飼い主は歌姫に噛まれる
新世界に存在する廃れた海軍基地
そこにとある少女が捕まっていた
彼女の名はウタ
麦わらのルフィ率いる麦わらの一味の最古参にして『ウタウタの実』の能力者である
彼女がなぜここにいるのかというと、眠っている所を『億狩り』の異名をもつ賞金稼ぎに捕まり、その男と取引をしていた ある人物によってここに連れてこられたのだった
手足と口は拘束具で固定されており身動き一つ取れそうにもない
「ペトトトト!お目覚めかね?『歌姫』?」
「!?」
そこに下卑た笑いと共に一人の男が現れる、その男こそウタを捕まえて来るように賞金稼ぎに命じた張本人である『ブリード』である
「ペトトトト!本当に連れてくるとはさすがは『億狩り』だ・・・クソ人間にしちゃいい仕事をする・・・まぁもうこの世にいねぇかも知れねぇけどな・・・ペトトトトト!!」
「・・・・・!?」
「ん~なんだその目はぁ?まさかこの状況がわかっていねぇ訳じゃあねぇよな?」
「・・・・・」
悔しいがあの男の言う通り、この状況は最悪だ・・・自分は手足が封じられ口も訊けないそう思うと涙が溢れてくる
やっと人間に戻れて思う存分体を動かせ歌も歌うことだって出来るようになったのに
そう思うと涙が止まらないのだ
「泣いてやがんのかぁ!?ペトトトトト!!こいつは傑作だ!!クソ人間が絶望に染まるのを見るのは最高だぜ!!」
ブリードはそう言いながら思う存分笑うと、再びウタに視線を向ける
「まぁいい 貴様には大事な仕事があるんだ『麦わらへの復讐』という仕事がな!!」
「!?」
復讐・・・この男の目的はルフィへの復讐だという、ということは自分はその人質だろう私を盾にしてルフィに攻撃できない状況を作り出すのが目的・・・また自分はルフィ達の足を引っ張るのか・・・
「ペトトトト!!大方麦わらを止める人質だとでも考えているんだろうが・・・そうじゃねぇ・・・もっと大事な役目さ・・・『歌姫』」
「・・・?」
そうブリードが言うと手から緑色の液体を出す
「テメェがあの時いた人形なら俺の能力は知っているな?俺は「ペトペトの実」の能力者!俺が作り出した首輪を着けたものは俺の意のまま操られるペットとなる!」
ブリードはウタに近づき
「つまりこの首輪をテメェに着ければテメェは俺のペットになる、俺がテメェに
『二度と歌えないように喉を切れ』
だとか
『二度と楽譜が見れないように目を潰せ』
と命令すればテメェはその通りに動くのさ」
「!?!!?」
ウタの顔は青ざめ 何とか逃げ出そうと必死に体を動かす
「ペトトトト!!安心しなぁ!!そんな命令はしねぇからよ!大事な仕事ができなくなっちまう!」
そうは言うが自身を拉致した男の言い分など信じろという方が難しい
だがこの男が自身にさせたい仕事とはいったいなんなのだろうか?
ウタは嫌な予感がしつつもブリードがそれを話すのを待つ
「俺の野望はクソ人間の絶滅だ!!その為にシーザーを誘拐し 奴が造ったSMILEで最強の動物軍団を結成しようとした!!だがそんな面倒な事せずとも最高の手段があってな」
ブリードはその手段の名前を言う
『トットムジカ』
「・・・!!?」
「ペトトトトトト!知っているぞ・・・貴様持っているんだろう?『トットムジカ』の楽譜を・・・世界を滅ぼせる歌の魔王を・・・そう!貴様を俺の能力で操り!トットムジカを召還しクソ人間共を滅ぼす!!これが俺が考えた新たな計画だぁ!!!!」
そう言うがいなや高笑いするブリードを見てウタが思うことはただ一つ・・・狂っている
こんな人間はシャンクスの船にいた時もルフィ達といた時もいなかった
ウタは今無力な自分を呪いながらブリードの笑いを聴くのだった・・・
「ウタを返せ!!!!!」
それからしばらく時間が流れブリードの前にウタを取り返しにきたルフィが現れる
記憶を失った(ふりをしている)『億狩り』に案内されウタ奪還のために来た麦わらの一味
途中にあったブリードが仕込んだ妨害は仲間達が引き受けてくれたので一人ここまで来たのだった
「ペトトトト!!来たか!!麦わらぁ!!!だが今は歌姫のショーの時間だ!!静かにして貰おうか!!」
「何!?」
「ペトトトト!!では紹介しよう!!世界を滅ぼせる歌の魔王の楽譜を歌い上げる
『滅びの歌姫』
その最初で最後のショーの開演だ!!!!」
そう言うブリードが向ける視線の先には黒い翼が付けられた黒いドレスに着替えた緑色の首輪を着けたウタが立っていた
「ウタ!!大丈夫か!?今助けるぞ!!」
ルフィがウタに声をかけ ウタがそれに反応し返事をしようとするが口が開かず必死にもがく
「ウタ・・・!?」
ルフィが様子のおかしいウタに気づくとそこに笑い声が聞こえる
「ペトトトト!!あのクソ人間には
『俺の許可なく喋ったり歌ったりする事』
を禁止してんのさ、だから無駄な事さ」
それをルフィが聞くと憤怒の表情となり人が殺せそうな視線でブリードを見る
「お前・・・・・ウタに何しやがったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
ルフィがブリードを拳で殴ろうとすると
「おいおい!あのクソ人間の首に着いてるのは俺の能力で作った首輪だぞ?俺の命令一つであのクソ人間はどうなるか・・・・・」
「!?」
その言葉を聞くとルフィは自身の拳を止める
「ペトトトト・・・まぁそこで大人しく聞いてな・・・『滅びの歌姫』の歌を・・・」
ブリードはウタの前にいくと
「さぁ!!『滅びの歌姫』よ!!命令だ!!『トットムジカ』を歌いこの世のクソ人間共を滅ぼすのだぁ!!!!!」
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!ウタァァァァァァァァァ!!!」
ウタはルフィの声を聞き涙を流す
せっかく人間に戻れたのに、その結果がこれなのか
結局自分は最後まで一味の足を引っ張り、あまつさえ様々な人に迷惑をかけようとしている、こんなのあんまりじゃないか
そう思っても体はいうことが効かず目の前に現れた楽譜を歌おうとする
ここにムジカがいれば止めてくれるがブリードの妨害に足止めをくらっているのだろう
いやだ うたいたくない いやだ いや
「そう じゃあ歌えないようしてあげる」
そんな声がしたと思ったら
PON!
そんなコミカルな音と同時に今まさに歌を歌おうとした『滅びの歌姫』は
可愛らしい人形になっていた
「契約よ『歌ってはダメ』これであなたは歌えなくなったわ」
「キィ!?」
ウタも驚くのも無理はない
何故ならその姿は12年間見てきたオモチャの自分だったのだから
「・・・・・・は?
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?」
ブリードの困惑の叫びが空間内に広がる
いったい何が起こったのか?あともう少しで自分の完璧な計画が成功するとこだったのに
ブリードはこの事態を起こした犯人を睨む
「テメェの仕業か!?何もんだぁ!?」
「うるさい あんたとは口も訊きたくない さっさと死んで」
そしてこの状況をやっと理解できたもう一人はというと
「お前!?ウタを人形にしたってことはドレスローザにいた奴らををオモチャにしやがったやつか!?またウタを人形にしやがったなぁ!!」
そう叫ぶとギア2を発動させその犯人
『シュガー』を攻撃する
「ゴムゴムのJET銃!!」
それを回避したシュガーはルフィに話しかける
「落ち着きなさい、あなた疑問に思わないの?」
「何が!?」
「あなたさっき『ウタ』って叫んでたわよね」
そう言われルフィは気づく
「そうだ・・・おれ『ウタ』を忘れてねぇ!?ちゃんと覚えてる!?」
「能力は成長する・・・この子と戦った後に出会った奴らでじっけ・・・修行してたら記憶を消さずにオモチャに変えれるようになったの」
そう言うとシュガーはウタを抱える
「咄嗟に契約で歌を歌えなくしてしまったけど・・・嫌なこと思い出させたわね・・・ごめんなさい」
シュガーがウタに謝るとウタはシュガーを見つめキィ!と返事をする
「ありがとうだってよ!おれからも言わせてくれ!ウタを助けてくれてありがとうな!!」
ウタとルフィの両方から感謝されたシュガーは涙目にながらも顔を赤らめさせる
「・・・・・やっぱり全員バカなんだから」
「テメェら・・・・・」
そんな和気あいあいとする空気をぶち壊す声が聞こえる
「いい加減にしろよ!!このクソ人間共がぁ!!よくもこの俺様の完璧な計画を滅茶苦茶にしやがって!!テメェら全員生かして帰さ「バリアクラッシュ!!!!!」なべぇら!!!?」
「テメェ・・・・・こともあろうか新時代をつくりげる歌姫であらせられるウタ先輩に数々の無礼・・・・・どう落とし前つけさせで貰おうか・・・・・ああん!!?」
そこに現れたのは『人食い』の異名を持ちルフィを海賊王にさせると豪語する男
バルトロメオが立っていた
「おお!トサカ!久しぶりだな!!」
「キィ!!」
「!?おお~!?ルフィ先輩にウタ先輩!?不味いべ~!!心の準備がまだ出来てねえべ~!!」
「キモい 死んで」
「ええ~唐突な罵倒~!?おいシュガー!同じ船に乗る同士なんだから罵倒じゃなくてルフィ先輩とウタ先輩の素晴らしさを語り明かそうじゃねぇか!!」
「いやだけど!?そもそも同じ船に乗っているのはあんたが拉致したからでしょうが!?」
「細かいことは気にすんな!!」
「気にするわ!?」
「仲いいな~お前ら」
「キィ」
そんな漫才じみたやり取りをしている中
忘れ去られていた男が牙をむこうとしていた
「テメェらこっち見ろ!!」
「「「「!!」」」」
そこには自身の首にペトペトの首輪を着け 何倍にも体を巨大化させたブリードがいた
「このクソ人間共が・・・こうなったら俺の力でクソ人間絶滅計画を始めてやる!! まず最初の獲物は貴様らだ!!!!」
「悪いけど・・・逆にあんたが獲物になるかもね」
「何~それはどういう「ギア4!!」!?」
ブリードの言葉は突然聞こえて来た声によって遮られた
ブリードの目の前にいるのは
弾む男(バウンドマン)になったルフィだった
「可愛い歌姫を守る騎士様を怒らせてしまったんですもの」
そう言ったシュガーはブリードを小馬鹿にしたような表情で笑うのだった
「・・・・・・・騎士様ってなんだべ?」
「・・・・・・・忘れなさい」
「麦わらぁ!!」
「お前はウタを悲しませた!!お前はウタを傷つけた!!そして・・・・・ウタに歌いたくないって思わせた!!!!!だからおれはお前をぶっ飛ばす!!」
「やれるものならやってみろ!!あのときは邪魔がなければ俺が勝っていた!!それを今から証明してやる!!」
そう言ってブリードが飛び出したがそれよりも先にルフィの拳が届いた
「ゴムゴムの~猿王銃!!」
「ぶふぉぉ!!?」
吹き飛ぶブリード だがルフィの猛攻は止まらない
「ゴムゴムの~犀榴弾砲!!」
「べふぁ!!?」
「ゴムゴムの~猿王群鴉砲!!」
「おぼぼぼぼぉ!!?」
「ゴムゴムの~大蛇砲!!
「ぜぱぁ!?」
「・・・・・・・自業自得とはいえ哀れな奴だべ・・・・・」
「まだまだ・・・ウタを悲しませたんだからもっともっと痛めつけなくちゃ・・・・・」
「おめぇなんか目が怖いべ!?」
「キィ・・・・・」
シュガーに抱えられたウタはルフィに蹂躙されるブリードを見てあることを考えていた
それは哀れみでも歓喜でもなくたった一つのシンプルな答え
「・・・・・ギィィィィィ!!」
めっちゃムカついているのだ
よくも自分にあんなネガティブなことを考えさせたな!!
とか
一瞬でも歌が嫌いになりそうだった!!
とか
そんな怒りの感情が沸いたら一発ぶん殴ってやらなければ気が済まない
そう決心したウタはシュガーの腕から飛び出すとルフィの元に走っていった
「ウタ先輩!?危ねぇべ!?」
「大丈夫よウタなら」
とシュガーが言うのでバルトロメオはウタの行く末を見守ることにした
そしてウタはルフィの元まで走っていくとその肩にジャンプする
「ウタ!?お前何を・・・!?」
「ギィ!!ギィィ!!ギィィ!!」
「・・・・・よし!わかった」
そう言うとルフィはさらに空気を吸い込む
「ぐ・・・まだ・・・まだだ・・・!?」
ブリードの視線の先 そこには大きく膨らんだルフィの姿が
「タンクマン!!風船バージョン!!」
「・・・・・なんの真似だぁ貴様!!」
「今から・・・ウタがお前をぶっ飛ばす!!」
「何!?」
タンクマンになったルフィのお腹に全身武装硬化したウタが乗りどんどん埋まっていく
「何をするかは知らねぇが!!今ここで!!お前を殺せば終わりだぁぁぁぁぁ!!!」
「いくぞ!!ウタ!!」
「キィィィ!!!」
「ウタの怒りを思い知れーーー!!!!!」
その言葉を最後にウタをブリードに発射する
「ゴムゴムの~流星歌姫激砲弾!!!!!」
(シューティング・ウタ・キャノンボール)
「キィィィィィィィィィィ!!!!!!」
「げぽばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!?!!??」
黒い砲弾となったウタがブリードの腹に突き刺さる
その一撃によりブリードは遥か彼方に飛んでいき星となって消えた
「うおぉぉぉぉぉ!!ルフィせんぱぁぁぁぁぁぁい!!ウタせんぱぁぁぁぁぁぁい!!」
「ウタ・・・お疲れ・・・『能力解除』」
「やったな!!ウタ!!」
PON!
「やったね!!ルフィ!!」
笑顔の二人は勝利の喜びを分かち合うため抱き合うのだった
こうして哀れな飼い主はペットにしようと した歌姫に手を噛まれそれを守る騎士によってぶっ飛ばされ空の彼方に消えていったのであった