頂上戦争inアド1
白ひげが起こした津波は青キジによって海ごと凍らされた。
それを足場に海賊達がマリンフォードになだれ込む。
黄猿のレーザーを不死鳥のマルコが防ぎ、ダイヤモンド・ジョズが投げた巨大な氷塊を赤犬が蒸発させる。
世界最強の強者達のぶつかり合いが行われている戦場をアドは駆ける。
(…邪魔!)
二丁拳銃とライフルを武器として使用しているアドは、回し蹴りで蹴り飛ばしたり銃の柄の部分で海兵を殴りつけ、弾薬を奪いながら進む。海兵達は誰に殴られたかも分からぬ内に文字通り音もなくバタバタと気絶していった。
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戦況は、当初は船ごと浮上しマリンフォードの湾内を急襲するという初手を生かした白ひげ海賊団が優勢だったものの、海軍が軍隊の強みである規律を生かし立て直したため、膠着状態になっていた。
(…あいつのことだ。少し揺さぶったところで動じねぇ。隙を見せたら抜け目なく突いてくるはずだ。)
マリンフォードの図面を参考におそらく最適な戦力の配置はできた。しかし盗まれた場合のことも考えてあったのだろう。図面に記載されているが詳しい内容や名称が書かれていない装置もある。
智将、仏のセンゴクと数十年ぶりに相対する白ひげは考えを巡らせる。
誰かが隣にスタンと降り立った。
それに気付いた戦場の戦士達がどよめいた。
「お久しぶりです、おじさん。」
「お前だな。ウチにマリンフォードの図面を送りつけたのは。」
「やっぱりバレてましたか…。」
「こんな芸当ができるのはお前しか思い浮かばねぇ…エースを助けに来たんだな?」
「はい、友達ですから。」
死ぬかもしれない戦いに巻き込みたくはなかった。赤髪海賊団のお前は関わるな、これはウチの戦いだと伝えようと思っていたが…。
「…すまねえな。」
「お役に立てたならよかったです。」
アドの目を見据えた白ひげは、その覚悟が本物だと悟り礼を伝える。
友を傷つける者は許さない。強い意思の宿るその瞳は、父である赤髪とよく似ていた。
「ったくオーズの奴、前に出過ぎだ。死にたがりと勇者は違うぞ。」
「私、行ってきます。ちょっと思い付いたこともありますし。」
「聞かせてみろ。」
「何と言いますか、古典的な方法なんですが…。」
アドはとある提案をした。
「グララララ!」
「私の能力なら何とかできると思いますが、やっぱり―――」
「いや、センゴクに一杯食わせるならそのぐらい単純な方がいいかもしれねぇ。やってみろ。」
アドはリトル・オーズjrのところへ向かった。
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(あのお人好しが…貧弱なくせに…!)
処刑台の上に拘束されているエースは、白ひげの隣に現れたアドに憤りを隠せなかった。
何故なんだ、どうしてもっと自分の体を大切にしないんだ。
(頼む…俺なんかのために死なないでくれ…これは俺の失態なんだ…!)
エースは歯を食い縛り、自分を助けんと戦い傷ついていく仲間と友人をただ見ていることしかできなかった。
そしてエースの隣に立つセンゴクは、突如現れた"蜃気楼のアド"に驚いた。
(赤髪の娘がどうしてここに…!まさか白ひげと赤髪が同盟を!?)
だが、赤髪とカイドウの小競り合いはつい先日のこと。どれだけ船を急がせたところで間に合うはずがない。
すぐに冷静さを取り戻す。
「申し上げます!赤髪の娘、蜃気楼のアドが現れました!」
「…わかっている。」
(あの女だな、図面を盗んだのは。)
どうりで相手の布陣が完璧なわけだと納得する。だが、相手にこちらの意図がある程度バレていたとしても、相手を上回る一手を出し続ければ、作戦は粛々と進み包囲網を敷くことができる。
初手こそ意表を突かれ押されたが、直ぐさま陣形を立て直し膠着状態に持ち込んだ。
側にいる英雄ガープと違い、勝つためなら一個人の感情を捨てて元帥として冷徹な判断を下し、どんな策略も実行するセンゴク。
とある策略を仕掛けるため、サカズキに電話をかけた。
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暴れまわるオーズの肩になんとか乗ったアドは、冷静になるように語りかける。このままではただ的になるだけだ。
しかしエースを助けると言って聞く耳を持たない。
(…💢)
痺れを切らしたアドは、武装硬化したライフル"踊"の銃身を持って野球のバッターのように振りかぶると、グリップの部分でオーズの角を思い切り打撃した。
「…ふん!!!」
「いでえ!!」
((((容赦ねぇ~!!!))))
「エース君がいっでだ、怒ると一番おっかないっで…。」
「そうなんだ…💢」
衝撃が頭に響き、フラフラと倒れこんだオーズはようやく頭を冷やした。アドはそんなオーズにある事を伝える。
「ねえオーズ君、"死んだふり"って得意だったりするかな?」
「…?」
どういうことかと疑問に思ったオーズだが、アドの恐い目付きを見て素直に従うことにしたのだった。