頂上戦争inアド2
オーズとその援護部隊はマリンフォードの左から湾内に侵入し、そのまま広場を目指す。湾外にいた白ひげ傘下の海賊団の突破口を開いた。
アドは、そんなオーズの体の上を移動しながら、オーズに向かってくる海兵や砲弾をひたすら撃ち抜く。次第にオーズに向かってくるのは砲弾だけになった。
下からは、オーズに近づくな、蜂の巣になるだけだと指揮をとる海兵の声が響く。そして湾内と広場の境目に到達する直前に、アドは強力な気配を感じた。
(…3人いるな。私に注意を引き付けるか。)
「…じゃあオーズ君、よろしくね。」
「エースぐんは目の前なのに…。」
「今は機会を待つ時だよ。その時が来たら、オーズ君の力が絶対に必要になる。だから待っててね。」
「…わがっだ!!!」
バーソロミュー・くま、ドンキホーテ・ドフラミンゴ、ゲッコー・モリアがいかにも狙っていそうな表情でオーズを見ていた。
アドはオーズから飛び降りると、覇気の応用と能力を使い気配をほぼ完全に消して空から三人に襲いかかった。
■
くまがニキュニキュの実の力で空気を圧縮しオーズに向けて"熊の衝撃"を放とうとしたその時、頭上から無数の銃撃が降り注ぐ。
「.…攻撃中止。」
パッと移動し回避行動を取るが、既に人格のないくまは見聞色の覇気が使えない。未来視に対応しきれず、移動先を読まれ数発食らってしまった。
「なんだぁあの女!?クソ、オーズを死体にする邪魔すんじゃねぇ!"欠片蝙蝠"!!!」
カゲカゲの実の能力で大量のコウモリを作り出してけしかけるが、アドは空中で体を捻りながら全て避けると、落下する勢いのまま左足でモリアの顔面に回し蹴りを入れた。
「ブフォ!!!」
「あぁ…あなたがモリアですね。ルフィに負けた人だ。」
「テメェ…!」
トンッという"音を出して"着地する。
その様子を見ていたドフラミンゴは、アドに語りかけた。
「ジャヤでベラミーがとんだ迷惑をかけた、すまなかったなァ…あの後俺の手で殺し合いをさせたから許してくれよ。」
「気にしないで下さい、"ジョーカーさん"。」
「フッフッフ、あまり俺を怒らせないほうがいいぜ…お嬢さん。」
バサササッという音と共に空中に舞い上がったドフラミンゴは、オーズの足を切ろうと糸を出す。しかしアドの一発の銃弾で糸は切られた。
「ン~、なかなかやるじゃねえか。いい覇気してるぜ。」
「あなたに褒められても気持ち悪いだけです…!」
アドはオーズのところへ行かせまいと七武海三人を相手取って戦い始めた。
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3人を足止めしていると、オーズが砲撃に晒されてしまい、湾と広場の境目に"音もなく"倒れた。
海軍側からは歓声が上がる。
「キ~シッシッシ!残念だったなァ!テメェがドフラミンゴと殺り合ってくれたお陰で、お友達の"完璧な"死体が手に入りそうだ!」
「…生体反応なし。」
(…多分大丈夫だ。)
アドは海軍側の反応を確認すると、湾内に戻ろうと後退していく。
「テメェ待ちやがれ!」
「…レーザー照射。」
追撃を交わし切ったと思ったその時、目の前にドフラミンゴが再び現れた。
武装硬化した銃身と右腕がぶつかる。
「しつこいですよ?」
「フッフッフ…これで確信が持てた。お前と俺は、また会うことになるだろうよ。」
そう言ったドフラミンゴはあっさりと引き下がると、何処かへ去っていった。
気味の悪い奴だと思ったアド。
しかし2年後、運命か必然か、ドフラミンゴの言葉通りになるが、それはまた別のお話。
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とある理由からアドのナギナギの実の能力をよく知っているドフラミンゴ。海軍側で唯一、アドが何を仕掛けたか勘づいたが、戦争が面白くなりそうだと報告はせず、ただ笑っていた。
「フッフッフッフ!」
戦争は一層激しさを増していく。
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「ウッ…ゲホ!流石に七武海三人はキツかったなぁ…でも頑張らないと。」
ジャヤで黒ひげをルフィのところに行かせまいと戦った際に、蹴り折られた右の肋骨。
その少し下をドフラミンゴに糸で貫かれたアドは、血を吐きながらも注射を打って痛みを誤魔化す。
その痛み止めは、寿命を削りかねない劇薬だ。
注射の一瞬の激痛に耐え、痛みが引いたアドは、ある事に気が付いた。
「そういえばオーズ君に乗ってる時、赤犬の溶岩が全然見当たらなかった…何か変だ。」
戦場のどこにいても分かるほど3大将の攻撃は派手だ。だが、オーズの肩に乗って戦場を見渡した際、青キジの氷や黄猿のレーザーによる攻撃は見えたのに、赤犬のマグマによる攻撃は全く見当たらなかった。
違和感を感じたアドは、行動を開始した。