魔王

魔王


ペロスペローはいち早くその異変に気づいた

「なんだ?麦わらの船から禍々しい何かが出てきている!?」

そう思うのも束の間、その渦はやがて魔王を顕現させた。

「まさかあれは…トットムジカ!馬鹿なそんな情報はどこにも上がってはいない!そもそもあの紅白の髪の女の情報など一切無かった!そもそもここ数年一切情報が上がってこなかったウタウタの実がまさかあの一味にいたとは!ママ!流石に危険だ!」

一方でナミ達も困惑していた。

「ちょっとなに!?この明らかにやばそうなのは!」

「ウタさん曰く、おもちゃから元に戻ったときに突然現れた楽譜なんだそうです。ウタさんも禍々しいなにかを感じてずっと歌うことを躊躇っていたそうですがなにか役に立てるかもしれないと、歌い始めたそうです。」

その綺麗な歌声からは想像もできないような恐怖、厄災に近い何かを解放したことをその場にいた誰もが察した。

歌が長引くにつれてその体の大きさはマシビックマムですら小さく見えるほどに巨大化した。

「なんだテメェ!俺のケーキ奪おうとしてんのか!そんなやつは誰だろうと許さないんだよ‼︎‼︎」

本来なら誰もが恐れ慄く女王の怒号も魔王は不敵な笑みを浮かべやがて鍵盤上の腕をビックマムに向けた。

「剣に移りな!プロメテウス!いきなりしゃしゃりでやがって、俺の邪魔をするんじゃねぇよ!!!!

喰らえ!『皇帝剣 破々刃』!!!」

燃え盛る剣と負の集合体の腕が交差する!

鍵盤からは不協和音のような不快な音が辺り一帯に響き、その衝撃は天候をも変えた。

互いが10秒ほど打ち合ったが、魔王は怯み、女王は吹き飛ばされた。

「まずい!アメウミウシ急げ!」

ビックマムが海に落ちる寸前でアメウミウシはビックマムを拾った。

「俺のケーキの邪魔をしやがって!絶対に許さんぞ!」

「す、すごいビックマムをもろともしない…なんなのあれは…?」

「ウタさん曰く、歌の魔王ということだけしか感じ取れなかったそうです。ですが好機!今ならビックマムから逃げ切るのも容易です。」

「でもウタ大丈夫かな?おそらくあの渦の中心にいるんだろ!俺は心配だよ!」

「でも今はウタに頼るしかできない…。」


しかしウタも心と身体が負の集合体に縛られつつあった。

《おもちゃを航海に連れて行くことはできないからな!》

《そんなガラクタがなんの役に立つんだよ!》

《そんな壊れかけのおもちゃなんか捨てればいいんじゃない?》

《メリーだって大事な仲間なんだろ!お前がメリーを捨てるならそんなガラクタだって捨てちまえよ!》


(やめて…苦しい…苦しい…違う…こんなんじゃない…嫌…)

『彼らを助けたいんだろ?まだまだ怒り、悲しみ、苦しみ、孤独、憎悪、足らないよ、さぁもっと我に絶望を捧げたまえ…それが君が望んだ終曲さ』

「ァァァ!」


「ふざけやがって…!」

マムがアメウミウシに乗り再び近づこうとするが魔王が口と称される部分に負のエネルギーの集合体を凝縮させて、放った。

「!!」

慌ててナポレオンを武装硬化し、打ち合った。なんとか相殺は出来たもののビックマムですら腕に重度のダメージを負った。

「まずいペロリン、このまま『トットムジカ』と撃ち合えばママですら負けかねない…!だがママは食い患いで冷静さを欠いてる。止めることできない!」

最悪の事態を想定しかけたその瞬間、この世のものとは思えないほどの鼻腔をくすぐる華美な甘い香りが漂ってきた。

「ウェディングケーキ!あそこにあったのかい!今すぐ迎え行くよ!」

突然方向転換をして行き先を変えるビックマム。

「はぁ…ひとまず俺の寿命が抜かれて死ぬことはなくなったが…まさか麦わらの一味にウタウタの実の能力者がいたとは、こちらペロスペロー、俺とママはこれからウェディングケーキがあるとされる場所に向かう。海上遊撃隊に告ぐ、敵の船は歌の魔王がいる応戦はかなり危険だ。一部の大臣を海上に残し、ここはカカオ島に先回りして麦わらのルフィの討ち取ることを先決、それと敵の船にウタウタの実の能力者がいる。タイミングは問わないが必ず確保しろ。」

「やった!敵の船が去っていくわ!」

「やりました、しかしウタさんが心配です。なにか物凄く嫌な予感がします。」

「今はどうなっておる!怪我人がおるのか!」

「ジンベエ!無事だったのね!怪我人?どうして?」

「この船から悲痛な声が絶え間なく聞こえてきておる。しかも段々その声は小さくなっておる!ウタはどうした!」

見聞色の覇気によっていち早くウタの異常を察知したジンベエがみんなに問いた。

敵船は去ったが、魔王は止まることを知らず暴れている。禍々しい力はさらなる力を増し破壊の限りを尽くす。

「ウタさん!もう大丈夫です!歌うのをやめてください!」

「ウタ!これ以上はあなたの身が持たないわ!早く!」

しかし今の絶望な縛られたウタにはみんなの声が届かない。

(そうだ…壊さないと…私がみんなを守る為に…歌わないと…悲しみに苛まれようが…絶望に取り込まれてもみんなを…!)

『そうだ…君の受けた悲しみや苦しみをすべて再びその身に受けろ。そして更なる絶望を力に変えるのだ。』

(そうだ…この力で…みんなを…)

このままではウタが死んでしまう。涙声ななりながらナミが叫ぶ。

「こんなところで終わらないで!新時代を作るんでしょ!『ルフィ』が待ってるわ!戻ってきて!ウタ!」

(ルフィ…!!!!)

『チッ…』

渦巻く禍々しい力が霧散し、船上の床に横たわるウタの姿がそこにあった。

「ウタァ!大丈夫か!?今すぐ治療するかな!絶対に死ぬんじゃねぇぞ!」

「ご…ん…み………めいわ…ちゃ…て」

「迷惑なんてかけてないわ!寧ろあなたのおかげでなんとか危機を脱したの!」

「良かっ…た。ルフィに…会いたい…。」

彼女は災害を後にし気を失った。

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