雪山でもふもふ

雪山でもふもふ





冬島での任務を終わらせ帰路に就こうとした時だった。

思わぬ悪天候に見舞われ近くの洞窟にて一泊することになったのだ。


広くもない洞窟の中でサーベルタイガーがその身を横たえている。それは良い。

同行者のフーズ・フーは悪魔の実の能力者だ。おかしくはない。問題があるのはそこではない。

「……なぜ服を脱ぐ」

「下手に服を着てるよりはこっちの方が暖かいんだよ」

そう言いながら何もまとっていないふかふかとした腹を見せ、伸びをする姿を少し可愛いと思ってしまった。

落ち着け、ロブ・ルッチ。今目の前にいるのフーだ。

お前よりも年上の、20を越した体格のいい男だ。しかも毛皮で誤魔化しているが今は全裸だ。

「お前も豹になっちまえ。寒いんだろ、さっきから震えてんぞ。」

図星を指された。

確かに先ほどから、微かにだが震えているのは自覚している。

簡易毛布等もない中、このまま人の姿でいるよりは豹の姿でいた方が寒さはしのげるかもしれない。

……だがこの男とくっついて眠るのか……?

「そのままじゃ明日には凍っちまってるかもなぁ。ハットリにも会えなくなるなぁ。」

葛藤を見抜かれたのか、冬島に行くからと置いてきた相棒の名を出され、腹をくくる。

渋々と服を脱ぎ豹の姿へと形を変え、巨大な毛玉の横に身を伏せる。

ズボンは穿いている。そこまで恥を捨てる気にはならない。

すぐ傍に自分より大きな熱源があるからだろう、確かに少しは寒さがましにはなった。このまま動かず体温を保っていれば夜は越せるだろう。

そう思っていると、ぐいっと太い尻尾に身体を引き寄せられ、巨体にすっぽりと収められてしまう。

「何をする」

「もっと寄らねぇと寒いだろうが」

反射的に睨みつけるが、そのままサーベルタイガーのふかふかとした毛並みに覆われた腹部へ身体を埋められる。突如与えられた温もりに、寒さで強張っていた身体が弛緩していくのが解る。

抵抗したいのに抵抗できない。

「ははは、身体は正直じゃねぇか」

「それ以上言ったらセクハラで訴えるぞ」

悔しいことに、かなり暖かい。身体が熱で溶かされていくようで心地よい。

心地よさの理由が先ほどからニヤニヤと笑っているこの男なのは非常に剛腹だが。

背に腹はかえられない、早く眠ってしまおうと瞼を無理やり閉じる。

トクトクと聞こえる緩やかな音は、フーの心音だろうか。

身体を包む温もりと、安心を与える音によって、ゆっくりと、意識が遠のきそうになる。

そこへ、抑えた笑い声が耳に届いた。

腹が立ったので寝ぼけた振りをして、未だ身体に絡みつくふかふかとした尻尾に思い切り噛み付いてやる。

ぎゃんっという情けない悲鳴が洞窟内に響く。

ざまぁ見ろ、と思いながら心地よい眠りに身をゆだねた。

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