離れる世まで召されて(仮1)

離れる世まで召されて(仮1)


髪コキ

それは長く美しい髪を汚してみたいという変態にとってのロマン

たがそれを現実で実現させるとなると厳しいと言わざるを得ない

髪は女の命である、その神聖な領域に穢らしい行為を受け入れる奇特なものはそうはいないだろう、それに加えてそもそも頭皮は本来性器を受け入れる場所でなく感染症や性病のリスクがつきまとう

しかし、夢にまで見るほどその欲望に取り憑かれている者が世の中にはいた

「あっ、あああ」

1人の男は髪コキを夢想しながら自身の肉棒を扱いていた

彼は独り身の服飾関係の仕事をしており、まとまった収入を得るまでの繋ぎとしていわくつきだという格安の一軒家を購入して一人暮らしをはじめていた

彼は女性の美しい髪に対して並々ならぬ関心があり、髪コキという行為に憧れを抱いていた

「か、髪コキされたい……」

彼は日夜その思いに耽り日々を過ごしていた

しかし、現実には実現させることができずただ時だけが過ぎていく

彼は決して女性から好かれないわけではない

だが、彼は少し性癖が変わっているだけでごく普通の青年である

過去に交際をした女性に対しても良心の呵責や、そういった行為に嫌悪感を示すであろうという考えから自分の性癖をひた隠しにしていた

だからこそ髪コキという行為を夢想しつつも実行に移すことはなく髪そを行う創作物をオカズに日々を過ごしていた

だが彼は知らなかった

このいわくつきの一軒家は本当に出るということを……

「お兄さん、こんばんわ」

現れたのは白無垢を着た少女の人形

所謂花嫁人形である

つまり彼女は若くして亡くなった人に人形の伴侶を添わせて供養を行うために生まれ

たのだ

「うふふ、おにいさんわたしと結婚(おわって)……」

「えっ、人形!?……やばっ、射る!!!」

「きゃああ!」

タイミングが悪すぎた

彼女が現れたと同時に男は射精してそのまま果てた そして人形は現れた瞬間、思い切り顔面にかけられた 彼女は可愛らしい悲鳴をあげながら姿を消した

「ひ、酷いわ!私の身体をこんな穢らわしいもので汚すなんて!あんなやつ大っ嫌い!」

身体に付着した白くドロドロとしたものに顔をしかめながら人形の少女は青白い炎を滾らせ怒りに燃えていた

はじめて浴びせられた得体の知れない白濁液は彼女にとっては本能的な不快感と気持ち悪さしかなかった

「でも、私はこれを知ってるような……うぐっ、ううん、そんなの知らない」

人形の少女は自身の記憶を辿るがすぐにそれをやめた

今はそんなことよりも自身に汚物をぶっかけた男を罰することが先決だと

翌日

男は昨日に遭遇した少女の人形を幻覚だと決めつけていた

いわくつきの物件に住むこの男にとって幽霊などといった概念は信じない

そんなことを気にするよりも引っ越しのための資金を少しでも貯めて次の家を決めなければならない

「寝る前に1回抜くか」

「お兄さん……」

「ひぃ!?」

男は突然金縛りにあい身動きが取れなくなった 

「昨夜はよくもやってくれたわね!!」

人形であるため表情は変わらないもののその声色は間違いなく怒気を含んでいた

「な、なんで人形が動いて!?ししかも喋ってる……」

「それが遺言?」

人形の少女はそう言って綿帽子を外すと彼女の髪が姿を表した

「!!!!」

男は目を奪われる

人形の少女の艶やかな長髪はまるで鴉の濡れ羽のようで、これまで見てきたどの女性の髪よりも美しく、そして扇情的だった

だが男がそんな感情を抱けたのはほんの一瞬で人形の少女の髪はまるで別の生き物のように蠢くこちらに向かって伸びてきた

「う、うわああああああああ」

男は絶叫をあげながら必死に逃げようとするが身体は動かず、その間にも髪は男を捕らえようとする

そしてとうとう男の身体に髪が絡みつきまるで蛇のように締め上げて動きを封じた

「いい気味だわ」

人形の少女は恐怖に慄く男を嘲笑する

「な、なんで!?やめろ!やめっ……」

男は必死で抵抗しようとするが身動き一つ取れず服を脱がされてしまう

「これが昨日私の身体を汚した穢らわしいもの……なんて見た目をしているのかしら」

人形の少女は男に侮蔑の言葉をぶつけながら髪で男の身体をジリジリと縛りつけていく

「ああっ……」

髪で身体を締め付けられる度に男の身体にまるで小さな針にプスプスと刺されるような刺激がはしる

「こんなものじゃないわよ」

肉体的に生じる痛みはごく僅かであるが嗜虐的な笑みを浮かべて浮かべる人形の少女の姿はこれから起こるであろう苦痛を想像力によって掻き立たせられ男を精神的に追い詰める

「ふふっ、あなたの弱点はどこかしら?」

人形の少女は探るように髪を部分的に締めつけることで急所を探る

そこを徹底的に痛めつけてやろうという魂胆である

そしてある部分に男が最も強い反応を示すことに気づく

「そう……ここね。丁度いいわ」

人形の少女は忌々しげに男の肉棒を睨みつける

それは昨夜、彼女を穢した汚物の象徴とも言えるべき存在であった

「もう、やめてくれ」

「反撃してこないの?クスクス、もう動けないものね。このままじっくり痛めつけてあげる」

人形の少女は男の肉棒に髪を巻きつけ締め上げた

「あはは、ビクビク震えて情けない。このまましごいてあげるわ」

人形の少女は嬉々として男の肉棒を扱きはじめる

「ああ、や、やめっ……」

男はまるでその感覚から逃れようとするが身体は一切動かずにただ人形の少女にされるがままになる

「離れてくれ!!これ以上されたら」

「やめるわけないじゃない!!私が味わった屈辱はこんなもんじゃ返せないわよ!!」

人形の少女は一層髪にに込める力を強くし男の肉棒を激しくしごくと男は切なげに声をあげる

だが、人形の少女は勘違いしていた

男は肉棒を刺激されて苦しんでいたのではなく、図らずしも念願だった髪コキを受けているという事実に興奮していた

人形の少女のサラサラとした黒髪は柔らかな髪質も相まってまるで繊細な陶器のような滑らかさをもって肉棒に刺激を与えながらも偶然にも強すぎず、弱すぎずの適度な力加減による締めつけが加わることですさまじい快楽を男に与えていた

「あっ、あぁ」

「苦しすぎて言葉もでないのかしら?」

男にとってこの感覚はこれまで味わったことのない未知のもの

人形の少女による髪コキはもはや麻薬のようなものですぐさま精を吐き出した

「いやあああ!!?気持ち悪い!!」

髪で拘束されているため逃げ場のない白濁液が人形の少女に降りかかると彼女は悲鳴をあげて姿を消した

「はあ、はあ」

その様子を呆然と見ていた男ははじめは髪コキによる

凄まじい快楽の余韻にしばらく浸り、そして我に返って酷く落ち込んだ

「気持ち悪いか……」

突然、訳もわからず襲われてしまった男であるが図らずしも叶ってしまった髪コキは想像以上のものだった、しかしそれ以上に髪を汚され悲鳴をあげる人形の少女の姿が目に焼きついて離れない

それ以来男は創作物の髪コキをオカズした自慰を行おうとしても彼女を思い出してしまい、それどころではなくなった 彼は人形の少女への罪悪感を胸に抱いてしまった

一方そのころ人形の少女は……

「はあ、はあ、……なんなのこれは?」

人形の少女ははじめて精液を浴びられたときに感じた奇妙な感覚に苛まれていた

そして最初よりも濃厚で多量の精液によって彼女の心の奥底に閉ざされた記憶が目覚めようとしていた

数十年前

ある地で1人の少年が戦死したという報が少年の両親に伝えられた

両親は花嫁人形を腕よりの職人に依頼して息子の死を弔おうとした

しかし、完成してすぐのところで少年の戦死は誤報であることが判明し、ほどなくして彼は両親の元へと帰ってきた

「私はいつあの方と結婚(おわる)ことができるの?」

人形の少女は嘆いた

自身の本懐を果たせず暗い倉庫に仕舞われ放置される日々に

「今はだめでも……いつか一緒に」

少年が最期の時を迎えればいつかかならず訪れるであろう幸福な結婚(おわり)を人形の少女は夢想していた

「もしかしたらあの方は誰も知らない何処かで……」

人形の少女は考えた

少年は誰にも気づかれぬまま命を落としてしまったのではないかと

「それは……可哀想。きっとあの方も心細いよね」

人形の少女は自身が感じていた孤独を少年と重ねあわせる

彼も自分に会いたいに違いないと

しかし、彼女は人形である

自らの意思では一歩たりとも動くことは叶わない

「どうか私にあの方をお救いする力を」

人形の少女は祈った 

自らの足で少年の元へと駆け付けられるようになりたいと

そして奇跡は起こった

「歩ける!?」

人形の少女は思うように体を動かせるようになった

はじめは勝手がわからず転んでしまうことも多かったがそれでも着実にコツを掴んで前に進んでいく

「あなた……」

目当ての少年はすぐに見つかった

少年の両親に見せられた写真よりも精悍な顔立ちとなっていたがそれでも面影はかすかに残っており人形の少女ははっきりとこの青年が自身と結婚(おわり)を迎える相手だと気づくことができた

「???」

しかし、青年のいる部屋の異様な空気を感じて人形の少女は足を止める

青年は何故か服を身につけておらず傍らには同じように裸の見知らぬ女性がいた

彼らは互いに愛を囁きながら身体を寄せあっている

女性は甘い嬌声をあげながら青年に何かをせがむように言葉を放つ

「???」

人形の少女は訳もわからずただその様子を眺めていた

「ああんっ、ああぁっ!」

青年は女性の胸の頂を優しく撫でまわすように弄る

その度に女性は気持ちよさそうに顔を緩ませ嬌声をあげた

そして彼女の股からは大量の蜜が垂れておりまるで何かを待っているかのようにヒクヒクと動いているのがわかる

すると青年は緊張した面持ちで彼女の秘部に自身の肉棒をゆっくりと挿入した

青年は女性の要望に応えるように腰を振り始めると女性は切なげに青年の名を連呼する

人形の少女は何がどうなっているのかわからずただただ呆然としながらその光景を眺めていた

やがて快楽が頂点に達した青年は女性の膣奥深くに射精し、同時に女性も身体を痙攣させ果てる

そして彼らは疲れ切った様子でとんでもないことを口にする『ようやく本当の夫婦になれた』と

「……夫婦?あの方は私と結婚(おわって)くくれるはずなのに……私は必要じゃないの?」

人形の少女は困惑しながらも理解する

先程の行為は結婚(おわる)ための儀式だと

青年にとって自身は不必要であると

「嘘よ。そんなはず……」

だが、そんな人形の少女を嘲笑うかのように青年と女性は仲睦まじそうに口づけを交わす

「ああ、あ」

人形の少女はその場に立ち尽くし声にもならない悲鳴のようなものをあげると自身の体躯を見つめる

倉庫で長年放置され埃にまみれて汚れきっていた白無垢

こんなものに近づきたいものなどいないだろう

どこまでも平坦で硬いだけの凹凸のない身体

そんなものに触れたところで青年が喜ぶはずもない

股部に触れてもそこには毛の一本もなくツルリとした感触のみで弄ったところで蜜はでない

それでは青年の欲望を受け止めることはできない

「あははっ、あはははは」

人形の少女は壊れたように笑い出す

自分は無価値な存在だと思い知ってしまったからである

すると人形の少女の身体から青白い炎のような揺らめきが立ち上った

それは人形の少女の負の感情が形となって現れたものである

人形の少女の中でドス黒い感情がふつふつと湧きあがってくる その感情は次第に大きくなり……やがて身を焦がすほどの嫉妬の炎へと変わっていく

「どうして!なんでなの!」

人形の少女は絶叫する

「あなたはわたしと結婚(おわって)くれるのよね!!私はそのためだけにずっと待ってたのに!!」

青年夫婦は人形の少女の存在に気づくとその異様な姿に驚愕する

「あなた!!」

人形の少女は青年に向かって駆け出した

青年は震えながらも女性を庇うように前に立ち塞がり近づくなと叫ぶ

すると人形の少女の髪はひとりでに伸びてくると青年の首に巻きつくとそのまま宙吊りにして締め上げる

その光景に人形の少女自身も動揺する

「えっ?どうして?違う!違う!……こんなつもりじゃないの……私、私はただ旦那様に見てもらいたくて……」

青年は必死に抜け出そうともがくが人形の少女から伸びた髪はまるで生き物のように複雑に絡みついていて外すことができない

「……ねえ、私と結婚(おわって)よ、ね?私だけのものになってよ」

人形の少女は懇願するように青年に問いかける

人形の少女は少しだけ落ち着きを取り戻したようで髪を自由に動かせるようになり青年の首から髪を解く

すると青年は『化け物』と人形の少女を拒絶するかのように言葉を吐き捨てる

「何故?何故、そんな目でみるの?私は……私は……」

人形の少女は苦しげに嘆くと姿を消した

そして彼女はその時の心の傷で記憶の大半を失った

それからは伴侶と結婚(おわり)たいという漠然とした願望だけが今日まで人形の少女に残された

「思い出したわ……全部。これはあの時と同じ……」

人形の少女は忌々しげに呟く

あの白濁液は3度に渡って屈辱を与えたことを

「あれ?でも……」

人形の少女は振り返った

あの時は冷静でないため気にしていなかったがあの男もかつての青年のように心地よさそうにしていたことを

「あの人、もしかして……私のこと好き?……じゃああれは……つまり」

人形の少女は頬に手を当てると幸せそうに笑う

最低だと思っていた行為は実は愛の告白だった

つまり男は自分と結婚(おわり)たかつまたのだと人形の少女は考える

「なのに……私は勘違いしてあんなことを……」

人形の少女は男に襲いかかってしまったことを後悔した

「それでもなお、あの方は私を想って……なんて真っ直ぐで素敵なの」

人形の少女の心に温かな感情がこみ上げてくる

それは心の底で求めていた愛が成就したときに生まれる幸福感

「……」

人形の少女は愛おしそうに微笑む

人形の少女は決意した

勘違いしてしまったことを謝罪して男の気持ちを受け入れようと

その頃は男は……

髪コキで性欲を発散できなくなって数日、人形の少女が姿をみせないことに安堵しつつも流石になにもしないわにはとは考えて近隣の神社でお祓いをしてもらう……予定であったがたった1度のお祓いで6万円もかかると聞かせれてしまい断念した

夢のマイホームを手に入れるために節制をしながらコツコツと貯めていたのにこんなくだらないことに出費しなければならないと考えると男は無性に腹が立ってきた

「そりゃあちょっと気の毒とは思ってるよ。だけどそもそも、あの家は俺が買ったんだよ。妖怪だかなんだか知らないが俺の家なんだからオナるぐらいしていいだろ。普通に入ってくるなよ。ノックぐらいしろ!平穏な日常を返せ!」

男は安いからと軽率にいわくつきの一軒家に住んだことを棚に上げて恨み言を吐いて決意する、あの人形の少女にガツンと言ってやろうと

深夜

「二度あることは三度あるって言うからな。居るんだろ?出てこいよ」

「………」

男は人形の少女を呼ぶように声をあげると彼女は姿を現した

「ホントに出てきた!?」

男は人形の少女が出てきたことに驚愕する

「ふふふ」

人形の少女は上に10度、左に30度首を傾ける

それは人形の少女が鏡の前で練習した敵意を感じさせず相手にかわいいと思ってもらうために最適だと考えた角度

表情を変えられない自身の短所を補うための努力

しかし、男に目線を合わせると恥ずかしくなって顔を伏せてしまう

「なっ……」

前のように金縛りにあって攻撃にあうと身構えていたが人形の少女にはその様子に男は困惑していた

「あの、ごめんなさい……いきなり襲ったりなんかして」

「え?あっ、いや、こちらこそ……大変失礼なことを……」

人形の少女は頭を下げて謝罪する

男は下手にでた彼女に強く言えず曖昧に謝罪を返した

「それで私は……」

人形の少女は自らの想い、過去を語る

「私と結婚(おわって)くれる?」

「ええ……」

男は人形から愛の告白をされるという夢にも思わなかった状況に言葉を失う

「えーっと、ほら僕たちはまだ出会って間もないし……お互いをもっとよく知り合う必要があると思うんだ」

「もう十分私のことは伝えたでしょ?……それじゃダメなの?」

「確かに君のことは聞いたよ。だけどさ……その……君は僕のこと知らないでしょ?だから、いきなり決めなくてもいいと思うんだよね」

「そこまで言うなら……いいけど」

人形の少女は嬉しそうに微笑む

男は困惑しながらも話を合わせなんとか場をやり過ごすことに成功する

下手に彼女を刺激するような態度はとればまた髪で襲ってくるかもしれない

それから男はなんとか引っ越しまでの時間を稼ぐために彼女の機嫌を取りながら過ごすことにする

「えっと、名前は?」

「名前!?それは……ないのよ」

花嫁人形は名前をつけられて棺に入る

しかし、


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