雨宿り彼シャツエース概念

雨宿り彼シャツエース概念

二次元好きの匿名さん

雨はエンターテイナーである。

男にとって、喜ばしいシチュエーションを降らせてくれる。

「生殺し」でなければ、だが。


二人で出かけた帰り、俺たちは夕立に見舞われた。

丁度、俺の家の近くで。

二人ともひどい濡れ鼠だ。

雨に濡れた彼女を見ていると、俺の中の獣(けだもの)が騒ぎ出す。

濡れた髪、滴る雫、透ける肌。

いかん、いかん!教え子だぞ?俺は何を考えているんだ・・・


風邪をひいてはいけない。

彼女を家に招き入れ、風呂を勧める。

「ありがとな!トレーナーさん!」

浴室に向かう彼女を横目に、服を干す間、着られるものを探す。

・・・これで行くか。

俺が用意したものはワイシャツ。

体格的には十分だろう。袖が少し余るかもしれないが。

「エース、着替え、置いとくぞ。」

「おう、ありがとな!」

扉越しに伝える。

・・・脱衣所とはいえ、入浴中に入るのはまずいかな?

いや、まずいよな・・・今回は仕方ない。不可抗力だ。

飲み物でも用意しておこう。牛乳でいいかな?


「あーさっぱりした!着替え、ありがとな!」

俺のワイシャツを着たエース。

下ろした髪とすらりと伸びた白い足、火照った肌。

「トレーナーさんの服でけーなー!袖めっちゃ余ってるわ!」

袖を揺らして遊ぶ彼女を見ていると、また"けだもの"が暴れ出す。

流石に、下着は付けているよな?

一旦、落ち着こう。

手元にある雑誌でも読んで、気を紛らわそう。

「あたしにも何か貸してくれよ!乾くの結構かかるからな!」

そう言って俺の前に身を乗り出す。

俺の眼前には彼女の胸元が・・・見るな!見てはいけない!

だが、理性はすでに満身創痍、あっけなくのされ、目線は胸元をロックオン。

!?まさか、下着も洗濯中!?

俺は強引に視線を雑誌に落とし、必死に耐える。

理性と"けだもの"の攻防は続く。


ワイシャツ一枚で寛ぐ彼女に本能的に目が行ってしまう。

足を組み替えたり、胸元を仰いだり、あらゆる仕草に目を奪われる。

今度は天使と悪魔の攻防。

(押し倒しちまえよ、男気見せろよ。)

(いけません、手順を踏んでからです。それから事に及ぶのです。)

お前ら言ってること同じじゃねえか!くそ、頼りにならねえ!

何とか耐えねば!


―雨に降られたときはやっべーなあって思ったけど、今日はついてるな。

トレーナーさんの家に行けるなんて。

でもトレーナーさん、流石に着替えでワイシャツ一枚なんて、どうかと思うぜ。

それにさ、その目、あたし以外にはしない方がいいぜ。

男の視線って結構わかるからな。

いたづらのつもりで胸元見せつけたり、わざと足組み替えたりしてみたり・・・

結構恥ずかしいな、これ。

トレーナーさんの反応、あたしはうれしいぜ。

そんなにうろたえてくれるなんてな。

後、読んでる雑誌、上下逆だぞ。

・・・あたしも上下逆にしてたわ。


雨の中、一つ屋根の下、若い男女。

だが、今は何も起きない。

いつか、その実が熟すまで。


雨はまだまだ続く。

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