魅惑のカカオ
楠木殿と師直は頭脳労働タイプでもあるので甘いものも結構好きで、気軽に摘まめるチョコも好物だった。
色んなブランドのチョコが百貨店に 並ぶこの季節は毎年の楽しみなのだが、如何せん男子は肩身が狭い…!と家庭科部の女子の皆さんにお願いして男子は荷物持ちという体で週末に買い物に付き合ってもらった。
月曜日の放課後、調理実習室には昨日の買い物のメンバーが揃い、それぞれの成果を披露しながら談笑している
楠木殿「ふふふ、皆それぞれお目当てを買えて何よりですな。拙者も買いたかった目当て以外も買えて大満足でござる。」
亜也子「へへ~!楠木殿も色々買い込んでましたねー!」
雫「私も久々にお財布を開放したかいがありました。イタリアブランドの 限定品をゲット出来ました…!」
魅摩「あ、良いなー。こっちにまだ 店舗ないブランドでしょ、それ」
雫「うん、この間ヴェッキがやっと来たくらいでイタリアのチョコレート店はまだ少ないから今回買いたかったの」
師直「イタリアは国内で充分需要が賄えるようだな。その辺りは外国への出店に積極的なフランスやベルギーとは対照的だな」
亜也子「部長はフランスメーカー中心ですね?」
魅摩「へぇ意外ー。何かチョコっつったらベルギーのイメージあるよね? あたしが買ったやつもそうだし」
師直「フランスはショコラティエの 激戦区だ。そういった国の物は外れが少なかろう。」
楠木殿「成程、ライバルが多いゆえに品質が高い、と」
師直「…そういう貴様は日本ブランドが多いな。それなら2月以外でも買えそうだが?」
楠木殿「ふっふっふ!ところがな、この季節はどのブランドも新規の顧客を開拓したいと限定品に更に力を入れるから以外な掘り出し物に出会えるのだ!」
亜也子「えー!知らなかった!行く前に教えて下さいよ~!」
魅摩「ええ~めっちゃ気になるじゃん!味見させてよ楠木殿!あたしの買ったやつもあげるからさ!」
雫「ふふ、私も良いですか?私の買った物も良かったらどうぞ」
亜也子「あ、あたしも!買ったやつ出す出す!」
楠木殿「はっはっは!構わぬよお三方!お三方の買った推しブランドの物を拙者も食べて見たいしな!」
和気藹々と買ってきたチョコをあける四人に軽く溜息を吐いた師直がチョコレートに合う紅茶でも淹れるか、と席を立った。
即席の品評会を家庭科室でやっていると腹を空かせた新田殿と楠木殿と同じ戦史研究会の吹雪君がやって来た。
新田殿「何やら良い匂いがするな?師直殿!腹が減った!」
吹雪「あれ?会長見かけないと思ったら。何してるんですか?」
師直「新田貴様…!俺はお前の餌やり係りでは無いわ、たわけ!」
楠木殿「ぶわっははは!良い嗅覚だ 二人共!良いタイミングで来たなぁ、ちょうど師直殿特製の紅茶も入った所だし拙者達の戦果を一緒に摘ままぬか?お三方、良ろしいかな?」
亜也子「良いよ、楠木殿!吹雪ー、 こっちこっち!」
雫「吹雪、オレンジ平気?私が買ったやつにオレンジが入ってたの。食べてくれる?」
魅摩「新田あんたほんと犬並みの嗅覚ね…。ナッツ系好き?一個あげる。」
楠木殿が席をずれて二人分のスペースを空けるといそいそと二人が座り、皆がくれたチョコレートを珍しそうに眺めている。
師直も顰めっ面をしながら紅茶を二人に淹れてやっていた。
吹雪「わぁ、すみません。いただきます。あ、美味しいですねこれ!ドライフルーツだから堅いかなと思ったら瑞々しい!不思議ですね」
雫「そう?美味しいなら良かった。 アソートを買ったら結構オランジェットが入ってて。私オレンジ苦手なので皆さんも良かったらどうぞ」
師直「イタリア南部のメーカーか。 南部はオレンジの名産地でもある。む、流石に素材が良いな」
楠木殿「おお、拙者もいただきます。ほおー!オレンジの香りが強い!チョコも苦みが強めで甘いオレンジとのバランスがいい。旨いな、流石美食の国イタリア」
新田殿「雫殿有り難う、いただきます。む、…!何か良く分からんが旨い!」
魅摩「…ええ、使われてんのオレンジとチョコだけだって。 あっといけない。いただきまーす。 …!うわ美味し!ほんとオレンジが ジューシー!」
亜也子「おおー、大絶賛…! い、いただきます!…!!! んんー!!美味しー!!じゅわって!オレンジじゅわーってした!」
吹雪「でしょう?ドライフルーツなのに!」
雫「……苦手なんだけど食べたくなってきちゃった」
楠木殿 「はっはっは!分かるぞ雫殿!」
師直「諏訪。無理をするなよ」
雫「ふふふ、アレルギーではないので大丈夫です、部長」
魅摩「うーん、オランジェット食べた後に部長の紅茶さいこー…!じゃ次はあたしね!じゃーん!ベルギーのショコラティエ限定品!」
亜也子 「おおー、色んなのが入ってる! あれ?あっははは!またオランジェットも入ってる!」
魅摩 「げっ!?雫と被った?マジ!?」
雫「ふふふ、オランジェットは代表的なチョコだもの、被ることくらいあるよ。」
楠木殿「むむ、イタリアとベルギーでオレンジの違いや如何に?拙者オランジェット貰って良いかな?」
師直「俺もオランジェットを貰おうか。店のスタンスの違いを知りたい」
魅摩 「あっははは!部長は研究熱心だね。楠木殿も良いよー、オランジェットは結構数あるし、どーぞ!」
吹雪「あれ、でもオランジェット以外は一個ずつですね。何か貰うの悪い気がしますね。」
新田殿「む、そうだな、魅摩殿、これは持って帰って食べられた方が良くないか?折角の限定品なのだろう?」
魅摩「んふふ、ありがと。でも大丈夫!此処にあるのと同じやつを家に別でとってあるから!」
吹雪 「ええ!?同じ物を二つ買ってるって事ですか?豪勢な買い物だなぁ…。 百貨店のチョコなんですよね?」
楠木殿 「まぁ年に一回ということでな、全員財布が緩みがちでござった!」
吹雪 「ええ…。大丈夫なんですか 会長…?」
師直「おい楠木、明日から金欠だと 称してうちにたかりに来るなよ、駆除してやるからな」
楠木殿「拙者はネズミか何かか! たかりなどせんわ失礼な!貯めた小遣いと年始に貰った年玉で充分賄えたでござる!」
吹雪「ふふ、会長がそんなにチョコがお好きだとは知りませんでした。」
楠木殿「いやぁ、戦史研究会でやる 企画を考えたり試験勉強中とか無性に甘いものを食べたくなる時があってな。 だが市販のやつは大体子供向けだろう?ビターで旨いやつを探していくと百貨店のチョコは流石に旨い物が多くてハマってしまったのでござるよ。」
新田殿「俺もガキの頃はチョコも良く食べていたが最近は甘過ぎだと感じて遠ざかっていた。ここにあるやつは 旨いな。楠木殿がハマる理由が分かるぞ」
師直「市販の物もメーカーの努力で世界的に見れば高水準ではあるが、一級の素材を使ったショコラティエの物には抗えん魅力がある」
魅摩「スーパーじゃ買えない素材の やつが多いよね、オランジェットとか滅多に無いもん」
亜也子「私はクッキーとか入ってる 市販のやつも好き!でもこの時期の 百貨店のやつも楽しみ!」
雫「ふふ、それが一番お得かもね?」
魅摩「そうだ!部長、残りのチョコ切り分けてよ。一個ずつしかないから皆全種類食べれないじゃん?」
師直「佐々木貴様自分のチョコだろうが。自分でやれ」
魅摩「…いいの?あたしが切ると粉々になるよ?」
楠木殿「ぶはっ!?げっほげほ、ぶははは!」
吹雪「うわ!会長が紅茶吹いた。大丈夫ですか?」
新田殿「わははは!粉状になったら吸うしかないな!」
雫「見た目凄い図になりそう。」
亜也子「うえ~!粉吸うのやだ~! 部長何とかしてくださいよ~」
師直「はぁ…、誤解を招くような表現は止めろ。貸せ、切ってやる」
魅摩「ふふー、ありがと部長」
楠木殿「ひい、制服が紅茶フレーバーになってしもうた…。 ん?魅摩殿のチョコレート、ハート型のやつが二つあるが切ってしまって 良いのかな?」
魅摩「えー?何で?」
楠木殿「何でって…。バレンタインのチョコでござるよ?いや勿論拙者達は色恋沙汰とは無縁の間柄でござるが、縁起が悪いのでは?」
女子達「全然。味を見るのが優先。」
楠木殿「ええ…。女子のメンタル強い…」
師直「二つに切れば縁起が悪いやも 知れぬが八つ裂きにすれば問題無かろう」
楠木殿「八つ裂きて。さらに物騒になったぞ」
新田殿「おおう、原型が無くなっていく…」
吹雪「粉々に近い…」
魅摩「あっははは!何で男子達がショック受けてんの!」
亜也子「うーん中身がトロッとしてるやつ気になる~!何が入ってるんだろ?」
雫「フルーツジュレかな、キャラメル系かな?」
楠木殿「…もうだれも気にしておらぬな」
新田殿「…俺たちも味見に集中するか」
吹雪「ですね…」
師直「切れたぞ。一欠片が小さい。紅茶を飲みすぎると本来の味がぶれる、気を付けろ」
亜也子「はーい!よっし気になってたこの黄色いのから…!わー!コーヒーのキャラメルだ!回りが酸っぱい! 黄色いのはフルーツ?何のフルーツだろ?分かんないけど美味しー!」
楠木殿「フム、拙者は上に塩が乗っているやつから…。うん、旨い。ちょい甘めのチョコに塩が合う。中身が柔らかいし…これ西洋の塩饅頭でござるな?」
新田殿「ははは!塩饅頭とは旨そうだな?俺もそれにしよう。お、本当に 塩饅頭っぽい。チョコなのに」
魅摩「ちょっと~!止めてよ!ほんとにそうとししか思えないじゃん!」
雫「……塩饅頭だこれ。」
師直「…二人とも貧相な味覚の奴等に引き摺られるなよ」(…塩饅頭だな)
亜也子「うわ、ほんとに塩饅頭…」
吹雪「………塩饅頭ですね」
魅摩「もー!!!」
楠木殿「わははは!すまんて魅摩殿!次行こう次!」
新田殿「俺は先程の亜也子殿が食べていたやつを貰おうか。……酸っぱいな。後苦い」
魅摩「小学生か」
楠木殿「ぶふっ…!そんなにか新田殿?」
新田殿「おう…、貰っておいてすまんが俺はこれ駄目だな…。」
吹雪「紅茶がぶ飲みですね」
雫「そんなに?私はどうかな…?あ、美味しい。回りはこれパッションフルーツだ。食べた事ない人にはキツいかも。」
魅摩「おおー、雫やるじゃん。あたしも食べよ。お、酸っぱくて美味しい!コーヒーキャラメルが中にあるから モカコーヒーっぽくなってんね。」
師直「ふむ、…全体的にまとめ方が コーヒーを中心になっているな。狙いは佐々木の言うとおりフルーティーなモカコーヒーに近い味を出すためだろう。」
楠木殿「うむむ、拙者酸っぱいコーヒー苦手でござる…。どなたか好きな人が拙者の分を食べてくれぬか?」
魅摩「あたし達はもう食べたから良いや。吹雪ー、食べれる?」
吹雪「あ、じゃあ自分が貰っても良いですか?」
楠木殿「おお、吹雪殿はモカコーヒー平気か。では是非食べてくれ。」
吹雪「有難うございます。わぁ、綺麗な色ですね。…うんかなり酸っぱいですね。でも美味しい!コーヒーが強くて面白いなぁ、チョコなのに」
新田殿「そういえばチョコだったなこれ。チョコ感はまるで無かったが。」
師直「まぁそういうフレーバーも海外では好まれるのだろう」
亜矢子「よっし次は~これ!ナッツ系ゴロゴロのやつ!…あれ?でもそんなにナッツって訳でもない?不思議~。あ、ちょっと酸っぱい。フルーツ入ってる?んん~!分かんない!けど美味しい!」
楠木殿「不思議なレビューでござるな。では拙者もそれを貰おうかな。うん、豆と後はドライフルーツか。この小ささで満遍なくはいっているのは凄い技術でござるな。甘さ控えめ、拙者これ好きでござる」
師直「かなり遅れてほんのり酸味が くるな。土台のチョコレートが苦めで良いバランスだ」
新田殿「…さっきみたいに酸っぱい やつじゃないのか?なら頂こう。お、 これはいいな。豆が入ってるやつって旨いよな」
雫「ドライフルーツは…なんだろ レーズンかな?もう一個入ってそう」
魅摩「あたしレーズン以外のフルーツ当たったみたい。クランベリーじゃない?」
吹雪「知らないフルーツが沢山出てきますね。これも美味しい、今日は良いチョコ一杯食べれて良い日だなぁ…」
楠木殿「はっはっは!吹雪殿もチョコにハマりそうだな?」
吹雪「ふふふ、かなり傾いてます。」
雫「吹雪、気を付けて。チョコ沼は底無しだから」
吹雪「ひぇ、そんなにですか?」
亜也子「うっかりあれもこれもって買い込むと破産するよ~?」
師直「少なくとも日常でバカスカ食うものではない。茶を淹れて少しずつ嗜む程度が良いだろう」
新田殿「そうだな。俺は今、結構少な目の量しか食べていないのに満足感がある。不思議だ」
魅摩「分かる。高いやつって小さいのに満足感凄いよね。チョコ食べてる!って感じ」
楠木殿「拙者も家で一個ずつチマチマ食べているのだが、たまに正季にガッと食われて無くなっておる。 拙者のチョコ…」
魅摩「あっはははは!それは怒りなよ楠木殿!」
師直「…貴様は弟にだだ甘過ぎるのだ、たわけ」
楠木殿「何かお主にだけは言われたくない奴に甘いと言われたな!?」
新田殿「ん?弟に一番甘いのは尊氏殿だろう?」
女子達「ぶふぅっ!?」
吹雪「うわ!皆さん大丈夫ですか!?はい、テッシュどうぞ」
亜也子「あはははははは!新田殿それは禁句~!」
雫「んっふふふふふふ…!尊氏殿はもう優勝除外枠だと思う」
魅摩「ぶふっ…!ちょっと、雫、 あっははは…!」
師直「………お前達、人の主君をぼろくそに言うんじゃない」
吹雪(弟にだだ甘なのは否定しないんだ…)
楠木殿「ふふふふ!確かに尊氏殿は 別枠だな!だが直義殿が実直な方ゆえ良いバランスの兄弟でござるよ」
新田殿「おう、うちも義助は真面目な奴だぞ」
楠木殿「さらっと弟自慢をするでない新田殿。拙者もしたくなるだろうが!」
魅摩「ハイハイ、長くなるからよそでやってね。最後はピンクのハート! …だったやつ。これも中にペースト 入りか」
亜也子「お~!バレンタインって感じだね!なに味かな?…!うわ、薔薇!すっごい薔薇!」
雫「薔薇…?てっきりピンクチョコレートだと思ってた。ん!ホントだ すっごい薔薇の香り…!」
魅摩「うおぉ…!結構キッツい香り!美味しいけど!」
楠木殿「薔薇って食えるので…? ううむ、どうかな…。………うん、 薔薇だ」
新田殿「………すごい、においだな?」
吹雪「…うわぁ、もう薔薇しか分かんない」
師直「……海外で良くあるやつだ」
魅摩「男子に大不評だな!?こういうの苦手?」
亜也子「新田殿大丈夫?お茶お代わりあるよ?」
雫「全員お茶がぶ飲みしてる…」
吹雪「あ゛~!駄目だこれ紅茶も薔薇になる!」
新田殿「ちゃんと甘いのに石鹸食ったみたいだ…!」
楠木殿「ぐええ、口の中が薔薇一色でござる…」
師直「日本人と海外の好みの差がもろに出たな」
魅摩「マジか、あたしは結構好きだけど。あーでもハーブティとか飲んでるから耐性付いてんのかな」
雫「そもそも男性は香料付きの食べ物ってあんまり買わないよね」
亜也子「あーあるね!うちの父上も 苦手みたい。うーん、口直しに私が 買ったやつ開けようか?」
新田殿「有り難いんだが、今他の物を食べると全部薔薇になりそうだ」
楠木殿「でござるな。それに雫殿と 魅摩殿のチョコレートのレベルが 高かったので拙者は結構満足感が凄いでござる。」
吹雪「自分もです。量自体は多くないのに」
魅摩「そう?んじゃ試験前だし暫く 部活は休みだから明日もここで品評会やる?皆が何買ったのか気になるしさ。特に部長のやつ!」
師直「佐々木、お前はただ俺が買ったやつが食いたいだけだろうが。…明日からは各自好きな飲み物を持ちよりでも良いな」
雫「じゃあ私はコーヒーを持ってきます。チョコには紅茶も良いですが、 コーヒーも合いますよ」
楠木殿「お、じゃあ拙者は緑茶を持ってくるかな。チョコと緑茶も中々良いもんでござるよ」
魅摩「うちの父上秘蔵のオータムナルを開放する時が来たかぁ~!」
吹雪「…良くわかりませんがそれ道誉殿が泣きません?」
新田殿「むむ、飲み物には詳しくないんだ。どうするか…。」
亜也子「ん~?大丈夫ですよ新田殿。私も良くわかんないから飲むだけだし!あ、でも紅茶に入れるレモンとかは持ってくるかな?」
師直「新田、明日も参加するなら口直しの塩気があるものでも持ってこい。貴様は煎餅に詳しいだろう」
新田殿「おお?そんなので良いのか。…チョコレートに煎餅って大丈夫か…?」
吹雪「良いんじゃないですか?最近は柿の種チョコとかありますし」
新田殿「そうか良し!俺のお薦めを持ってくる!」
楠木殿「ふふふ、これは暫く楽しみが続くなぁ。あ、師直殿拙者の買った やつ、ここの冷蔵庫に入れておいても構わんかな?結構嵩張るので置いて 帰りたいのだが」
師直「要冷蔵か?準備室の家庭科部専用の方へ入れておけ」
楠木殿 「ほおー。家庭科部は伝統が長いから流石に設備が充実しておるなぁ」
師直 「阿呆、俺が顧問を説き伏せたのだ」
楠木殿「ええ…。顧問の先生大変で ござるな…」
魅摩「え、あの冷蔵庫部長が導入したの?」
雫「知らなかった…!」
亜也子「部長すごーい!」
吹雪(顧問の先生、圧迫面接並みの プレッシャーだったろうな…)
魅摩「んじゃ亜也子のチョコとうちらのチョコも冷蔵庫入れとこっか。 そっちの方が確実に溶けないでしょ」
雫「そうだね、ここ日当たりが良いから結構温度上がるし」
新田殿「む、では俺達が運ぼう。旨い物を食わせて貰ったからな!」
吹雪「良いですね。ごちゃごちゃに ならないようにどなたのものであるか付箋貼りましょう。自分が持ってるので。」
亜也子「ありがとー!吹雪。じゃ こっちに持ってきて!」
師直「後ろの説明書きをよく読んでおけ。冷やしすぎると風味が落ちるやつも多いぞ」
女子達「はーい!」
楠木殿「むむ、拙者の買ったやつは どうだったかな? …?載っておらんな。まぁいっか、 冷蔵庫に入れておけば腐らんし!」
師直「待たんかこの大たわけ!貴様は職人に敬意を払え馬鹿者が!寄越せ 何処かに書いてある筈だ!」
楠木殿「ええ…。お主食に関しては 本当に容赦無いな…。ほれ、裏面に何も書いてないでござるよ?」
楠木殿が自分のチョコを師直に手渡したその時、調理実習室の扉が勢いよく開かれた。
尊氏「師直ー!!我小腹が空いたんだが、何かない、か…??…楠木殿?」
楠木殿「おー、尊氏殿。お主今日は 美術部の試験前最終日ではなかったかな?もう終わったのか」
尊氏「!?!!!????え、なん、何ですかこれ?楠木殿?今日は探しても全然居なかったのに…?。!!!!そ、それは一体何ですか?」
楠木殿「??何で震えておるのだ尊氏殿。これか?ふふー、バレンタイン フェアの戦利品だ!凄いだろう!?」
師直「…!!!!馬鹿者!楠木貴様ちょっと待」
尊氏「楠木殿が師直にチョコを渡した!!!!??」
楠木殿 師直「はぁぁぁぁ!!???」
尊氏「………そんな、いつのまにそんな間柄に…!!!我を差 し 置 い てぇぇぇぇ!!!……うわーーん!!たっ、た、直義ぃぃぃぃ!!!!!」
師直「尊氏様!!!!誤解です!走りながら叫ぶのはお止めください!」
新田殿「うん?今尊氏殿の声が聞こえなかったか?」
魅摩「尊氏様もだけど部長は?どこ行ったの?」
吹雪「…何かやな予感がするんですが」
雫「…うん、右に同じく」
亜也子「あ~…。尊氏殿って楠木殿が関わると大変になるよね…」
楠木殿「…それは拙者のせいではないと言いたいのだが」
物凄い勢いで泣きながら走り去る尊氏を慌てて追いかける師直と、あまりの勢いに呆然としていた楠木殿を準備室から戻ってきた皆が驚いて色々聞いてくるのに答えつつ、目撃者が沢山出ただろうこの騒動で明日から大変な騒ぎになるだろうと予見出来てしまった 楠木殿が遠い目をしている。
そして今頃生徒会室に駆け込んできた尊氏を宥めるのに苦労しているであろう直義と師直の為に尊氏の誤解を解かねばならないので、今からメンバーを伴って向かう事に盛大な溜息を吐いたのだった。