頂上戦争inアド3
赤犬の姿が戦場に見当たらないことに違和感を覚えたアドは、見聞色の覇気で赤犬の居場所を探り当て、尾行していた。
建物の上から赤犬の様子を伺っていると…。
(…ん?誰かが走ってくる?)
小路を走ってくる若い海兵が二人いた。
■
「ハァッハァッ…!」
「おい待てよコビー!」
戦場の恐ろしさに耐えきれず、マリンフォードの戦場の喧騒から少し離れた街中へ二人の若い海兵…コビーとヘルメッポは逃げ込む。
(ムリムリムリ…ムリだ…恐くて僕には何もできない!!あんなに強い人達が次々に血を流して倒れていくなんて…。)
恐怖に囚われ、ただひたすら街中を走る二人。
小路を抜け街の大通りに出ようとした次の瞬間、二人は誰かに後ろから襟を掴まれてそのまま引っ張られる。
後ろに倒され尻餅をついたコビーの目に飛び込んできたのは、先ほど七武海の三人と渡り合っていた蜃気楼のアドだった。
(あぁ…僕は死ぬんだ…。)
だが、不思議と相手からは全く敵意を感じなかった。唇に人差し指を当て、シーッというジェスチャーをしてこちらに目線で何かを訴えている。
建物の陰に隠れながらアドの目線の先をそっと見ると、戦場から逃げ出した海兵をマグマで焼き殺そうとしている大将赤犬の姿があった。
肉が焼け、血が蒸発する音がした。
(―――!!!)
もしあのまま大通りに出ていたら、自分達二人は焼き殺されていただろう。
何かの作戦の準備が整ったという連絡を受けた赤犬は、その場から去っていった。
■
アドは、腰を抜かしてその場にへたりこんでしまった二人の目線までしゃがんで話しかける。
「…もう大丈夫。いきなり突き飛ばしてごめんなさい。」
「あっ、いえいえそんな…助けて頂き、ありがとうございます。」
何とか立ち上がって90度に腰を折りお辞儀するコビーと、呆然と座り込むヘルメッポ。
と、ヘルメッポの持っていた電電虫からエースの処刑時間を早めるという内容の連絡が聞こえた。
(…何か仕掛けてくるな。)
「ごめんなさい、もう行かなきゃ。」
「でもその怪我…ちょっと待ってください!」
アドの右脇腹からの出血に気が付いたコビーは、持っていた包帯や消毒液などでアドの体を応急処置し始めた。
「おいおいコビー、見られたらまずいって!」
「…敵なのに、いいんですか?」
「あなた居なければ、今頃僕達は生きてませんから!」
「…ありがとう。優しいんですね。」
「海兵である前に、人として正しいことをしたいんです。」
処置を始めたコビーは、既に注射痕が刻まれたボロボロの肉体のアドに思う所はあったが、口には出さなかった。
■
処置を一通り終えたコビーに、礼を伝えたアドは、再び赤犬の尾行を始めようとその場を去ろうとしていた。
ふと、上空から"声"が聞こえた。
(あれ、この"声"は…。)
見上げると、有り得ない光景に三人は絶句した。
「「「…は?」」」
空から軍艦が降ってきた。
軍艦は海に落下し、そして現れた男に言葉を失う。
「ルフィ…何で…?」
戦場に現れたのは麦わらのルフィ。
そしてインペルダウンからの脱獄者だった。