騎士の戦禍

騎士の戦禍

銀河天秤

「プリメラ、準備は良い?」


相棒の従騎士の声がする。アタシは愛機の計器を確認して応える。


「大丈夫よ、トゥルーデア!」


機体の整備……良し、火の入りも良い。今日も戦える。2人でいつもの掛け声を叫び、騎兵の姿勢を出撃態勢にする。


『スタンドアップ・センチュリオン!』


背部ブースターのレバーを押し上げ、もう1人の相棒……重騎兵が空を舞う。


「重騎兵エメトⅥ、出るわ!」


空にいる間に右手のランスと左腕のシールドを起動させ、着地と同時に眼前に迫る黒い影へ武器を向けて突撃する。


「この重騎士プリメラが相手してあげる!全員ぶっ倒してやるから覚悟しなさい!」


自分を鼓舞するように叫び、戦いは始まった。




戦場に影の声が響き、エメトⅥが押し返されて城壁に打ち付けられる。


「トゥルーデア、大丈夫!?」


「だ、大丈夫……それよりプリメラ、貴方は……?」


「アタシは平気!エメトⅥ、動いて!」


相棒の重騎兵は長時間の戦闘で限界を迎えようとしていた。このままじゃトゥルーデアが危ない!エメトⅥのエンジンを切る。アタシは槍を持って相棒の上から飛び降りた。


「プリメラ!駄目、逃げて!」


「アタシが……皆を護るんだ!」


トゥルーデアの制止を振り切って迫る影を打ち払う。振って、突いて、叩き付ける。

それを嘲笑うかのように影は消えず、圧倒的な数でアタシを打ちのめした。


「がっ……」


鎧の上から強烈な一撃が胸に打ち込まれる。鎧は砕け、身体と兜が宙を舞う。


「まだまだ……っ!」


手放さなかった槍を杖にして立ち上がろうとするけど、身体に力が入らない。そんなアタシの身体をよく知った手が支えてくれた。


「プリメラ、大丈夫?」


「トゥルーデア……付き合わせて悪いわね」


どうして、と聞こうとしてやめた。彼女はアタシの従騎士だから、アタシのしたい事は分かるのだろう。例えそれが、この後の戦禍を少しだけ遅らせるだけだとしても……

相棒の前で無様な姿は見せられない、笑顔で応えてみせた。


「お互いボロボロね、プリメラ?」


「今日の連中は強いけど逃げたりしないわ、トゥルーデア!」


相棒の炎を槍が纏い、燃え上がる。儚い灯火が黒い影に吹き消された。





「う……」


気を失っていたアタシは、何かの水音と誰かの声で目を覚ます。

その目に、見たくなかった現実が飛び込んできた。


「やだっ、やめてっ……」


目の前でトゥルーデアが影に犯されている。

彼女の両腕と両足を縛り上げて宙に浮かべ、その身体は白く染まっている。


「トゥルーデアッ!」


アタシは叫んで立ち上がって走りだした。身体は痛むはずなのに気にならなかった。

しかし、その手は彼女に届かない。影が背後から波のように現れてアタシを押し倒す。


「このっ、離しなさいよ!」


影はそのまま地面に縫い付けるように覆い被さり、アタシは頭以外の身動きが取れなくなる。


「トゥルーデア……」


「だめっ、プリメラ、見ないでぇ!」


触手がトゥルーデアの胸を触り、膣を犯す。一体どのくらい犯されていたのだろうか。彼女の身体は喜んでいるようにしか見えなかった。


「ひっ……!?」


アタシの身体にも目を付けたのか、影がスカートの中に潜り込んで来るのを感じた。この位置からでは自分の身体が確認できず、見えない恐怖に襲われる。

太ももを撫でるように絡みつき、恐怖を煽るようにして上がってくる影。まるで陵辱を楽しむかのようだった。


「やだっ、やめなさいよぉ……」


恐怖に震え、カチカチと歯を鳴らす。センチュリオンの騎士としてのアタシは居なくなり、そこに居るのは無力な少女だった。

程なくして、下着が破られるのを感じた。


「やめて……」


見えないけど、きっと影の触手がアタシの処女を奪おうとしている。触手がぴとりと膣の入口に当てられた。


「やだっ、やだ!やめてっ!」


無意味だと分かっていても、アタシは叫ぶ。それを嘲笑うかの如く、触手が膣へと押し込まれた。


「いたい!やめてっ、やめてぇ!」


アタシの叫びなんてお構いなしに触手が中で暴れ回る。痛い、痛いとわめいているとそれが嫌になったのか、頭を地面に叩き付けられた。


「うぅ……」


涙を流すアタシの視界に、動かないエメトⅥと護りたい人達が見える。


(アタシ達、見られてるんだ。ボロボロにされて、2人で犯されてる所……)


悔しくて、苦しかった。もっとアタシが強かったら、こんな事にならなかったのに……!


中にいる触手が激しく動き、意識を引き戻される。こっちの事なんて何も考えてない乱暴な動きは気持ち良くなんかなくて、痛いだけだ。

触手が奥まで押し込まれると、爆発するように何かが流れ込んだ。


「へたくそっ……!」


恐らく向こうは気持ち良くなって射精したのだろう。アタシは吐き捨てるように叫んだ。触手が抜けていき、身体が持ち上げられる。すると、目の前にトゥルーデアが現れた。


「見ないでっ、見ないでぇ……」


彼女はアタシを見つけると泣いて首を振る。相棒にこんな顔させるなんて許せない!怒りが湧き上がる。

顔の前に触手が現れて、噛みちぎってやろうかと睨んでいると何かを吹き付けられた。


「なに……っ!?」


身体が一気に熱くなり、呼吸が荒れる。思考する暇もなく、再び触手がアタシの中に入って来た。


「あっ、なんでっ……!」


気持ち良い、と言いそうになったのを堪える。恐らくトゥルーデアにもこれを使ったに違いない。

先程と同じ、好き勝手に動く触手から与えられる快感に歯を食いしばって耐える。

皆が……トゥルーデアもエメトⅥもアタシを見ている。だから、無様な所は見せられない。

中をゴリゴリと擦り上げるように動く触手。ほんとは気持ち良いけど、それを口にしたら終わりだ。


「全っ然、気持ち良くなんかないわ……!」


アタシ達の周りの触手が増えていく。身体に絡みつき、愛撫が行われる。

どれだけ気持ち良くされたって、諦めない。快楽に浮かされた頭でそれだけは忘れないように努める。

トゥルーデアのあえぎ声を聞いてないフリをして、この戦禍が終わる時を待つ。

再び触手の動きが激しくなり、射精の時が近づいて来たのを嫌でも感じる。


「ふんっ、下手くそで、おまけに早漏なんて、最低ね……!」


再び中に精が吐かれる。それに合わせるように周囲の触手からも白濁液がばら撒かれた。


「んぐっ!?」


挑発されて怒ったのだろうか、次が始まる前にアタシの口に触手が捩じ込まれた。更に動きが激しくなり、正気を保つのが難しくなる。


(けど、絶対諦めてやらない……!)


拳を握り締め、アタシはそう誓った。





宙に浮いた身体が白濁液の溜まった地面に放り投げられる。

続けてアタシの横にトゥルーデアが落ちてきた。


「ごめんなさい、プリメラ……」


彼女は泣いて謝罪するけど、それは聞かない。


「まだ……終わってないわ!」


今度はアタシが彼女を支えて立ち上がる。武器が無くなっても噛み付いて戦ってやる。


「トゥルーディア、アタシ達はセンチュリオン!分かるよね?」


「プリメラ……そうね!皆を護る騎士として、最後まで諦めない!」


影がこちらを振り向き、蛇のような形をしたそいつはアタシ達に襲いかかる。

不思議と恐怖は感じなかった。

頭突きで吹き飛ばされ、重騎兵が残る城壁に叩き付けられる。


「まだ……」


「終わってない!」


もう一度立ち上がる。トゥルーデアはエメトⅥに入り、炎を灯す。

アタシは乗り込もうとして、その装甲に手を付いた。

その瞬間、世界が光に包まれる。


「え……?」


影も消えて白い空間にアタシとエメトⅥだけが漂っている。


「トゥルーデア、何処!?」


「大丈夫、エメトⅥと一緒よ」


良かった、相棒の名を呼ぶと返事が返ってくる。


「早く戻らないと……!」


「なら、私達の想いと身体を一つに!」


「想いと身体を……?」


「エメトⅥに乗って!向こうに戻りましょう」


トゥルーデアの発言に混乱していると、愛機に乗れと促される。


「分かった、飛ばすわよ!」


加速していくエメトⅥ。そのスピードの中で、アタシとエメトⅥがひとつになっていくような不思議な感覚……

いつもとは違う掛け声を叫んで光の中から飛び出した。


騎 士 皇 爆 誕

『トゥルース・センチュリオン!』


いつもより視界が高い。見上げていた影を見下ろす程の巨体。これがアタシ達の新たな力……!


「騎士皇レガーティア、出るわ!」


新たな希望の灯火が光り、白銀の騎士皇が影を打ち砕いた。




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