頂点を誘う闇
《優勝は今回も“チャンピオン”ジーザス・バージェス〜〜!!!!》ウオオオオォォォ!!!おめえが最強だ!強くて格好良いぞ!!流石我らのチャンピオンだ!!!
「ウィ〜〜〜ハッハッハッハッ!!!もっと強えやつ連れてこい!!おれに本気を出させてくれ!!」
歓声・称賛、そういうものが当たり前となり大会が始まる前から“チャンピオン”の異名を持つ巨漢の戦士ジーザス・バージェスは...その状況を楽しんでいた。強くなればなるほど強敵がその座を奪おうとやって来る。そういう野心を持つものを正面から叩き潰す。富も名声もそのついでで得られる。まさにバージェスにとっての理想郷がそこ...闘技場にはあった。
「ゼハハハ...強えな、おめェ、おれの仲間にならねぇか!!!」
「あん?なんだおまえは」
突然観客席から飛び込んできたこれまた巨漢の男はほとんど挨拶も無くいきなり勧誘を始めた。
「おれの名はマーシャル・D・ティーチ、海賊だ。てめぇは強えからおれの仲間になれ...ここにいるやつより強え奴らと闘わせてやる」
「ふざけたヤロウだ...ウィ〜〜ハッハッハッ...そういうのは...」
バージェスは体勢を低くして戦闘体勢をとった...と思った瞬間にティーチへと飛びかかった。
「波動...エルボー!!!」
「!!!!」
ガアンッ!!!という音とともにティーチが後ろへと吹っ飛んで闘技場の壁に叩きつけられる。
「ウィ〜〜ハッハッハッ!大したことねえな!その程度でおれさまを仲間に..」
「痛ぇな...まぁこれくらいやってくれねえとおれの仲間としちゃ失格だ」
「っ!まじかよ、あれを食らって立てるとはな」
「あ?あの程度で倒れるやつなんてうちの、いや、“元”うちの隊長には一人もいねぇよ、ゼハハハ...どうやらここは相当ぬるいレベルだったみてぇだな」
「なに...!おい、口には気を付け...」
「黒渦!!!」
「!!」
ティーチと名乗ったその男が右腕をかざすと身体が浮きそこに引っ張られてしまい...
「そら、お返しだ!!!」ゴキンッ!!!
そのままティーチは力任せに殴りつけた。ヤミヤミの重力にティーチの膂力が加わった結果、その威力は波動エルボーほどではないにしろ、強烈な一撃となっていた。
「ぐううううぅぅぅ!!」
流石にそれでK.O.とはならなかったが、久々の“ダメージ”に身体が過度に反応している。
(くそっ..なんてヤロウだ...引力自体は悪魔の実だろうがこいつのフィジカルも相当なもんだ...)
「オラァアア!!」
「なっ...ぐわぁぁぁああ!!!」
倒れるバージェスに容赦なく追撃の拳を打ち込むティーチ。というよりはバージェスは油断していた。仮にも仲間に勧誘したやつにここまですることは無いと思いこんでいた。
(〜〜〜!!殺す気か!!イカれてんのか、コイツ!)
そう思った瞬間ティーチの一言が頭をよぎった。
『ゼハハハ...どうやらここは相当ぬるいレベルだったみてぇだな』
あのときは馬鹿にされたと思ったが何のことはない、殺されはしないだろうとたかをくくった自分のレベルは確かに“ぬるい”としか言えないだろう。
「ウィ〜ハッハッハ...」
そう思い至ると自嘲気味に笑いそして...
「あ~まいった、いいぜ、てめぇの仲間になってやる。よろしくな...ええとああ、“ティーチ船長”」
「あん?もういいのか、せっかくのヤミヤミの実の力の練習になると思ったんだがな、まあいい、歓迎するぜ...ゼハハハ...!!」
こうして後の四皇、黒ひげは仲間を手に入れた。海賊らしく力づくで...。