領主様と領民の交流②(ゴーレム加工)

領主様と領民の交流②(ゴーレム加工)

スレ主◆MwEI06QrZW2k


「そういえば、コアを引っこ抜いたゴーレムって運んだ後どうしてるんだっけ?」


昨日起こったハリケーンで街道が土砂崩れで通れなくなったのを私がどうにかした後の昼休み。

ふと思ったことをそのまま口に出したら紅茶を入れていた秘書君がマジかコイツと言いたげな目で見てきた。


「いくら戦闘や力任せな事以外、他の者にぶん投げているとは言えソレは流石に……」

「いやいや、いろんなものに役立ててる町の経済の一部ってのは流石に分かってる!」

「つまり……過程を知りたいと?」


そうそうと首を縦に振る。

む、今日のお茶はいつもより美味いな。

私が行くことは秘書君が連絡しておいてくれるようだ。ラクチンである。


そんでもって2日後。


「では、行きましょう」

「案内よろしく~」


口笛を吹きながら秘書君の後ろをついていく。

住宅地や出店が並ぶ市場の隣の区画。仕事場に一応一番偉いやつが顔を出したら邪魔だろうなと近寄らないでいたりする。

金槌で金属を叩く音、職人たちがあーだのこーだの言い合っている声。


「ここがゴーレムの加工場です」


ひときわ大きな倉庫のような建物。扉を開けるだけでふわっと温かい……と感じるのは私だけのようだ。

秘書君が目を細めているからそれなりの熱気らしい。

人も毛玉もひっきりなしに右へ左と動き回っている。


「うおぉ!?領主様だ!?」

「なんかやべぇ事しちまったか!?」


私を見た途端騒がしさが3割増しになった。


「私が見ること言ってなかったの?ミスするなんて君らしくない」

「……間違いなく責任者に伝えたのですが」


「がははっ、すまん!忙しくて皆に言うの忘れてたわ!!!俺が所長だ!」

「どあほう!!」「みーぃきゅ!!」「せめて顔の油位拭かせろ!」


過剰なのではと言いたくなる声量で出迎えてくれたのはドワーフ系の男。

金属扱う男ってなんかゴーグル似合うよね。ちなみに通りかかった他の人達に所長が一言と一発を入れられている。

人数が多すぎて最早連打レベルの殴られっぷりだ。まさかのカルカルナですら脛をぶん殴ってる……毛玉が人を殴る所初めて見たぞ。


「まぁ見学するのは問題ねぇから案内するぞ」

「全く効いていない……やはりドワーフは頑丈ですね」

「私にも全部が全力の殴りに見えたんだがな」


がははは、と何でも無いと言いたげに進んでいく所長。

この作業場はGの字のような形状をしていて搬入口を通って流れ作業で加工が終わった物は外に運ばれていくようだ。


ゴーレムの解体から始まって、素材の選別、種類別に溶かしてインゴットへ加工するライン。

最後に倉庫へ運ばれた後、他の町へ送られていくとの事。


この町で使われる分は他の工場へ運ばれて合金にしたり加工したり、武具や鎧にしたりとなるらしい。


「ちなみにゴーレムは突発的に来るワケだが、この加工場は普段どうしているの?」

「まぁ一定量集まったり、注文が来て材料が有る時にまとめて動かすってぇ感じだからな。本来なら月1で5日って所か」

「……最近は?」

「ガラクタ(ゴーレム)が溢れないように連続稼働中。正直貯蓄用の倉庫を増設してほしいくらいだ」


矢鱈と来ている。ここ最近はゴーレムの出現数と言うより割合が多くなっているのだ。

私は数えていないがぶん殴った数がかなり多い気がする。


「せっかく鉱山で石を掘らなくて済むんだ、地下に倉庫を作る勢いでいいから貯蓄しておくのはどう?反動が来るかもしれない」

「会議で話し合うことにしますが、人手の関係ですぐに着工出来るかは……」

「人手が足りなければ私が地面に焼き穴を作ってやるさ」

「ひーっ、そんな風に軽く動いてくれるならここら見て回ってくれよ!要望やら何やら言いてぇ奴らは多いはずだ!」


身長差から流石に私の手を引くことは出来ない所長が秘書君の腕を楽しそうに引いていく。


この町はモンスター共が何故か多く降ってくる場所の側に作られた。言ってしまえば採掘所と防波堤だ。

ただし採掘所と言えるのは私という戦力がいる場合に限る。何でもかんでも焼き払ったり最悪海にぶん投げてトドメをさせるのは個人だと私と父上くらいだ。

兄弟で言えば二人で組んだ場合同じようなことは出来るが、なまじ誰も彼も何かしらで有能なので戦闘力に回すより走り回ったり頭を使ったほうが有用だ。

つまり、資材採取係にはもったいない。

……かと言って配置しなければ十中八九、けが人……最悪死人が出るし防衛線を突破されたら蹂躙だ。


嫌になる(ウレシイ)。本当の意味でここの人たちの生活の命は私が背負ってる事になる。


「ココ様、ちょっと助けっ!力強っ!」


引っ張られ過ぎて転んでしまった秘書君を見て思わず笑ってしまう。

まぁいいさ、死ぬまで戦い続けるのも悪くない。相手の背景を考えないで拳を振るえる天職だと思えば。


……やっぱりたまにミーちゃん撫でてサボりたいので、誰か皆が使える超兵器作るか私くらい強い人出てこないかなー?


おわり


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