食べたいものは 前
kiakiウタが一命を取り留めたエレジアにて
「・・・ねえ、ルフィ。何か見たいものとか食べたいものとかない?ウタワールドで何でも出してあげるよ!」
「ホントか‼そうだなぁウタに会えたし久しぶりにマキノのメシでも一緒に食べてえなァ」
「あァそれはちょっと無理だねェ・・・私の能力は歌を聞いた人をウタワールドに呼ぶだけだからマキノさんが生で私の歌を聞かない限り・・・
電伝虫があれば出来るんだけどァ」
「ん!マキノの店の電伝虫ならおれ覚えてるぞ!それに掛けて歌を聞かせればできるんじゃねえか⁉」
「え!?確か私がフーシャ村に居たときには電伝虫がなかった気がするけど」
「いつだったかじいちゃんがおれの様子を確認するために村長とかダダンとかに配ったんだよ!マキノも当然もらっててさ。で、おれが村を出るときに覚えさせられたんだ。何かあったら連絡してきなさいって。
今まですっかり忘れてたけどな!!ししし!!」
「あんたねぇ!村を出てから一度も連絡してないなんて絶対に怒ってるわよ」
「でもよォ、忘れちまってたんだし、何より今のおれが気軽にかけたら村に迷惑かけちまうかもだし」
「相変わらず変なところに気が回るのね。でもそれだったら何とかなるわ」
「あれ?でもウタの能力って聞いた相手をその場で眠らせるからマキノはフーシャ村にいるままなんじゃねえか?こっちでもあっちでも」
「大丈夫!そんなの織り込み済みよ!世界の歌姫に任せなさい!!」
フーシャ村マキノの酒場
ブルルルル、ブルルルル、ガチャ
「はい、もしもしどちらさまですか?」
「もしもし、マキノさん覚えてるかな!?12年前にシャンクス達と一緒に村でお世話になったウタです」
「まぁウタちゃん!!もちろん覚えてるわよ。
こないだ新聞で見たけど世界的にライブを行ったんでしょ、村長さんと二人で夢を叶えて立派になったわって話してたんだから」
「えへへ、ありがとう。・・・・・・実はお願いがあって電話しました」
「お願い?何かしら」
「久しぶりにマキノさんの料理が食べたいなあって思って、でも実際に会うのは難しいから私の能力で会いにいきたいんだけど・・・」
「だけど?」
「私の歌を聴くと現実では眠りについちゃってウタワールドっていう私が創り出した世界に心が行っちゃうんだよね。
だから、私がウタワールドでマキノさんに会っている間、現実のマキノさんは寝ている状態になるから・・・
その・・・お店の都合とか大丈夫かなぁって、1時間くらいでいいんです」
「なるほどそういうことね。
なら問題ないわ、今日は営業時間を調整することを表に貼っておくわ」
「本当にいいの!!ありがとうマキノさん。じゃあ準備が出来たら教えてね」
「ええ、分かったわ ちょっと待っててね」
「よし、準備万端よ。ウタちゃんお願い」
「は~い、じゃあいっくよ~ ♪~~~♪」
ウタワールド フーシャ村マキノの酒場
「ん、あれもうウタちゃんの世界に入ったのかしら?」
「うん、入ってるよ!
じゃあ、少し待っててね。今からフーシャ村に行くから」
「ええ、わかったわ」
ガチャン、ツーツーツー
「さてと、とりあえずウタちゃんの好きだったパンケーキの用意をして・・・
あと飲み物は・・・やっぱりジュースかな、でもウタちゃんも大人になったからお酒も飲むかも」
マキノは店内で忙しなくウタを出迎える準備をし始める。
店内にある食材も飲み物も最後に確認した時と同じ位置にあり、その在庫も記憶と完全に一致していた。
(ここが、ウタちゃんの世界なんて事前に聞いてなきゃ全く気づけないわね。
あ、でもあの子がいないわね・・・)
と
マキノがてきぱきと用意を進める中
ずぅぅーん
「あら?」
ずぅぅぅーん
「きゃ!!」
ずぅぅぅぅぅぅーん
ずぅぅぅぅぅぅぅぅぅーん
店全体を揺らす地震が起こる
揺れはますます大きくなり、店内にあったものはどんどん床に落ちていく
「逃げないと・・・」
立つのもやっとのなかマキノは何とか店から出る。
だがそこで
ずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーん
一際巨大な揺れが発生し
マキノは村の通りで倒れてしまう。
「いったい、なにが起きたの!?」
と顔を上げて港を見ると
天にも届くかと思える津波が迫っていた。
「・・・え?」
フーシャ村全体・・・いやドーン島そのものを飲み込んでしまうような大きな波が落ちてきた。
だが・・・
ザァァバ――――――――ン
大波が割れ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「キャァァーー!!!!」
先ほどとは比較にならない揺れをマキノを襲う。
そして
「フゥ~。危なかったぁ。
ごめーーん。マキノさーーん。大丈夫ーー?」
と上空から声が聞こえた。
見上げた先には
赤と白の髪、トレードマークのヘッドフォン、アンテナのようにピンっと立っている髪の毛・・・かつてこの村でルフィとよく遊んでいた少女の面影が残る
「ウタちゃん!!?」
空一面に巨大なウタの顔が広がっていた。
数分前 ウタワールドエレジア
「よし!マキノさんもこっちに来たし、早速向かおうかルフィ」
「なぁ、ウタ。お前が今何でも出来るのは分かるけどさ、ここからフーシャ村までそんなにすぐに行けるのか?
そもそもフーシャ村ってどこに向かえばつくのか分かってんのか?1時間しかないんだろ?」
「ふふ、心配ないよ。
確かに、フーシャ村とエレジアは船で1日以上の距離があるし、子供だったから私も両者の位置関係も分かってなかった。
でもね、ルフィには言ってなかったけど、ウタワールドに呼んでいる人を私は現実で操ることができるんだ!」
「???」
「つまり、現実にいる私はマキノさんの体を操れる――――つまりどこにいるかも分かるんだ。
だからこれを頼りにしてフーシャ村を目指す!!そして、肝心の移動手段はこちら!!!」
パシッとウタはルフィの手を取り、音符に乗って空を飛び
パチンっと指を鳴らすと、海上から超巨大なウタが現れた
「おお~~~!!でっっかいウタが出てきたぁ~~~!!!?」
ルフィが驚いてるのを余所にウタはルフィをを連れながら巨大ウタの肩に着地。
すると
グググググググググググググググググググググ
「うわっ何だぁ!!?」
視界がどんどん変わっていく、いや上に昇っている。
これと同じような光景をルフィは経験したことがあるのを思い出した。
遥か上空に浮かぶ島ーーー空島を目指した際に使った自然現象
突き上げる海流(ノックアップストリーム)
その時と同じだ。
つまり
『「ふふ、どうルフィ?超超巨大な歌姫の爆誕だよ♪」』
ウタの声が二重に聞こえる
視界の遥か下には真っ白な海・・・雲が漂っていた。
「なぁウタ、もしかしてこれって」
『「そうだよ、今私はね」』
ブォォォォォォン
と巨大ウタが脚を振り、雲の海を薙ぎ払った
その先には先程まで立っていたエレジアが小さく・・・・巨大ウタの一歩で島全体を踏みしめることが出来るような小ささになっていた。
「「こーーーんなに!!大っきいんだよ!!」」
「うォォォォォすゥんげェェェェェでっけぇなぁ!!」
「ウタウタの能力で音符の騎士を作ったみたいに巨大な私自身を作ってみたんだ!名付けてウタ・フォース号!!
これなら、天候にも影響されず海を移動できるよ!!」
「確かにこれならすぐフーシャ村に行けるな!!
よし!!じゃあ」
『「「フーシャ村に向けて出港!!」」』
ウタ・フォース号が海の上を征くーーーいや、歩く。
かの伝説の巨人オーズはその巨体にて島を引いた伝説がある。現存する巨人族の中で最大の大きさとされる巨大戦艦サンファン・ウルフも同様のことができるだろう。しかし、彼等とて、自分と同等以上の大きさを誇る海王類の巣は避けざるを得ない。
だがウタ・フォース号は違った。
彼らがその巨腕を用いて引きづるであろう島々を一足で踏み潰し海底に沈める。
取るに足りない小島達はその時に起こる水飛沫ーー通常の人間視点から見た場合には巨大な水塊にて水没させる。その一連の動きで起きる海流の変化で海の王者である魚人、人魚、海王類達さえもその流れに乗ることができず、抵抗の間もなく溺れさせてしまう。島よりも小さく海の王者達のように移動することも出来ない船や軍艦など持っての外だ。
また、被害は海面だけには留まらない。世界には空島という空に浮かぶ島が、程度にもよるが海から約高度一万メートル付近に存在する。だがその高さもウタ・フォース号の膝の高さにも届かない。幸運にもウタ・フォース号の進路にあった空島は巨大な柱ーーウタ・フォース号の足に激突し苦しむことなく一瞬で砕け散った。不運にも進路からギリギリ逸れた空島はウタ・フォース号が横切った際に発生する大気の急変化によって、島全体に揺れーーー空島に住む人々には一生無縁だった大地震が発生し、島は海に向かって落ちていき島上の生物たちは苦しみながら息絶えていく。
嵐の海域だろうとそれが発生しているのはウタ・フォース号の足首付近。なんの障害にもならない。広大な海は足首を濡らす程度の巨大な水溜まりに等しい存在に成り果てていた。
人も獣も海王類も世界の海で起きる原因不明の自然現象でさえすべて足で踏みつぶす最強の船だ。
恐ろしいのはこの結果をウタ・フォース号がただ歩くだけで起こしているということだ。覇気でも悪魔の実の能力でも世界で一部の者が持っている各個人の特殊な技能でも何でもない。ただ歩くだけ、誰もが行うことができるそれだけの所作が海の上も空の上も平等に蹂躙する破壊の進軍となっていた。
この進軍を止めようにも、ウタ・フォース号を視界に収めた人間が生きているか怪しい。
仮に生きていて無事海軍等へ連絡が通ったとしても、その連絡を受けた地点でウタ・フォース号が同じ場所にいる可能性は低く、世界最速の速度を誇るその進路を予測するのも不可能に近い。
もし予測できたとして数十隻の軍艦がウタ・フォース号の前に展開出来たとしても、前述した通り蹴散らされるだけだ。
何の気まぐれか、ウタ・フォース号が軍艦を前にして立ち止まっていたとしても軍艦が放つ砲撃、歴戦の猛者が放つ覇気を込めた一撃でも傷一つもつかない。
島一つを割ることが出来る威力だろうが、その島を何百個集めてやっと同等の質量になるであろうウタ・フォース号には効かない。
能力者の弱点である海はウタ・フォース号自身に乗るウタに一切かかることはなく、空島より高い場所にいるウタに海楼石を掛ける手段など存在しない。
もし、仮にウタ・フォース号に攻撃が通って倒れたとしよう。その倒れた衝撃によって世界中が揺れ、海面には超巨大な津波が発生し島や軍艦を飲みこみ、周囲の空気は歩行の比の時ではない大気の変化が発生し空を飛ぶものたちをバラバラに引き裂いていく。
・・・そう、どうあってもウタ・フォース号の前で生きることが可能な者などいないのである。
ウタ・フォース号の船員以外は。
しかし、ここはウタワールド。
ウタが生み出した世界だ。
ウタの歌を聞いた人間しか存在することが出来ず、今この世界にいるのはたった三人だけ。
ウタワールドにはウタが知らない場所であろうと現実と同じように島や建物が存在するため、島には前述した通りの被害が起きているが
そこに生物は存在しないため犠牲者は0だ。
ウタ・フォース号の歩行が生み出している被害については、製作者のウタは正確に把握していない。
彼女としては
これだけ大きいと、小さい島とか知らないうちに潰しちゃうだろうけど、後で全部元通りにできるからまぁいいよね♪
という軽い気持ちであった。
まさに、自身の楽曲の通り最強の存在であるウタ・フォース号は足元になど目もくれず
自分の手の上を見つめながらフーシャ村へと進んでいた。
その手の上には、ウタ特製のコロシアムが建てられており、食事前の腹ごしらえとしてルフィとウタが186戦目の勝負をしていた。
勝負内容は喧嘩。勝利の条件は相手をうつぶせに倒すこと。
エレジアで再開した際はウタの様子がおかしく、彼女へパンチを放つことができなかったルフィであるが
元に戻ったウタに、
「そういえばあの日の約束を果たしてなかったね。
遅くなっちゃったけど、どれだけ強くなったか私に見せてよ、ルフィ!!」
と喧嘩勝負を申し込まれて断れるルフィではなかった。
ウタから、ここではいくら無茶をしても疲れないし、現実の肉体に負荷がかかることはないと説明を受けたため
正真正銘全力のギア4バウンドマン(弾む男)で戦っていた。対するウタは、「私は最強」を歌いつつ、黄金に輝く鎧に身を包み、黄金の槍と盾でルフィの攻撃を凌いでいた。
音符の戦士を召喚するも、時間稼ぎにもならない。五線譜を飛ばして拘束しようにも何度も見せたこの技はウタと同様に空中を飛ぶことが可能なルフィには当たることはなかった。ウタの攻めはいなされるがルフィの攻めは着実にウタを捉えていく。前述の通り肉体への負荷がないため、本来時間制限があるギア4を無制限に使用可能なルフィが優勢の状況だ。
当然だがウタワールド内のウタにはダメージを与えることは不可能だが、物理的に吹き飛ばすことなら可能だ。勝利条件はここを加味して設定されていた。
ルフィは猛攻の末に、ウタの隙を突いて背後に回り
「もらったぁ!!ゴムゴムの大猿王銃!!!」
勝利を確信した拳をウタに放った。
しかし、
拳が当たる直前に
『「甘いよ、ルフィ。えいっ♪」』
ズドン!!!!!!
とルフィの背後を衝撃が襲った、
その正体はウタ・フォース号の人差し指がツンッと二人が戦っていたコロシアムを突いただけ。
しかし、数千倍の大きさを誇る指をコロシアムは受け取めることができず成すすべもなく崩壊した。。
この不意打ちにルフィは反応することが出来ず、ギア4も解けてうつぶせに倒れてしまった。
一方ウタは、
『「いや~危なかった。あのヘナチョコグルグルパンチからかなり成長したね。ルフィ」』
ウタ・フォース号の指が衝突する直前に体を反転させ仰向けに倒れることで敗北を免れていた。
足だけですべてを壊す超巨体をもつウタ・フォース号の指のツンッを受けて耐えられる生物はいないがこの二人は例外だった。自分の支配下であるウタワールドでは無敵のウタと全身ゴム人間であるためあらゆる打撃が効かないルフィ。他のものであれば、圧倒的な質量の前に原子すら残さず消滅してしまうだろう。
「「これで私の185勝1敗だね♪」」
「くゥ、ずりいぞウター、1対1の勝負なのにウタ・フォース号で攻撃してくるなんて・・」
『出た、負け惜しみィ、あっ!!!』
「出た、負けoァァァァ!!」
「ウタ!!!」
勝負後でいつものように負け惜しみィのポーズをとろうとしたウタ
だがここはウタ・フォース号の手の上、うっかりウタ・フォース号自身も同じポーズをとってしまい
ウタとルフィが手から零れ落ちてしまった。
とっさにルフィは手を伸ばし、ウタの体に自分をぐるぐる巻きにし、もう片手でウタ・フォース号のどこかに掴まろうと手を伸ばしたが届かない。
落下を続けるルフィが下を見ると赤い地面が待っていた。
バッシャァァァーン!!!!
「何だこれ!!じめんじゃなくてみずぅ? まずい、ウタが!!」
水に触れてしまったため、ウタに巻いていた手の力がなくなっていくルフィ、
だが、このままだとウタもこの水の中に一緒に落ちるか、遥か下の海に落ちてしまうと葛藤したが
「ルフィ、私飛べるから大丈夫だよ!!手を離して!!今助けに行くから」
その声を聞いて、ウタに伸ばしていた手を戻すルフィ、約十秒後ルフィの横にウタが着地した。
「あれ、うた、おまえみずだいじょうぶなのか?」
「あ、そうかこめんねルフィ!いまかけてあげるから」
そういって、ウタはルフィに向けて光る弾を飛ばした。
それを受け取った瞬間、ルフィの体に力が入って自力で体を起こすことが出来た。
「おォ!?胸まで水があるのに、力が入るって変な感じだなぁ。ありがとう!!ウタ!」
「フッフッフ、そうでしょ。この世界なら私達だって泳ぐことができるんだよ。つぎは水泳勝負にしようか
ってそうじゃなくて・・・・ごめんね、ルフィ。つい、いつものくせで」
「気にすんな!!無事だったんだし。にしてもここはどこなんだ?」
「ここはねぇ、」
舌をだして、その先端を指で指すウタ
『はたひのぉ、ひたのうぇだよぉ』
続く言葉をウタ・フォース号が紡ぐ。
そう、ふたりを手から零した瞬間、ウタ・フォース号が咄嗟に舌を出して二人が着地できる地面を造ったのだ。
「え!じゃあ、この水って!?」
「あ~、うんごめんルフィ、ちゃんと元に戻すから」
ルフィが想像したとおり、胸まで届く水の正体はウタ・フォース号の舌にある液体である唾液だった。
あまりのサイズ差により、湖と変わらない規模になっていたため、ルフィが 気づかないのも無理はなかった
ベロン
と、ウタフォース号は街をも飲み込むような舌で自分の手を舐め、舌上の二人を手の上に戻し、ウタはずぶぬれになってしまった自分たちの服を元に戻した。
「さっきの勝負はウタがズルしたからおれの勝ちだかんな!!」
『「ウタ・フォース号も私自身だからズルじゃないよォ
・・・ってルフィ!!フーシャ村が見えてきたよ!!」』
「え、どこだ!?」
「そっか、ルフィからだと見えないよね」
そう言って、ウタ・フォース号は足を追ってしゃがんで
海面ギリギリになるように自分の手を下した。
「ほら、あそこだよ!懐かしいなぁこの景色」
「ん~?あれがそうなのか?」
「そうだよ!なんで分からないのよ・・・・ってそうか」
ウタはシャンクス達との航海で幾度もフーシャ村の港から出て、そしてフーシャ村の港に帰っていた。
一方ルフィは、フーシャ村にずっといて、港に帰るという経験がない。
ウタにとっては、懐かしい景色でも、ルフィには初めて見る景色。両者の認識の違いはそれが原因だった。
「いつも、あんたは私達が帰ってくる姿しか見たことないんだもんね」
「おう、だけど今見ることができた。次にこの景色を見るのは、海賊王になって帰るときだな、ししし!!」
「・・・うんそうね。私も一緒に手伝ってあげるからこの景色をまた一緒に見ようねルフィ。
よし!!じゃあ一気に行こうか!!!ルフィ、しっかり掴まっててね」
ウタ・フォース号がが二人を乗っている手を落ちないようにしっかりと握りしめ、
しゃがんだ体制から足をばねにしてフーシャ村の前まで大ジャンプ。
その結果
『あ』
ずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーん
島を揺らす、大地震を起こし、着地の際に起こった水飛沫で島をも飲み込む大津波を発生させてしまった。
(まずいまずいまずいまずい)
ウタ・フォース号は慌てて二人がいない方の手を下に伸ばし
ザァァバ――――――――ン
自身が起こした波を割りながら、海底を直進。ドーン島を自身の手のひらの上に収めて
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
一気に持ち上げた。
『ふぅ~。危なかったぁ。
ごめーーん。マキノさーーん。大丈夫ーー?』
「ウタちゃん!!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
マキノの目の前には、12年ぶりに見る少女が立っており、その後ろにある海には巨大な見上げる限り雲の上まで続く柱が聳え立っていた。
「驚かせちゃってごめんね。マキノさん」
「え~と、ウタちゃん、あの巨大なウタちゃんは一体?」
「あれはねぇ、ウタ・フォース号っていってね、遠いから自分の分身を創って巨大化させて、海の上を歩いてここまで来たんだぁ♪
このまま立ってるとさっきと同じことやっちゃいそうだし、消すね」
『ばいばーい』
ウタがパチンと指を鳴らすと、ウタ・フォース号は最初からそこにいなかったかのように忽然と消えた。
「ハハ!さすが、船長さんの娘さんね。考えることがすごいわね」
「そうでしょ~褒めて褒めて、・・・ってそうじゃなくて!!
マキノさん今日はね私だけじゃなくてスペシャルゲストも一緒にきてるよ!」
「スペシャルゲスト?」
お~いとウタはおもむろに手を挙げた。そしてその挙げた手を掴むもう一つの手
ルフィの手が、ウタの手を掴んでマキノの目の前に飛び、
「マキノ!久しぶり!!」
「・・・ルフィなの!?」
「何言ってんだ、おれに決まってんだろ」
「ああ!!よかった皆心配してたのよルフィ」
二人は再会のハグを交わした。
「あっ、ルフィずるい。マキノさん!!私も私も」
「はいはい。おいでウタちゃん」
「うん、ぎゅー」
3人で抱き合う形になり、しばらくそうした後、マキノは二人を離して
「二人共、おかえりなさい」
「「ただいま、マキノ(さん)!!!」」
「ルフィ、いろいろと・・本当にいろいろとあったと思うけど無事に帰ってきてくれてよかったわ」
「にしし!おれはシャンクスを超えて海賊王になる男だからな!!!」
「ウタちゃんはおっきくなったわねぇ。当たり前だけど大人になったって感じだわ」
「ふっふ〜そうでしょ〜。もうあの時のマキノさんと同じくらいの歳だからね~ルフィには背の高さで負けちゃったけど、マキノさんには・・・・ってギリギリ負けてる!?」
「あらあら、身長勝負はわたしの勝ちみたいね(厚底のくつだから本当は負けてるんだけどね)」
よし、時間も限られてるし早速ご飯にしましょうか!!何が食べたい?」
「おれはいつもの肉料理を宝払いで」
「出た宝払い!!あんた、ほんとにマキノさんに払う気あるんでしょうね?あっ、マキノさん。私はパンケーキをホイップましましで!!代金はルフィにつけといてください」
「いやなんでだよ!?」
「フーシャ村まで私が運んだんだから、その移動費としての正当な請求よ。
・・って、冗談だから、そんな顔しないの!今でも私はあんたの2歳お姉さんなんだから奢ってあげるわよ。マキノさん、お代は現実で帰った時に支払いますから。
後、ルフィの方もちゃんと支払えるように見ておきますから」
「おれが踏み倒すと思ってんのか、ウタ!!失敬だな、お前失敬だな!!」
(この感じ懐かしいわね)
そんなやり取りをしながら三人は意気揚々と店内に入ったが
「「「あ!!」」」
地震によって無惨な姿となった店が出迎えた。
「いやぁ~本当にごめんねマキノさん」
そういって、ウタは店内に光の粒子を放って元に戻していった。
「大丈夫よ、ウタちゃん。でも、注文の品は少し待っててね。
それまではここにある作り置きのものをつまんどいて」
そういって、二人の前に果物、サラダ、チキンなどを出した。
「「いただきます!!」」
「ルフィ、あんたねえもう少しゆっくり食べなさいよ!!」
「でぁてぇふぉ、しさびさのまきののメシばぁかぁらよぉ、ほまんねぇんだぁ」
「それについては同じ意見だけど・・・
そうだ、いい方法思いついたからこっち向きなさいルフィ」
「ふぁんだぁ?」
「はい、可愛くて小さいルフィにメタモルフォーゼしようぜっと」
ウタの指先から放たれた光を浴びたルフィの身体が
ズズズズズズズズズと縮んでいく
「おぉ、ふいもんがべぇがくなっだぁ」
「今のルフィは3cmくらい。元の50分の1くらいの大きさね。これならたくさん食べられるよ」
ムシャムシャ、ゴクン
「おお、あったまいいなぁ〜ウタ!」
「二人共、おまたせ〜出来たわよ。って、あらルフィは?」
「マキノさん、ここ。ここ」
そういって、ウタはテーブル席にある皿の上にいるルフィを指した。
「まぁ、随分かわいい姿になっちゃって。これもウタちゃんの力?」
「うん!!だって見てよマキノさん。だってもうこんなに食べたのよルフィの奴。私の分がなくなっちゃうから小さくしてあげたの。これならいくら食べても大丈夫でしょ」
「そうなのね、はいルフィいつものお肉料理。ウタちゃんにはパンケーキね。」
「「いただきます!!」」
「マキノさん!パンケーキおかわりィ!!」
「分かったわ。それにしてもこの大きさだと、チキンレースとかしてもウタちゃんの勝ちになるわねぇ久々に二人の勝負を見たかったわ」
「ちっちっちっ、マキノさんこないだ再会してすぐにチキンレースしたけど私の184勝目で終わったよ。まぁ今のこの小さいルフィには絶対負けないけどね!!」
「何いってんだウタ!!この間のはお前がずるしたからおれの184勝目だ、それにマキノ!!小さい体でもおれは負けねェ!!チキン用意してくれ」
「はいはい、今持ってくるわね」
「「よーい、3、2、1!!」」
危ないし今日はマキノの料理を食べるのが目的だから普通の早食い勝負となったのだが
「ルフィ、ジュースもらってあげようか」
「おっありがとう!・・・ってもらう?あげるじゃなくてか?
え〜〜〜〜!?もう食べ終わってんのか!」
「うん♪食べるの大変そうだから手伝ってあげるねェ」
「やめろ、ウタ!それはおれのもんだぞ!!」
「ほら~ちっちゃいルフィに届くかな~」
ウタはジュースが入ったコップを自分の頭上に掲げているがルフィが手を必死に伸ばしても届かない位置にあり奪い返すことはできなかった。
ゴトン
「ごめんごめん。でも言ったでしょ。その大きさじゃ絶対に勝てないって」
「そんなことねェ食べ終わったら次の勝負だ!」