雑貨屋バイトの1日

雑貨屋バイトの1日


あかねさんの舞台やB小町のライブ行きたいがお金が無い…そんなことを言いながら義瑠さんとこの雑貨屋に立ち寄る。

義瑠さんから買ったアイスを店先のベンチで座って食べながら雑談。

アクア、久しぶりに暇なんだとさ。

店先のテーブル席の一つは小学生達がカードゲームしている。懐かしいなぁ…あのカード達、新たなルール追加されてエキセントリックな召喚できるようになったんだよな。

もう召喚口上がラーメン屋の呪文みたい。

アクアは興味ないからやらなかったが、俺は好きだからここで同級生達とよく遊んでいた。

たまに義瑠さんが金に物言わせたエグいデッキで俺たちをボコボコにしていた。そんなことを思い出しながらあずきバーを一つ齧る。

「金無いなら無駄遣いやめろ。

なんなら要らないもの売りに行け。小遣い程度になるだろ?手付かずな積みプラと積みゲーとか」

「アクアは分かって無いなー積みプラはボックスアートを楽しむためだよ?」

「腹立つドヤ顔だな。積みゲーはなんだよ?」

「積みゲーはな……………」

「………お、当たりだ。義瑠さん、一本貰いますね?当たりだから。

…義瑠さん?まあ一声かけたし貰うか」

積みゲーは…なんなんだろ?6本買ってプレイしたの2本くらいだな。

うーん……

「わ、ワクワクを忘れないため?」

「そんな勿体無いワクワクは捨てておけ。

というか自信無いんじゃねーか」

「ゲーム好きなのに買って満足してたりするなぁ…プレイするゲームもなんか決まってるし」

「スマブラかスプラ、APE…見事に対戦系ばかりだよな…売ったら?やらないゲーム」

「でもなぁ…やりたくて買ったわけだし…」

そんなことをぐだぐだ言っていたら目の前になんかドロってしたジュースが出て来た。

「グァバジュースだ。沖縄フェアを考えて仕入れたが仕入れ過ぎてな。飲むが良い。差し入れだ」

「「ありがとうございます…甘っ⁉︎」」

「甘いが暑さを乗り切れる成分だらけよ。琉球より夏対策を学れるところは学ぶべきだな。

そこのカードゲームに興じている童子ども!オヤツタイムだ!!」

わーい!やったー!ギルありがとー!!と子ども達が喜びながら義瑠さんが出してくれたグラスに入ったジュースを手にとって行く。

子ども達にとって義瑠さんは遊び相手でもあり、庇護者でもある。

熱中症にならないように色々気を使っているのだ。

「俺たちが小学生の頃も義瑠さんがオヤツ出してくれたよな」

「ああ。賞味期限ギリギリだから廃棄するより飲み食いしてもらおう、な計らいが嬉しかったな。珍しいの沢山あったし。

…あ、ダイヤ。義瑠さんにバイト頼めば良いんじゃないか?あの人、たまに店あけたいのに人手が足りないとか欲しい、とかぼやいていたし」

「確かに!仕入れのタイミングがタイト、て言ってた!!

そうと決まれば…義瑠さーん!!」

「言うや否や、だな…グァバジュース甘いけど、ルビー喜ぶか?

義瑠さん。グァバジュース欲しいんですけど」

義瑠さんに話すと笑ってOKされた。

時給も悪くなく、有難い限りだ。

ひとまずは近々仕入れに店を朝から離れないといけないので1ケ月限定で採用された。「試用期間」という奴らしい。

以降は学業と義瑠さん次第。

義瑠さんからは大っぴらにアルバイトについては言うな、とは言われた。基本アルバイトを雇うつもりはないから、だとか。

基本的に職務はお客さんが来たら対応とレジ打ち、陳列棚の整理、廃棄寸前の食材をお惣菜に加工etc…とまるで1人スーパーマーケットだった。

表に出してないだけで取りあつかっている品物が多く、覚えるのが大変で訪れる人達が普通に表に出ていない製品を頼むから苦労する。

義瑠さんは1人でやりながら遊びに来た子ども達の相手もしていたのか、と頭が下がる思いだった。

やることは多いが義瑠さんが大半してくれているので忙しいがやりやすく、引き継ぎ用のファイルが分かりやすい。

義瑠さん曰く

「信頼出来る知人に依頼することもあったからな」とのこと。

そんな訳で夏休みに向けてたまに事務所の手伝い、基本は雑貨屋の店員という形でバイトを始めたのだった。

ある日のことだった。

義瑠さんは小石川にいる知人のもとへ仕入れに行く、というので店番を任された。

「面白いものを仕入れるギリシャ人の女がいてな。

愉快なものを仕入れたとのことだから店を空ける。ダイヤ、店番頼んだぞ」

と登校途中に寄るとそんなこと言われて店の鍵を渡された。

義瑠さんに信頼されてる!

と嬉しくて学校帰りに真っ直ぐ店に寄って、鍵を使って店を開けて品出しをしていくと 

長身で髪を括って前髪で左目が隠れた眠そうな目つきの男性が店に来た。

「店主殿、浅草のイオリだ。

ご注文の彫仏納品に伺った。」

「あのー…すいません。店主の義瑠さん、小石川に行っちゃっていないんですよ。どうしましょう?納品なら俺…いえ、私がしますが」

「店主殿は不在か?まあ彼が店を任している御仁だ。では頼む。」

ぺこりと頭を下げるお兄さん。ところどころ古風な喋り方をする。

背が高い。20代くらい?落ち着いた雰囲気の人だ。彫仏?

もしかしてあの木彫りのやつか。

義瑠さんそっくりな奴、お気に入りで飾っていたもんな。他の仏像は売りに出してるのに。

アレ、わざわざこの人に彫ってもらっていたのか。

「えっと発注書の控えっと…

企業名、いや、個人業ならお名前か…

すいません!何というお名前でしょうか?」

「俺は彫師の宮本だ。特に屋号も無い。宮本の名で探したらあるんじゃないか?」

「すいません!ありがとうございます!!宮本さん、宮本さん…あった!

はい、彫仏6点に義瑠さん像3点。しっかり受け取りました。

こちら受け取りの控えです」

「ああ。

しかし、店主殿がいないなら約束の刀を受け取るのは次回にするか…」

「かたな?」

刀、てあの刀か?

まあ、雑貨屋だし義瑠さんだからあり得る…のかな?

古物商らしきことしてるしなぁ…

「あ、いや。こちらの話だ。君、名前は?」

「試用期間中のバイトしてます、斉藤です」

「宮本だ。また来た時はよろしく頼む」

丁寧に一礼すると宮本氏は帰って行った。落ち着いた人で義瑠さんとは正反対に見える。

宮本さん見送った後は

「ダイヤ、義瑠さんは?」

「知り合いのところに商品仕入れに行ってるよ。ルビー、何か買っていけよ」

「んー…暑いからクーリッシュ3つ!!友達の分もね」

「あいよー」

ルビーが来たり

「ダイヤくんじゃない!お手伝い?偉いわねー!!せっかくだから色々買っていこうかしら」

「たかみー姐さん!!久しぶりですね!義瑠さんからたかみー姐さん来たらこの籠のものを買ってもらうように、て。ちなみにお題は2000円です」

「どれどれ………

流石義瑠さんだわ…今日買いにきたものばかりね。流石だわ」

幼い時に遊んでくれた高峯さんが買い物帰りに寄ったり。

「すいません、カメラのフィルムください。白銀、という名前を言えば多分店主さんが私専用に仕入れてくれているのがあるのでその在庫分から4袋ほどお願いします」

若い女性カメラマンが来たり。

「やあダイヤくん。プロテインあるかな?僕専用のやつ。多分本名で置いてもらっているんだ☆」

「ここでプロテイン仕入れてたんすか⁉︎」

よく知る事務所のタレントが来たり。

「義瑠いないのー?」

「義瑠いないならにいちゃん遊べよー」

「デュエルしようぜー!」

「いいぜ…にいちゃんとデュエルだ!坊主ども!!」

義瑠さんから借りたデッキで学校帰りのガキどもと遊んだりしていた。

そんなこんなでお客さんを捌いたり、陳列棚補充したりしていたら義瑠さんが帰ってきた。

「ふむ。中々良い働きっぷりではないか。感心したぞ」

「お帰りなさい。なんか良いもの手に入れましたか?」

「そこそこにな。イオリから電話もらってな。褒めておったわ」

ははははは!と笑いながらゴソゴソとポケットを弄る義瑠さん。

多分いつものパターンだな。

「飴をやろう。よく出来ましたで賞だ。励めよ」

「ベッコウアメてなんかホッとしますね」ガリガリ

「たわけ。そこは舐めよ。いきなり噛み砕くな」

義瑠さんところのバイトは短期、長期とお世話になり色々な出費に消えていくのだった。

「ダイヤ、また積みプラ増えたな。今度作るぞ」

「マジかよ⁉︎アクア、プラモ好きだったか?」

「演技につまづいてな。何か気分転換したい。おまえと話をするのは頭からっぽに出来るからありがたい」

「お、喧嘩か。喧嘩なら買うぞ?義瑠さんとこのあのキャンディーで」

「安いなおい」

義瑠さんに似た男性像型キャンディー300円。金色に見えるパイナップル味がオススメ。

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