釣り場で顔見知りになった男の子と街でバッタリ会って一緒に遊びに行くセイウンスカイ概念
お?今日も居たか。
見慣れた顔を見つけて思わず頬が緩む。
暇さえあれば足を運ぶようになった釣り場で出会った彼は名前も歳も知らない。恐らく自分と同じくらいだろうくらいとしか分からない。
だけどそんな間柄でも気にならない。釣り場で大事なのは互いに迷惑を掛けない事であって相手の素性など気にしないのが普通だ。
そんな関係であってそれが普通、
の筈だったんだけどなぁ。
「あっ」
「あっ」
ある日トレーニングをサボっ⋯トレーナーさん相手に逃げのトレーニングをしていた、そんな時にいつもの人といつもとは違う場所でバッタリと出会ってしまった。
「「⋯⋯⋯」」
見慣れた場所とは違う形で見た彼の姿はちょっと新鮮で、お互い言葉も無く見つめ合っているのが気恥ずかしくなりかけた最中に、空気をぶち壊すように現れたトレーナーさんの存在は有難かったがほんの少しだけうらめしかった。
「ス〜カ〜イ〜、トレーニングサボって何やってるんだ〜」
「えーっとですね〜⋯」
緩い話し方の中に確かな怒りを感じながら目を逸らすと再び彼と目が合った。
丁度いい、彼に協力してもらおう。
「やだな〜トレーナーさぁん。女の子のプライベートをあんまり詮索しないで下さいよ〜」
喋りながら彼の横に回り手を取る。打ち合わせも何も無いけど意図汲んでくれたようでとりあえず否定はしないでくれた。
ありがとう、今度お礼するね。
「ええっと⋯2人はそういう関係なのか?」
「トレーナーさぁん、野暮って言葉知ってますか?」
鳩が豆鉄砲を喰らったようなトレーナーさんが何とか口にした疑問に曖昧に答える。
彼に本当に付き合ってる人が居たら悪いしね。
その後、釣り仲間として出会った事などをを伝えて何とか今日は見逃してもらえる事になった。
門限までには帰る事と節度ある付き合いをするようにと釘を刺されたのが気になるが、とりあえず良しとしよう。
「もういいか?」
トレーナーさんを見送ってから彼が口を開いた。
当初の予定としてはこれで十分なんだけど⋯厄介事は終わりだと言わんばかりの態度には少しカチンとくる。
なので仕返しとお礼を一杯に詰めてこの言葉を贈ってあげよう。
「うちのトレーナーさん。疑い性だから今日はこのまま付き合ってよ」
言いながら彼の手を引いて何処と無く駆け出す。
計画なんて何も無いけど2人でいればきっと楽しいから。
「おい!俺の都合を考えろ」
何か言っているけど知らない。
見慣れた筈の顔がコロコロ変わるのを楽しみなながら、今日を過ごすとしよう。