頂上戦争inアド11

頂上戦争inアド11


「…あ、れ、ここ、は?」

「目を…覚ましてしまったか…。」

「イゾウ、さん…?」


全てを使い果たして気絶したアドは、鉄と血と土煙の匂いで目を覚ました。

どうやら白ひげ海賊団は撤退している最中で、今自分はイゾウに付き添われて担架で運ばれているらしい。


「センゴクに一発食らわせるとは、流石だったぞ。」

「でも、私は落下して…。」

「エースの弟が腕を伸ばしてお前を掴んだ後、炎のトンネルを作って海兵を寄せ付けないようにスキを作ったエースがこっちに託してきたんだ…。俺みたいな人間を助けるために、自分のやりたいことを我慢して命をかけてくれる友達なんだ、必ず赤髪に送り届けてくれ、とな。」

「…そう、ですか…。やっぱりエース君は優しいな。」


そしてイゾウが最も恐れていた質問をアドは投げ掛ける。


「エース君は、どこに?」

「それは…。」


くそっと呟いたイゾウはアドの目を見ていられなくなり、必死で何かを堪えながら目線を逸らす。担架でアドのことを運んでいる4人の男達も同様だ。

そしてあることに気付いてしまう。


「…あ、あれ?おかしいな…エース君の気配が、な、い?」

「エースは、エースは…クソッ…!」

「え…あ…。」


震える手を必死で抑えながら、アドはエースから貰ったビブルカードが入っている包みを取り出した。


包みを開けると、パラパラと灰が舞う。


それは、ある事実をアドに突き付けるには十分過ぎることだった。


「エースは、死んだ。」

「う、嘘だ…きっと悪い夢見てるだけだ。そ、そうだ、こんな夢から早く目を覚まさなきゃ――――」


自らの頭を撃ち抜こうと拳銃に手をかけるアドの胸ぐらをイゾウは掴む。


「信じたくねぇお前の気持ちは痛いほどわかってる…目を覚ましたら友達が死んじまってるなんて、こんな状況誰でも頭がおかしくなるはずだ…。だが、これは現実なんだ!」

「あ、あ…。」

「酷なこと言ってるのは十分承知している…だが今は堪えろ!お前は必ず赤髪の元へ…っまずい、一旦止まれ!」


グラグラと島が揺れる。

担架を持つ男達は何とか落とさぬよう堪えたが、その揺れはアドの五感を強制的に目覚めさせるには十分過ぎた。

意識がはっきりしてしまったアドの視界に入ってきたのは、最悪の光景だ。


「なに、これ…。」


ティーチが何故かグラグラの実の力を使いセンゴク、ガープと対峙している。しかも後ろに引き連れているのは海賊団のメンバーと、インペルダウンの凶悪な囚人達だ。

そして後方では麦わらを渡せという赤犬の声が響く中、海軍とマルコ達がぶつかり合っている。

頭の中がぐちゃぐちゃになっていくが、ナギナギの力で自らの激情を強引に凪にして抑えつけたアドは、今の状況をイゾウに尋ねる。


エースは赤犬の攻撃からルフィを庇って死んだこと。

それでも白ひげは家族をこの戦場から逃がすため海軍と単身戦ったが、突如現れた黒ひげ海賊団に殺され、能力を奪われたこと。

白ひげ海賊団は、ルフィを抹殺しようとしている海軍と決死の覚悟で戦っていること。

自分が気を失っている間に起きた全てを聞いた。


「ルフィは…生きてるんですね…。」

「エースがその命に代えてでも守ったんだ。あいつは、エースの生ける意思そのもの…!必ず守り抜く。お前を船に乗せたら俺も戦に戻るつもりだ。」

「そっか…なら、私、行かなきゃ。少し休めましたし。」

「お前、何言って―――」

「イゾウさん、もし私の家族に会ったら伝えてもらえませんか。家出して喧嘩別れになってごめんなさい。でも、赤髪海賊団のみんなが家族で、本当によかったって。」

「待て、よせ!」


ルフィは姉との新時代の夢、そして友であったエースの意思を背負う存在。

絶対に死なせない。

限界のはずなのに、不思議と力が湧いてくる。

最後の力を振り絞り、アドは守るための戦いに向かった。

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