高嶋×ワイ?

高嶋×ワイ?


「あ、ようやく目が覚めたんだね!」


目が覚めると目の前の誰かが声をかけた。だが、自分の朧気な視界はその誰かを捉えることは出来ずにいた。


「本当はここにいるのは不味いんだけど、まだ向こう側の君が目を覚ましてないからちょっとくらいならいいかな」


女性特有の高い声と、長い赤色の髪をなびかせる様子から目の前の人(?)が女性だと推測づけた。少しだけ冷静になった頭が状況をしろうと周りを見渡すが、何も無くただただ真っ白な空間が続いてるだけだった。様子を探ってる自分の姿を見て、その人は言った。


「ここはね、簡単に言えば『この世』と『あの世』の狭間って言うのかな?わ・・・、君ここに来る前に何が覚えてる?」


そう尋ねられて何があったか思い出す。確か部活活動で猫を探していて、その猫が高い木ににいたから、運動音痴の子の代わりに自分が捕まえようと登っていると猫が飛び降りて、それにびっくりした時に手が木から離れてしまいそれから・・・・・。

それからの記憶は全く思い出せずにいた。



「あちゃーそれでこっちに来ちゃったんだ。でも大丈夫、君の体はおそらく無事だと思うよ。そうじゃなきゃここにいる訳ないし」



そう言って目の前の女性は自分の頭を撫でながら笑いかけてくれた。はっきりとしない目でも何故か彼女の顔についてはわかった。頭を撫でられるのもあまり嫌だと思わずに受け入れていた。



「さて、まだ君の体が目を覚ますまで時間がかかるみたいだし、ちょっとお話しようか!色々聞きたいって思ってたんだよね、君のこととか君のお父さんやお母さんのこととか」


(『あの子』を通じて見ているのも限界があるしね)


小声で何か言っていたがあまり気にする気にすることも無く、少年は話を始めた。自分のことや、家族のこと、友達と一緒にとある活動をしていることなど、沢山話しをした。そんな自分の話を彼女は一生懸命聞いてくれた。代わり映えのない当たり前の日常を、どこか遠い場所の珍しい話のような反応をしながら聞いてくれていた。



「そっか、やっぱり君は■■君の■■なんだなぁ。ほんっと似てるところが沢山だ・・・」



彼女の言葉にノイズが走る。さっきまで鮮明に聞こえていた言葉が遠くに聞こえだす。そんな自分のことを構わず彼女は話を続ける。



「・・・・・ずるい、ずるいよ■■ちゃん。■から■■君を奪ったのに、なんでそんなに幸せなの。私はこんな場所に■■年も閉じ込められたままなのに。アノ日■■君が■ノ胸二■ヲ刺シテカラズットズットズットズットズット■■1人ナノニィ・・・ッ!!!」



さっきまで温厚に話していた人とは同じ人とは思えないほど激昂した彼女を見て思わず怯えてしまう。体も心も逃げようと思うのに少しも動けずにいた。



「イイヨネ。私■■ミタイナモノナンダカラサ、■■トシテ君ヲココニ■■■■■モ・・・・・」



そう言って自分の体に手を伸ばす。何を言っていたのかは分からないが良くないことだと分かっていてながらも抵抗することは出来ず、ついに彼女手が自分の体に・・・・・


「エッ?」



触れることなく通り抜けてしまう。よく見れば自分の体は透明になって消えようとしていた。そんな姿を見て、先程までの怒りは消え、最初に会った彼女の様子に戻っていた。



「そっか、君の■が目を覚ましたんだね。後ちょっとで■のものに■■■のに・・・」



不満げな様子で彼女は自分の手を戻す。



「ごめんね、■■■■させちゃって。それじゃあここ■■■■■■」



先程から聞こえずらくなっていたのは自分の意識がここから離れていっていたからなのだと気がついた。名残惜しそうな表情を見せる彼女に最後に尋ねる。聞き取れるうちに聞きたかったのだ、あなたの名前を。そして彼女は答えてくれた。最初にみせた笑顔と同じ顔で、答えてくれた。



「・・・・・■の名前は■■、高嶋━━━━━━━━━━━━━━━」



最後まで言葉を紡ぐ彼女の言葉を最後まで聞き取れず、俺は意識を手放した。



次に目を覚ましたのは知らない天井だった。どうやら木から落ちた際、リリが救急車を呼んでくれたようでそのまま病院へ入院となったようだ。自分が目を覚ましたことを聞いてすぐさま駆けつけたリリと柚木の目は赤く腫れており、泣いていたことがわかった。父さんと母さんもすごく心配した表情で俺を抱きしめてくれた。幸い体に異常はなく、様子見でもう1日入院したからの退院が決まった。みんなが帰ったあと1人、あの世界にいた彼女の名前を呟く。聞き取りづらい所もあったが、何故かはっきり覚えていた。




「高嶋、友奈・・・・・」



リリと柚木の名前の元となった四国を救った勇者の1人で、父さんと母さんの友達だった人。何故自分の元に現れたのか?何故あんなにも怒っていたのか。理由は誰にも分からない。最後にみせたあの笑顔が、どこか悲しそうな表情に見えた理由も分からないままだった。

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