門出
エース17歳 ウタ16歳 ルフィ14歳
「頑張れよー‼︎エース〰︎‼︎」
「待ってろすぐに名を上げてやる‼︎」
人知れず成長した海賊王の息子エースはコルボ山の海岸より静かに出航した。
手を振りながら離れていく兄を泣いて見送るウタは昨日のやり取りを思い出していた。
「……本当に、海賊になるの?私が海賊嫌いな事を知ってて、それでも」
「ああ、ガキの頃から決めてた事だ。可愛い妹の頼みでもこれだけは絶対譲れ無ェよ…サボとの約束だからな」
「おれは頭が悪ィから
サボが一体何に殺されたのかわからねェ…
でもきっと“自由”とは反対の何かだ…‼︎
自由を掴めずにサボは死んだけど、
サボと盃を交したおれ達が生きてる‼︎
…でもお前らは海兵になるんだろ?
だったらおれがやるしか無ェ‼︎
サボの遺志はおれが継ぐ‼︎
おれは絶対に"くい"のないように生きるんだ‼︎
必ず海に出て‼︎
思いのままに生きるんだ‼︎
誰よりも自由に‼︎
それはきっと色んな奴を敵に回す事だ
ジジイも敵になる‼︎
命懸けだ‼︎
出航は17歳‼︎
おれは海賊になるんだ‼︎」
サボの話をするのはズルい、とウタは思った。
サボの死に関しては、ウタも想う所はある。
それでもウタはエースにも海兵になって欲しいと思っていた。
盃を交わした兄として、ずっと一緒にいて欲しかった。
それなのに、エースの決意を目の当たりにしたウタは、兄を引き留める事が出来なかった。
エースの船出より数週間後
「一体どうゆうつもりじゃダダン‼︎」
コルボ山に“海軍の英雄”と呼ばれる海兵の怒号が響き渡った。
「どうもこうも無ェよ‼︎
ガキの頃から海賊になるって言ってきかなかったただろエースのやつは‼︎
宣言通りに海賊になる為に海へ出ていったんだよ‼︎」
応対するのはコルボ山の女山賊カーリー・ダダン。エース、ウタ、ルフィの仮親である。
「わしはあいつを強い海兵にする為に鍛えてやったんじゃぞ‼︎」
「エース本人に言えよ‼︎
そんなに海兵にしたかったならこんな所に置いておかずにさっさと海軍本部へ連れてって少年兵なり雑用なりやらせれば良かっただろうが‼︎」
「…ああそうじゃな‼︎
そうするべきじゃったわい‼︎
海兵を志望しとるルフィとウタの兄として一緒に過ごしていれば海兵を目指すようになると思っておったのにあンのクソガキがぁ‼︎」
「…ルフィ、ウタ、エースが海賊になってしまったが、お前らは今も海兵になる事を志望しておるか?」
「はい。海兵になって、“赤髪のシャンクス”を捕えるんです」
「おれも、海兵になっていつかシャンクスよりも強くなって見せる!」
「よーし良く言った。これから2人とも新兵として海軍本部に連れて行く。すぐに荷造りせい」
「「え、今から?」」
「なんじゃい念願叶ったんじゃからもっと嬉しそうにせんか‼︎
多少予定が前倒しになっただけじゃろうが‼︎」
そしてその日のうちにルフィとウタはガープの軍艦に乗っていた。
2人は海兵になる事は確かに志望していたが、エースの時のように事前に準備した後、フーシャ村のみんなに別れの挨拶を済ませてから見送ってもらう門出を想像していた。
まさかこんな慌ただしい出発になるとは夢にも思わなかった。
こんな急な話でも見送りに来てくれた村長やマキノは本当に良い人だと思う。
今回の騒動の原因を作ったエースに海賊と海兵として出会ったらまず一発ブン殴ろう、と2人は心に決めたのであった。