法則性が読めない迷宮じみた世界だ。敬虔なるバフォミトラ神の信徒は、ヴァチカルの階層全体を有角王の偉大なる居城そのものと見做す傾向にあり、彼らは第七階層を「象牙色の迷宮」と称している。

 この様な狂信者にとって「象牙」とはかの闇黒公が自ら望んで俗世間から離れ、主に精神的で難解な探求を行う場所の隠喩、またはその雰囲気を指す言葉であり、かの神の掲げる「宇宙論」の高潔な純粋さと偉大さの象徴を指す言葉として伝統的に使われている。

 この地を覆い尽す闇夜は、かの有角王の妻にして悪しき夜の女神たる「アハズ神」そのもの、またはかの女神が支配する独自の領域である「閉ざされた夜(シャタードナイト)」ではないかと噂されている。

 また、魔界の旧き伝説によれば、「8番目の隠された階層」があるとデーモンはおろか他の世界の神々からも噂されてるが、その真実に達した者は未だ皆無である。

◇魔界を結ぶ17の径(パス)

 デーモン学や魔術学によると上記に記された魔界の階層は、17の径(パス)によって結ばれているとされ(無論、径の数は識者の解釈によって大きく増減するため、これは一般的な有力説に過ぎない)、これらは闇と渾沌と死を司る「黒の世界樹」として認識されている。

 悪名高きデーモン崇拝者にして、「太母」の狂信者であった「黒きノア」こと「ノア・ジュゼット・ハラル」は、17の径を別名「アバドンのトンネル」と称しており、この径は天界に伸びる「生命の樹」こと「白の世界樹」の昏き鏡像であり、通常のリアリティの裏に隠された虚のリアリティの世界であると説いた。そして「アバドンのトンネル」は単なる渾沌と悪霊の王国ではなく、無意識領野の先祖返り的な古層の域であるとしている。

 各トンネルには魔界を本拠地として定め、自由意思によって「渾沌」に与する事を選んだ、悪の霊性を持つ神々が割り当てられており、このトンネル内に個々の悪神達が住まう本拠地が隠されている。

17のアバドンのトンネルの名称は以下の通りだ。

1 - ツリフリト アレシュカガル神 スフィンクス・謎・門の女神

2 - ダグダジル リモク神 旱魃・不毛・有害な植物の神

3 - ガルゴフィアス ソヴェロン神 ガーゴイル・石・廃墟の神

4 - ラフカルシレクス ニ・カロン神 老衰死・河川・流転の神

5 - ユリエンス べズハルル神 切断・拷問・改善の神

6 - ヘメトテリス ロズグズ神 恍惚・絶叫・非実体の神

7 - ザンラディエル ラグドゥルム神 ドゥエルガル・強制労働・奴隷の神

8 - マルクノファト キャス・パルク神 猫・ハグ・冬の女神

9 - ニアンチエル イシュキス神 自殺・絶望・絞首刑の女神

10 - ジスフ ウグドドロス神 ワーム・飢餓・震災の神

11 - アアノイン ゾチラハ神 蝙蝠・暗殺・ナイフの神

12 - サクサカリム アゼル神 力・戦闘・武具の神 

13 - テンピオトゥ ルゴーシュ神 眠り・安楽死・精神分裂の神

14 - キュリエルフィ イ=セリア神 菌類・寄生虫・マイコニドの女神

15 - ラフリ ニムズ神 落下・窒息・辻斬りの神

16 - シャリクー マハッタラー神 運命・虚飾・不慮の死の女神

17- タンティサクファト アハズ神 闇夜・病的な愛・拉致・幽閉の女神

◇生態学

 有害なる渾沌と悪しき無限の自由と可能性を体現する魔界の生態系は、非常に複雑怪奇であるが、基本的には定命の存在の魂の獲得に基づいている。死すべき者とその魂が呪われた場合、それは魔界の第一階層であるギエハニムにおいて、永遠に苦しむ「異邦人」の集団に加わることになる。このような「異邦人」が天罰を受けた理由は様々であるが、通常は定命の者がデーモンや悪しき神々を崇拝したり、悪魔的な勢力と交渉したり、死後の審判を受けた魂が、その最終目的地に向かう途中で盗まれたり買われたり、定命の者が別の神の崇拝に失敗したり、神への冒涜や不敬などを働いた結果、その神から「異邦人」として放り出されたことが原因となる。

 ギエハニムの地に入ると、特定のデーモン神に仕える魔物や下級デーモンたちが「異邦人」たちを指揮して魔界の深層の一つへと到る、永く危険な旅を強制的に開始する。魂がその罪に応じた罰を受けるために特定の次元に送られるのが伝統的だが、奴隷を必要としている(または特定の奴隷や存在を追っている)上級デーモンやデーモン・ロードが奴隷を要求することもある。罪滅ぼしの領域に到達すると、「異邦人」たちは悪魔やその他の邪悪な存在、そして魔界そのものの恐ろしい悪意と陰謀によって苦しめられる。

 必然的にこれらの魂の殆どは気が狂い、定命の頃の人生を全て忘れ、最終的には恐怖と憎しみに満ちた一種の「自動機械」に過ぎなくなる。そのような存在が何年~何万年かそれ以上も続いた後、魔界の残酷な過程によって魂は「使えるモノ」に変えられる。卑劣な魂は忌まわしい最下級デーモンのマネスに変えられる一方で、価値の低い魂は魔界の建造物の建築ブロックやその他の素材として使用されるが、多くは単純に破壊され、未来永劫消滅する。

◇魔界の新参者

 現在では魔界に最も多く存在するデーモンであるが、「時間」はおろか「定命の存在」という概念が生まれる前から存在し続ける「無限なる渾沌」の歴史から見た場合、デーモンは比較的新参者と言える。

 致命的な影響、特に大罪の因子が次元を通過して魔界で形成をし始めたときにのみデーモンは出現する。永きに亘り、デーモンは魔界に生息している他の古くからの住人達と支配権を巡って数え切れぬほど戦ってきたが、最終的にはその数の多さと生産率の高さにより、魔界における代表的かつ支配的な渾沌の魔物となった。

 このような広大かつ変化に富む「渾沌」の領域に適応した、デーモン達は魔界と同様に多種多様である。一部のものは人型生物のような形をした体格をしており、他のものはねじくれた獣、または悍ましく不快な有害生命体のようである。一部のものは大地で飛びはね、他のものは空や海で羽ばたく一方、一部のものは感情や政治を操る策士として動き回り、また他のものは、単純明快な破滅をもたらす破壊装置だ。しかし、殆ど全てのデーモンは同じ目的を目指して活動する。……あらゆる形態の定命の者に、遍く宇宙の森羅万象に苦痛と滅びを与えんと。

◇デーモンの位階

 今やデーモンは魔界に住む魔物の中で最も数が多いため、デーモン学者や魔術師たちはデーモンの様々な形態を記録してきた。殆どは2つの名前によって知られる;1つは一般人や民話によって魔物に与えられた通称、そしてもう1つは魔界に仕え、魔物と取引することを願う者たちによって語られてきた、世に知られない古の名である。

 未来のデーモンは、最も堕落した定命の者の魂……その個性と記憶は何千年もの業苦によって洗い流されている……から生まれ、数多の苦しむ魂の中から、精神のない悪の潜在力を持つ不快なマネスとして立ち上がる。何百年も続く苦痛か、より強力なデーモンの意思と命令によってのみ、これら最下層のデーモン類は、より危険な魔物になることができる。彼らの畏るべき主神たる「禍悪祟七大神」か、ある程度の力を持つ魔界の階層の有力者達の意志が指し示す、苦痛に引き裂かれるような変身を経て、または個々のデーモンが膨大な力と資源を蓄えることによって。

 こうして魔界の権力者達は、褒美や刑罰としてより強い、あるいはより弱い形態に変身させることができるが、一部のデーモンは魔界の階層に永く囚われた、とりわけ邪悪な魂から自然に発生する。このように、様々なデーモンの種は、見た通りの能力と弱肉強食の世界の中で一般化された位階を有しているが、デーモンのタイプ自体は必ずしも苦痛を受けた期間や魔界の命令系統の中で占める位置と一致する訳ではない。

 言うまでも無く、デーモンは魔界の7つの階層に満ちているが、ある魔物は特定の階層において他の者よりも一般的である。個々のデーモン神に対する特別な義務と忠誠が、彼らを苦痛と恐怖に満ちた領域の1つに他のものを超えて引き寄せる。デーモンの種類の多くは悪行や誘惑の1つの形態に専門化する傾向にあるが、魔界のヒエラルキーは「渾沌」であるが故に、通常では見られない個人の稀有な才能を容易に受け入れる柔軟性を持つ。このため、特に用心深く卓越した殺人の技能を持つマーダーデーモンは、有力なデーモン・ロードに仕える暗殺者兼側近として重用されるだろうし、歴戦かつ熟練のアロンソデーモンは、ヴァチカルのバフォミトラ神に仕える上級デーモンの親衛隊の中に混じって奉仕するだろう。

 さて、下に示されているものはデーモン種を、最も強大で恐るべきデーモンにして上級デーモンの代名詞とも言えるバラルデーモン(バルログ)から、不恰好で下賎なドールデーモン(ドレッチ)まで順に並べたものである。

魔界のヒエラルキー

 絶対的に弱いデーモンから魔界の君主、果ては大いなる渾沌の神々まで、ここに列挙したのは、魔界の領域で非常によく知られている住人の最も基本的なヒエラルキーである。

不可触民:魂蟲(ラルヴァ)、「異邦人」

最下級デーモン:ドールデーモン(ドレッチ)、ファミリアデーモン(クァジット)

下級デーモン:アロンソデーモン(ブリモラク)、マーダーデーモン(ババウ)、アイスデーモン(アンドラズク)、レイジデーモン(ヴロック)、ラストデーモン(サキュバスまたはインキュバス)、エンヴィアスデーモン(クァシモド)またはシャドウデーモン(インヴィディアク)、ビーストデーモン(キタンジアン)、グラトニーデーモン(ナバッスウ)、スレイヴデーモン(カラヴァカス)、スロウスデーモン(トーゼル)、ワームデーモン(ヴァームレック)、ナイトメアデーモン(パイナジャイ)、アポスタシーデーモン(シャチャス)、コントラクトデーモン(ビブリゲン)、バイオレンスデーモン(バルルグラ)、トードデーモン(ヘズロウ)、ハンターデーモン(ロウル)、プレイグデーモン(ギブリレス)、ローカストデーモン(デラクニ)、デスポイラーデーモン(ヴロリアック)

上級デーモン:バラルデーモン(バルログ)、スライミーデーモン(オーモクス)、フライデーモン(コロクス)、プライドデーモン(マリリス)、サウルスデーモン(ヴァヴァキア)、リフトデーモン(カタパスキア)、デスデーモン(ヴロリカイ)、モスデーモン(オリオドロー)、スーサイドデーモン(セラプティス)、トゥレチェリィデーモン(グラブレズゥ)、グリードデーモン(ナルフェシュネー)、ウォーモンガーデーモン(ガル)、コラプションデーモン(リリトゥ)、ルインデーモン(ウラクレス)、ドミネーターデーモン(ヴィルステス)、エクスキューショナーデーモン(モリデウス)、ミューティレーションデーモン(シェムハジアン)、バリアルデーモン(ウルグリット)、ニヒリズムデーモン(カタパスキア)

最高位デーモン:新生デーモン・ロード、真なるデーモン・ロード

デーモン神禍悪祟七大神

◇デーモンの召喚

 デーモンを態々魔界より喚び出すのは言うまでも無く最大の愚行であり、罪である。それでも絶望的な状況下に置かれた者達や邪悪な人々はその様な決断を下す。

 本能的な自己破壊への傾向にせよ、あるいは力への誤った渇望にせよ、召喚術者たちは今日まで禁じられた魔法の力またはデーモン神・アブラクサスが齎した「魔術」によってデーモンを引き込み続けてきた。一部の者は知識と欲望のためにデーモンを召喚し、他の者は暗殺者または護衛として仕えさせるために呼び出すが、デーモンはこのような召喚者に憎悪と感謝の入り混じった視線を向ける。何故ならば殆どのデーモンは、召喚者自身を含めた森羅万象を破壊するために、魔界の境界を越えて物質界へと訪れる能力を持たない者が多いからである。

 彼らの大部分は自らを魔界から呼び出した狂人や愚者に依存しており、牙をきしらせつつ命令に対して不平を述べ、服従させられている事実を罵るが、殆どのデーモンは召喚者の要求を曲解する方法を見出し、最も厳格に支配されたデーモンの奴隷でさえ自らの跡に荒廃と絶望の爪痕を残す。そして、よくあることは、愚かな術者が召喚において致命的な失敗を犯してそのツケを自らの生命で支払い、望まずして制御を失った黒い影を世界に解き放ってしまうことである。

 真に狂った者は、デーモンによる終末が最後に訪れる時、デーモンと仲間になっていれば救済と保護を得ることができるという誤った信仰により、自らの肉体と魂を捧げるためにデーモンを呼び出す。自暴自棄になった王が自軍の将軍として仕えるようデーモンと約定した話や、狂った女が恐るべき子供達を授かるためにデーモンの雄親を求める話はありふれている。しかしより最悪なのは、ある定命の者たちが最も強力なデーモンを神と崇め、更に最悪の場合であれば遍くデーモンはおろか魔界の頂点に君臨せし「禍悪祟七大神」の何れかに忠誠を誓い、万物に破壊を齎す事に命を賭けてしまった場合、その被害の爪跡は常人の理解と想像を絶するものとなる。

◇禍悪祟七大神(カオス七大神またはカオス七大君主)

 有害なる渾沌の神々にして魔界の頂点に君臨する唯一無二のデーモン神たる「禍悪祟七大神」。魔界という悪しき闇黒の大宇宙は七つの大罪を体現するこの神々を中心とし、次元宇宙の大いなる歪みまたは、彼らを崇める者共の不浄なる儀式と信仰を用いた「汚染」により、現実世界に侵攻してはその諸世界の法則を歪め、何れは多元宇宙全体を自身の理想に沿った渾沌の世界に変異させよう目論む。

 そんな渾沌の七大神らは多元宇宙における自身の支配領域と影響力を広げるために永劫の闘争を繰り広げているが、場合よっては協力することも珍しくはない。彼ら「闇黒の支配者」らは魔界の各層を完璧に支配しており、その中に自身の本拠地を築き上げているが物質世界に住む定命の者に、彼らの支配する渾沌の領域を理解することなど不可能だ。

 一方で禍悪祟七大神にとって、定命の存在の暮らす物質世界はチェスや将棋のような「壮大なる無限の遊戯のための盤面」に他ならない。終末めいた永遠の戦争と殺戮が続く世界 ……。魔界を舞台の中心に置き、その頂点に座すかの神々らは、他の渾沌神や野心的な下位のデーモン・ロードらを出し抜き絶対的な優位と勝利を確立すべく、果てしなき遊戯を続けている。

 禍悪祟七大神は魔界の 7つの上層を支配しており、最深層は存在するのかどうかも分からぬのが現状である。各階層1つ1つが無限大の規模……下手をすればその概念すら及ばぬほどに広大な独自の宇宙を構成しており、「有限な7つの階層」という価値観は致命的誤りに等しい。

 第一階層「ギエハニム」を支配するアイボール神は、サイクロプスの創造主にして、嘗ては悪しき巨人「フォモール族」の主神であり、魔界の最上層の門の監視者としての側面を有する。第二階層「ティチホズ」を統べるウルムシャア神は下界の罪と悪に魅入られた最初の堕天使とされており、魔界最大の歓楽都市を統治している。第三階層「バラシェハト」を支配するアブラクサス神は、神々の有する魔法の力を悪用し、穢れた魔界の諸力と結びつけた術式「魔術」の創始者にして最初の神殺しであり、多元宇宙規模のあらゆる魔法の秘奥義と、膨大な知識や伝承の守護者を担う。第四階層「アディシェス」を支配するゾハク神は、悪しき龍の女神「タキシス」と善き龍の神「アプス」の間に誕生した忌むべき独子であり、計り知れぬ富と財宝の数々を私欲に基づいて蓄え続けている。第五階層「テゼルモス」を支配するオーカス神は魔界で誕生した最古の魔物にしてオークの神祖であり、この地で永遠の闘争と殺戮を繰り広げている。第六階層「ゼブル」を支配するバールゼブブ神は、偉大なる「天の父」の血を継ぐ女神でありながら、自らの意思で魔界へと堕ちた存在であり、第七階層「ヴァチカル」を支配するバフォミトラ神は、オーカス神と同様、最古の魔物にしてミノタウロスの神祖であるが、異端的な神話によれば、彼は零落した旧き太陽神であったとされている。

 さて、闇黒道へと堕ちた者やデーモンを崇拝する狂信者らの大抵は下記に記した七柱のデーモン神の何れかを熱心に崇拝している。

⛧華悪祟七大神(または華悪祟七大君主) 

異名・称号:闇黒の支配者、渾沌の神々、全デーモン族の王、魔界の七大巨頭、悪しき霊どもの大君主、魔神皇、大魔王、いと高き地獄の王、破滅の王、終焉を齎す者、デーモン神、大いなる魔界の帝王…等々


魔名:アイボール

異名・称号:邪眼王、第一の支配者、万物を見る者、サイクロプスの父、嫉妬の支配者、眠らざる者、欠けぬ満月の神、異形の大公、邪眼と罠の魔神…等々

権能:嫉妬・邪眼・罠・月・異形

支配領域:混沌・悪・闇・狂気・幸運

支配階層:魔界第一階層・ギエハニム内・豊饒の月

神聖視する武器:モーニングスター

神聖視する動物:孔雀

神聖視する色:銀・黒

邪印:満月の瞳を持った一つ目


魔名:ウルムシャア

異名・称号:悦楽王、第二の支配者、麗しき罪過、罪ありて裁きを受けぬ御方、欲望の支配者、娼婦の父、禁忌の君、倒錯の大公、色欲と禁忌の魔神…等々

権能:色欲・倒錯・禁忌・欲望・頽廃

支配領域:混沌・悪・魅了・旅・破壊

支配階層:魔界第二階層・ティチホズ内・ファルシヴァニア

神聖視する武器:ランサー

神聖視する動物:山羊

神聖視する色:ピンク・赤

邪印:槍に絡み付く蛇


魔名:アブラクサス

異名・称号:魔導王、第三の支配者、魔術師どもの父にして主なる神、大いなる幻影の支配者、最終奥義の達人、智慧のデミウルゴス、怠惰の支配者、禁じられた知識と秘密の大公、魔術と虚偽の魔神…等々

権能:怠惰・魔術・禁断の伝承・禁断の知識・虚偽

支配領域:混沌・悪・知識・魔術・ルーン

支配階層:魔界第三階層・バラシェハト内・プレローマ

神聖視する武器:ウィップ

神聖視する動物:鶏

神聖視する色:緑・橙

邪印:アブラクサス自身の姿が刻まれた魔除け石


魔名:ゾハク

異名・称号:邪龍王、第四の支配者、偽りの巨龍、永劫の災禍を齎す者、強欲の支配者、憎悪の神、産み落とされた罪過、呪われた蛇の大公、強欲とドラゴンの魔神…等々

権能:強欲・ドラゴン・破壊・災禍・憎悪

支配領域:混沌・悪・破壊・力・鱗持つ者

支配階層:魔界第四階層・アディシェス内・テイタリオン

神聖視する武器:パンチングダガーまたは肉体武器

神聖視する動物:毒蛇

神聖視する色:有彩色全般

邪印:流星に映る三つ首の竜の影


魔名:オーカス

異名・称号:鮮血王、第五の支配者、忌むべきオークどもの神祖、終わりなき流血と戦争の支配者、憤怒の支配者、殺戮の神、黄泉がえりし者、死霊術の大公、殺戮と戦争の魔神…等々

権能:憤怒・死霊術・オーク・戦争・殺戮

支配領域:混沌・悪・死・戦・力

支配階層:魔界第五階層・テゼルモス内・ジュスヘル

神聖視する武器:バトルアックス

神聖視する動物:豚または猪

神聖視する色:赤・黒

邪印:血に塗れた豚の頭蓋骨


魔名:バールゼブブ

異名・称号:蝿の女王、第六の支配者、疫病の聖母、腐り爛れた天の国の女王、暴食の支配者、腐敗の神、遍く病を統べる御方、下方空中王国の大公、疫病と天空の魔神…等々

権能:暴食・疫病・堕落・天空・腐敗

支配領域:混沌・悪・風・死・魅了

支配階層:魔界第六階層・ゼブル内・ケテヴ=メラク

神聖視する武器:ロングソード

神聖視する動物:鳥類全般または蠅

神聖視する色:白・黒

邪印:頭蓋骨に跨る王冠を被った蝿


魔名:バフォミトラ 

異名・称号:有角王、第七の支配者、傲慢の支配者、ミノタウロスの主なる神、獣魔王、獣の大公、闇黒公、黙示録の大いなる獣、迷宮の支配者、獣と迷宮の魔神…等々

権能:傲慢・迷宮・獣・ミノタウロス・支配

司る領域:混沌・悪・力・動物・欺き

支配階層:魔界第七階層・ヴァチカル内・真鍮迷宮(ラス=ラヴリュス) 

神聖視する武器:グレイブ

神聖視する動物:動物全般または雄牛 

神聖視する色:金・赤

邪印:紅い逆五芒星の印、あるいは黒い太陽を背にした真鍮のミノタウロス像、または金の仔牛像


 無論、中には上記の禍悪祟七大神に傾倒せずに、彼らより劣るが神の如く強大な力を有する最高位デーモンたる「デーモン・ロード」17の径の項に記された「渾沌」に与する事を選んだ悪しき神々、魔界に蔓延る遍く「怪物の母」にして魔界そのもの化身とされる謎多き「太母」を崇拝する信者も存在する。

 このような渾沌の狂信者達は彼らの崇める闇黒の神々またはデーモン・ロードにその力や信心を認められると様々な「贈り物」を賜り、労せずして強大な力や長寿の生命力、または肉体を強化される変異等の恩寵を得る。

 だが、その信仰と崇拝は口にも憚られるような忌まわしい儀式を含む行為であり、言うまでも無く、彼らデーモンの崇拝は主要な文明圏や都市圏では大罪として禁じられている。

 それでもかの「闇黒の支配者」らを崇める愚か者は後を絶たず、悪に染まりきった古きデーモン崇拝者や術師、闇黒の伝承に通じた一部の賢者やデーモン学者らは、オーカス神、バールゼブブ神、バフォミトラ神の三柱を特に重要視(または神聖視)しており、これらの三柱を「三忌神(さんきしん)」または「闇のトリアングルム」として特別扱いしている(余談ではあるが、一部の異端者はこれに「太母」を加えて、「闇のテトラルキア」と称する事がある)。

◇謎多き「太母」

 魔界における古代の神話は謎めいた魔界の真なる最高神にして「魔界」そのものの大いなる意思の化身とされる「太母」について語っている。その禁断の断章の一部によれば、「太母」は魔界の最初の住人たる「クリフォト」の祖にして、ミノタウロスの神祖たるバフォミトラ、オークの神祖たるオーカスといった様々な魔物を最初に産み落としたばかりか、遂には穢れた罪深き魂を用いてデーモンの大群をも産み落としたのだという。また、伝説によれば魔界の隠された「8番目の階層」の奥底には「太母」が今も尚潜み続けているとされ、ここで「太母」は禍悪祟七大神に何らかの「啓示」を授けており、かのデーモン神たちは「母」の大いなる意思と何らかの干渉によって誕生したのだという。……だが、かの存在に関する言及の殆ど全てが多元宇宙から一掃されており、今や全ての真実を知るのは禍悪祟七大神、あるいは最古のデーモン・ロードと目されるダグ=アオンを筆頭とした元クリフォト勢、または、オーカス神やバフォミトラ神の妹であるアレシュカガルを始めとした、「太母」によって産み落とされた始原の魔物達のみであろう。

◇渾沌の中の「法」

 禍悪祟七大神を筆頭とした彼らデーモンは自らの野望と欲望を実現させるためだけに行動を行う。力と実力のみが「正義」であり、それが唯一無二の「法」たるこの世界において、赦しや安らぎなどは一切存在しない。目的を達成するためならどんな手を使おうが自由であり、例え味方を騙し、幾ら犠牲にしても何ら問題はない。

 また、彼らに宿る「渾沌」の性質は、本質的に協力や機微などを妨げるという仮説を唱える者もいるが、デーモンはこの主張の誤りを身をもって証明している。

◇魔王(デーモン・ロード)

 禍悪祟七大神より劣るとは言え、かの神々に次いであらゆるデーモンの中で最強なのは、魔王(デーモン・ロード)達である。これらの魔王達は極めて影響力の強い悪と混沌の実体であり、それぞれが七大神の統べる各階層内において広大な恐怖と邪悪の領土を支配している。個々のデーモン・ロード達は、強力な半神から中級神格相当の力を持つ唯一無二の魔物であり、自らの欲望を推進する為にのみ存在する揺るぎなき罪と悪の結晶である。

 デーモンが十分な力を集めた時、それが多くの能力の獲得か神話階梯の上昇にせよ、不浄なる儀式の実行や一つの次元世界の征服にせよ、単に驚くほどに大量の忠実な配下を集めたにせよ、それは初期段階のデーモン・ロード(通称:新生魔王)として知られるようになる。

 初期段階のデーモン・ロードの定義は難しいままだが、通常は十全なるデーモン・ロードへの変成を完了しようと求める。そうする為に初期のロードは定命の者の間で教団を設立しなければならないが、より重要な事として初期のロードは十分に大きな魔界の領土で覇権を唱えて支配し、それによって、魔界の次元宇宙そのものや七大神の何れかがその初期のロードに気付き、そして真なる魔王に相応しい力の段階まで昇り詰めなければならない。

 だが、永劫ともいえる魔界の歴史において完全なる主神の地位にまで昇神しきった魔王など禍悪祟七大神のみであり、未だ「8番目の大君主」は影も形も誕生した事がない。故に殆ど全ての魔王は自らこそがこの大いなる昇神を遂げんと、凄絶なる覇権争いの数々を繰り広げている。一時に初期の魔王は魔界に"数千ほど"いるだろうが、十全なる魔王の数はより限定される……知られている限りではそれらの数は数十柱ほどだ。

 また、「デーモン・ロード」という語の文法性は中性であり男性、女性、そして性別の無い(または不詳の)魔王もおり、両性具有の魔王も存在する(かの悪名高きウルムシャア神がそれに該当した)。

 理論上、全てのデーモン・ロードは(積極的ではないにしても)ほぼ常に互いに戦争状態であり、彼らは神々と敵対するのと同じ頻度で他の魔王や野心的な下位者と敵対をしている。無論、彼らは外交などを通じて同盟を結ぶも、その幾つかの同盟は不安定かつ偽装されており、いつ一方的に破棄されてもおかしくない状況の下、様々な策略と陰謀が行われている。

 その為、殆どの魔王は他の1柱か2柱と積極的に戦争を行う。多くの場合、これらの抗争は互いの権能、領土を含めた自身の支配領域やその教義が被っている、単純に気に入らないといった理由で発生し、彼らは自らの信徒に対して自身が司る4つの領域への干渉権を与える。

 かくして魔界の有害なる宇宙の中でデーモン・ロードや、より低位のデーモンや魔物の有力者が小さな藩国を築き、王(または神)として振舞っているが、諸世界に跨る様な悪事や陰謀を行っているにも関わらず、その全員が禍悪祟七大神たちの圧倒的な威光と力の前には屈し、膝を折る……例え、渋々そうしているだけだとしても。

 バフォミトラ神に仕える主要な5柱のデーモン・ロードたる「五暴星」のシルヴェストリ、クインドヴァトス、ザルバニドゥ、リスサアエラ、ウェジンダスタラや、バールゼブブ神に仕えるアポリオン、フルーレティ、フールカス、オーカス神に仕えるムールムール、オルタロ、アンドラス、ゾハク神に仕えるハウボリト、べイン、ミルコム、アブラクサス神に仕えるベリト、アエスドゥラス、ロノヴェ、ウルムシャア神に仕えるイポス、オズ、マラー、アイボール神に仕えるリキリシルタ、グルジェダ、ガラゴインといった名だたる面々、そして何れの神々にも仕えず、魔界の広大な海において独自の勢力を保つダグ=アオン………恐らくこの面々は魔界の領域を越えて、広く名の知られたデーモン・ロードであるが、これらがデーモン・ロードの全てではない。

◇穢れた場所と魔界への同調

 広大でうねり、絶えず変化する魔界の領域は、デーモンの平面的な本拠地だが、デーモンは罪や悪事を犯す能力を持つ者が存在する場所なら何処にでも見つかる。罪と悪といった「穢れ」が増し、魔界の霊性と同調してしまった結果、魔界が現実の境界をすり抜けて別の世界へと「傷口」のような侵蝕と侵入口を作り出す場合があり、そこからデーモンが溢れ出て信じられないほどの大混乱と破壊を引き起こす可能性がある。

◇魔界へ到たる門

 生身での魔界への行き来は次元間転移を用いた能力や魔法で可能だが、基本的に自殺行為以外の何物でもない。だが、魔界の領域に到達して横断する別の方法は、異なる層または異なる次元宇宙を接続する奇妙な生きたポータルである魔門(マモン)を経由することだ。魔門(マモン)は悪魔じみたしかめっ面の顔、膨張した口、またはその他の痛ましいほど有機的な開口部の形をとり、同じ外観を共有するものは 2 つしか存在しない。殆どは善・悪問わず様々な存在によって注意深く守られているが、幾つかの新しい魔界への門や巧妙に隠された門は未だ発見されていない。

◇憑依現象

 一部のデーモンは、恐怖と混乱を広めるために生き物や物体に憑依する技術を専門としている。そのような場合、デーモンは世界に罪をばら撒き、悪を働くための強力な変装、「なりすまし」による影からの侵蝕、他のデーモンや混沌の神々を愉しませ、喜ばせる「ごまかし」などを獲得する。

◇デーモンの源と魂の価値

 罪深い定命の魂が魔界に堕ちると、それは芋虫じみた醜悪な「魂蟲(ラルヴァ)」と化す。上記の「異邦人」と異なり魂蟲は、既に特定のデーモン神やデーモンの所有物となる事が確定しており、魔法や奇蹟による蘇生はおろか、死後の審判を経た後の罪過の清算や輪廻すら許されない存在にまで堕ちた「成れの果て」である。魂蟲は泥沼に潜り、汚物を食べながら耐えがたい苦痛と後悔に満ちた永劫の時間を過ごすのだが、どうにか生き残りそれ自体が消費されなかった場合、魂はその罪の性質に影響されて最終的にデーモンへと昇天する。殆どのデーモンは生前と同様に生殖することができ、この不浄なる生命の繁殖力は、恐らくデーモンにおける最大の危険要素であり、最も脅威的な側面である。

 また、他の様々な魔物と同様にデーモンも魂を求めている。彼らの目には、これらの魂の主な用途は、より強力な主人の兵士や貢物、奴隷、駒、さらには通貨として機能するだけでなく、新しいデーモンを生み出す「資源」として最大限利用される。

 時にデーモンは戦利品として、または能力を強化するために「魂箱(ソウルジェム)」と称される忌まわしい魔法のアイテムを運ぶことが多々見受けられる。「魂箱」は定命の存在から、高位の死霊術といった何らかの方法を用いて強引に魂を抜き取り、宝石などの貴重品に収める事で誕生する。最下級のカコデーモンは魂箱の最も一般的な供給源であり、彼らは魂箱を創造する能力に特化している事で知られている。デーモンが能力を強化するために魂箱を粉砕すると、閉じ込められた魂は死後の世界へと解放され、通常通り復活することができるようになる。

 無論、魂箱は魔界の都市を筆頭とした違法な闇市場で取引されており、これはハグといった魔物や邪悪な定命の存在も積極的に参加する悪名高い伝統である。魂箱の価値は様々だが、通常、箱に囚われている存在の魂の霊格や生前の力量(または特殊な罪状)に応じて金額と価値が大きく変動し、歴史に名を遺すほどの特殊な悪人や聖人の魂であれば、それを巡って様々な暗闘が繰り広げられる。

◇何が罪を作るのか?

 デーモン学において主要な「罪」を、傲慢、憤怒、暴食、強欲、怠惰、色欲、嫉妬の7つのカテゴリーに分類する学者や賢者らが数多く存在する。確かに禍悪祟七大神が司るこれらの大罪は、最も強力で多数のデーモンの一部を体現しているが、今や7 つよりも遥かに多くのデーモンが存在する。

 旧き神々によって「知恵」を与えられた定命の存在が、文化や文明を発展させ、善きにしろ悪しきにしろ一つの時代を動かすごとに、悪もまた独自の発展を遂げ、今や罪が7つの枠を遥かに超えて多様化しているとは、実に皮肉でしかない。

 定命の者が他者を犠牲にして自分を満足させるために行う数々の残虐行為や破壊行為は事実上罪であり、そのような行為は死後の裁きを経た魂からデーモンを生み出す可能性がある。また、デーモン自身が破壊を引き起こすことを楽しんでいる一方で、殆どのデーモンは定命の者を騙して誘惑し、自らの意志で罪に陥らせることを好む。

 彼らが定命の者たちに与える誘惑は、「冥約」の締結によって与えられる強大な力から、極悪非道な後援者への忠誠と奉仕に基づいた誓約に続く歪んだ好意と悪しき囁き、あるいは更に繊細かつ巧妙なやり取りの数々にまで及ぶ。これらの誘惑に屈した者は、死後の世界において救い無き奈落の底で終わりのない責め苦に送り込まれていることに気付く。そこにおける唯一無二の脱出の希望は、デーモンに昇進する機会にのみ存在する。

Report Page