願い

願い


それはクソみたいに暑い夏のことだった

その夏は呪霊が嫌ほど湧いてその対処に大体の術師は引っ張りだこだった

御三家の連中ももっと働けと心の中で悪態を吐きながら、校舎の日陰で水筒に入った麦茶を飲む

「ぷはーっ!」

汗が流れ、水分が不足した身体に麦茶がよく染みる

そんな、なんてことのない日常

そうやって休んでいると右側から俺の親友がやってきた

「焔、今ちょっといいか?」

親友…いや、黒都はそう言うと俺の隣に座る

「吉田が死んだ」

吉田小百合、俺と黒都の同級生だ

俺は黒都の言葉を聞いて、目の前が真っ暗になった

「はは、笑えない冗談は…やめてくれ」

信じたくなかった

現実を認めたくない俺の口から、笑いが溢れ…わかっているというのに冗談だと茶化すようなことを言った

「悪いが、これは冗談ではなく…ちゃんとした現実だ。」

「だろうな」

俺は天を仰ぎ、現実を噛み締める

黒都は手を組み、顔を下に向けている

「なぁ、焔」

「なんだよ黒都」

黒都は顔を上に上げ、こう言った

「もし私が、呪術界を革命すると言ったら…協力してくれるか?」

それはあまりにも、不可能な理想だった

「私が上に立つことができれば、今よりもっと数多くの命を救うことができるはずだ。」

それはあまりにも、傲慢な思考だった

「後輩も先輩も吉田も、みんな死んだ。私はもう親しい者の死を知りたくないんだ」

それはあまりにも、悲痛な願いだった


「…冗談だ。笑い飛ばしてくれ。」

黒都はそう言うと、立ち上がり来た方向に戻って行った

…………

………

……

「…笑えない冗談は、やめてくれよ」

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