隷属
44の12944の129です。
レス128-130のネタ。IFミンゴとIFローの間に性的拷問があった設定。
「何やってんだ!!!」
大声はスイッチだった。
がちん、と頭に一枚仕切り板が生まれたような感覚が、いつもローの正気の最後だった。
穏やかに晴れ渡った青空の下、懐かしい甲板に立ってふと「あ、死のう」と海に飛び込もうとしたローの周囲にいたのはかつて死んだ仲間達だったけど、それすらローには分からなくなった。
怒られた。彼らの意図は「叱る」だったけれど、もうローにはそれらの違いも目の前のクルーの姿も分からない。
ドフラミンゴはしばしば懲罰としてローに脱衣を強いていた。
恥も正気もプライドも丁寧にすり潰されていき、けれど壊れきれなかったローの最後の砦が、何も感じなくなることだった。
乖離。
ここの船員なら誰でも分かることが、今のローには分からない。
「怒らせる」と「服を脱がなければ」はローにとって等号で、だってそうしなければ裸よりもっと耐えがたいことが起こる。
飛び降りを阻止した誰かの腕を、ローは病み上がりとは思えない膂力で振り払った。
「不穏だ」「キャプテンを!!」という怒号もローの耳には入らない。脱衣という目的が今のローの全てだからだ。
片手でも着脱が容易な衣服が与えられていたから、ローはむしり取るようにして難なくシャツを脱ぎ捨てた。
下衣もそうだった。ズボンも下着もウエスト部分はゴム製だから、親指でぐるりと胴を回ればもうおしまい。
一糸まとわぬ裸体になったローは彫刻みたいに立ちすくむ人間達になど目もくれず、ぺたりと座り込んで左腕をつき、深々と頭を下げた。
「ごめんなさい」
甲高いながらも努めて小さく抑えられたすきま風のような悲鳴も、今のローには聞こえない。
「ごめんなさい」
伏して願うローを、ふわっと浮いたローの意識が俯瞰する。
返事が無い。まだ許されないのかと泣きたくなる機構すら今のローには存在せず、ただ次なる叱咤が飛ぶ前にと機械的に記憶をなぞる。
そうだ、大きくて怖い影は、最後の方、ローに選ばせるのがお気に入りだった。
「こないだは痛いのだったから、今日は気持ちいいのがいい」
潮風が不意に鼻をくすぐり、「なんで外の匂いが?」と思ったような気がしたけれど、口は勝手に動き続けていた。
「そうすればドフィも退屈じゃないだろ?」
膝と手のひらにかすかな振動が響く。糸人形達がローを苛むひどいものを持ってきたのかもしれない。
「何も分からなくなるまで」
こうしなければ。こうならなければ。
「あいして」
ローは生きていられなかった。
死にたかったのに自死さえ許されなかった。鳥かごのローにとっての「自由」は、せめて自分を責め苛む手段を選べることだった。
「……!」
どすんと突き飛ばされてローの世界は強制的に上向いた。視界が光でいっぱいになる。
まぶしさに数度まばたきをすると、ようやく今の世界がローに戻ってきた。浮いていた自分もふわりと戻る。
青空を背負ってものすごい形相でローの肩を掴みあお向けにしたのは、この世界の正しいローだった。
終わり
追記
同小説を2023-09-27 14:53:42付けでぷらいべったーに非公開で投稿しています。
転載防止措置です。
また、スレ内でこの追記に関する話題は出さないようお願いいたします。
追々記
2023年12月13日22時09分付けで上記小説の一部をツイッターに投稿いたしました。
★が付いています。
転載防止措置です。
スレ内でこの追記に関する話題は出さないよう、再度お願いいたします。