魔女の末裔冴がお狐凛ちゃんの神域にお呼ばれする7

魔女の末裔冴がお狐凛ちゃんの神域にお呼ばれする7


「……そんな悠長なことしなくたって、針で指突いたくらいなら1日で治るだろ。最初から血ぃ流してったほうが早いんじゃねぇか?」

「まあそれはそうなんだが。冴が血を流した状態で移動すると、目的のパチモン玉藻前に辿り着く前に別の怪異も入れ食い状態になるだろ」

「……マンションのエントランスに入ってからやるんでもダメか?」

「微妙なラインだな……知能の低い馬鹿なら問題ねぇが、ちゃんと考える脳味噌がありゃあ急に濃くなった匂いの不自然さで罠だと勘付かれる」


俺のお膝元で男漁りする馬鹿ではあるが痴鈍と侮れるほど極端に頭悪そうな感じでもねぇんだよな、と大きい凛は腕組みをする。

それなら彼の言うとおり、怪しまれないよう自然と揮発する体臭で酔わせるべきか。

面食いの好色な人外と密室で対面なんてぞっとしないが、放っておいたら参拝者が過労死する上に、下手をしたらブルーロックプロジェクトが終わって戻って来た後の小さな凛にも毒牙が及ぶ可能性がある。

兄として、現在進行形で喧嘩中の愚かで可愛い弟の初体験が忌々しい尻軽雌狐に持って行かれる事態は阻止してやらねば流石に哀れだ。

でも自分がそんな女に性的に頂かれるのも御免被るから、なるべく会話で時間を稼いで肉体的な接触はできる限り許さない方向で行きたい。


「……っていうかうっかり触らせすぎようもんなら、お前後でめちゃくちゃ機嫌悪くなりそうだもんな」


思考の果てにぽつりと呟いた言葉に、大きな凛は当然とばかりに答える。

この神域じゃあ脳内のプライバシーなんてあって無いようなものだ。


「小さな俺が『俺そのもの』なら冴は『俺のもの』だ。どっちもクソビッチなんかが汚い手で触れて良いワケねぇのに、手垢ベタベタ付けられたらそりゃ神様としちゃあ怒髪天ってモンだぜ。本音を言うとほんのちょっとも触らせずに会話だけで時間稼ぎして欲しいくらいだ」

「誰がテメェのもんだ、『俺の兄』と呼べ」


流石に俺にそこまでのトークスキルを期待すんじゃねぇよ、と要請するより先にまずは1番大事な訂正ポイントをアピールしておく。

『俺のもの』と書いて『おれのあに』と読むタイプのルビ振りがあればギリギリ許容範囲。でも『俺のもの』と書いて『おれのもの』と読むのはアウトだ。

糸師冴は大きいほうにとっても小さいほうにとっても兄であるべき生き物なので。


Report Page