雪の人

雪の人



12月の夜。

拠点にて与えられた自室は節電のため灯りと空調は最低限に落としている。

冬の空気は当然ながら冷たい。

俺は背中の寝具を掛け直し下で仰向けに横たわる「彼」を見つめる。


薄暗さの中に浮かぶ、青白さすら感じる白い肌。まっさらな新雪のようなそれは故郷の雪景色を思い出させる。

人間離れしたそれは呪霊との混血であると言う「彼」の生まれが要因であるのだろうか。


昼間の「彼」は精悍ではあるが茫洋とした印象の青年。しかし作戦会議の時は怜悧なそれに一変し、「彼」の弟が関わる案件では喜怒哀楽が非常に豊かになった。職業柄ポーカーフェイスを求められる俺とは対象的だな、と常々思っていた。

そんな「彼」が今は俺と褥で見つめ合う関係…夜を共にすることは数度目ではあるが未だに信じられない気持ちでいる。


「彼」の首に軽く口付けし、鎖骨辺りの窪みを強く吸う。

「は…」

「彼」が小さな溜息を漏らすと、花を落としたように赤く跡が付く。

指先を鍛えられた腹筋に丁寧に沿わせる。

「はっ…うっ…」

溜息が艶を増す。そのまま柔らかな胸筋を掌で包み真ん中に感じる突起を撫でるように優しく揉み込こむ。

「はッ…あぁ…くぅ…」

溜息が嬌声に変わり形の良い顎を反らせる。

掌はそのままに艶かしい声を封じるように深く口付ける。

「彼」は白い腕を俺の首に回す。口蓋を舌で円く舐めとってやると舌を絡め、抱きつく力を一層強める。

右手を「彼」の下腹部にやると硬く芯を持ちはじめた陰茎に辿り着く。

やはり白いな、と改めて思う。

「彼」の経歴を考えると当然なのだが…一般的30代男性(と思っている)自分との相違に驚く。

白いそれをゆっくりと優しく扱く。

「あァッ!…くっ…ふぅッ…はぁッ…ふっ…ひぐるま…」

「彼」が俺の名を呼び、体を大きく反らす。と同時に、声が漏れないよう自らの口を手の甲で塞ぐ。俺を見る瞳が薄闇の中でも黒く潤んでいるのが分かる。

その様子に刺激を受けた俺のものも一層硬く反り始める…。

「脹相、君は美しい。」


***


行為の後、俺の腕の中に収まる「彼」はいつも静かであまり言葉を発しない。いつか融けて消えてしまいそうな危うさを感じる。


暫くの後「彼」はベッドからするりと抜け出し素早く着衣を整える。

「また明日。おやすみ」

「…ああ。おやすみ」

いつものように自室から出ていく「彼」の背を見送りながら、あの雪のような儚い人を、大切に、融かさないようにしよう、そう思った。


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