頂上戦争inアド7
海兵を広場に退避させ、包囲壁を作動させたセンゴクだが、オーズが倒れている場所の壁がせり上がらない。
「何をしている!?完璧に動作させろ!」
「申し訳ありません!どうやら何者かにシステムを破壊されていた様でして…。」
(…あの女か…!)
やられたと思ったが、運のいいことに沈黙しているオーズの真下の壁だ。
むしろ針の穴を抜けようとしてオーズを乗り越えて広場に来る海賊どもを各個撃破するのに都合がいい。
先ほどの報告で、オーズの"心臓の音"が全くしないことも確認済だ。
「…締まらんが、始めろ、赤犬。」
海賊達に、マグマの雨が降り注ぐ。
■
(…白ひげのおじさんの能力でも壊れないなんて、やっぱりあの壁は…。)
白ひげの力でも破壊できない程の強度の鋼鉄に阻まれ先へ進めない上に、降り注ぐマグマにより足場の氷が溶けていく。そして足場の氷が溶け、海に飛び込んだ所を砲台に狙われる。
味方の海賊達の"声"が次々と消えていく。
「おいアド!もうこれ以上は耐えきれねえぞ!」
「まだ…まだです!」
不死鳥の姿となったマルコの背に乗り、戦場を駆け巡りつつ、自身の能力を使用した仕掛けを解除するタイミングを見極めていたアド。
と、突然包囲壁の高さを超える水柱が上がり、広場へと誰かが降り立った。
麦わらのルフィが、三大将の目の前に現れた。
「ルフィ、無茶だ…!」
だが、アドは一瞬で判断した。
ルフィに海軍の目線が全て集まっている今なら…。
海軍の注意が逸れたこのタイミングしかない!
「マルコさん、ジョズさんとおじさんに連絡してください!今しかない!」
「わかったよい!」
「私、ルフィを助けなきゃ!後はお願いします!」
「おい待て!」
マルコから飛び降りたアドは、プシュっと酸素カプセルを吸うと、ルフィの元へ向かった。
■
ルフィは折れたマストを三大将に投げつけると、JETスタンプでマストごと攻撃し、撹乱してギア2ndでの高速移動で通り抜けようとする。
黄猿はそれにあっさりと追い付き、ルフィに右足で光の速さの蹴りを入れようとした。
だが、何者かの銃身に受け止められた。
「…おやおや、そんなボロボロの体で、よくわっしを捉えられたねぇ~。」
「光のあなたの攻撃は速いだけ。直線的で読みやすいんですよ…?」
「生意気なァ…。」
突然現れたアドに、ルフィは呆気に取られていた。
「久しぶり、ルフィ。…ジャヤで会った時よりも覇気が上がってる。強くなったね。」
「アド、アドじゃねえか!エースを助けに来てくれたんだな!」
コクリと頷くアドを見たルフィだが、その満身創痍の体を見て思わず息を呑む。
右の脇腹は貫かれ、左肩はマグマに焼かれていた。
と、処刑台にいるセンゴクの声が聞こえてきた。
「蜃気楼!貴様には随分と戦場を引っ掻きまわされた…敵ながら見事。だが、それもここまでだ。」
「エース君はロジャーじゃない…!
そんなことも分からないお前らに処刑なんかさせない…!」
「海賊に同情の余地などない!討ち取れ!」
パチンとアドが指を鳴らす。
「オーズ君、起きていいよ。」
アドとルフィを討ち取らんと突撃してきた海兵達が、巨大な手に薙ぎ払われる。
沈黙していたはずのオーズが雄叫びと共に起き上がった。
「アド、大丈夫が?」
「何とかね。死んだふり、上手だったよ。」
心臓の音が全くしなかったオーズが復活したことに、海軍側に動揺が広がる。
「何故オーズが…!?心臓は止まっていたはず――――」
「心臓の音をアタシが"消した"から。」
「音を消すだと…まさか!?」
アドはセンゴクを見据えると、唇に右手の人差し指を当てて、シーっというジェスチャーをした。
「私が触れたものの影響で出る音は、全て聞こえないの術…!」
「それは…貴様何故"あいつ"と同じことを!?」
センゴクには、かつて息子のように育て愛した人物がいた。
その人物と全く同じジェスチャーをしたアドに、センゴクは激情を隠せない。
そこへ畳みかけるように水を割る轟音がした。
「何事だ!?」
「申し上げます!海底から1隻船が現れました!こちらへ一直線に向かって来ます!」
現れたパドルシップは、外輪を回してこちらへ向かってくる。
「グララララ…ウチの船が出揃ったと言った覚えはねえぞ…。」
海軍は砲台を使い船を狙うが…。
「船ではない!オーズを狙え!」
「もう遅い!」
センゴクはようやく相手の狙いに気付いたが時既に遅し。
オーズが船を引き上げ、広場に海賊達がなだれ込んだ。
「白ひげ、それにお前の息子"ロシナンテ"と同じ力を持つ小娘にしてやられるとはな…センゴクよ…。」
センゴクに顔を向けずにそう言葉を紡いだガープからは、センゴクの表情を伺い知ることはできなかった。
「お前はロジャーじゃない…か。
いい友人を持ったな、エース。」
「ジジイ…。」
戦いは最終局面を迎える。