【雨、無音、ある破片】

ほんのすこしだけ。続きとかお待ちしてます

可能性世界【もしもサイレントが傷付くも生存し、その後本編世界と同じく熱線射出し、壊異戦後責任を追及されたナインを連れて逃げ出したら】

八境市に冷たい雨が降っている。

壊異の爪痕に涙を流すように。あるいは、過ちを犯したナインを責めるように。彼女たちの居る廃墟の上に、降り注ぐ。

…なんで私を助けてくれたんだろう？

冷静に考えれば考えるほど分からなくなる。だって私は、彼女の腕を引き千切ったのに。感情に呑まれるまま、彼女を殺そうとしてしまったのに。戦いが終わって元通りになったとはいえ…普通なら嫌われて当然だ。いや、殺された方が自然ですらある。こんな何の取り柄も無い上に人殺しを良しとするようなやつ、何の価値もありはしない。なのに。

どうして、彼女は私に笑ってくれるんだろう。どうしてあの時、あの場から手を引っ張って連れ出してくれたんだろう。わからない。何も。朝霧愛香。たまたま近くに住んでいて、何度か話をした程度の関係のはず、なのに。

どうして、あなたはそんなに眩しい笑顔で──私を友達と言ってくれるのか。