錠前牧場
今までの経験からまあまあ信頼の置ける仲介業者を挟んでいたし、細部まで読んだ契約書には何も問題はなかった。ブラックマーケット内ではよく仕事の募集をしている組織という実績もあったし、何よりサオリ自身その組織に雇われたのはこれが三度目だった。
(だから問題はないと思ったのだが――結局また騙されたのか)
サオリは誰もいない小部屋の中で嘆息した。
トラックの荷台に乗り込み、全員に配られたヘルメットを指示された通り被った。まとめ役が「全員被ったな?」と確認してきたので無言で頷くと、途端に首筋にチクリと痛みが走った。咄嗟にヘルメットを脱ごうとしたが腕が持ち上がらず、足がふらつき幌の骨組に手をついた。周りでは同じ雇われの生徒がバタバタと倒れており、こちらに近づいてくるまとめ役の姿を見たのを最後にサオリの視界も暗転した。
そして目を覚ますと専用の台座に手足を埋め込まれるようにして拘束されていた。口枷も噛まされ、なぜかトップスは下着ごと正中線で切り裂かれている。右前腕には注射針が刺さっており、今も得体のしれない薄黄色の液体が点滴バッグから落ちている。剥き出しの腹には電極パッドのようなものが貼り付けられており、妙にむず痒かった。
このままではまずいとサオリは思ったが、先程から拘束はびくともしない。どう脱出したものか勘案しているサオリの耳にドアの開く音が入ってきた。
「んむ」
サオリの視界の横から現れたのはガスマスク姿の人間だった。思わず声をあげるがアリウスのそれとは異なる。
ガスマスクは押してきたカートからいったん手を離すと、サオリの前に立った。そしておもむろに手を伸ばすと――サオリの目の中で火花が散った。
「――むぉ゛っ」
サオリは自らの意思と関係なく体を震わせた。未知の感覚が奔流となって思考を焼く。
(なに、が)
サオリは涙で滲む視界の中、ガスマスクが自分の胸をがっしりと掴んでいるのを見た。
「んっぐぅぅ!?」
ガスマスクの十本の指がばらばらに動き出した。張りがある方とはいえ柔らかな脂肪の塊であることには相違なく、彼女の豊かな胸は自由自在に形を変える。サオリは可動域がほどんどない中で限界まで海老反りになり、己の胸を突き出すような恰好になった。
ぱちぱちと脳細胞が潰れるような感覚を覚えるサオリ。自らが感じているものの正体を一切知ることのないまま、サオリはあっさりと限界を迎えた。
「ぉ゛ぉぉぉっ♡♡」
無自覚に甘い声を混じらせ、サオリは一際大きな声で哭いた。同時にガスマスクのゴム手袋の下から『ぶしゅ♡ ぶぴゅびゅじゅ♡』と湿った音が響いた。
サオリは生まれて初めての絶頂を、絶頂とはなんであるかも知らないまま、母乳を噴き出すことで迎えた。
ガスマスクが手を離すと、薬剤の影響で粘っこくなった母乳がわずかに糸を引いて千切れる。
黒いスキニーパンツの股座をじんわりと濃い色にしながら、サオリはヘイローを明滅させた。
ガスマスクは意識を飛ばしかけているサオリを気にする様子もなく、下腹部に貼り付けていたパッドを剥がした。そしてカートからハンディマッサージャーを手に取る。スイッチをスライドさせて動くことを確かめたのち、その頭をサオリの下腹部に押し当てた。
「んぅ……?」
その刺激にサオリの意識がわずかに戻る。同時にガスマスクはスイッチを弾いた。
「ぉ゛ぉぉおおぉ゛ぉっ!?♡♡♡」
サオリは目を限界まで開き、口枷の隙間から咆哮を響かせる。腰を跳ね上げさせようとするが、足の拘束とガスマスクのマッサージ機の押し付けにより叶わない。
薬剤と特殊なパルス電流によりぐずぐずにほぐされていたサオリのポルチオ性感帯は、台座とマッサージ機に挟まれあっという間に追い詰められていく。
ガスマスクは空いた手でサオリの口枷をぱちりと外した。
「――んぉおおっっ!♡♡ はっ、ひゅっ……♡ くぅおぉぉ……んぉっ!♡♡」
より鮮明に聞こえるようになったサオリの喘ぎ声を聞き、ガスマスクはタイミングを見計らう。
「ほォおおぉっ♡ おっ……こぉ♡ ぉ゛♡ お゛ぉ……ッ♡♡」
サオリのよがり声に余裕がなくなり、限界を迎える正にその時。ガスマスクはサオリの胎にマッサージ機を押し込み、濃いピンク色の乳首を指で挟み潰した。
「オ゛ッッ♡♡♡ ……おっ、ほ……ぉひゅ……♡」
サオリはショーツとパンツ越しに潮を噴いた。同時に母乳も噴き散らかす。すぐにガスマスクはマッサージ機と指を離す。サオリが余韻から脱しかけたところでまたマッサージ機を押し当て、同じことを繰り返す。
床に潮と母乳の混合物の水溜まりができるころには、サオリはポルチオへの刺激だけで母乳を溢れさせるようになっていた。
「お゛ー……ぉ」
かくんとサオリがこうべを垂れると同時にヘイローが掻き消える。ガスマスクはカートと一緒に持ってきていた折り畳み式の車椅子を広げると、台座のパネルを操作した。サオリの拘束が解け、前側に滑り落ちるサオリの体をガスマスクが抱き留める。
その瞬間、サオリのヘイローが点灯した。カッと目を見開いたかと思うと蛇の如くガスマスクの首に腕を巻き付け、締め落としにかかった。
「フゥーッ!」
「――! ――!」
ガスマスクは突然のことにじたばたと藻掻いたが、サオリの拘束から逃れるには至らない。酷い環境であったとはいえ、本物の訓練を受けたサオリの締め技から逃れるのはそう容易いことではない。少なくとも兵士でも格闘家でもないガスマスクには正攻法で振り払うことは不可能だった。
ガスマスクは薄れゆく意識の中、手に何か固いものが触れたのを感じた。最後の力を振り絞り、それを握りしめる。
「オ゛ッひゅ!?♡」
ガスマスクを睨みつけていたサオリの目が突然くるりと裏返った。ガスマスクが掴み取ったマッサージ機を振動最大の状態でサオリの下っ腹へねじ込んだのだ。一瞬で拘束は解かれ、サオリはがくがくと体を震わせながらぶびゅっ♡と母乳を噴いた。
ガスマスクは何度か咳き込んだのち、床に倒れ込んだサオリを縫い留めるようにマッサージ機をサオリの胎にぐちゅりとねじ込んだ。
「おへっ?♡ ひゃめ♡ おぎゅっ♡ あきゃっ♡ オッ♡ おひ……♡ あっ……♡ かはっ……ぁっ♡ ぁぇ……♡ ……♡」
母乳と潮を漏らしながら無様に手足をばたつかせていたサオリは徐々に静かになり、またもそのヘイローを消した。
ガスマスクは確かめるようにぐりぐりとマッサージ機を押し込んだのち、大きく息を吐いた。すぐに立ち上がるとサオリの体を車椅子に引っ張り上げ、ある場所へと運んで行った。
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運ばれた先でサオリは搾乳機に繋がれた。透明のドームに母乳を吸引されるたび、快楽に頭を焦がす。出が悪くなれば腹につけられた機械が震え、頭の中を真っ白にさせられながら、潮と母乳をひり出す。時折伸びてくるチューブによる栄養と水分補給の時間以外は、気絶中であってもサオリは絶頂の沼に漬けられた。
「ォ――ッ♡ ~~――ッ♡ ~~~~♡♡」
救助が来たのは五日後のことであった。