隊首会後...翼のSS編後
1「すまない京楽 今時間いいだろうか」
「おや浮竹 体の方は大丈夫かい 話すのはいいけど何処かで座って話した方がいいんじゃないのかい?」
「いや大丈夫だ 今日は調子がいい方だからな」
浮竹が隊首会が終わった後に僕に話しかけてきた...さて何を聞かれるのやら
「まず...君が翼ちゃんと交戦したのは本当かい」
どうやら翼くん絡みらしい、正直藍染隊長...いや藍染に関することではないし畏まる必要もなさそうかなっと
「まぁそうだね 刀で斬り合った訳じゃないけど...もしかしてあの瀕死の怪我を僕が負わせたと思ってる⁉」
「いやそういう訳ではないんだ!ただ袈裟切りならば魄睡や鎖結に損傷が出来るのは難しいと考えてな...ならばなぜああいった状態になったのかと」
僕が少し大袈裟に驚いたようにリアクションしつつ浮竹をからかっていると横から凛とした声が投げかけられた
「あれは内臓器官が損傷したものではなく 魂魄そのものが損傷した怪我の結果ですよ浮竹隊長」
「お~卯ノ花隊長! このまま僕の冤罪を晴らしてよ~」
「え...冤罪 いや私も別に君を強く疑っていたわけでは」
浮竹がワタワタと僕に弁明しているのを微笑ましく思いつつ卯ノ花隊長が続けるのを待った
「お二人とも虎屋家に関してはある程度ご存じですね?」
「えぇ確か...およそ百年ほど前に十二番隊に攻め込んだこともあるのは知っていますよ 十二番隊が行き過ぎた実験を行った結果であり条約を反故にしたためこの事件は発生したとか」
「まぁ君はその時はいつも通り体調崩していたし詳細は知らないか...僕が知っている事としては十二番隊が行った虎屋家と協力体制にあった滅却師の拉致だね
ついでに言えば魂魄のみが傷ついたのは"第六感"と彼らが言う...なんだろうねぇ天啓を得るというかなんというか、魂魄を犠牲に色々できる能力を持っている人間ってとこかな」
卯ノ花隊長が僕たち二人の話を聞いて頷く
「虎屋家は長年死神にとって不都合な存在でした...死神にとって不俱戴天の敵である滅却師との共存関係にあったことが大きいのですが にもかかわらず虎屋家そのものにはそこまで死神は敵意を向けてはいませんでした」
「しかしその滅却師の討伐が出来ない状況にあったと?」
「えぇ 虎屋家はどうやら斬魄刀をどこからか入手し人間にも保持できるようにしたようで滅却師と共に戦いつつ魂送が出来ていたのです そのため魂の量が減ることも少なかった」
「そりゃマズいでしょう 武器一つの管理すら出来てないって僕ら零番隊に怒られちゃうんじゃないかな?」
少し茶化しつつも実際零番隊が重い腰を起こしかねない事態であるのは確かだ。本来死神が管理をしないといけない魂魄を送る仕事を取られているのだから
「更に不甲斐ない事に単純に攻めてもこちらの被害が大きくそのままにしておく方がまだましであろう そう考えた我々は手を出さずに虎屋家に対しては歩み寄ろうとしていました」
「まっそれも全部ご破算さ 僕ら死神の管轄下で一度虚を取り逃がした挙句に尻拭いを虎屋家にさせた...一人の子供の命を持ってしてね」
浮竹の表情が曇る...僕も周りも当時は自分たちの不甲斐なさに憤りを覚えたもんだよ
「そしたら今度は今まで行動を起こさなかった滅却師が周囲から僕ら死神を追い出してそこから数百年全力で守りぬいてみせた 虎屋家の力を借りて魂送すら適切にしてね」
「それではまるで...」「そう 現世を守るのに僕らなんて必要ないって感じさ」
もちろんそれを可能にしたのは虎屋家だ...彼らの言う"第六感"がその状況の中心にある。僕ら死神は滅却師が魂魄を焼いて何らかの力や知恵を得る第六感を虎屋家に使うことを強いているのではないかと危惧していたが...あの様子だと違いそうだし参ったねぇ
「あの子が我々に対して冷ややかな態度だったのも納得がいくな...ルキア君の手伝いを申し入れてくれるほどに彼女は歩み寄りつつも死神全体に対しては少なからず怨嗟があっても可笑しくない」
「なぜあの子は瀕死の重傷で鍛錬をしようとしたり手伝いをしようとしたり...あれだけ言っても聞かないのはもはや才能ですよ」
卯ノ花隊長の凄みを受けてなおアレなのだと思うと実際才能だと感じさえする。僕もそのくらいの頑固さがあれば...いや死にたくはないからよそう
そんな話をしていると隊首会後に総隊長とすこし個別に話していた狛村隊長がこちらに向かってきていた、せっかくだし狛村隊長にも聞いてみようか。
「そういえば君の所にも来てたんだっけ?狛村隊長」
「京楽殿か うむ...某も鍛錬をしていたところ『一緒に鍛錬いたしましょう!』と言われ...明らかに霊圧も弱っていたのでお菓子でも与えつつ茶を楽しんだのだ」
「...彼女が病になったら医者は大変かもしれないな」
(まぁあの子があの服着てる限りはそれは無いだろうけど)僕は浮竹の反応に内心そう思いつつ聞いているとなにやら狛村隊長がふんすと胸を張りつつ話を続けた
「どうやら翼殿は犬が苦手だったらしく最初はすこし怖がられていたが...某の頭を撫でられるくらいには耐性が出来たようで帰る頃にはずっと触っていたのだ」
「それは良かったですね」
卯ノ花隊長がオホホと笑いつつも翼君が鍛錬を狛村隊長に持ちかけていたことには呆れというか手のかかる子供の事を思うような表情を見せていた
「僕の所に来たときは石田っていう滅却師の子の手伝いに来ていたみたいだけどね...その当の石田君に『君はいまは休むべきだ 調査は最悪調査は別の日にするから』と言われて青い顔をしながら布団に入っていたよ あの様子はなんだか可愛らしかったね"彼"」
「「?」」
う浮竹と狛村隊長が首を傾げている...まぁそう言う事だろうねぇ
「一応言っておくけど翼君は性別上は男だよ?」
浮竹と狛村隊長がぽかんと顎が外れたように口を開けて驚いている
「場合によっては彼を止めるのに滅却師の石田さんの力添えが必要になるかもしれませんね...」
ハァと少し艶やかに感じる卯ノ花隊長の溜め息が廊下に落とされた