金髪幼女と5人の饅頭と歌姫

金髪幼女と5人の饅頭と歌姫


(木とインクの匂いがする…)

 静かな空気の中話し声のような物が聞こえてウタは目を覚ます。どうやら眠っていたらしい。周囲の状況を確かめる為にガサゴソと動いて居たら話し声のした方から声がした。

「目が覚めましたか?大丈夫ですか?」

 ウタがその声のする方に振り向けばそこに居たのは金髪に紅い目をした少女が立っていた。だが、その容姿で1番に目につくのはその背中から生えた羽のような物であろう。

「えっと…あなたは?」

「フランドール・スカーレットといいます。長いので気軽に“フラン”とでも呼んでいただければ。良ければあなたの名前を聞いても?」

 ウタの問いにフランは見事な礼と共に自己紹介をする。その立ち振る舞いは彼女が纏う人間とは思えない雰囲気と丁寧な物腰も相まってウタにはとても美しい物に見えた。

「えっと…私は…ウタって言います。」

 そんな雰囲気に飲まれ、ウタは演技をするのを忘れ自らの名前を答える。

「ウタさんですね。それで…その…何が有ったかとか覚えてますか?」

 名前を聞いたフランははにかんだように笑うととても聞き辛そうにウタに問いかける。ウタはその質問に答えようと自分の記憶を引っ張り出す。

(えっと…初ライブの為の計画を考えてて…そしたらいつの間にか身に覚えの無い場所まで飛ばされて…それで…)

「あっ!そうだ!生首が居たんだ!」

 そう言ってウタは見た物をフランに伝え、警戒するように言う。しかし、その事を聞いていたフランは顔を両手で覆い項垂れて居た。

「良いですかウタさん。私はあなたに紹介したい方々がいます。ですので、あの人達の事を見ても驚かないでくださいね。」

「紹介したい人?私たち以外にもここに人が居るの?」

 念を押すフランに対しウタはよく分かって無いかのように首を傾げる。フランはウタの元を離れ物陰へと近づく。

「みなさん、もう出てきても大丈夫だと思います。」

 フランが物陰へと話しかけると、物陰から生首が5つ出てくる。予想だにしてなかった生首の再登場にウタは驚くが、事前にフランの忠告があった為になんとか耐えた。

「えっと…それがフランさんの紹介したい人達?」

 ウタが若干引き気味に問いかけると5つの生首の内、金髪に童話で見るかのような魔女の帽子を被った生首が前に出て話しかけてきた。

「さっきは驚かせて悪かったな。私の名前は魔理沙。あそこにいる黒髪に赤いリボンが霊夢。そいつといがみ合ってる銀髪に黒リボンがシュガー。それを宥めようとしてる2人の内、白髪に黒リボンが妖夢で紫髪に赤いリボンがレミリアだ。」

 前に出た魔理沙はウタに一言謝罪をすると最低限のわかりやすい特徴で他の生首達の紹介をしていく。

「ううん。私は全然大丈夫だよ。寧ろごめんね?あんな反応しちゃって。」

「別に良いんだ。目の前で生首が跳ね回って話してたら誰だってああなる。それに、ああいう反応されるのも慣れてるしな。」

(慣れてるんだ…)

 奥でガヤガヤと騒ぐ5人を背に、魔理沙はウタとの話を続ける。

「それでなんだが、私たちはここに飛ばされてきたばっかりで何もわかって無いんだ。ウタさんは何かしら知ってる事は無いか?」

「ウタで良いよ。残念だけど、私も来たばっかりの時に魔理沙さん達を見て気絶しちゃったから…」

 魔理沙を掌の上に乗せ、目線を合わせながらウタは会話する。

「そうか。その、どうせなら私たちと一緒に行動しないか?信用出来ないかもしれないが私たちはこんな姿だからな。ウタの手を借りられるとありがたい。」

「私は大丈夫だけど…フランさんは?フランさんも私と同じで手足があるみたいだけど」

「それについても纏めて話す。とりあえず…あいつらを呼ばないとな。」

 つい魔理沙との会話に夢中になっていたウタはその言葉で顔を上げフラン達の方を見る。そこではフランがシュガーと霊夢を持ち上げて引き離してる所だった。

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