鬼ヶ島屋上決戦・前半
二人の男女が駆け上がる。未来の海賊王と未来の世界の歌姫が。仲間達の、侍達の、ミンクの戦士達の、彼らの尽力により切り開かれた道を駆け上がり目の前の大扉をぶち開ける。そうして辿り着いた先にて、彼らの前に広がる光景はまさしく頂上決戦。ここ"鬼ヶ島"に集った猛者達が一堂に会するこの屋上は、まさしく天下分け目の決戦の舞台と相成ってゆく。
─────20年以上先の未来に次の時代を担う強力な海賊達が「新世界」へ押し寄せて来る……!!おれがもし死んだなら……!!カイドウを討てるのはそいつらだ!!!─────
「また増えたか、おれの戦いを眺めてろお前ら!!」
「断る」
「おれも」
軽口を叩き合うのは次代を担う3人の海賊団の船長達…"麦わら"のルフィ、"死の外科医"トラファルガー・ロー、ユースタス・"キャプテン"キッド。そして彼らの傍に控えるのは"麦わら"の一味の"海賊狩り"のゾロ、同じく"海賊歌姫"ウタ、そしてキッドの相棒"殺戮武人"キラー。
いずれも"最悪の世代"として2年前から引き起こしてきた事件の数々・経歴等により世界中を引っ掻き回してきた超が付くほどの問題児達。
だがそんな彼らを吹けば飛ぶような奴らだと見下ろすのは、この広い海を数十年もの間君臨し続ける皇帝達。ワノ国を支配しサシでやるなら…と言わしめる程の武人、百獣のカイドウ。片や万国という世界中のほとんどの種族が住まうお菓子の国を支配する女王、ビッグ・マム。
「"麦わら"」
「欲しい首ばかり!!」
一触即発、今にも戦いの火蓋が切って落とされるかと思われたその時、「あ」と何かに気づいたかのように声を漏らしたルフィが二人の皇帝達の前へ歩み寄る。自分達の船長の急な行動に対し即座に刀を、槍を握りしめる2人の船員達。だが船長の歩む先、皇帝達の後ろに転がっている"それ"に気づいた時はっとする。そして"それ"に歩みを進める麦わら帽子を被った男を見てカイドウが何かを思い出したかのように口を開く。
「リンリン!!このガキ、おれの前で"何に"なると言ったと思う?」
「コイツは生意気なのさ!!おれの前でも随分大口叩いたよな…ウチの城もブッ壊しやがって。まずは詫びろよ"麦わら"ァ!!!」
皇帝達の言うことなぞ意にも介さずルフィは歩みを進める。彼らの後ろにいる"それ"に向かって。
「おい小僧!!お前が一体…"何に"なるのか、おれ達の前でもう一度言ってみろ」
そして、ルフィは"それ"の前で歩みを止め顔を上げる。その視線の先に広がるものは…
────おぬしらを頼りにしておる、ルフィ殿……かたじけない───────
見るも無惨な姿となった錦えもんら"赤鞘九人男"達。一足先にカイドウに挑み完膚なきまでに敗北を喫したワノ国解放を願う侍達。だがその望みは圧倒的な暴力の前に屈する事しか出来なかった。
「大丈夫か錦えもん………!!ごめんな、遅くなった」
ルフィの問いかけに応じようとするも歯の欠けた口をパクパクすることしか出来ずドロっとした血を吐く錦えもん。ようやく紡がれた無念…!という言葉に剣士と歌姫は得物を握る手の力をより強める。
「ハァ…ハァ…あの"世にて…おでん様に"……!!!合わせる顔がな"い"………!!!」
無理に言葉を振り絞るせいで身体中から血が溢れかえり、ルフィはもう喋るなと止めようとするが、錦えもんは己の身体なぞに構わずルフィの外套に縋りつく。
「背負っでくれんか……!!…………『ワノ国』を"…!!」
「バカ!!当たり前だろ!!友達の国だ!!!」
ワノ国を背負う。その重すぎる願いに一切の迷いなく応えるルフィの背後に、おい小僧ォ!と今まさにワノ国を支配するカイドウが立ち塞がり金棒を振りかぶる。
「ウゥ…!!ルフィ…殿……かたじけない…!」
「トラ男!!こいつら全員下へ!!」
その直後、カイドウが愛用する八斎戒が振り下ろされる。だがそこにはルフィはおらず、敗れた侍達もローの能力によって下へと逃がされていた。響き渡るのは振り下ろされた衝撃とそれに驚く鬼ヶ島内部の者達のみ。そして、カイドウがギロッと自分の頭上に飛び上がったルフィを見据える。麦わら帽子の男は既に戦闘態勢を整えていた。
「ギア"3"!!!"ゴムゴムの"ォ!!」
ルフィはふと目を瞑る。集中し、覇気を己の中で流すために。そして思い起こされるのは、ここまで辿り着くのに紡がれた軌跡。決して平坦ではなかった過酷な道。
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お前さんが覇気と呼ぶそれを、ワノ国では流桜と呼ぶ。"流れる"という意味を持っている。
おでん様は処刑され申した!!ワノ国の将軍と、海賊カイドウの手によって!!!
雷ぞう殿は…ご無事です!!!
敵に"仲間"は売らんぜよ!!!
いいか、ゆガラ達は前へ進め!!!
えびす町のお調子者があの世へ参るぞ!!!
生きていたのか…!!まだ反逆の火は…
全船"鬼ヶ島"へ!!!突入せよ!!!
ウオオオオオォォォォ!!!
20年前、おでんがカイドウに殺された日───この国は止まったんだろ!?
死んで笑われていいやつなんているはずがねェ!!
よそ者がこの国守っちゃいけねェのか!?
お前が言えよ!!!偉いんだろうが!!!こんなにすげェやつらの"大将"なんだろ!!?
カイドウを倒じたい!!!
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そして、ルフィの目がカッと開かれる。目の前の敵を倒すために、巨大化した自分の腕に覇気を流し込み、これまでに培ってきたものを振り下ろす。

「おいカイドウ、何してる!?お前が殴り倒されるなんて!!」
突然の事態に2人の皇帝は状況が飲み込めないでいた。つい最近までたった一撃で沈み、吹き飛ばされるだけだった筈の男によってこの世における最強生物が殴り倒されてしまったのだ。だがそんな2人をよそにルフィは宣言する。先程の"何に"なるのかという問いに答えるために。
「おれはモンキー・D・ルフィ。お前らを超えて……"海賊王"になる男だ!!!」

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"海賊王"になる。昔から宣言して回っていたことを当たり前のように発言したルフィであったが、自分達を前にしてまだそのような世迷いごとを宣う若造に女王は激怒した。
「この期に及んでクソガキがァ〜〜『海賊王』だァ〜〜〜!!?…おい!休んでんじゃねェよ、ふざけてんのか!?小僧のへなちょこパンチだぞ!!?」
怒りのあまり同盟相手であるカイドウにまで当たり散らすビッグ・マム。だがそれに対して言い返す余裕もなくカイドウは先程の攻撃を思い返す。おれに攻撃が効く…!?と。
そしてあのカイドウを見事殴り倒してみせたルフィを見てその仲間や共闘者達は賞賛と驚嘆の言葉を口にする。
「フフ!やるじゃんルフィのやつ!!」
「アレか…『ワノ国』のジジイに習った覇気…」
「何だ今の『覇気』………打撃なんかカイドウに効くのか!?」
「ファッファッファ!!"勝算"あるじゃねェか!!」
「一言…言わせて貰わなきゃな」
そして未だ怒りが収まらないビッグ・マムはおい小僧!とルフィを呼び振り向かせる。
「おめェ『海賊王』ってのがどれ程の存在かわかってんのかい!!?」
「………!!」ガラッ
ビッグ・マムが海賊王とはなんたるかを語る最中、カイドウが起き上がり思案する。数日前に、ワノ国"九里"にて己に大敗を喫した目の前の男に何があったのかと。
(わずかだぞ…!!おれと戦えるやつなど!!!お前が……!!!どれ程のモンだってんだよ……!!!)
思い起こされるのはかつて自分と戦うことの出来た怪物達と、今この場にいない者で唯一自分と戦う事の出来る"赤髪"の男。そんな歴戦の強者達に並ぶ程の男なのかと目の前の青年をじっと見据え、ニィと笑みを浮かべる。
「"麦わら"ァ………"雷鳴"……」ビュッ!!
その刹那、ルフィの中に浮かんだのはカイドウに殴り飛ばされる自分。かつて九里でそうされたように。そして直撃する寸前に大きく前傾姿勢で飛び上がる。
「"八卦"!!!」
「……!!う!!くそ!!未来読んだのに!!速ェ!!」
「いいぞ…二度目はまともにゃくらわねェか…!!」
鍛え研ぎ澄ました見聞色の覇気による"未来視"により直撃は避けたものの、渾身の金棒による一撃がかすり頭から血を流すルフィの元へ追撃と言わんばかりにビッグ・マムが向かってくる。
「ゴミは燃やすのが一番さ…灰燼と化せばいいよォ!!"天上の"」
だがそこへ三本の刀を携えた剣士が走り抜ける。
「"狐火流"……!!!」
「"火"!!!」ボウッ!!!
「"焔裂き"!!!」ザン!!
「ギャアアアア!!!」
「おおー!!錦えもんの技!!」
「へへ…盗んだ」
「プロメテウス!!」
ルフィへ襲いかかる巨大な炎を錦えもんから盗んだ技を用いてその一刀による一振りにより両断してみせたゾロ。炎そのものである自分が斬られるというほとんど経験した事の無い事態にプロメテウスは痛ててと呻く以外なかった。だが喜んでいる暇はない。この場で相対しているのは目の前の怪物ババア1人だけではないのだからと、後方に控えるウタがルフィへ向かって叫ぶ。
「ルフィ!!一瞬でも気を抜かないで!!!『四皇』が2人もいるんだよ!!!」
「え」
ウタの忠告も虚しくカイドウの金棒がルフィへ向かい振り抜かれる瞬間、ローの能力による物体の位置を瞬時に入れ替える技"シャンブルズ"によりローの傍にあった小石とルフィの位置が入れ替わったことにより難を逃れる。
「わ、トラ男!ウタ!!」
「ルフィ!!良かった…!!」
「よォ麦わら屋……!!」
ルフィが無事であったことを喜ぶウタに対して、ローはどうやら何か思うことがあったのかルフィへ詰め寄る。
「お前に言っておくが…おれは最初から錦えもん達を下へ逃がすつもりだった!!」
「は??」
「それをてめェが……!!」
ルフィがカイドウを殴り倒す前の刹那のやり取り。錦えもん達を下へ逃がしてくれというルフィの、見方によっては命令とも取れる願いをローがそれを聞いたかのようになってしまった事をローは激しく詰め寄りだす。
「まるでおれがてめェの命令を聞いたみてェに!!」
「いいじゃねェかどっちでも!!!」
「あれってそういうことじゃなかったの?」
「んなわけあるか!!ふざけたこと言ってんじゃねェぞ歌姫屋!!!」
くだらない言い争いを始めた3人へ1人の男がちょっかいを出すかのように話しかける。キッドだ。
「トラファルガー…お前遂に"麦わら"の子分になったのかと」
「なるかァ!!!」
「格下が格下につこうがおれにはどうでもいいが……!!」
『あァ!?』
格下。その言葉の出現により言い争いはさらなる混沌を迎えることになる。
「聞き捨てならないよ今のセリフ!!シャンクスに負けたクセに!!!」
「そうだそうだ!!格下に言われたくねェ!!!」
「あァ!?誰が格下だとォ!!?」
「お前しかいないだろ!!」
「はァ!?おれなわけねェだろ!!!」
「お前だ!お前お前!!」
止まることのない言い争いをする4人を見てゾロは仲良しかと言い、キラーはファッファッファッと笑うしかなかった。だがそれを良しとしないビッグ・マムが動き出す。
「焼き払えプロメテウス!!!"天上のボンボン"!!!」
「はいママ!!ホッホッホッホッ!」
「うわっやば!!避けないと!!」
プロメテウスより放たれた火球を確認したウタがその場を真っ先に離れ、それに続こうとキッドとローが動こうとした瞬間、ルフィがとんでもない提案を出す。
「よし決めた!!アレに先に手ェ出したやつ格下!!」
「のるかバカ野郎!!」
「くだらねェゲームを持ちかける、そういう所だ!!てめェらが大物になれねェ理由は!!」
「いいぞ、じゃあお前ら"格下"」
『………!!!』ピクッ

『うわああ!!』ボカァン!!!
「何やってんだお前ら!!!」
「アハハハハ!!3人共面白い事やってる!!」
「お前もあんなしょうもないことで楽しんでんじゃねェ!!」
三者痛み分けとなった勝負であったが、勝つか死ぬかのこの瀬戸際に無駄にダメージを負うバカ達とそれを見て楽しむおバカちゃんへゾロのツッコミが冴え渡る。
それはさておき、どうぶち殺してやろうかとウキウキするビッグ・マムに対してカイドウが待てと呼びかける。
「下がってろリンリン………!!コイツらの力を見たい」
「また物好きだねェ…!!」
3人の船長達のくだらないゲームを見届けたウタ・ゾロ・キラーは兎にも角にもと、目の前の敵へ意識を向ける。
「あー面白かった!さて、私もそろそろ本格出陣と行きますか!!"ウタモルフォーゼ"!!!」
「おれも行く…邪魔するなよ?人斬り鎌ぞう!!」
「!!」
「そんな妙な笑い方そうそういねェからな」
「ファッファッファ!!この『パニッシャー』をつけてたらお前は死んでたゾロ十郎」
本格出陣と称し黄金の鎧を身に纏うウタ、手ぬぐいを頭に巻き刀三本を抜くゾロ、装備しているパニッシャーを回転させ次の攻撃の予備動作へと入るキラー。三者三様の動きを見せ、カイドウへと襲いかかる。
「結果は同じだ!!"三刀流"!!"煉獄"」
「おウタも呼んでよね!!"魔王の行進曲"!!」
「"斬首爪"!!!」
「"鬼斬り"!!!」
「"協奏曲"!!!」
3人の渾身の一撃がカイドウの喉元へと炸裂する。だがそれをカイドウはウゥ!とだけ済ませ、致命傷とはいたらなかった。
「ウォロロロ…さすがだ…!!」
「やっぱり音階ソロじゃ足りないか…もっと引き出していかないと」
「もう少し解放しなきゃな"閻魔"…」
ウタとゾロが己の能力や得物に由来するものへと向き合う中、先程のくだらないゲームにより吹き飛んだ3人がコノヤロー!と戦線へ復帰してくる。
「一気に勝負つけてやる!!」
ルフィがそう叫ぶと船長達は各々の出せる最高レベルの戦闘形態へと変貌を遂げ始める。
「ギア"4"!!!」
左腕に覇気を纏わせたそこへ、筋肉へと空気を吹き込む。左腕から上半身へ、上半身から右腕・両足へと空気が送り込まれる。送り込まれた空気が指の先に至るまで行き届き体全体が大きく膨れあがる。それと同時に全身に覇気を纏い上半身と目元には模様が浮かび上がる。その姿、まさに明王の如く。
「"弾む男"!!!」
それに続くのは逆立った赤髪を持つ男、キッド。
「ぬおおお!!!」
意気揚々と鉄くず仕掛けの左腕を掲げるとそこから強力な磁力を発する。屋上へ来るまでの間、鬼ヶ島中からあらゆる鉄クズをかき集め四皇へぶつける為に集め回ったそれらがキッドの元へ集う。巨大な腕・おぞましいドクロ・それらを繋ぐものとなり、キッドが装着する事で強大な力となる。
「ぬうううっ…しゃあ!!"磁気魔人"!!!」
内部・外部から巨大な姿へと変貌を遂げる2人とはうってかわり、冷静な面持ちのロー。
「"ROOM"!!」
突き出された左腕から半透明なサークルを展開し、そのサークル内へと入った岩山を"タクト"により切り出す。切り出された巨大な岩山の数々は先端が尖っており、ローを守るかの如く周囲を漂う。そして自身の立つ岩山をも切り出し宙に浮く足場としたローは先に動き出したバカ2人に続いていく。
『うおおおーーーっ!!!』
それを見届けたカイドウはニィッと笑みを浮かべる。これを待っていたんだと言わんばかりに。

「来い!!お前らの力、海賊王に値するか───見せてみろ!!!」
パン!と胸を叩きかかってこいと挑発するカイドウに対し真っ先にルフィが切り込む。
「"ゴムゴムの"ォ!!"猿王銃"!!!」
強烈無比な一撃にカイドウもたまらず吹き飛ばされるが、すぐに体勢を立て直す。だがそこへ間髪入れずにキッドが突っ込む。
「お前が固ェのはよく知ってる!!だが潰れて"圧死"はできるんじゃねェか!?"磁気万力"!!!」
望み通り力を見せてやるとカイドウの巨体を上回る巨大な腕で挟み込むキッド。とてつもない質量攻撃であったが、カイドウはまだ足りねェなと余裕の表情を浮かべる。そこへこれまた巨大な岩山が迫ってくる。ローだ。
「だったらおれが足してやる"タクト"」
キッドをも巻き込みかねない勢いで尖った岩山の雨をカイドウに降らせるロー。キッドのそれと合わせて激しい質量攻撃を食らいさすがのカイドウもその場に倒れてしまう。だがそんな事よりもとキッドはローへ怒りを露わにする。
「くっ…てめェ!!おれも一緒にやるつもりだっただろ!!!」
「お前の中途半端な攻撃をおれがフォローしてやったんだろうが」
「んだとっ!!?」
「へっ!」
売り言葉に買い言葉で睨み合うキッドとロー。だがそんな2人に待てよとゴインゴインと跳ねながら声をかけたのはルフィだった。
「ギザ男!!トラ男!!お前らな!!!こんな所でケンカすんなよ!!しょうがねェやつらだな」
「おれに指図するんじゃねェ!!!」
「お前の指図は受けねェ!!!」
格下のお前らがいなくてもおれ1人で片付けられただのおれの攻撃が一番効いてただの、2人のケンカから3人のケンカへ発展しかけたところへファッファッファッ!と仲裁する者達が現れる。
「今はそれくらいにしておけキッド」
「ルフィもトラ男も、あんまり続けるようなら怒るよ!」
「油断すんなよ、ルフィ」
多少締まらないながらもウォーミングアップを済ませ集った6人の"最悪の世代"達。そんな彼らを相手にカイドウは再び立ち上がり、龍の姿へと変化しながら天高く舞い上がる。ビッグ・マムも雷雲ゼウスにフル充電を施し、右腕に掲げる剣ナポレオンはプロメテウスを纏いメラメラと燃え上がる。
「ウォロロロ…ウォロロロロロロ!!殺すにゃ勿体ねェ!!!───だが仕方ねェ!!お前らが死んだら何もかも貰うぞ!!"仲間"も"宝"も全ておれ達のもの!!!」
「"歴史の本文"お前達なら持ってるよねェ!?楽しみだ!!!」
皇帝達もウォーミングアップを済ませその強大な力をもって牙を剥く。新世代達も己らの武器を構え対抗する。
「勝った奴が大きく近づく!!!『海賊王』にな!!!」
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空へ向かい頭を突き上げ大きく息を吸い始めたカイドウ。そして一気に頭を振り下ろし大量の斬撃を放つ。
「"壊風" ハッ!!!」
ローは"シャンブルズ"により小石と位置を入れ替えながら器用に躱し続け、キラーはパニッシャーと持ち前の機動力で斬撃をいなし続ける。キッドはその巨体故に斬撃を躱しきれずにもろに食らうが斬れた部分は元々鉄くず!と意に介さない。背中に装着したジェット機により縦横無尽の機動力を得たウタは自由自在に斬撃の雨を躱し、ゾロは"閻魔"の一振りで岩山を斬る程の斬撃を受け流す。そしてウタ同様、武装とゴムの融合により宙を駆け巡る機動力をもってしてルフィがカイドウへと迫っていく。その右腕をギリリと溜め込み回転を加えながら。
「"ゴムゴムの"…"猿王回転弾"!!!」
内部破壊の覇気を纏った一撃によりその巨体を吹き飛ばされるカイドウ。だがそこへ斬られた鉄くずを集結させながら寝ぼけてんじゃねェぞとキッドが迫る。カイドウの吹き飛ばされた巨体を楽々持ち上げ振り回しながら地面へと向かい叩きつける。
「"破壊"…"弦"!!!」
「グオオオ!!!」
ウゥ…!と叩きつけられた衝撃の余韻が残る中その大口を開きキッドへ襲いかかるカイドウ。それを見かねたローが"ROOM"を展開し"シャンブルズ"により自身とキッドの位置を入れ替え、カイドウの噛みつき攻撃を鬼哭でいなし横へと逸れる。龍の内臓図は見たことねェがと再び"シャンブルズ"を使用しカイドウの古傷近くへと降り立つ。
「この辺だろ心臓は!"ガンマナイフ"!!!」
「オオオオオ!!!」
内部から与えられる"体内"への医術的な死。その威力と破壊力にカイドウは苛立ちを見せる。
「こざかしい…!!!おれの強度は学習済みか……!!ただの根性バカ共じゃあなさそうだな…!!!」
そしてそこへまた1人、一撃かまそうとカイドウの鱗へ刃を突き立てながら進む男がいた。キラーだ。
「この"硬さ"にはさんざ泣かされた。内部へ斬り込めばいいんだな!!」
キュイインとパニッシャーを回転させながら飛び上がる。そしてその刃は防御不能の音速の鎌と化す。
「"鎌阿音撃"!!!」
「ウオオオオ!!!」
少しは効いたろと追撃に走るキラー。だがそれを良しとしない天候を従え操る女が1人、ビッグ・マム。
「"威鼓"!!!」
バリィッ!!!
女王の放った雷撃に追撃の夢叶わずキラーが堕ちる。
「キラー!!!」
「マ〜ママハハハハ!!!この空の下にいる限り…!!!お前らに逃げ場はないよ!!!」
右手に雷を、左手に炎纏う剣を持ちながら宙に君臨し高らかに宣言するビッグ・マムに新世代の紅一点、ウタが凄まじい勢いでその槍を突き出し迫っていく。
「"急速な追奏曲"!!!」
「ん〜〜!!?"赤髪"の娘ェ…狙いはいいがまだまだだねェ!!」
「くっ…!!」
並の相手なら彼方へと吹き飛ばす程の威力を誇るウタの突き。だがそれはビッグ・マムの炎纏う剣によりあっさりと防がれてしまう。皆がカイドウに注力する中、ビッグ・マムへ狙いをつけるところまでは良かったがそこまで。女王を叩き落とすだけの力は今のウタには無かった。
「コイツら想像以上に……!」
「"犀榴弾砲"!!!」
ビッグ・マムの雷撃により堕ちたキラーを噛み砕かんとしたカイドウであったが、それをルフィが両足をぶつける一撃で阻止する。ギロリと睨みつけ口の中で炎を溜め込み始めるカイドウ。その攻撃の予備動作を見かねたゾロが駆け出しローに頼み事をする。
「トラ男、おれを上へ飛ばせ!!」
「!!てめェら揃いも揃って……!!おれはお前らの世話係じゃねェぞ!!!」
文句を言いながらも"シャンブルズ"によりローはゾロを今にも攻撃を食らいそうになっているルフィの目の前である上へ飛ばす。その直後、カイドウとゾロ両者の技が炸裂する。
「"熱息"!!!」
「"焔裂き"!!!」
カイドウの巨大な炎を断ち切りゾロ!と喜びを見せるルフィ。だがまだだと炎を断った"閻魔"を掲げながらゾロはカイドウへと迫る。だがその刀を見た皇帝達は何やら異様な気配を察する。
「"一刀流"」
(何だ!?)ゾクッ
「避けな!!カイドウ、それはただの刀じゃねェ!!!」
「"飛竜" "火焔"!!!」
ゾロから放たれたその一撃は、ここまでろくに回避動作をしてこなかったカイドウでさえ避ける程のシロモノだった。その攻撃は鬼ヶ島から伸びる巨大な角を一刀両断するほどの一撃であった。
「なぜあいつの刀に!!"おでん"の気配がのってる!!?」
「ナメすぎたねェ」
「ゼェゼェ…くそ!!外した……!!」
大技を外し落ちてゆくゾロへビッグ・マムが牙を剥く。ゾロの刀へと雷撃が誘導されキラーに続きゾロまでも堕とされる。
バリィッ!!
「ゾロ!!」
「っ!!よくもゾロを!それによそ見禁止!!!」
先ほどまで交戦していた自分に目もくれずカイドウへ忠告を飛ばしゾロを堕としたビッグ・マムへ怒りと共に突撃していくウタ。だがそれを女王は許さなかった。
「お前も目障りだよ歌娘!!"皇帝剣"!!!」
「お前なんか真っ2つだァ!!」
「いっ!!?」
炎纏う剣が更に巨大化しその凶悪さを増す。思わず突撃するその体にブレーキをかけたが間に合わず、盾を構え攻撃を受ける体勢を取らざるを得なかった。
「"破々刃"ァ!!!」
「うっ!!盾が…!!!」
ウタウタの能力により生み出したこれまで割れることのなかった最強な盾があっさりと真っ2つにされてしまった。たまらずその場を離れるウタであったがビッグ・マムは追撃に手を緩めない。
「マ〜ママママママ!!ハハハハ!!!うまく防いだか!だが、逃げ場なんかあるかァ!!!」

ビッグ・マムの号令によりゼウスから放たれた雷撃の数々はもはやただの雷撃などと言えるようなものではなかった。
「うわ!!」
「くそ!!"天災"かよ!!!」
「ぐ!!!」
「うぁ!!」
新世代達に降り注ぐ天災は皆平等に行き渡る。鉄くずの腕によるガードをするキッドにはゼウス自ら赴き食らわせる。もはや無事に立つ者などいないだろうと思われたその時、堂々と皇帝達の前にルフィが躍り出る。
「ん?麦わらァ!!てめェなぜ雷が効かねェ!!?」
「ゴムだから!!よくもウタ達を!!!」
ゴムだから電気を通さない。かつて空島を支配していた神に見せたその特性をもって皇帝達へ迫るルフィ。だがそこへカイドウがこれならどうだと攻撃を仕掛ける。
「"熱息"!!!」
「うわあァ〜!!!」
雷がダメなら炎をとぶつけたカイドウであったが、それでもルフィは倒れない。
「炎も効かねェのか!?なぜだ!!?」
「根性ォ!!!"ゴムゴムの"ォ!!!」
腹に括った1本の槍をもってしてカイドウへ渾身の連撃を叩き込む。
