雪の行方は妹の元に
新世界のとある海
その海に一つの海賊船が進んでいた
その船の名前は
『ゴーイングルフィセンパイ号』
そしてその船を所有している海賊こそ 『人食い』の異名を持つ船長バルトロメオが率いるバルトクラブである
その船では幼い少女が凶悪の人相をもつ男達に指示を出していた
「そこ!ウタの形が崩れてる!!もっとしっかり縫う!!」
「へい!シュガーの姐さん!!」
「あんたらは船の周りの警戒!!少しでも 異変があったらすぐに報告する事!!」
「「了解しやした!!シュガー姐さん!!」」
「そこのあんたはグレープ持ってきて」
「わかりました!!・・・・・・ん?」
「シュガーの姉御~!ウタ様の等身大宣伝ポスターができました!確認お願いします!」
「・・・・・いいわね 伊達に『宣教師』の異名は持ってないわねガンビア・・・じゃあこれをすぐに5万枚作って」
「へい!」
「バルトロメオ」
「おお!おいらの仕事はなんだべ?」
「海にダイブして魚でも捕ってきて」
「よっしゃ~!・・・・・・って俺は能力者だからそのまま死んじまうべ!?」
そんな漫才のようなやり取りを海賊達としている少女の名は『シュガー』
かつてドフラミンゴファミリーの幹部にして『ホビホビの実』の能力者である
何故彼女がこのバルトクラブの一員として男達に指示を出しているのかというと とある町にてバルトロメオと出会い その後紆余曲折ありほぼ拉致のような形でバルトクラブの仲間入りとなった
今の彼女はこうしてテキパキと指示出しをしている最初の頃は酷いものだった
新世界の海にて航海士がいないバルトクラブに激怒し さらにお婆ちゃんの知恵袋だよりという色々とおかしいこの海賊達にツッコミを飛ばしながらも何とか航海を続けてきた
もはや今の彼女はドフラミンゴの部下だった時の『守られていた少女』とは比べられもできないほど逞しくなった事だろう
「はぁ・・・・・」
一仕事終えたシュガーはため息を吐き
姉の形見である羽根ペンを置き眼鏡を外す
色々と頼りない船員達に指示を出し 時にはそいつらを手伝ったり できない仕事を片付けたり ぶっちゃけシュガー一人の仕事の量が尋常じゃないのだ
「お疲れだべ シュガー」
「お疲れじゃないわよ・・・・・」
疲れてダウンしているシュガーに船長であるバルトロメオが声をかける
その後ろに巨大な魚がいるのを見るに能力で捕まえたのだろう
「人が全然足りないのよ・・・よくこれまで航海をしてこれたもんよ・・・ねぇ今度の島で人を数人雇ったら?」
そうシュガーが提案する 彼女が元々いた ドフラミンゴファミリーはその規模の巨大さから多くの雑用や船員がいたものだ 彼女もそれをこき使っていた経験からそれをバルトロメオに進言するが・・・
「いーや!ダメだべ!!この『ゴーイングルフィセンパイ号』に乗る資格がある奴は俺が認めた奴しか絶対乗せねーーーべ!!」
「でしょうね・・・・あんたに聞いたわたしがバカだったわ・・・・・」
そう言うシュガーの声は最早諦めの感情が 出ていた
この船に乗って間近でバルトロメオといれば短い付き合いでも大体分かるものだ
そんなシュガーとバルトロメオの元に
『宣教師』ガンビアが声をかける
「おーい!ボス!姐さん!ちょっといいかー?」
「どーしたべ?ガンビア?」
「いやーなんかよ 作った覚えのねぇ人形があってよ!」
そう言うガンビアが手に持っているのは女の子が喜びそうな可愛らしい人形だった
「なんだべ?こいつ腕が羽根になってるべ」
「婆ちゃんに聞いたら それは『ぱーぴぃ』を模した人形じゃねぇか?って」
「はーぴぃ?なるほど・・・」
二人がその人形を見ていると異変が起きる
ピクッ
「・・・・・・・・今・・・動いたべ?」
「・・・・・・・・動いたな・・・・・」
バサバサバサバサ!!
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「「ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!??」」
突然動いたハーピィ人形にバルトロメオと ガンビアの二人は抱き合って悲鳴をあげる
「人形が動いたべ~!!?怪奇だべ!?ミステリーだべ!?超常現象だべ~~~!?」
「俺知ってる!?婆ちゃんに聞いた事があるんだ!?ありゃあ『ざしきわらし』って奴だ~~~!!?」
「ん~?何・・・うるさいわね・・・」
机に伏して寝ていたシュガーはその二人の 悲鳴を聞いて目覚める
そしてそんな二人の前で動いている人形は 目覚めたシュガーを見つけるとその腕についた羽根で空中を飛びシュガーに近づく
「「ぎゃあぁぁぁぁぁ!?飛んだーーー!?」」
するとバルトロメオはシュガーと人形を見てあることに気づく
「そ・・・そうか!おめぇはシュガーが作った人形だべなぁ!?能力で動かしてるんだろう!?」
「は!?そうか・・・シュガーの姐さんのイタズラか・・・心臓止まるかと・・・」
「いや・・・・・わたしこの人形知らないわよ」
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」」
「ほら」
そう言ったシュガーは『手を拍手するように合わせる』という彼女がウタとの戦いの後に習得した能力で作ったオモチャを元に戻す動作をする
だが目の前のハーピィ人形は変わらない
「あばばばばばばばば!!やっぱり呪いの人形だべか~!?この海で亡くなった人の魂が乗り移ったんだべ~~~!?」
『ある意味それが正解ね』
「「「!?」」」
突然この場いない第三者の声が聞こえる
バルトロメオとガンビアは幽霊の声だと思い顔を青ざめるが
シュガーは驚愕の表情を浮かべる
何故ならその声は聞き覚えがあるからだ
忘れようとも忘れられない
自分の片割れである唯一の『姉』の声
「あなた・・・・・名前は・・・・・?」
「フフッそれじゃあ自己紹介といきましょうか」
そう言うとハーピィ人形はまるでショーの主役のように動く
「わたしの名前は『モネ』元ドフラミンゴファミリーにして・・・・・」
そこまで言うとシュガーに向き直り
「あなたのお姉ちゃんよ・・・シュガー」
「・・・!・・・・・お姉ちゃん?・・・ お゛ね゛ぇち゛ゃぁぁぁぁぁん!!!!」
シュガー今だけはその見た目と年相応に泣きじゃくりモネの人形に抱きつく
それを愛おしそうに抱きしめ返すモネ
今ここに奇跡の再会が果たされたのだった
「・・・・・・・・・どういうことだべ?」
「さぁ・・・・・・」
そんな状況をよく理解出来ていない二人なのだった
「シュガーのお姉ちゃんなんだべかぁ!?」
「ええ」
何とか落ち着いたバルトロメオは泣きじゃくるシュガーを抱きしめるモネに事情を聞く
離ればなれになっていた姉妹の再会にいつの間にか集まっていたバルトクラブの面々も涙を流しながら
「しかし・・・何で人形の姿をしているんだべ?」
「ぐす・・・・・そうよ・・・・・どうして人形になっているの・・・・・お姉ちゃんはパンクハザードで・・・・・」」
「それはね・・・貴方のお陰よシュガー」
「わたしの・・・・・?」
「ええ・・・あの時わたしは心臓を刺され亡くなった・・・そして次に目が覚めたら わたしは人形の状態で倒れ シュガーがパンクハザードでわたしの亡骸を見つけ泣いていたところを見つけた・・・」
「・・・・・・」
「あの時貴方は無意識にホビホビの能力を使っていたのよ 貴方はわたしの亡骸に残っていた魂をオモチャに変えたの」
「わたしがそんなことを!?」
「恐らくホビホビの能力が成長したのね・・・その後わたしは貴方に気づかれないように空を飛んで見守っていたのいざという時には助けれるようにね だけど・・・」
モネは周りを見渡し
「こんな個性的で独創的な人たちの仲間になるなんてね」
『いや~~~~それほどでも~~~~!!』
「多分誉めてないわよ」
「よっしゃ!!決めたべ!!」
その時船長バルトロメオが吠える
「モネ!お前俺の仲間になるべ!!」
「・・・!!」
「はぁ!?」
その宣言にモネは驚きの感情を出し
シュガーは驚愕の声を上げる
「あんた何を・・・!!」
「もう決めたべ!!友達の大切な家族ならそれもまた友達だべ!!」
「・・・・・!またあんたは訳のわからないことを・・・「いいわよ」!?」
「貴方にはシュガーがお世話になったしこの船に乗るのも面白そうだしね」
「でも・・・お姉ちゃん・・・」
「・・・シュガー・・・大丈夫よ今度は貴方の前から消えたりしない・・・」
「・・・・・・うん」
「よっしゃぁぁぁぁぁ!!お前達!!新たな仲間のモネだべ!!これから一緒に麦わらの一味を支えんぞぉぉぉぉぉ!!」
『了解です!!ボス!!』
「これからよろしくねトサカくん♪」
そしてシュガーに目線を向け
「よろしくねシュガー」
「・・・・・ええ よろしくねお姉ちゃん
・・・・・ところで」
シュガーはモネの体を掴む
「?・・・どうしたのシュガー?」
「仲間になるってことは・・・・・一緒に仕事をしてくれるってことよね・・・・・!?」
「・・・・・・・・・・・・・え?」
後にモネは語った
その時のシュガーの顔は若様の面影が見えたという
「フッフッフッ・・・大丈夫よ・・・・・ わたしが手取り足取り教えてあげるから
・・・これからよろしくね・・・・・お姉ちゃん・・・フッフッフ・・・フッフッフ」
「えーと・・・・・わたし選択間違えた?」
これが後に世間を騒がせる事となる
バルトクラブの人形姫の相方となるハーピィ人形との出会いの話であった