鬼ヶ島屋上決戦・後半

鬼ヶ島屋上決戦・後半


力の限り叩き込まれる"猿王銃連打"。カイドウの顔面に、鳩尾に、首元に、また顔面に、頭上に。強力な覇気を纏った連撃が豪雨の如く降り注ぐ。それを唖然とした表情で見届けるビッグ・マムと新世代達。そしてこれで最後だと顔の形を歪ませる程の右ストレートでカイドウを地面へと叩きつける。その衝撃は鬼ヶ島全土に駆け巡る。だがそれとほぼ同時にルフィの口からプシュー!と空気が漏れだしカイドウ共々地面へと倒れてしまう。


「麦わら!?いつやられた!?」

「あの鉄球みてェな技の副作用だ!!10分程覇気を使えなくなる!!」

「リスク付きのパワーか。だが今のが全部効いてたなら…!!」


凄まじい連撃により倒れたカイドウをぶっ殺すチャンスだとキッドが息巻くが当然、ビッグ・マムがそれを許さない。


「マ〜マママママ!!!何だもう限界かい!?よく暴れたねェ!!!"刃母の" "炎"!!!

「うおっ!!」

「差し出せ"麦わら"をォ〜〜!!!」


体力を著しく失い動けなくなった船長を担ぎビッグ・マムから逃げ回るゾロ。だがそれを阻止せんとローとウタがビッグ・マムの懐へ飛び込む。


「"カウンターショック"!!!」

「"重々しい受難曲"!!!」

「ぎゃああああ〜!!!」


ローとウタの攻撃により生まれた隙を縫いキッドとキラーがカイドウの元へ追い討ちを仕掛ける。だがそこに地面に寝そべる龍の姿はなく、ウゥ…と起き上がりつい先程まで怒涛の連撃を叩き込まれていたとは思えない程軽快に体を渦状に巻き上げながら天へと登るカイドウがいた。その回転により生み出される風は鉄くずが集合し巨体となったキッドすらも吹き飛ばす程の風圧を誇る。


「天に昇りし風、万物を破壊する "龍巻"!!!」

「う!!!」

「うわあ!!!」

「冗談だろ!!?ただの災害じゃねェか!!」

「あ!ゾロ…ありがとう…」


1人の人間が起こせる規模を遥かに超えたこの惨状に独り言ちるゾロと意識を取り戻し助けられた礼をするルフィ。だがそんな2人の元へも龍巻が襲いかかり、巻き上げる。


「うわ、しまった!!」

「ああ〜〜〜!!」


そこへ力が抜けきり抵抗のての字もないルフィへカイドウが大口を開き、バクン!と食べてしまう。その光景を目の当たりにしたウタとゾロが何してくれてんだと救出へ動く。


「ルフィ!?今行くよ!!」

「待て待てウチの船長を……!!食ってんじゃねェよ!!!"三刀流"……!!

「ん!?」


三刀流の構えから放たれる異様な気配に勘づいたカイドウは先程の鬼ヶ島の角を叩き斬った際に見せた覇気の正体に気づく。ゾロが日和より手渡された光月おでんの愛用した刀の内の一振"閻魔"、そこから龍にも似たおでんの覇気が流れていることに。


「"黒縄大龍巻"!!!」

「ウオオオオ!!!」

「ウロコを斬った!!!」


ゾロの放った龍巻が頑強なカイドウのウロコを斬り、外部からのダメージを与えてみせた。たまらず口に含んだルフィを吐き出すと、すぐさま背中に携えたジェット機で飛び上がっていたウタが空中で受け止める。


「ルフィ!!大丈夫!?」

「ウタ!ありがとう!!」

「あのガキ…カイドウを斬りやがった!!!」

「アァ効くぜ、そうか…あれはおでんの刀だな…!?龍巻でおれに挑むとは…ウォロロロロロロ!!」


再び体を渦のようにして天へと登り、とぐろを巻いた姿となりさらなる大技が繰り出される。


「"龍巻壊風"!!!!」


"壊風"を超える速度と規模で放たれた斬撃が新世代達に向かって容赦なく注ぎ込まれる。"シャンブルズ"で難なく躱すローと元々鉄くずとそのまま受けるキッドにパニッシャーの回転によりいなし続けるキラー。そして彼らとは対照的に力の抜けたルフィを守ろうとうわ!と2人分となったことで機動力の落ちたウタがギリギリでの回避となり、そんな2人を守ろうと正面から斬撃に対処するゾロ。

こうして、赤鞘九人男の討ち入りから始まった屋上での戦いは、鬼ヶ島城内で戦う者達へガレキの雨を降らし続けていた。そしてこの天下分け目の決戦はよりその激しさを増す様相を呈していた。


「何だあの姿……」

「カイドウ…?」

「"人獣型"か」

「おいリンリン………!!楽しいな………!!ウォロロロロ!!」

「マ〜マママハハハハ…!!カイドウ、おれも今そう感じていたトコさ!!!」



​───────​───────​───────​───────



鬼ヶ島屋上の戦いは続く。鬼ヶ島内部を氷鬼が蝕もうとも、おでんが現れようとも、炎が全てを焼き尽くし破壊しようとも、どちらかが死に絶えるその時まで終わることを知らない。

カイドウが人獣型となってからしばらく経過した。覇気を消耗し「1分頼む」とその場で寝始め体力回復に専念したルフィとそれを守るウタとゾロ。人獣型がなんぼのもんじゃいと戦いを挑むキッドとキラー。そしてそんな彼ら5人をフォローし続けるロー。そしてようやく覇気が回復したルフィがキッドらに負けじとカイドウに突っ込んでいく。だが当然、勢いだけでどうにかなる相手ではない。


「あああああ〜…ギャー!!」

「どうやって勝ちゃいいんだ」

「攻撃が効いてる気がしねェ!!」


キッドの言う通り、内部への攻撃や質量攻撃、それに加えてゾロの龍巻により外部からのダメージまでも与えているにも関わらずまるで効果を感じられない。人獣型となりより硬くなったことでその感覚は実体験を伴い明確なものとなる。だがそれでも先程派手に吹き飛ばされたルフィは一欠片も悲観していなかった。


「……………ぷは!!効いてるよ!!!こんだけ打ち込んで効かねェ筈あるか!!同じ人間だろ!!"ゴムゴムのォ"


勇んで行ったがすぐに跳ね返される。


「ギャーー!!!」

「ルフィ!!!」

「考えて飛び込めよ!!!」


既にルフィと同じ体験をした事により冷静に目の前の現実を見据えるキラー。だがその現実はあまりにも酷なものだった。


「このレベルでよく"同じ人間"なんて言えるな」

「じゃ勝てねェと思ってお前らここにいんのか!!」

「だから方法考えてんだよ!!!」


そして、新世代きっての切れ者であるローがとある提案をする。


「一人引きはがすべきだ」

「私もそう思う…二人同時はキツイもの」

「あの二人が並んでると……!!ここがまるで」


「地獄なら何度も行ってきた!!!優勢だ!!」

「麦わらァ!!お前はいつでも"目"が死なねェなァ!!!」


いつまでも"目"が死なないルフィ。だがそれは他の5人も同様であった。どう勝てばいいのかとぼやきはしても負けるつもりなどサラサラない6人の新世代達。そんな生意気なガキ共に痺れを切らしたビッグ・マムがある種の"死刑宣告"を行う。


「一発かまそうカイドウ。6人中何人生き残るかねェ?マ〜ママママハハハ!!」


2人の皇帝がその"一発"に動く中、その2人をどうにかして引きはがせないかとキッドが思案する。


「トラファルガー!!赤髪の!!お前らの能力でどっちか下へ追いやるか眠らせられねェのか!?」

「できるならもうやってる!!覇気が強すぎてあいつらは動かせねェ」

「私も…何度かこっちに引き込もうとはしてるんだけど警戒されてさせてもらえない」

「だったら…分解だ!!」


名付けて"四皇分解作戦"。それが始動しようとしたその時、見聞色の覇気を使いルフィが未来を読み取る。


「おい!!でけェのが来るぞ!!」


だが既に手遅れ。2人の皇帝が軽口を叩き合いながらその得物を振りかぶる。


「足腰衰えてねェだろうなババア!!」

「誰に口きいてんだ小僧!!」


『「覇海」っ!!!!』


放たれたその一撃。もはや言葉に表す事すら憚られる脅威的な破壊力。少しでも触れようものならその身が一瞬で無くなる程のそれは、全滅を悟らせるには充分だった。


「ダメだろこりゃ」

「ムリだ避けきれねェ!!!」


誰もがこの戦いにピリオドが打たれるかと思われたその瞬間、覇海の進撃を僅かながらも食い止める者がいた。ゾロだ。


「逃げろお前ら!!!全滅するぞ!!!」


ゾロの決死の行動により生まれた逃げる隙。皆がその一瞬にかけて全力で回避する。そして…


ドォン!!!



「"声"が消えねェな……」

「逃げたか、たいしたもんだ!!」


「ゾロ屋……生きてるか!?」

「ゾロ!!大丈夫!?」

「ウッ…!!…………!!たぶんな…!!」

「一瞬でもよく止めたな、ありがとよ……!!」

「"麦わら"は!?」


覇海の一撃を受け止め重傷を負ったゾロを除き無事に生還した新世代達。だがそこにルフィの姿はなく、既にカイドウ目掛けて突っ込んでいく最中であった。何の策もないつい先程まで繰り返していた事と同じ動きではあったが、仲間をあれだけ傷つけられて黙っている男ではない。


"ゴムゴムの"ォ…!!"火" しし!!避けたな!?カイドウ、痛ェからだろ!!?」


攻撃を受けずに躱したカイドウを見てしし!と笑うルフィ。だがそれを見抜いたとて何の役に立つとカイドウが金棒を振り抜く。「あだだだ!!」とガードに使用した両腕をヒリヒリさせるルフィへ向け、カイドウは間髪入れずに口から熱光線を発射しルフィを追い詰める。すんでのところで転がり回避したルフィをよそにゴロゴロと金棒に雷鳴に似た何かを纏わせ上昇するカイドウ。そして充分な高さまで上昇した後、ルフィの元へ急降下する。


「"降三世" "引奈落"!!!」

『ルフィーー!!!』


その威力に鬼ヶ島がひび割れ悲鳴をあげる。ウタとゾロがその一撃に沈められた船長を心配するがすぐに思い直しもう一人の皇帝へ目を向ける。カイドウがルフィにかかりきりとなったことで他の5人がビッグ・マムへ向けてその全戦力を投入することが可能となったのだ。この好機を逃す手はない。そうしてウタの手から発せられた大量の音符が一箇所に集まり真四角の箱の形へと変化する。


「"元気に動く装飾曲"応用版!!!出来たよ!!」

「よし…"ROOM"


ウタの能力により作られた箱を確認したローが"ROOM"を展開する。ビッグ・マムとそのホーミーズ達が入ったのを確認するとこの半透明のサークルの中を支配執刀する外科医がその能力を奮う。


「"シャンブルズ"」

「何してんだ?あいつら」パッ!!

「ん?ゼウス!?」

「わーっ!!ここどこ!?真っ暗〜!!」

「あんたはここで大人しくしてもらうよゼウス!!」


雷雲・ゼウスがいた場所には音符がふわふわと浮かび上がり霧散した。そしてゼウスは今ウタが創り出した空洞のある四角い箱の中に閉じ込められている。寸分の隙間なく創られたそれはゼウスを捕らえて離さない。力任せに突進し箱を動かそうにも、それをウタが愛槍・ヒポグリフにより抑え込むことで一切の身動きが取れなくなっている。これでまずは一つ目の分解。


「いけるかロロノア」

「ゼェ…行くしかねェだろ!!」


続いてゾロとキラーがビッグ・マムの操る炎・プロメテウスと剣となる二角帽・ナポレオンへ斬りかかる。乗っていたプロメテウスが斬られたことでビッグ・マムもぐえ!と地面に落っこちてしまう。


「あああああ〜〜!!」

「戻るスキは与えねェ!!"焔裂き"!!"六道の辻"!!!

「ぐわァ〜〜!!!」


「ギャーやめて!おれはただの剣!!」


『ママ助けてー!!!』

「お前達ィ!!!」


2つ目、次いで3つ目の分解に成功し、残るは本体ビッグ・マムのみ。


「今だ!!"磁気ピストルズ"!!

「何だい!?あいつらを引き離せばおれを倒せるとでも…思ったのかァ!!?」


キッドの放つ無数の銛を弾き飛ばしながら進撃しその生意気な顔面に右ストレートをぶち込むビッグ・マム。地面へ頭部をめり込まされるキッドであったが、負けじと鉄くずで代用している左腕で殴りかかってきたビッグ・マムの右腕を掴み取る。


「"反発"」

「ぬおおおお!!」

「"タクト"」

「!!!バカが……!!今更岩なんてぶつけようが」


"反発"により宙を舞ったビッグ・マムにすかさずローが"タクト"を用いてビッグ・マムの巨体を超える大岩をドカァン!とぶつける。鉄の風船の如き頑強さを誇るビッグ・マムに岩などぶつけたところでダメージなど無い。だがここで重要なのは、この一連の流れはダメージを与えることではなく"分解"という点に注力されていることだ。宙を舞い岩をぶつけられたビッグ・マムが吹き飛ばされた先に彼女を受け止めるものはなかった。つまり…


「ん?え!!しまった!!!下は海だ助けに来いゼウス〜!!!」


カイドウが生み出した焔雲によりワノ国本土の花の都に移ろうとする鬼ヶ島は現在海の真ん中上空を漂っている。その事実に転落中にビッグ・マムは気付くももう遅い。落ちるビッグ・マムを受け止め救うことが出来るゼウスとプロメテウスはウタとゾロが抑え、主を追い出そうとする大岩を叩き斬ることで助けられるかもしれなかったナポレオンはキラーが逃がさない。そしてローとキッドの息のあった連携攻撃によりビッグ・マムを海へと落とす。パーツ毎に順々にバラバラにしていく"四皇分解作戦"は見事成功を収める。


「ママーーーー!!」

「助けに行かせなきゃ!!一人脱落だ!!!」

「ゲフッ」


たった一つの懸念点を除いては。


「助けろーー!!ゼウス〜〜!!!」

「ママ〜〜〜〜どうしたのママ!!?」

「だから暴れても意味ないんだってば!!大人しくして!!それよりも…」


チラリとゾロの方へ目をやるウタ。この作戦は鬼ヶ島から叩き落としたビッグ・マムを助けることの出来るゼウスとプロメテウスを如何にして抑え込めるかが重要だ。そのうちの片方は今自分の創り出した箱の中で大人しくしているが、ゾロが抑える方はビッグ・マムを助けようと必死に逃げ出そうとしている。


「ママ〜〜今助けブォ!!今……ギャー……!!ちきしょー!!」

「ゼェゼェ…ガフッ」ミシ…

「あの野郎さっきので全身の骨砕けててもおかしくねェのに…!!」


"覇海"の一撃により全身から悲鳴をあげながらもプロメテウスを逃がすまいと刀を振るい続けるゾロ。ほとんど無茶な行動ではあるが、この作戦に成功すればビッグ・マムを討てるまたとない好機。だがそれをよししない者が一人だけいる。


「みっともねェなリンリン。世話がやける……!!おい"海賊狩り"!!プロメテウスを解放してやれ!!」


戦闘不能に追い込んだルフィを一旦捨ておきプロメテウス解放のためゾロの元へ突撃するカイドウ。これはまずいとウタが駆け出し声を荒らげる。


「トラ男!!!」

「言われなくても!!"シャンブルズ"!!


ゾロ・プロメテウスとその位置を"シャンブルズ"により交替したローとウタがカイドウの前へと躍り出る。直後カイドウの喉元へ飛び上がり、狙いすます。


「"注射"」

「"魔王の行進曲"」


「"ショット"!!!」

「"助奏"(オブリガード)!!!」

「ウグ!!!ゲホ!!…ウゥ、お前らの能力…特にトラファルガーてめェのは………」


空振りに終わった金棒を再び振り上げるカイドウを見て2人は半透明のバリア"抗菌武装"と盾を用いて防御の体勢へと移る。


「調子が狂うんだよ!!引っ込んでろォ!!!」


防御も虚しく、バリアも盾もあっさりと破られ吹き飛ばされるローとウタ。そうこうしているうちにゾロから解放されたプロメテウスがナポレオンを回収しママ〜!!と必死の形相で鬼ヶ島から飛び立つ。


「​───おい!!ウタ!!トラ男!!ハァハァ…あの"炎"がビッグ・マムを助けちまうだろ!!」

「いいじゃん別に…ハァ……行かせてあげなよ」

「ハァ…ハァ…誰か死ぬくらいなら作戦失敗でいい…!!」


ゾロが死ぬくらいなら作戦失敗でも構わないと口にするローとウタ。だがそこへフォローする形でキッドとキラーが割って入ってくる。


「目的は2人を引き離す事だ!!」

「そこまでする必要はねェ!!ファッファッファ!!」

「ビッグ・マムは任せろ!!!」

「キッド、キラー……!!」


プロメテウスとナポレオン、そして大量の鉄くずを引っ提げ相棒キラーと共にビッグ・マム迎撃に向かうキッドを見届けた後、ルフィの元へ向き直るカイドウ。その瞳は今もはっきりと目の前の敵を見据えていた。


「ウォロロロ見ろ"麦わら"の顔……!!前もそうだった!!コイツは気絶してなお…おれを睨み続けてやがる…!!まずその両目を潰そうか………!?それとも脳か?心臓か……?」


眼下に転がる若造をどう始末しようかと思案するカイドウを見てゾロは再び立ち上がり刀三本を構え三刀流の構えへと移る。


「ウタ、トラ男。これからやるのが、ハァ…ハァ…おれの限界………」

「ゾロ屋……!!」

「なにするつもり…?」

「締まりなく戦っても消耗するだけだ…通じねェ時ゃ死ぬ時だろう、後の事は…頼む!!!」


"和道一文字"を咥え左手には"三代鬼徹"。そして右手には"閻魔"を構え覇気を流し込み、カイドウへと向ける。


「おい!!カイドウ!!そいつはウチの船長だ!!まずはこっちの頭を先に潰して貰おうか!!"鬼気" "九刀流"


気迫により己を3つに分裂したかのように見せる九刀流にゾクリと振り向いたカイドウがそれに対抗せんと金棒を振るうがそれをゾロは的確に弾き返す。


「"阿修羅" "抜剣"」

「ぬ!!」


「"亡者の戯"!!!」


「オオ……!!!おわァ〜〜〜~!!!」


ゾロの放った全身全霊の一撃はカイドウから大量の出血と叫び声を引き出し、ガク…と膝をつかせるすんでのところまで追い詰めた。"覇海"を受け死にかけの男が放ったとは到底思えないその威力にカイドウは目を見開きゾロの方へ振り返る。


「くそ………!!あのガキ……まさかお前も…"覇王色"を…!!?」

「あァ…?何言ってやがる…!!ハァ…ハァ…身に覚えがねェな…!!渾身の一撃だぞ……!!ハァ…ハァ…せめて…倒れて欲しかった…!!」


一言愚痴を残しその場で倒れるゾロを見てカイドウはもはや遊んでなどいられないと金棒をより強く握りしめる。


「充分だろう。この傷は残るぜ……!!………!!目障りな世代だな」

「!!次は私が相手だカイドウ!!」

「おい!!ゾロ屋逃げろ!!」

「わざわざ出向かなくて結構だ…!!」


ゾロを守ろうとする2人を見据え、ゴロゴロと轟かせながら3人へ向けてカイドウは超速移動をしながらその金棒を振り抜く。


「"雷鳴八卦"!!!」


ゴロゴロと稲妻のようなものを纏った一撃は倒れていたゾロを、まともな防御姿勢の取れなかったローをダウンさせる。唯一盾を構え受け流したことでウタのみがその場に立っていたが戦局は絶望的である。


「ウゥ…!!みんな……!!」

「上手くいなしたか……だがそこまで………惜しいな…おれと来りゃあ世界を取れるってのに…」


あとはウタを潰して終わり…この場に立っていた2人の頭にそうよぎった瞬間、今の今まで気絶していた男が立ち上がる。


「お前と?一緒にいられるかバーカ…おれ達は"侍"が大好きなんだ…ハァハァ…お前は必ず…ブッ飛ばす……!!」

「ルフィ…!!」


ワノ国で出来た師匠・ヒョウ五郎の教えを思い返すルフィ。纏った覇気は敵の内側から破壊し、力むのではなく"覇気"を拳に流すのだと。そして窮地にこそ力は開花する!


「まだ……浅かった……!!お前の金棒くらってわかった……!!『覇王色』も…まとえるんだろ…!?」

「ウォロロロロロ……!!ひと握りの強者だけな!!!死に損ない!!」



黒光りする稲妻を迸らせ、カイドウの金棒を弾き返し、地面へと降り立ちすぐに飛び出すルフィ。その右腕に再び稲妻を走らせながら。


ウグ!!と吹き飛ばさながらも持ち堪えるカイドウ。だがそこへ懐に飛び込んだルフィが迫る。


ガシャァン!と、人獣型となってからとうとう初めてカイドウはその背中を地面に叩きつけられる。


「シャンクスと…同じ……!!」

「触れてねェ…!!」


一連の流れを目撃していたウタとローは感嘆をもらす。覇王色を纏った触れない一撃に。そして2年間の修行の折に見たあの"赤髪"の男と同じ事をしてみせた麦わら帽子の良く似合う精悍な男に。


「ウタ…ゾロ…トラ男。守ってくれてありがとう。お前ら下へ降りろ。後はおれが…何があってもこいつに勝つから……!!」

Report Page