雌犬ヒナは、仕事ができない
今日はアルと私の二人きり。
筆が、書類越しにデスクを叩く音が響く。
原因は連日の依頼がたまったアルと書類がたまった私。
そして、便利屋の依頼もあったこと。
それらが重なった結果だった。
正直に言えば、……狙った。
便利屋の仕事に、アコとイオリとチナツを同行させたのも、この状況を作るため。
こういう時は、便利屋の下部組織になってよかったと実感する。
……とはいえ、おんなじことを考えている組織は多いから、近々こういう手で二人きりにはなれなくなるのだけど。
最初はいいと思えたこの作戦。
けれど、これが失策だったと私はすぐに気が付くことになった。
そもそもの前提として。
私はアルが好きだ。
当然それは、私同様彼女をご主人様だと慕う子たちも同様だろう。
そして、エッチなことに貪欲。
いや、依存しているといってもいい。
その際に、与えられる性行為は、私の、いや、私だけじゃない、彼女を中心とするハーレムの面々には体にしっかりと刻まれている。
そんな状態で、……冬だからと密室の事務所。
もうエッチした仲だし、あんまり気にしなくていいかと、ラフな格好のアル。
もうわかるだろう。
ふたなりで巨根である彼女がいう、ラフな格好とは、……下着なしのロングスカート。
「~~~♪」
鼻歌を歌いながら書類を進めていくアルは気が付いていない。
布一枚。たったそれだけしかない防護では、彼女のふたなりが醸し出す性的捕食者としてのフェロモンは、今の私たちにとっては子宮が疼くほどに強力なものだった。
私は、必死にこらえながら、首元のチョーカーを弄る。
これは、……私たち陸八魔ハーレムにおける一種のセックスアピール。
彼女のヘイローを模したアイテムを弄ることは、アルに、すべてを捧げるという絶対服従すらも意味する行為。
「……もう、昼から仕方ないわね」
こんな時間からアピールする私に、全く、っと言いながら指でOKサインを出すアル。
そのことに、私と子宮は反応しながら、気が付く。
自身の書類の量。普段なら、私は当たり前のようにこなしている、量。
それを前にしているというのに、頭の中を支配するアル様との行為に耽る想像。
カリリ、カリリと、筆で必死に文字をつづるが、それらが離れることはない。
「ふー、おわった!ヒナ調子は、」
「……ごめんなさい、アル様」
終わってない書類から離れて、私はさっきまで作業をしていたアル様の膝に乗る。
「アル様よりも早く終わらせられなかった、メス犬に、罰を与えてくれませんか?」
「へぇ……?今日はそういう甘え方なのね?……書類、持ってきなさい?」