闇の夢と有為の夢路
無敵ロイヤルキャンディ「えへへ〜」
「のぞみ、あんた浮かれすぎじゃない?」
「だってだって〜、ダークドリーム……リムと再会出来て嬉しいんだもん!」
5組とデパプリ組の自己紹介を軽く済ませ、イベント会場へと足を進めるプリキュア達と、ココとナッツに拓海、そしてダークドリーム。話題は専らダークドリームについてだ。
「なんと言うか雰囲気丸くなったわよね。まああの時はシャドウの手下で私達と敵対してたからってのもあったけど」
「そう?あとなんかクリスタルから完全に分離したせいか疲れるようになったのよ。不便に思う事もあるけど、悪くはないわ」
「あ、そういえば。でも、それだと鏡の国のクリスタルはどうなってるのかしら?」
「どうやらそのままみたい。私がいないならヒビ割れもなくなって欲しかったけどね……」
「ねえうららん、良かったらイベントの後にウチの店寄ってかない?サービスしちゃうよー」
「らんさんいいんですか?えへへ、ありがとうございます」
「流石らん、商魂逞しいわね」
「いいのか?ウチのお店もイベントのケーキパフェ制作に少しは手を貸したけどアレはかなりの量だぞ?」
「別に大丈夫だろ、コイツと違って食べても太らないからな」
「おいナッツ、それはもう済んだ話だろ!?」
「あ、見えてきたよ!」
会場はイベント開始から僅かしか経っていないにも関わらず、熱狂に包まれていた。辺りから漂う甘い匂いが食欲を掻き立てる。ゆい達は巨大ケーキのメインイベントまで複数人に分かれて甘味を堪能する事になったのだった。
〜◇〜
「にんじんケーキいかがですか〜?栄養満点でとっても美味しいにんじ〜ん!」
「何だあれ、人参の着ぐるみか?」
「なんか可愛いよねー。すみませーんにんじんケーキ2つくださーい!」
「あいよお兄さんとお姉さん、2人はとてもお似合いだにんじ〜ん」
「えへへ、そうかな。ありがとう…えーっと、そのー」
「ボクはにんじんの妖精にんじん!記念に一緒に記念撮影するにんじん!」
「いいの?拓海、一緒に撮ってもらおう!」
「お、おう」
〜◇〜
ゆいと拓海がやたらテンションの高いにんじんの妖精を名乗る着ぐるみと記念撮影をしていた頃、のぞみ・りん・つぼみ・ココ、そしてダークドリームはシュークリームやいちごメロンパンを堪能していた。
「ん!このシュークリーム、皮の固さが絶妙で美味いなぁ。これならいくらでも食べられそうだ」
「また食べ過ぎで太っても知らないわよ」
「ナッツだけじゃなくりんまでそれを言うのか…」
「そうだよりんちゃん!ココだって先生の仕事頑張ってるんだからご褒美に食べてもいいはずだよ!」
「そうは言ってもねぇ、あの時は大変だったから…」
「あ、このいちごメロンパンも美味しいですよ!リムもどうですか?」
「いちご……なのにメロンパン?分からないわ」
「この前はーちゃん達に教えてもらったんですがとても美味しくって。1つどうぞ」
「……!美味しい!イベント終わって残ってたら買ってみよう…!」
「ふふっ、喜んでくれて何よりです」
「よかったねリム〜!」
「あんたはリムの親か……いやリムのオリジナルだから親でいいのかも」
「どっちかって言うと仲のいい姉妹みたいだけどな」
「ならわたしがお姉ちゃんだね!ほらリム、お姉ちゃんのシュークリームも分けてあげよう」
「お姉ちゃん、か……悪くないかも。ありがとうのぞみ」
のぞみから受け取ったシュークリームを頬張りながら、ダークドリームは満面の笑みを浮かべるのだった。
〜◇〜
「いいのあまね?ゆいと拓海を2人きりにして」
「ああ、たまには2人きりにしてやらないとゆいのストレスが溜まるばかりだからな。ところで……」
あまねが目を向けているのは一目ではカレーと見間違えてしまう茶色いマンゴーソースを寒天で作られた米にかけた変わり種なスイーツを何皿も平らげるうららの姿だった。
「やっぱりカレーとは違いますがこれはこれで美味しいですね!」
「いやうららん、この後ケーキパフェ食べるんだよ?そんなに食べて大丈夫なの?」
「大丈夫です!ケーキパフェは6人で食べるチーム戦と聞きました、わたし達なら大丈夫です!」
「そうね、『わたし達』なら大丈夫よね…」
「でもあまり食べ過ぎるのも問題よね、私もこれで抑えとこうかしら」
羊羹1本を完食しながら呟くこまち。他にもかれんはブドウのコンポートを、ナッツは豆大福を堪能しているようだ。くるみはこの後に備えてあまり食べてはいないようだ。
「ふわぁ、わたしも意外と食べるんだねーとは言われるけどこれは凄いなぁ」
「そろそろ時間だし、広場に行きましょうか」
「そうだな。いくぞお前達」
〜◇〜
メインイベントの広場で行われた巨大ケーキパフェ大食い対決は大盛況を迎えていた。健啖家のゆいとダークドリーム、スイーツなら兄2人を凌駕するあまねがチームを引っ張るゆい・ここね・らん・あまね・拓海・ダークドリームのチームデリシャスパーティと、チーム全員が健啖家かそれに準するのぞみ・りん・うらら・こまち・かれん・くるみのチームナッツハウス。大人を差し置いて1メートルを軽く超えるケーキを食べ進めデットヒートを繰り広げる2チームに観客は沸いた。
「そろそろ黒胡椒かけたくなってきた……」
「駄目だぞ品田、それではルール違反になってしまう」
「でもらんらんもちょっと辛くなってきたよ……」
「私も……。のぞみ達凄いわね。収まる気配を知らないわ」
「2人とも口より先に手を動かして。……流石のぞみ、私も負けてられない!」
「デリシャスマイル〜♪」
……ここねとらん、拓海がペースダウンしてしまったのが悪かったのか、完食こそはしたものの数分の差で負けてしまったチームデリシャスパーティ。勝者であるチームナッツハウスは優勝商品であるカゴ一杯に入ったフルーツの盛り合わせにご満悦だった。
「惜しかったねー」
「まだ食べてたのかゆい、リム」
「リムちゃんに勧められたいちごメロンパンが美味しくてさー」
「まだ残っててよかったー」
「そうか……のぞみが今回の記念に写真を撮らないかって言ってるんだけどお前達はどうだ?」
「行く行く〜!」
「うん!行こう拓海!」
――あの闇の中で拓海と出逢ってから色んな事があった。友達が出来た。美味しいものが食べられた。そしてのぞみと再会出来た。
プリキュアの倒す為に生み出された私が1人の人間として受け入れられてる事がとても嬉しい。次はどんな事を知るんだろう、拓海の事を想う時に起こるこの胸のドキドキは一体何なのだろう。
分からない。でも、それが凄く楽しい。ちょっと怖いけど、今度拓海に聞いてみよう。私を福あんに置いてくれているあんにもお礼がしたいな。
――私の夢路は、これからも続く。