金と友情
テーマは悪くなかったと思う。絶望的に俺が書くには向いてなかった感じ。「はい、これ。」
僕はその瞬間、すべての時間が静止したように感じた。世界は自分一人になってしまったんじゃないかと勘違いしてしまった。なぜなら・・・
「なんですか・・・これ・・・」
「なにって、お金だけど。」
「そんなこと聞いてるんじゃなくて!・・・なんでこれを僕に渡すのか聞いてるんですよ・・・」
エピさんの手元には分厚い札束。おそらく100万はくだらないだろう。わけがわからない。素直にそう伝えると、エピさんは何に驚いているのかわからないといったふうな表情で僕にゆったり話しかけた。
「なんでって・・・人が人と仲良くするにはお金が必要なんでしょ?小さい頃から僕に関わってくれる人はみんな僕にお金をくれたよ。コンちゃんには僕から仲良くなりに行ってるから、お金。」
もうわけがわからなくなった。自分とエピさんだけがそこにあって、時間すらもないんじゃないかって気分になってきてしまった。わからない、わからない。沈みゆく意識の中、絶対にこの金を受け取っちゃあいけないという思いだけが残った。
「いりませんよこんなもの!エピさんから見て僕はそんなもののためにあなたと友達をやってるような奴なんですか?!」
「そんなわけ・・・!」
「じゃあ引っ込めてください!始まりはあなたからだったかもしれないけど、今も一緒にいるのはあなたのことが好きだからだ!・・・すいません、どなっちゃって。どうしてもあなたにはわかってほしいんです。『友達になる』ってのは・・・お金なんかじゃないんです。
偶然出会った二人が、そばにいたいなってのが友達なんだ・・・って僕は思います。
普段はあなたのこと邪険に扱ってるけど、キズナさんたちもきっと僕と同じように怒ったと思います。だってあなたは・・・大切な、大切な、友達なんだから。」
肩をつかんで、必死に言葉をぶつける。自分でも何を言っているのかよくわからない。響け、響け、何かを変えろ。ただそれだけだった。
「そばに・・・いたい人・・・ぼくは・・・コンちゃんのそばにいたい。みんなのそばにいたい。これって・・・友達なの?」
また、あっけにとられた。まさかエピさんに、まだ友達と思われていなかったなんて。
「今更ですよ。あなたと出会ったその時から・・・僕らはずっと友達だ。」
「友達・・・ぼく、決めたよ。貰ったお金を全部返さなきゃ。あの人が何を思って僕にお金をくれたのかはわからないけど・・・少なくともぼくは、あの人たちのこと大切な友達って思ってるから。」
「手伝いますよ。どれだけかかっても・・・お金を返して、もう一回、イチから友達を始めましょう。」
エピさんの歪みは矯正できた。これから先、この人はちょっとづつ友達を知っていくんだろう。その時に、過去の負債があの人にのしかかるなんてことは絶対に許さない。