隼の断片
ライダー side in
───夢を見た
本来サーヴァントは夢を見ることは無い、ならばこれは主殿の記憶だろうか…?
「よくやった■■、お前は飲み込みが早いな」
「ほんと?」
「ああ、俺なんかよりよっぽどな」
「2人とも、ご飯できたからそれくらいにしてね」
「あ、ご飯だ!!!行こうよお父さん!」
「全く、片付けをしてからな」
家族の団欒…?父親と思しき男性の言った名前は聞き取れない。だが知っている名前で…
場面がまた切り替わる
「あなた、だあれ?」
「ぼく?ぼくは■■ ■■!きみは?」
「わたしは■■■、■■ ■■■よ」
「そっか!じゃあ■■■!一緒にあそぼう!」
どこか見た覚えのある少女と少年が初めてあった場面のようだ。なんというか、今の主殿からは考えられない活発さだ。そしてそんな幸せな場面は長く続かなかったようでまた切り替わる。
「───」
少年の目の前には物言わぬ死体となった二人の大人、両親の死体だろう。
「死因は事故で───」
「魔術師なのに───」
「───刻印は───」
周りの大人は子供のことを考えずに実利をどう分配するかの話をしている。
「…ったく、死んじまったのかクソ兄貴はよ」
「───叔父さん」
「おう、■■。おまえはどうすんだ?」
「…分かんない」
「そうか、ならおめぇが刻印継ぎやがれ」
それは、有無を言わせない言葉。確かに少年は魔術師として最低限必要な知識は持っている。だがそれは幼い子供に向けるには残酷な言葉だった。
「なんで…」
「兄貴の血を、■■■■を継いでんのはうちの家系でお前しかいねぇ、仕方なくだ」
「でも…」
踏ん切りがつかない頭を思いっきり殴りつけた男性は少年の胸ぐらをつかみ、少年を持ち上げ言い放つ
「てめぇが■■■■を継いでなきゃ俺がやれたんだ、文句を言うんじゃねぇ」
「ウッ…ヒッグ…わ、わかりました」
「最低限の修練とかは俺が教えてやる、ヘタレんじゃねぇぞ」
そして少年にとって厳しい生活が始まった。
たった1年、それだけの時間で必要な知識を全て頭の中に叩き込まれ扱えるように厳しい訓練が行われる。
魔術師の鍛錬がどのようなものなのかは分からないが明らかに常軌を逸した訓練もあった。
それは───意識の漂白、本来ならば瞑想などで時間をかけるなどをして行うはずの鍛錬。だが主殿の叔父は強引に…薬物を用いて意識を漂白している
「ァ───」
「…チッ、まだ出てこねぇか」
「…」
「まだ早かったか、さっさと回路に魔力回して薬流せ、そしたら修練の続きだ」
そんな訓練が何回も何回も行われた。そんな訓練に幼い、親をなくしたばかりの子が耐え切れる訳もなく。
「…これでいいか?」
「よくできてんじゃねぇか」
「…帰る」
目から光を失った少年は淡々と同じ作業を繰り返すようになる。そして───
「はっ!?」
なにか重要な部分を飛ばして起きてしまった、そんな気がする。隣では涙を流している主殿がいて…
涙を流している!?慰めねば!
「───主殿?」
「うおっ!?…牛若丸か、どうしたん─」
布団からはね起きた主殿に抱きつく
主殿は勢いのまま布団に倒れる、私が主殿に馬乗りになるような体勢だ。
「ど、どうした」
「…必ず、貴方の隣にいます」
「はぁ?」
「私は、この戦いの間であろうとも貴方の隣で───」
「…何やってんのよ、あなた達」
襖が空いたと思ったらそこには心底軽蔑したような目でこちらを見下げている美作殿がいた。
ライダー side out