隠す理由
つまり自己満足———え?顔を隠すのは何故か?隠すって...この面布をしている理由と言うことですか?
...あぁ、そう言えばはっきりと伝えていませんでしたね。すっかりこの状態が慣れてしまっていたので忘れていました。皆さんも特に聞く事なく接して下さるので、尚更。
えぇと、理由でしたね。
まぁ、率直に隠したいから、ですかね。理由になっていないでしょうけれど、これが主な理由です。
『主な』。はい、主な理由です。
その他にも幾つかはあります。
まず初めに、僕は少々狙われている身でおりまして。その追手から逃げる為にはこの面布がちょうど良いのです。呪力も気配も存在も朧ろにするこの呪具があれば、多少は気を逸らさせて『僕』と言う存在を隠してくれます。
...あ、皆さんと話す時はそう言うのは御座いませんよ。存在まではぼやかしていません。僕から話しかけていますし、隠すと言っても呪力程度でしょう。
次に、面布をする事に意味があるのです。
これは黒色ですが、通常面布と言えば白色です。人物の顔の上に掛けられていますよね。特に葬式等で。
そう、僕のこれは、遺体の『打ち覆い』の役割も兼ねています。本来であればここにいる筈ではない存在ですので。
...えぇ、そうですね。そうかもしれませんね。と言うよりそうでしょうね。
何とは言いませんが。
そして最後に、僕が隠したいから。
最初に述べた理由の通りです。
この顔を知る人からすれば、多少の驚愕はあるかもしれません。僕の知人や先輩はもう察せられていらっしゃいますが...。
単純に好きではないし、あまり見たくもない。コンプレックスと言うものでしょうかね。分かりませんが。
とまぁ、こんな感じです。
別に顔を見たいと言うならば見せますが、見たい方なんて余程の事がない限りいないでしょう。
顔は見ずとも話せれば良いのですから。
...表情が分からない?
あ、そっか。そうですね、確かにそれだと分かりませんね。
...まぁ、見たいのであれば、言って下さればそれで宜しいかと。