面影
ここだけゾロがルナーリア族Part2の145※閲覧注意
※【ここだけゾロがルナーリア族】のスレより
※ゾローリアの更にIFネタ
※ファンタジスタした幼少ゾロがキングに拾われ百獣海賊団所属√
※幼少ゾロはくいなと約束する前
※くいな生存&麦わらの一味√
※CPはゾロ×日和
※IFネタの派生⇒百獣√
※キャラエミュが微妙
※文才なしの駄文
※捏造設定あり
※それでも良い方のみ、お読み下さい
噂を聞いた。
牛マル様の姉君フリコ様の孫で、牛マル様の又甥たる方が、このワノ国鈴後へとお戻りになられたのだと。
民を慈しみ、侍として修練を忘れず…そんな方であると。
しかし…。
しかし、かの四皇カイドウ配下の、百獣海賊団の大看板でもあると。
故に、拙者は確かめる為に、かの者の所へと向かった。
「…狐?なんだ、怪我してるのか?」
『狛狐?おぬし、怪我をしておるのか?』
怪我で動けぬ拙者を見つけて、その鋭い目を驚きで緩めるところも。
優しい光を宿して、手を差し伸べてくれるところも。
「……よし、これで大丈夫だな。それにしても、この鈴後で動物を傷付ける奴がいるのか」
『……うむ、これで良かろう。それにしても、この鈴後で狛狐を傷付ける者がおるとは』
怪我に障らぬよう慎重に…しかし、少し馴れぬ様に治療してくれるところも。
刀を振るう者らしい無骨な手で、柔らかく毛並みを撫でてくれるところも。
「なに、おれがそんな奴は斬ってやるよ」
『なに、拙者がそのような輩は懲らしめてやろう』
上に立つ者として、無法者を許さぬところも。
その全てが、かつて拙者を“相棒”と呼んでくれた、あの方に瓜二つで。
その面影を感じられて。
己が両の眼から涙が流れるのを止められなかった。
「お、おい。どうした?まだ、どっか痛むのか?」
拙者が涙を流しているのに気が付くと、あの方に良く似た若者はぎょっとした様な表情で、慌てた様に拙者の心配をしてくれて。
「参ったな…なぁ、泣き止んでくれよ」
穏やかな声音も、あの方によく似ていて…その節くれ立つ指で涙を拭ってくれる。
どろん
だから、狛狐の姿から、人型へと形態を変えた。
若者は、ほんの僅かに目を見開いたが、直ぐに表情を戻した。
「なんだ…お前、悪魔の実の能力者か」
刀の柄に手をかけてはいないが、いつでも抜ける様に僅かに警戒をする様子も、あの方の面影を感じて…。
「…おぬし、牛マル様の又甥であると…真か?」
殆ど、確信している事ではあるが…どうしても本人の口から聞きたくて、問い掛けた。
「………そうだ。霜月フリコの孫だからな、おれは。霜月牛マルは大叔父にあたる人だ」
若者は、拙者が何を知りたいのかを探る様に目を細める。
しかし、直ぐに1つ頷き、その血縁関係を肯定してくれた。
「あぁ…やはり」
感涙が流れそうになるのをこらえる。
「で?…お前は、誰だ?」
警戒を解いてくだされた若者は…若君は、拙者に名を問いかける。
「…拙者は、狛狐のオニ丸と申します。牛マル様は拙者の事を“相棒”と呼ばれておりました」
若君の問い掛けに姿勢を正し、お答えする。
「大叔父の?」
こてり…と、若君は首を傾げられる。
「よく…よく、お戻りになられました…このオニ丸、貴方様に従います」
地に手をつき、頭を下げ…そのまま、若君の許可を待つ。
「……確かに、鈴後を治めてはいるが…百獣海賊団にも所属している。非道も外道も、行うぞ」
先程までの穏やかな声音ではなく、冷淡な声音で釘を刺すように、言われて。
「…それでも、貴方様はあの方の血縁なのですから。もし、裏切ったと判じられた場合は斬り捨てられて構いませぬ」
頭を垂れたまま、覚悟の上であるとお伝えする。
「……許す。傍にいろ」
若君は、傍にいる事を許してくだされて。
「はっ!!」
あぁ、これで…。
牛マル様がぽつりと零されていた、唯一の未練を叶えて差し上げられると。
安堵が胸の奥にひろがった。
『…姉上は、もう帰って来られないのだろうか。帰って来られるなら…どんな事があろうとも拙者がお守りするのに…』
そう、寂しそうにされていた、あの方の。
弟としての、最初で最後の、望みを。